東方楽曲伝   作:ホッシー@VTuber

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第6話 人形遣い

 ~恋色マスタースパーク~

 

 

 

 ミスティアの指さした方向に向けて黙々と進む俺。だが、神社は見えて来ない。因みに今は魔法使いの衣装を着ている。この姿だと箒に乗らないと飛べないようだ。さすが魔法使いと言った所か。

(まだかよ……)

 正直言ってうんざりしている。コスプレしながら空を飛ぶなんて知り合いに見られたら死にたくなるだろう。

「ん?」

 その時、目の前に2体の人形が現れた。かわいらしい小さな人形だ。でも、何故か空を飛んでいるしまず、どうやって動いているかわからない。

「……」

 その場で止まり観察する。その瞬間、右側の人形が槍で攻撃してきた。

「のわっ!」

 箒をコントロールし何とか回避。そして、左側の人形がレーザーを放ってきた。

(マジかよ!)

 急いでスペルカードを取り出し宣言。

「魔符『ミルキーウェイ』!」

 たくさんの星弾がレーザーとぶつかり合い、相殺。何とかなったようだ。

「貴女……一体?」

 安心していると上から声が聞こえた。そちらを向くとさきほどの人形を肩に乗せた少女がいた。服は青いスカートに頭は金髪。赤いカチューシャも付けている。

「どうして魔理沙のスぺカを?」

 音楽は右耳の方しか流れていないから聞き取れた。

「俺だって知りたい」

 ため息を吐きつつ、ぼやく。この少女の口ぶりではさっき使ったスペルは誰かの技らしい。

「怪しいわ」

「まぁ、そうなるわな」

 ゲームとかやっていたらわかる。こういう場合は何を言っても――。

「貴女の正体、教えなさい!」

 スペルカードを俺に見せつけながらそう言った少女。

(戦いは避けられないんだよな……)

「はいはい」

 軽く返事をしスペルカードを取り出す。

「スペルカードは3枚。被弾するか全てブレイクされた方の負け。それでいい?」

「ああ、いいぞ」

 ミスティアの話通り、最初にスペルの枚数を決めるようだ。俺の場合、コスプレした時にスペルを宣言した方がいいのか、しない方がいいのかわからない。

(どうするかな~?)

「行くわよ!」

 俺が悩んでいると向こうは大量の人形を出した。武器を持っていたり盾を持っていたりするが見た目はとてもかわいい。これから俺を襲うと考えなければ――。人形たちは弾を出す。レーザーを撃つ。武器を持って突っ込んでくると言ったように別々の動きを見せた。

「くそっ!」

 何とか回避するが被弾するのも時間の問題だろう。さっきから掠っている。急いで手に持っていたスペルを宣言した。

「恋符『ノンディレクショナルレーザー』!」

 箒の周りからいくつかのレーザーが放出した。人形たちは次々と墜落して行く。

「やっぱり、魔理沙のスペルね。蒼符『博愛の仏蘭西人形』」

 少女がスペルを宣言しまた人形が現れる。そしてそれぞれから1つの弾が出る。

(は?)

 スペルカードは確か必殺技のような物だ。だが、弾は少ない。不審に思っているといきなり弾が増えた。

「うおっ!?」

 吃驚して躱すタイミングが遅れた。弾が掠ってところどころ服が破ける。

「これで終わりよ! 闇符『霧の倫敦人形』!」

 また人形が増える。さっきのスペルとは違い最初から大量の弾が俺を襲う。密度が濃くて回避できない。

「魔符『スターダストレヴァリエ』!」

 困った時のスペル。また星弾が出て弾を相殺する。その時、とうとう曲が終わった。

 

 

 

 ~人形裁判 ~ 人の形弄びし少女 ~

 

 

 

 またコスチュームチェンジ。今度はどこかで見た事がある青いスカート。傍には2体の人形。頭には赤いカチューシャ。

(これって……)

 恐る恐る少女を見る。

「な、なんで私の服を……?」

(これはまずい!)

「さらばっ!」

 嫌な予感がしたので試合を放棄して神社を目指す。

「あ! 待ちなさい!」

 少女もついてくる。

「待つかよ!」

 そんな怖い顔されては逃げなくても良くても逃げ出す。

「なんで服が変わったのよ!」

「俺だって知りたいわ!」

 大声で会話しながら逃げる。

「くっ!」

 だが、目の前にまた大量の人形たちが現れる。

(人形?)

 そうだ。俺の傍にずっといるこの2体の人形。もしかしたら俺も操れる。そう思った。適当に指を動かす。あの少女もこうやって指を動かして操っていたはず。

「!」

 人形は俺の指の動きに合わせて動く。そのまま少女の人形に突っ込ませる。

「嘘!?」

 後ろから少女の叫び声が聞こえた。向こうは俺には操れないと思ったらしい。

「いっけ~!」

 2体の人形はそれぞれからレーザーを放出。人形の壁を蹴散らす。俺はその隙に突破する。

「もう! どうなってるのよ!?」

(俺だって聞きたい……)

 人形なんて何年間、触ってないだろう。どうして操れたのかわからない。

「こうなったら! 咒詛『魔彩光の上海人形』!」

 少女が最後のスペルを宣言した。今度は小さな弾と大きな弾が入り乱れる。こんなの躱せるはずがない。

(待てよ?)

 確かあの少女は大量の人形を戦わせていた。なら、俺にも出来るかもしれない。

「おらっ!」

 思い立ったら吉日。大量の人形を展開させる。

「! バカっ!?」

 人形を見た瞬間、少女が叫んだ。

(え?)

 小さな弾が1体の人形に当たる。その刹那――爆発。人形の中に火薬が仕込まれていたようだ。更に近くにいた人形も誘爆しどんどん俺の方に爆発の連鎖が近づいてくる。

「ちょ、ちょっと!」

 急いでその場を離れようとしたが時すでに遅し。爆風にまきこまれ吹き飛ばされる。

「うおおおおおおお!!!」

 景色がすごいスピードで変わる。

「ぐふっ……」

 そして、墜落。幸いにもすぐに地面に叩き付けられたわけではないので衝撃はそれほどでもなかった。

「いてて……」

 体を動かす度に痛みが走る。

「まだ私のスペルは終わってないわ!」

 その束の間、少女が追いついた。

(どうする?)

 自問する。こちらは体が痛み、動けない。向こうはスペルの途中。明らかにこちらが不利すぎる。

(――――ッ! 曲が……)

 悩んでいる所で曲が終わってしまった。

 

 

 

 ~オリエンタルダークフライト~

 

 

 

 今まで聞いた事のない曲だ。でも、コスプレは見た事がある。あの白黒の魔法使いの衣装だ。確認しているともう弾がすぐそこまで来ていた。躱そうにも近すぎて間に合わない。

「どうにでもなれ!?」

 適当にスペルを取り出し、宣言。

「魔砲『ファイナルスパーク』!!!」

 本能的に懐から正八角形の小さな箱を出して少女に向ける。すると、箱から極太レーザーが吐き出される。レーザーは弾を飲み込み、掻き消し、吹き飛ばしながら少女に向けて突き進む。

「ちょ……」

 少女は何か言おうとしたがそれを邪魔するようにレーザーが直撃した。

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 レーザーの放出を止める。その頃には息遣いが荒くなっていた。

(くそ……意識が……)

 疲れが一気に俺を襲う。さっきのレーザーで体力を激しく消費したのだろう。そのまま地面に倒れて気絶した。

 


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