これからもネタが思いつき次第、投稿しますのでお楽しみに。
短編1
「……なぁ? 本当にやるのか?」
「……だって、仕方ないだろ?」
俺の問いかけに柊はため息交じりに首を横に振る。
「いっけー! お兄ちゃん! やっちゃえー!」
「りゅうき、勝て! 勝つんだ!」
俺と柊が対峙する中、何故か俺たちよりも望と築嶋さんの方が騒いでいた。
「ったく、戦う俺たちの身にもなれっての」
それを見てまた柊はため息を吐く。それにつられて俺も息を吐いた。
ことの始まりは些細なことだった。何やら、望と築嶋さんが喧嘩したらしくその決着をどうにかしてつけたかった。しかし、望と築嶋さんたちではどんな勝負事でも能力のせいでどちらかが有利になってしまう。そこで白羽の矢が立ったのが俺と柊だ。俺と柊に模擬戦をさせてその勝敗で決着をつけるらしい。
「ルールは?」
場所は紫に教えて貰ったあの空地。しかし、それ以外はまだ何も決まっていなかったので柊に相談する。
「あー……式神はなしで頼む。それと空を飛ぶのも勘弁」
「お前、空飛べるじゃん」
前、空を飛んでいるところがあった。しかも、柊の仲間の力を借りずに自力で。
「あれ、めちゃくちゃ【メア】を消費するんだ。だって、ずっと自分の手から【メア】を放出し続けるんだぞ?」
「はいはい、わかったわかった。後はそうだな。魂同調もなし……って何か俺ばっか制限かけられてないか?」
「仕方ないだろ、お前と俺じゃスペックが違うんだから。そして、どちらかに一撃でも与えた方が勝ち、で」
勝敗のつけ方に異論はない。大ケガしてもまずいし。それでいいだろう。
「それじゃ、そろそろ始めますか」
そう言いながら俺は腰を低くして構える。
「おう。装着」
柊もブレスレットをグローブに変形させて構えた。
「じゃあ、始まるよー。スタート」
そんなやる気のない雅(今回の審判だ)の合図で俺はスペルカードを取り出して宣言。
「魔眼『青い瞳』。神鎌『雷神白鎌創』」
俺の両目が青くなり、白い鎌を掴む――前に柊はすでに目の前から消えていた。『モノクロアイ』の『時間遅延』を使った高速移動だ。
「くっ」
すぐさま、背後に鎌を振るう。顔なんか向けている暇などなかった。
――ガギッ!
そんな音を立てつつ、チラリと後ろを見ると柊の拳と俺の鎌が衝突し火花を散らしていた。
「やっぱ、そう簡単に攻撃は通らないかっ。<ファースト≪G≫>」
すぐに跳躍して俺から距離を取る柊。そして、右の手の平をこちらに向けて叫んだ。柊のグローブは<ギア>と呼ばれる【メア】専用の武器だ。それにはいくつか<ギア>があり、それぞれに技が設定してあって<ギア>を回せばその技が使える、媒体のような武器である。
その時、俺の魔眼に何かが引っ掛かった。どうやら、視えないエネルギーの塊が俺に向かって来ているようだ。
「白壁『真っ白な壁』!」
急いでスペルを発動して防御。しかし、『白壁』では防御力が足りなかったのか破壊されてしまう。すぐさま、回避して難を逃れる。
「<セカンド≪G≫>」
今度は両手を俺に向けた。そこから野球ボールほどの白い球体を連発する。今度は視える【メア】らしい。
「拳術『ショットガンフォース』。拳弾『インパクトガトリング』」
では、こちらも連撃だ。俺は高速で何度も拳を突き出す。その度に俺の拳から黄色い弾が吐き出され、柊の弾幕を撃ち落としていく。
「<フォース≪G≫>」
「ッ――」
また、『時間遅延』だ。俺の右側面に移動した柊は俺の顔面に拳を打ち込もうとしている。しかも、グローブから【メア】が噴き出ており、それがジェット噴射の役割を担っていて凄まじい勢いだ。
(本当に、面倒な相手だなッ!)
俺と柊の距離はほぼゼロ距離。『神箱』では防御できない。すでに彼は『神箱』の範囲内に入っているからだ。
「雷転『ライトニングフープ』」
俺を囲むように4つの雷の輪が出現し、その4つの輪が一箇所で交差するように制御する。もちろん、その一箇所とは柊の拳の軌道上だ。
『雷転』と柊のグローブがぶつかり合って激しい閃光を発生させる。まぁ、『雷転』は本来、防御ではなく攻撃に使う技なのでただの時間稼ぎだ。
「飛拳『インパクトジェット』」
『雷転』で稼いだ時間でスペルを唱え、一気に妖力を前方に放出。空は飛ばない縛りだが、これぐらいならいいだろう。
俺の体が後方へスライドされたことにより、『雷転』を砕いた柊の拳は顔のすぐ目の前を通り過ぎていく。
「結尾『スコーピオンテール』」
柊の態勢が崩れている隙にポニーテールで攻撃。
「<ファースト≪G≫>!」
迫り来る刃を躱すために彼は右拳を開いて手の平を地面に向けた。そして、不可視の衝撃波を放ってぐるりと後方に宙返りする。そのせいで俺の刃は空を切った。それだけでなく、オーバーヘッドキックのように『結尾』を蹴って刃を折ってしまう。
「「……」」
一度、お互いに態勢を立て直すために距離を取る。
(しかし……やり辛い相手だ)
柊の『モノクロアイ』にはいくつか能力がある。その中で最も驚異的なのは『時間遅延』。これは彼の周囲の時間を遅くし、高速で移動出来る能力だ。これを使われてしまったら、『雷輪』と『ゾーン』を使わない限り、対処のしようがなくすぐに背後を取られてしまう。
そして、『幻視』。力の流れが視えるようになる能力だ。この能力は技の弱点(力が最も薄い部分)が視えるので先ほどのようにこちらの技を破壊されてしまうのだ。
何より厄介なのが、<ギア>。まだ、全ての技を見たことがないが、正直、『モノクロアイ』と組み合わせて使われると対処するだけで精一杯だ。
「やっぱり、音無兄は面倒な相手だ」
「お互い様、だな」
「ああ」
少しだけ沈黙が流れ、柊が一気に距離をつめて来る。そのまま、右足で横薙ぎの蹴りを放つ。すかさず、左足で受け止めた。お返しに右ストレートを一発。これは首を傾げて躱される。
「<セカンド≪G≫>」
「ちょっ」
こんな至近距離であんな連弾を喰らいたくない。懐からお札を取り出して目の前に放り投げる。
「霊盾『五芒星結界』」
そして、結界を展開。柊の両手から撃ち出された白い球体たちを全て、受け止めた。
「よっと」
だが、その間に彼が結界の上をジャンプして跳び超え、俺の真上に逆さの状態で現れる。
「<ファイナル≪G≫>」
気付いて上を見上げた頃にはすでに目の前が真っ白だった。マスタースパーク顔負けの極太レーザーである。
「神箱『ゴッドキューブ』」
咄嗟に『神箱』を発動させるがこのレーザーには耐えられず、どんどん皹が広がっていく。
「神撃『ゴッドハンズ』」
『神箱』が破壊された直後、神力で大きな手を作り出しレーザーを受け止める。その威力に思わず、膝を付きそうになってしまったが、ぐっと堪えて――。
「うおおおおおおおおおおおおお!!」
――両手を前方に叩き付けるように動かし、レーザーの軌道をずらした。
「震脚『パワードフット』」
レーザーの軌道が変わったのを確認した後、急いで片足を思いっきり地面に叩き付ける。本来、このスペルを局地的な地震を起こすスペルなのだが、今の俺は踏ん張っていないので体ごと後ろに吹き飛んだ。
「<サード≪G≫>」
レーザーが消えて柊の姿を探していると今度は背後から襲って来た。その両手には真っ白な拳銃。何度も発砲しながら俺に飛びかかって来る。
「神鎌『雷神白鎌創』。神剣『雷神白剣創』」
すぐに両手に鎌と直剣を持ち、弾を弾く。弾速はそこまで速くないので防ぐことが出来た。しかし、その隙に柊に肉薄されてしまう。
「――」
彼は俺の眉間や心臓に銃口を向け、発砲。それをギリギリのところで鎌で防御。だが、その次の瞬間には別の場所を狙って撃って来る。しかも、拳銃だけでなく、拳や蹴りも飛んで来た。
(ガン=カタかよ!?)
右目を狙う右の拳銃を蹴りで銃口を逸らし、剣を振るう。しかし、その剣は柊が持つ左の拳銃の弾丸に弾かれた。すぐさま、彼の右足が俺の鳩尾を狙う。それは鎌でガード。バックステップで距離を取ろうとするが、柊はしつこく俺を追う。
「くぉ」
まさか柊がこんな戦法で来るとは思わず、奥歯を噛んでしまった。
「光撃『眩い光』!」
「なっ!?」
このままではジリ貧で負けてしまうので目くらまし。間近で『光撃』を見てしまった彼はうめき声を漏らす。
「ガン=カタには驚いたぞ……」
「見よう見まねでやってるだけだ」
そう言われてやっと気付いた。そう、柊は『視界完全記憶能力』で一度見たガン=カタを思い出しながら使っていたのだ。
(そんなこと、出来るのかよ……)
驚きのあまり、動けずにいると柊の視力がやっと治ったようだ。両手の拳銃を消して俺を見る。
「……あー、一つ言っていい?」
「何だ?」
もしかして、まだ何か奥の手があるのだろうか? 俺は構えながら先を促した。
「すまん【メア】切れだ」
そう言いながら両手を上に上げる柊。
「……はい?」
こうして、俺と柊の模擬戦は柊のガス欠で幕を閉じた。
「つまり、柊の<ギア>は燃費が悪くて速攻で倒さないとガス欠を起こして負ける。そう踏んだ結果、あんなに猛攻撃して来たってことか」
「ああ。正直、レーザーからのガン=カタで何とかなるかと思ったが、まさかあそこまで弄ばれるとは……」
結構、ショックだったようで柊はため息を吐きながら解説してくれる。
「いやいや、あのガン=カタにはマジで吃驚した。てか、見ただけで出来ないだろ。普通」
「それが、そうでもないんだよね。前、演劇部の男子が見よう見まねでガン=カタしてたから。それも映像を少しだけ見て何となくでやってたし」
俺の言葉を否定するように雅が補足を入れる。因みにその時のガン=カタは水鉄砲を使って行われたそうだ。
「……で、問題のあいつらだが」
「へへーん! 望ちゃん、これで私の勝ちだね!」
「く、くっそ!! 一発当てるだけならりゅうきでも行けそうだと思ったのに!!」
地面に座って休んでいる俺たちの目の前で勝ち誇っている望と四つん這いになって落ち込んでいる築嶋さん。
「なぁ、結局、何で喧嘩したんだ?」
それを見ていた柊が2人に質問する。俺も気になっていた。
「え? ショートケーキはどっちが食べるかって話だよ」
俺はすぐにスキマを開いて柊と雅を家へ転送し、スキマを閉じた。もちろん、望と築嶋さんは置いて行った。その後、望と築嶋さんから謝罪の電話とメールが何度も届いたが、俺たちはそれを無視して望が食べるはずだったショートケーキを3人で分け合った。