Fate/EXTRA D³   作:ケツアゴ

1 / 37
思いつきですので次回は未定


一回戦
プロローグ


 その場所を例えるならば電子の迷宮の最終地点だろうか。其処で一人の少年が倒れていた。いや、よく見れば同じ高校の制服を着た少年少女が死んでいる。そしてもう直ぐ少年も彼ら彼女らと同じように物言わぬ死体となって消え去ろうとしていた。

 

 

 最初に感じた違和感は通っている月海原学園での日常でのこと。誰もいない所に話しかける人形の様な同級生達。頭にノイズが掛かったような奇妙な感覚。そして思い出す事が二つ。転校生としてやって来た金髪の少年の言葉。

 

「何故か分かりませんが、貴方とはまたお会いできる気がするんです。その時を楽しみにしていますね」

 

 そう言って彼は倉庫に出現した迷宮の中に消えていった。彼を追って入り込んだ少年の前に現れたのは無機質な人形。フォルムはマンガ家がポーズを取らせる人形に似ているが、手足は鋭く尖っている。そのまま何処からか聴こえてくる声に導かれ電子の迷宮を進む少年は人形によって立ち塞がる障害を乗り越え、そして行き着いた先で倒れていた少年の傍に居た人形によって自らの人形を破壊され、鋭い手によって致命傷を負った。

 

(まだ、消える訳には行かない。だって、自分はまだ……自分の事を何も思い出していないのだから!)

 

 このまま薄れゆく意識を手放せば体中に走る痛みから解放されるだろう。自分は全力を尽くしたのだから諦めて良いじゃないか。これ以上何故苦しもうとする。これ以上何をやっても同じだ

 

 その様な誘惑が頭に響く。それは紛れもなく自分自身の声。

 

(……だけど)

 

 行き着く先が同じなら、たとえ無駄な足掻きでも最後まで貫き通す。それが彼のせめてもの意地であり最後の矜持だからだ。

 

 

 

 

 

「へぇ、中々良い根性じゃない。顔はまあ……それなり?、だし。……良いわ、気に入ってあげる。私の広い心にむせび泣いて感謝しなさい、子豚」

 

 

 全く力が入らない体に無理に力を入れて立ち上がろうとする少年。その耳に少女の声が聞こえてきた。その声に込められているのは絶対的な自信というよりも他の者を見下した傲慢さ。

 

「……べ、別にこのままじゃ誰にも召喚されずに終わってしまうからじゃないんだからね! 私は引く手数多なんだから!」

 

 声は徐々に大きくなり、ステンドグラスが砕け散る。そして部屋に光が溢れ、何処からともなく一人の少女が姿を現した。

 

 

「スト~ップ! テイクツーよテイクツー! ”誰もが思わず見とれてしまいそうな美少女が現れた”、でしょ!」

 

 ……訂正。”だれもがおもわずみとれてしまいそうなびしょうじょがあらわれた”。

 

「……あれ? なんか発音が変だったような。……きのせいよね、きのせい! じゃあ、問うわ。子豚、貴方が私のマスター(マネージャー)かしら?」

 

 現れた少女は鋭く尖った八重歯を見せながら彼に問う。少女が着ているのは平坦な胸のあたりの露出が多い黒を基調としたドレス。そして特徴的なのがスカートの中から出ている尻尾と頭に生える角だった。

 

「……マネージャー?」

 

「そうよ! 子豚程度には過ぎた役職だけど特別に、と・く・べ・つ・に! 貴方に任せてあげるんだから感謝しなさい。なにせ私はムーンセル一のアイドルなんだから!」

 

 少女は両手を左右に広げ、降り注ぐ光を全身に浴びるかの様に上を見上げる.その仕草からは冗談を言っている様子は感じられず、彼女が本気で言っている事が理解できた。

 

「……ほら、早く”はい”ってて言いなさい。言って良いのよ? 言わないの? お願いだから言いなさいよ~!」

 

「……はい」

 

 最後の方には涙目になって訴える少女の迫力に押された彼は思わず頷き、それと同時に彼の手の甲に鋭い痛みが走る。それが収まった時、手の甲には奇妙な字のようなものが出現していた。

 

「こら! 何ボサっとしてるのよ!」

 

 その字を見て暫し呆然としていた彼だが、少女の声と聞こえて来た音に我に帰って前を見る。其処には先程彼の命を絶とうとした人形が戦いの構えをとって立っていた。先ほど感じた恐怖に彼の体が竦んだその時、少女が彼と人形の間に割って入る。

 

「ふ~ん。私の初ステージの相手には物足りないけど。まあ下積み時代ならこんな物かしら? ……トップアイドルにもこういうコツコツとした仕事が必要よね? さあ! 本当に生きたいと願いなら指示を出しなさい、子豚!」

 

 少女は叫びながら手を上に上げる。其処にはマイクスタンドを思わせる形をした凶悪な槍が出現していた。目の前の人形と少女を見て彼が放った言葉は一言だけ。

 

 

 

 

「―――勝て!」

 

 その言葉が響くのと、彼の命を刈り取ろうとした人形が少女の一撃のもとに砕け散るのはほぼ同時。砕け散った人形は破片を飛び散らせながら倒れ、先程自ら砕いた人形の様に二度と立ち上がる事はなかった。

 

 

「あら、大した事ないのね。私の初ステージなんだからもう少し盛り上げて欲しかったんだけど」

 

 少女は詰まらなさそうに槍を消しながら人形の残骸を見下ろす。そしてその姿を見つめる彼の手の甲の痛みは激しさを増し、意識が薄れていった。

 

「……ちょっと子豚っ!? 私の初ステージへの讃賞はっ!? ひと仕事終えた後のブラッドバスの用意わぁっ!?」

 

 何やら物騒な事を言いながら慌てる少女。薄れゆく意識の中、彼の耳にこの迷宮に入った時に聞こえてきた声が再び響いてきた。

 

 

『君の手の其れは”令呪”、サーヴァントに対する絶対命令権であり、君の命綱だ。三つ使いきれば聖杯戦争へのさ参加権は失われて君は死ぬ。せいぜい考えて使い給え……』

 

 

 聖杯戦争、サーヴァント、聞きなれない言葉に困惑する暇もなく彼の意識は途切れていく。その中で彼が感じていたのは”生きたい”、という欲求。そして”自分が何者か知りたい”、という願望……。

 

 こうして最弱のマスターは聖杯戦争の切符を掴み取った。それは誰しもが予想していなかった結果。そして彼の横に立つのは赤き暴君ではなく、白髪の守護者でもなく、残念で妖艶な妖狐でもない。

 

 

 

 

 

「ちょっとぉ! 私の活躍への賛辞の言葉はぁっ!? ほらほら恥ずかしがってないで褒めて良いのよ? っというよりも褒め称えなさい! ……褒めないの? 褒めてよ! 褒めてってばぁ……。なんなら私も褒めてあげるからぁ……。子豚にとっては過ぎた光栄でしょう?」

 

 

 そう。この残念な少女こそが彼の横に立つ存在だった……。

 

 




意見 感想 誤字指摘お待ちしています
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。