『マスター、要塞からロボットが追加で出現しました』
ロボットの海を『魂共有』と【盾】を駆使して何とか突破した
『
そんな声が脳裏に過ぎり目の前にいたロボットたちは背後から飛んで来た砲撃によって破壊された。現在のグラウンドで
「今の内に!」
そう叫んだ“俺”は翼を大きく広げた後、最大出力で翼を振動させ、トップスピードで要塞へ向かう。もちろんそれを見て笠崎が黙っているわけもなく、残った砲台が一斉に火を吹いた。だが、吸血鬼が狙撃銃で砲台を破壊してくれたおかげで弾幕はそこまで厚くない。破壊した個数を考えればもう少し薄くてもよさそうだが今はそんなことを気にしている時ではない。新たに【盾】を出現させ、計3枚の【盾】を操って砲撃を防ぐ。
『させるかよっ!』
要塞まで後少しというところで要塞から笠崎の切羽詰ったような絶叫が響き、要塞の壁の一部がシャッターを下ろすように穴が開き、そこからいくつかの巨大な大砲が顔を覗かせた。そして、その大砲からも砲撃が飛んで来る。大砲だけではない。要塞の至るところからウサギ型やトビウオ型のミサイル、紅いレーザーが俺たちを襲う。さすがに危機感を覚えたようだ。迫る大砲の弾を格納庫から取り出した紅い鎌で一刀両断し、両断された弾を蹴飛ばして難を逃れる。
『マスター、ウサギが迫って来ます! 気を付けて――!』
『――構わず進め。こっちは我が受け持とう』
桔梗が声を荒げて忠告するが言い終わる前にこちらに迫っていたウサギ型のミサイルは白い箱に包まれ、それを見た
『じゃあ、こっちは私がやっちゃうよー!』
そんな可愛らしい声が脳裏に響くと別の方向から飛んで来ていたトビウオ型のミサイルがバキリと真ん中から折れ、そのまま落ちていく。闇と『魂同調』した
可能であれば
「行くぞ、桔梗」
「はい、マスター」
短く会話を交わした後、再び翼を大きく広げ振動を開始。だが、今度は翼を振動させると同時に脚部のホバー装置をジェット噴射ができるように
「【拳】!」
右手に持っていた紅い鎌を格納庫へ押し込み、新たな武器を右手に装着する。それは全長2メートルを優に超える巨大な鋼の拳だった。限界まで右腕を引き、タイミングを見計らって要塞の壁に向かって鋼の拳を振るう。壁と拳が激突した瞬間、凄まじい轟音と火花が飛び散った。
「ぐっ」
巨大な鋼の拳を受け止めた要塞の壁は想像を絶するほど硬い。ただ殴りつけただけなのに反動で体がバラバラになりそうになった。凄まじい速度で突っ込んだ体を一瞬にして速度を0にされたのだ。『着装―桔梗―』を身に付けているので体にかかる負荷を多少だが軽減できたがそれでも思わず顔を歪めてしまうほどの反動だったのである。だが、どんなに硬い物質でも必ず限界は存在する。
「い、っけええええええええ!」
巨大な拳の手首に該当する部分に無数にあったハッチが開き、ジェットが火を吹いた。翼、脚部、拳の推進力によりジリジリと俺たちの体は前に進み始める。
『
「20秒、もあれば!!」
そう叫びながら赤熱する右腕に更に力を加えた。そして、とうとう要塞の壁は限界を迎え、鋼の拳が壁を貫く。すぐに振動とジェットを停止させ、巨大な鋼の拳を格納庫へ収納し、紅い鎌を取り出しながら要塞の中を観察する。普通の廊下に見えるが何故か地面に線路が敷いてあった。それを見て首を傾げていると1台のトロッコが俺たちの前を通り過ぎる。そのトロッコには子供と同じくらいの大きさのロボットが乗っており、ロボットの後ろにはボロボロになった砲台が積まれていた。どうやら、砲台を破壊されても自動的に修復できるようにしていたらしい。なるほど、あれだけ吸血鬼が砲台を破壊したのに弾幕が薄くならなかったのはこれが原因か。
『っ! マスター、急いでください! カサザキが動き出しました!』
【薬草】で生体反応を調べたのか桔梗は焦ったように言った。しかし、『着装―桔梗―』はまだ冷却を終えていない。何よりこんな狭い廊下では巨大な鋼の拳を満足に振るうことはできないだろう。すぐに格納庫にあった博麗のお札を1枚だけ取り出し、霊力を込めて廊下の壁に向かって投げてみる。壁に当たったお札は爆発を起こし、壁を少しだけ傷つけた。要塞の壁にオカルトは通じる。それなら――。
「回界『五芒星円転結界』」
格納庫から取り出した博麗のお札を宙へ放り、『回界』を4枚ほど作り、廊下の壁を切断した。これなら笠崎のところへ真っ直ぐ進むことができる。
「笠崎の居場所は?」
『このまま真っ直ぐ進んだところにいます。ですが、左の方へ移動していますので』
「ああ、左斜めに進めばいいんだろ?」
『回界』を操作して要塞の壁を解体し、笠崎の元へ急ぐ。しかし、これだけ大きな要塞だ。直線に進んでいるとはいえ、笠崎のところへ辿り着くまでそれなりに時間がかかってしまう。
(それに……)
嫌な予感がする。急がなければならないと俺の“勘”が叫んでいる。何が起こるかわからない。でも、悠長に進んでいれば取り返しのつかないことになるということだけは何となくわかっていた。
「ッ!?」
そして、その答えは突然、俺の目の前に浮かんで来た。それはまるで蛍のようにユラユラと揺れながら上へ登り、やがてフッと消えていく。色は白い。俺は何度もこの光景を見て来た。何度も見せられていた。そう、これは“時空跳躍”の兆候だ。