東方楽曲伝   作:ホッシー@VTuber

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第7話 博麗神社

「お~い! 行くよ~!」

「うん!」

 ここは近所の公園。悟が蹴ったサッカーボールを足で止める。

「ほい」

 そして、蹴り返す。こんな感じでボール蹴りをしてよく遊んだ。

(これって……)

 夢。それはわかっている。きっと、過去の思い出だろう。だが、いつかはわからない。ありふれた日常だからだ。体つきからして5歳より下だろう。悟は俺の幼馴染なのだ。この頃からよく遊んでいた。

「うわっ!?」

 急に強い風が俺と悟を襲う。悟は追い風だったからいいが俺は向かい風。驚いて目を瞑ってしまった。

(あれ?)

 ここで俺は不思議に思う。いつもなら俺が公園の出口側で悟が入り口側。この公園は何故か入り口と出口がバラバラだ。閑話休題。でも、今の立ち位置は俺が入り口側で悟が出口側。

(何だ? この違和感)

 偶然もあるだろう。たまたま、いつもと配置が違うと言う事もある。

(違う!)

 この違和感は立ち位置に対してではない。その時、子供の俺はゆっくり目を開けた。

「え?」

 目の前に広がっていたのはいつもの風景ではなく大自然だった。これが俺が感じていた違和感。

 

 

 こんな体験をしているのに何も覚えてないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 ここはどこだ?

 まず初めにそう思った。今は布団の中。どこかの家らしい。レーザーを放出し力尽きた所までは覚えている。

(あの夢は?)

 そこだ。あんな記憶あるはずない。目を開けたら大自然って不自然にも程がある。

「起きなきゃ……」

 まだ体はだるいが布団から出て俺は襖を開けた。

「「ん?」」

 部屋を出たところで少女と出会った。服装は紅白の巫女服。でも、腋の部分がばっくりと開いている。

(この服は……)

 紫と戦った時にお世話になったコスプレだ。この服がなかったら俺はどうなっていたかわからない。

「目が覚めたようね」

「あ、ああ」

 巫女が確認を取って来たので答える。

「ちょっと来なさい」

 名前も知らない巫女は俺を睨んで廊下を歩き始める。

(なんだ?)

 戸惑いながらついて行く事にする。

 

 

 

 

 

「「あ……」」

 巫女について行った先にあの人形遣いがいた。急いでイヤホンを耳に装着しようとする。

「あれ?」

 右腕にあるはずのPSPが入っているホルスターがなかった。

「お前の探し物はこれか?」

 人形遣いの隣。またもや少女がいた。今度は白と黒の魔法使いのような服だ。

(これはさっきのか)

 どうやら俺のコスプレはこの幻想郷に住んでいる人の衣装らしい。ミスティアにも紫にもなったから確信が持てる。

「それだ!」

 魔法使いが持っていたのは俺のホルスターだった。

「返せ!」

「嫌だ!」

(何故に!?)

 所有者は俺のはずなのに何故か断られた。

「説明してくれるまで返さねーよ」

 魔法使いがそう言った。

「説明?」

 一体、俺は何の説明をすればいいのだろう。

「お前とアリス――そこの人形遣いの戦いを見ててな。何故、私のスペルが使えたか説明しろって事だよ!」

「と、言うより勝手に貴女が神社に落ちてきたんだけどね」

「神社?」

「そう、ここは博麗神社よ」

 どうやら、俺は人形の爆発で運よく目的地まで飛ばされたようだ。

「どうして魔理沙の格好をしていたのかも説明して頂戴」

 魔理沙とはきっとこの魔法使いの名前だろう。

「……わかったよ」

 俺は今まであった事を掻い摘んで話す。

「じゃあ、私にもなった事が?」

 巫女が聞いてきた。

「今の所はお前とお前が1回」

 巫女とアリスを指さしながら言う。

「そして……魔理沙が3回? だったかな?」

「な、なんでそんなに私の回数が多いんだ!?」

(俺だって聞きたいわ。)

「まぁ、いいじゃない。あ、私は博麗 霊夢よ。この神社の巫女をしているわ」

「私はアリス・マーガトロイド」

「そして、お前のお気に入りの霧雨 魔理沙だぜ!」

「気に入ってるわけじゃねーよ……俺は音無 響だ。よろしく、霊夢、アリス、魔理沙」

 これで全員の自己紹介が終わった。

「音無……響?」

 だが、霊夢が驚いた顔をして聞いてきた。

「ああ、そうだ」

「……まぁ、いいわ。貴方はこれからどうするの?」

「これから?」

「そう、外の世界に帰り「帰りたい!!!」

 思わず叫んでしまった。

「そこまでか?」

 魔理沙が怪訝な顔をして聞いてきた。

「そりゃそうだろう! ここに来てから戦い三昧だ! 俺の場合、PSPを使わなきゃ戦えない。その度にコスプレをするなんてもう嫌なんだ!」

 男なのにスカートとか巫女服とかメイド服とかゴスロリとか……もう嫌だ。心の底からそう思う。

「PSPとコスプレが何かわからないけど貴方の気持ちはよくわかったわ。準備してくるからちょっと待ってて」

 霊夢はそう言って部屋を出て行った。何故か寂しそうな顔をして――。

「?」

 理由がわからず首を傾げる。

「しかし、よく紫と藍の弾幕から逃げられたな」

「運がよかったんだ」

 それを言うなら全ての戦いがそうだ。俺はここまで運だけで生きて来られたようなものだ。

「準備出来たわよ」

 本当に少しで霊夢が帰って来た。

「?」

「どうしたの?」

「いや、何でも」

 もう霊夢の顔は寂しそうではない。俺の見間違いだったようだ。

「やっと、家に帰れる」

 それより幻想の世界から現実の世界に帰れることを喜ぼう。

「着いてきて」

「おう!」

 素直に霊夢の後を追う。

 

 

 

 

 

 

「ここを通るだけ?」

「そう、この鳥居を超えれば帰れるわ。結界を緩めたの」

(結界?)

「そうか。ありがと」

 結界は何かわからないが俺は帰れるようだ。

「じゃあ、短い間だったけど世話になった」

「ほら、早く帰りなさい。結界が閉まるわ」

 霊夢は興味がなさそうに言った。

「よかったらまた遊びに来いよ!」

 魔理沙は笑顔だった。そんな易々とは来れないだろう。

「じゃあね」

 アリスはもうどうでもよさそうだ。

「じゃあな」

 もう一度、別れの挨拶をして鳥居を目指して歩き出す。

(これで帰れる)

 能力は消えないだろうが曲を聞かなければいい話。聞けないのは少し残念だが仕方あるまい。そして、俺は鳥居を超えた。

 

 

 

「「「「……」」」」

 後ろを振り返る。霊夢、アリス、魔理沙の3人がいる。

 横を見る。鳥居を超えているのがわかる。

 前を見る。大自然が広がっている。

 

 

 

「嘘だああああああああああああ!!!!!!」

 

 

 

 俺は絶叫して地面に崩れ落ちた。まだ幻想の世界とはお別れ出来そうにないらしい。

 


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