東方楽曲伝   作:ホッシー@VTuber

306 / 543
待ちに待ったレミリア戦の始まりです。
結構、長く戦います。



後、評価が赤に戻りました。評価を入れて下さった方々、誠にありがとうございます!
これからも東方楽曲伝をよろしくお願いします!


第298話 王女の試練

 紅魔館の一室。部屋と言ってもかなり広い。咲夜の能力を使って作られた特別製の部屋だからだ。使用用途はもちろん、“戦闘”である。

「あれから随分経つけど……またやられに来たのね」

 腕を組みながら俺とフランを見て笑うレミリア。確かレミリアに初めて戦いを挑んだのは6月なのでかれこれ4か月ほど経っている。それでも俺たちは未だ、レミリアを倒せずにいた。しかし、あれから俺は変わった。

「お姉様、余裕でいられるのは今の内だよ」

「……まぁ、響の地力が跳ね上がってるけど。何かあったの?」

「それはお前に勝ってから説明する」

「へぇ、自信たっぷりね」

 あの頃の俺は何もかもが駄目だった。フランを過剰なまでに守ろうとして連携を乱す。攻撃の手数も少ない。地力だってそうだ。

 だが、望たちが誘拐されて俺は仲間と共に戦う大切さを知った。

 翠炎が戻って来てくれた。

 ドッペルゲンガーを吸収して地力が増えた。

 新しい技も身に付けた。

 やっぱり、俺は他の人に頼ってばかりだ。でも、それを駆使してレミリアを倒し、リョウのことを教えて貰う。

「それじゃ……始めましょう? 殺し合いを」

「ああ」「うん」

 レミリアはニヤリと笑いながらスペルカードを取り出す。俺とフランは手を繋いだ。因みに『魔眼』はすでに発動しておいた。

「神槍『スピア・ザ・グングニル』!」「「ラバーズ!」」

 俺たちの体から桃色のオーラが噴出すると同時に紅い槍を投げるレミリアだが、その表情は少しだけ驚いていた。無理もない。俺たちが『ラバーズ』を使ったからだ。

「お兄様!」

 右手を前に突き出して俺の名前を叫ぶフラン。それだけで彼女の言いたいことがわかり、レミリアに向かって走り出した。

「キュッとしてドカーン!」

 フランの能力で紅い槍は粉々に砕け散る。紅い破片の中、走る俺はスペルを構えた。

(いつものままじゃ、レミリアには勝てない。フランと共に戦うとしても、だ。だからこそ、この技を使う)

 霊夢と霊奈にお願いして作って貰った新しい紅いリボンを取り出して、宣言した。

「霊双『ツインダガーテール』!」

 元々、頭に括り付けられていたリボンと手に持っていたリボンが俺の髪をツインテールに結う。そして、博麗のお札がそれぞれの尻尾にくっ付き、小さな刃となる。

「なっ……」

 まさか俺の髪型が変わるとは思わなかったようで彼女は目を丸くしていた。男の俺がこんな女の子のような髪型で戦おうとしているのだから仕方ない。

「神鎌『雷神白鎌創』、神剣『雷神白剣創』」

 すぐに別のスペルを唱え、右手に真っ白な小ぶりの鎌。左手に真っ白な直剣を持ち、レミリアに肉薄した。

「面白い!」

 驚いていたレミリアだったが、不敵に笑った後、貫手で俺の喉を貫こうとして来た。左手に直剣で受け流す。それとほぼ同時に左の尻尾がレミリアの左眼球へ突進。それは首を傾けて簡単に躱されてしまう。でも、それでいい。

「はぁ!」

 右手の鎌に雷を纏わせて横に一閃。躱したとしても雷の刃が飛ぶ2段階攻撃だ。

「ふん!」

 しかし、俺の思惑を見通していたのか軽くジャンプして俺の鎌を踏みつける吸血鬼。すぐに鎌から手を離して右の尻尾で攻撃する。

「紅符『スカーレットシュート』」

 尻尾の刃とレミリアが放った紅い弾幕がぶつかり合い、小さな爆発を起こした。霊力で床から数センチほど浮き、爆風に身を任せて後退する。それと入れ替わるように俺の左側をフランが通り過ぎた。

「禁忌『レーヴァテイン』」

 炎の剣を振り降ろすフランだったが、レミリアは躱すどころか前に出てフランの懐に潜り込み、振り降ろしている途中でフランの手を殴った。そのせいで軌道がずれ、炎の剣を床に叩き付けてしまう。その隙を見逃すレミリアではない。

「呪詛『ブラド・ツェペシュの呪い』」「神箱『ゴッドキューブ』」

 レミリアが弾幕を放つ寸前にフランの首根っこを掴んで後ろに引っ張り、スペルを発動させた。弾幕が俺の箱にぶつかるが箱は何事もなくそれらを全て受け止め切る。相手のスペルがブレイクしたのを確認して後ろにいたフランのところまでバックステップで避難した。

「……なるほど。前より何倍も強くなってるのね」

 一度、攻撃の手を止めてレミリアは感想を漏らす。前まで一方的だったのが嘘のようだ。

「『ラバーズ』のおかげだけどな」

「話は聞いてたけど敵に回すと厄介ね……」

 そう呟いた彼女の霊力が膨れ上がる。本気を出して来たのだ。

(フラン、行くぞ)

『うん、お兄様』

 なら、俺たちも本気で行かせて貰う。

「狂眼『狂気の瞳』」

 左目に妖力を集める。自分からでは見えないけど、左目が紫色になっているはずだ。背中から漆黒の翼が生え、女体化した。

「分身『スリーオブアカインド』」「禁忌『フォーオブアカインド』」

 俺が3人、フランが4人に分身するが、その時にはすでにレミリアが俺の分身の1人の懐に潜り込んでいた。

「はぁッ!」

 右拳を分身のお腹に放つレミリア。

「白壁『真っ白な壁』!」

 当たる直前に俺とレミリアの間に真っ白な壁を創る。これでレミリアの視界を防ぐことができた

「「禁忌『レーヴァテイン』!!」」

 その隙に狙われた分身の両隣に炎の剣を持った2人のフランが移動し、分身の前で炎の剣をクロスさせた。真っ白な壁を破壊したレミリアの拳が炎の剣に衝突する。

「くっ……らああああ!」

 顔を歪ませながら強引に炎の剣を破壊された。だが、狙われた分身だって黙っていたわけではない。

「雷撃『サンダードリル』!」

 接近するレミリアに雷を纏ったドリルが迫る。普通ならば技を使ってドリルの軌道をずらすかわざと正面から当てて逃げる時間を稼ぐだろう。でも、レミリアは構わずドリルに右ストレートを激突させた。『白壁』、炎の剣2本、『雷撃』でガードしたのにも関わらず、彼女の拳は止まることなく、ドリルを粉砕する。そのまま、俺の分身を殴り分身が消されてしまう。フランは自分の分身たちを避難させて別の分身をレミリアに向かわせた。

「禁弾『スターボウブレイク』」

 至近距離で虹の矢を放つが、レミリアはそれを裏拳で弾く。しかも、弾いた矢が避難させていたフランの分身の1人に当たって消された。

(出鱈目だな)

 俺もフランも本気だ。弾幕ごっこの時より技の威力も上がっている。しかし、レミリアには通用していない。それだけレミリアの強さが化物染みているということだろう。まぁ、フランはまだ力の制御ができていないので力を十分に発揮できていないのだが。

(とにかく、今は攻撃あるのみだ)

 拳術『ショットガンフォース』

 蹴術『マグナムフォース』

 飛拳『インパクトジェット』

 飛蹴『インパクトターボ』

 4つのスペルを使い、レミリアの背後から殴りかかる。それに合わせて彼女の正面から俺の分身とフランの分身が攻撃を仕掛けた。

「神撃『ゴッドハンズ』、飛神『神の飛び出す手』」「禁弾『カタディオプトリック』」

「魔符『全世界ナイトメア』」

 レミリアから全方向に向かって紅い珠がいくつも射出される。それを見て俺は右手を前に突き出して妖力を放出し、弾幕を弾き飛ばす。でも、レミリアの弾幕は俺とフランの分身が使用したスペルごと消し飛ばした。

「はあああああっ!」

 俺の背後に隠れていたフランが俺の横を通り抜け、レミリアの背中に炎の剣を振るう。振り返ったレミリアは炎の剣を“掴んで”フランを後方へ投げた。投げられたフランはなす術もなく、床に着地する。

「――」

 フランを投げた直後で動けないレミリアの左頬にフランの分身の右拳が突き刺さった。やっと、レミリアに一撃入れることができた。

「……」

 殴られたレミリアは俯きながらフランの分身を蹴って消す。半吸血鬼化を治す薬をかみ砕いて人間に戻った俺と炎の剣を持ったフランは警戒しながら彼女の様子をうかがう。

「……やっぱり、強くなったわね。響、フラン。でも、それだけじゃ勝てないわ」

 顔を上げたレミリアは俺の方を見てニヤリと笑った。その眼は不気味なほど紅く輝いていた。

 




響さんの新技、『霊双』のイメージは緋弾のアリア1巻で理子が髪の毛を使って2本のナイフを操るあの感じです。緋弾のアリアを知らない人はごめんなさいw

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。