Fate/EXTRA D³   作:ケツアゴ

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第十話

「このこの! 変態マネジャーっ!」

 

 エリザの尻尾が唸り白野に振り下ろされると小気味良い打音が響き渡る。ライダーに何も策もなしに仕掛けようとした彼女を止める為に尻尾を掴み、声で気付かれない様にと口を塞いだ白野であったが、偶々目撃したライダーにはセクハラかイチャつきの類にしか見えなかったらしい。

 

「おーい!!其の辺で終わりな。話を聞いてみりゃ方法はどうであれ間違った事はしちゃいないだろ? まっ、ただの事故だからって許してやんなよ」

 

「おい、ライダー! さっさと手を除けろ。酒臭いんだよ!」

 

 ライダーは慎二の目を手で塞ぎながら静観していたのだが徐々飽きてきたのか大アクビをしながら声を掛けてくる。慎二に至っては曲がり角を曲がった瞬間に”餓鬼が見るもんじゃないよ!”、と言いながらライダーが視界を塞いだので声で白野達が居る事は分かっているが其れ以上の状況は理解していない。

 

(もう高校生なんだし、少し過保護……いや、アバターは弄れるから見た目通りの歳という訳でもないのか)

 

 エリザの尻尾による鞭打ちが先程から激しく行われているにも関わらず白野には冷静に物を考える余裕が有る。其れは痛くないというよりはエリザになにかされる事に早くも慣れている様で、いくら精神力と適応力だけが取り柄の彼といっても少々異常だ。まるで無知とまではいかなくても同じ様な事をしてくる相手と長年の付き合いがあるかの様である。

 

「と、取り敢えず今回はこれで勘弁してあげるけど尻尾は敏感なだからあまり触らないでっ!」

 

 どうも彼女曰く擽ったくて笑いが堪えられないらしい。ようやく終わったこと確かめたライダーから解放された慎二だが、先程までの光景を目にしていないので会話だけで時は状況が分からず混乱していたのだが、直ぐに立ち直ってヘラヘラとした嫌味な笑いを向けてきた。

 

「なんだよ岸波。まだ諦めてなかったの? 止めとけ、君みたいな凡人が天才の僕に勝てる訳がないんだからさ」

 

「漫画とかゲームでもこう言う奴って最初にやられる踏み台よね。器が小さいっていうか、餓鬼っていうか……」

 

「なっ!? 誰が餓鬼だよ! お前こそお子様体型の餓鬼じゃないかっ! このまな板貧乳ツルペタストン!」

 

「ななな、なんですってぇ!? 無駄に胸の大きいオバサンサーヴァント連れてるからって偉そうにっ! 私はアイドルになるんだから色気は必要ないのっ! バーカバーカ!!」

 

 互いににらみ合い口喧嘩を始めるエリザと慎二。ライダーと白野は顔を見合わせると相方の襟首を掴んで引き剥がした。

 

「ったく、何やってんだいシンジ。喧嘩なんかよりも宝探しに行こうじゃないのさ。ほら、すぐ其処に宝が……」

 

 そう言って宝箱に視線を移すライダーであったがその顔は直ぐに固まる。慎二が出現させた宝箱は既に空いており、キラキラ光る換金用アイテムはエリザの手の中に収まっていた。

 

「アンタ、海賊の獲物の手を出すなんざ良い度胸してるじゃないかい。覚悟はできてんだろうねっ!!」

 

「はぁ? こういったのは早い者勝ちでしょ? 自分が年で足腰が弱くなってるからって言い掛かり付けないで貰える? あ~あ、こういうのをこう……高電気障害って言うのね」

 

 正確には更年期障害である。ライダーとエリザが一触即発の状態になったその時、慎二が慌てて間に入った。

 

「おい待てよライダー! あの三人が場外乱闘したせいで運営の監視が厳しくなったって知ってるだろっ!? ハッキング程度なら兎も角、一回戦の間は決戦場以外の戦いは全て罰則が付くんだぞ! おい岸波! お前も自分のサーヴァントを抑えろよっ!」

 

 先程までの気風の良い姉御を思わせる豪快な笑みは何処かに消え去り、獰猛な鮫を思わせる怒りの表情になるライダー。それに対しエリザも冷血な悪魔を思わせる不気味な笑みを浮かべ今にも手を出しそうだ。流石に罰則は面倒臭いのかライダーも銃を下ろし、エリザは白野に肩を押さえられて渋々引き下がった。

 

「……でもさあ、シンジぃ。このまま引き下がるってのもプライドか許さないんだよ」

 

「だったらさぁ、こういうのはどうだい? 宝箱は岸波に取られたのを合わせて計五個。これを先に三個とったほうが勝ちっていうのは。まっ、ハンデとして一個はくれてやるよ」

 

「……むぅ、どうせなら全部欲しいんだけどねぇ。……まあ、良いさ! さっさと始めようじゃないか!」

 

 慎二の提案に対しライダーは空になった宝箱を指を咥えて惜しそうに見つめるも仕方なさそうに溜め息を吐くとクラウチングスタートの構えを取った。慌てて白野達もスタートの準備をしようとしたその時、二人に前に格子状の壁が出現した。

 

「頭の良い戦い方ってのはこういうのを言うんだよっ! じゃな、岸波ー!」

 

「残りのお宝は全て頂いていくよー!」

 

 慎二達は自分が出現させたらしい壁が邪魔で前に進めない白野達を尻目に笑いながら去っていく。

 

「困ったな。どうする? エリ……」

 

「……ふふふ。舐めた真似してくれるじゃない。ウサギの分際で! 家畜の分際でぇっ!! ……ハクノ。少し下がってなさい。竜の娘の力、少しだけ見せてあげる」

 

 エリザが指を掛けた壁からはミシミシと音が鳴り徐々にヒビが入り出す。別にこのままでも壊せそうな気がした白野だがエリザのただならぬ様子に何も言う気がせず言われるがままに後ろに下がる。それを横目で確かめたエリザは槍を頭上で振り回し床に突き刺す。そして大きく空いた背中から飛び出した竜の翼を大きく広げ、槍の石突きに飛び乗った。

 

竜鳴雷声(キレンツ・サカーニィ)!!!」

 

 

 

 竜のブレスの属性は個体にとって大きく差が出ると言われている。一般的に知られる炎を吐く者もいれば雷を吐く者も居る。そしてエリザのブレスは超音波。音速のドラゴンブレスである。彼女の口から放たれた超音痴(大音量)によってアリーナ全体が大きく振動し壁が一気に崩壊する。そのままブレスは勢いを全く衰えさせずに行けを削り取りながら突き進み、複数のエネミーを巻き込みながら突き進んだ先の壁に激突して漸く消え去った。

 

「……ふぅ。どう?」

 

 エリザは額の汗を拭うと褒めて欲しそうな顔で白野に向かって振り向いた。白野はそれに対し拍手をしながら心の底から湧き上がった言葉を口にする。

 

「……凄い。ただそれだけしか浮かばなかった。エリザは本当に凄いサーヴァントなんだね」

 

 先ほどの光景を見て湧き出たのは”賞賛”、ただそれだけだった。

 

「あああ、あったりまえよ! さっ! 早く進むわよっ!!」

 

 ストレートな褒め言葉が予想以上に恥ずかしかったのだろう。エリザは白野の顔を見ないように走り去っていき、白野は慌てて後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なぁっ!? さっ聞こえてきた音何だっ!?」

 

「……あれは竜の咆哮だね。悪魔かトカゲ程度かと思ってたけど、どうやら予想以上の化物だったみたいだよ。っと、一個目ゲット! プッファ!!」

 

 エリザが壁を破壊した直後、アリーナの奥へと進んでいたライダーは一個目の宝を手にして上機嫌。景気付けとばかりに酒を煽りだした。当然、慎二は慌てたように急かすも言う事を聞かず、直に足音が聞こえてきた。

 

「おい、何やってんだよッ! 急がないと……あ~、もう! もう追い付いて来やがったっ!」

 

「待なさ~い!! 殺すだけだから~! 血を抜き取って殺すだけだから待ちなさ~い!!」

 

 追いついてきた二人を居て再び走り出す。なお、あんな事を言われて待つ者など居はしないだろう。ライダー達はそのまま奥へと向かっていくが二股に分かれた道に出くわす。右側の奥には宝箱が朧げながら見えた。

 

「お宝は全部頂くよっ!」

 

「おい、こっちは行き止まり……」

 

 マップを見ながら左に進むように言った慎二だがライダーは彼の襟首を掴んで迷わず宝箱目指して進んでいく。そして白野達も分かれ道に差し掛かった。

 

「どうするのっ!? アイツ等を追うっ!?」

 

「……いや、先に進もう。今追っても追いつけない。なら、この先にある残り二個を手に入れれば……此方の勝ちだっ!」

 

 白野は迷うエリザの手を取って迷わず突き進む。そして二人が二個目の宝箱を手に入れた時、二人の目前の床が吹き飛んだ。

 

「あの大砲かっ!?」

 

 振り返ればエリザを追い詰めた巨大な砲門が出現しており、再び二人に向かて放たれる。白野は咄嗟にエリザを庇う様に抱き抱えて飛び退き、二人がいた場所に砲弾が着弾した。

 

「今の内だよ、シンジィ!」

 

「あわわわわっ!?」

 

 ライダーは慎二を片手で持ち上げながら最後の宝箱へと向かっていった。

 

 

 

「エリザっ! 今すぐ俺を投げろっ! ここまで来て負ける訳にはいかないっ!!」

 

「分かったわ! ……ダーリン(・・・・)!!」

 

(今何か聞こえてような……)

 

 エリザの最後の言葉に疑問を持つも聞き返す前に宝箱目掛け投げつけられる白野。そして慎二達の手が宝箱に触れる瞬間、投げ飛ばされた白野が宝箱を掴んで床に激突しそのまま派手に床を転がって壁に激突して漸く止まった。

 

 

「……こっちの勝ちだ、慎二っ!!」

 

「クソっ! 絶対チート使っただろっ!!」

 

 捨て台詞を吐きつつも最低限のルールは守るのかそのまま消えていく慎二達。そのまま白野の意識は薄れ行き、慌てて駆け寄るエリザの姿を見て微笑みながら意識を手放した。

 

 

 

「ダーリン大丈夫っ!?」

 

(あれ? やっぱり空耳じゃない?)




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