Fate/EXTRA D³   作:ケツアゴ

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第十一話

 この状況の感想を一言で言い表すならば”どうしてこうなった?”、である。慎二とのトレジャーハンティングに勝った白野は痛みを堪えつつトリガーコードも入手し、今は部屋で休んでいるのだが、何故かエリザが嬉しそうな顔で横に座って来ていた。

 

「ダーリン大丈夫? 痛い所はない?」

 

 確かにエリザとは他短期間で直ぐに打ち解けた白野だが、今のように熱に浮かされた様に潤んだ瞳を向けられながらダーリンなどと呼ばれるまで進んだな記憶はない。もっとも、悪い気はしない白野であったが。なお、痛むのはエリザが白野を投げたからである。

 

「え~と、エリザ? 急にどうしたの?」

 

「ああん、もうダーリンったらぁ。あの時私を庇いながら言ったじゃない。”この様な事で君が傷つくなど考えただけで胸が張り裂けそうで我慢ならない。その為なら僕の体などどうなっても構わないんだ。だって君は愛しの恋人なのだから”って……私、ズキュンってなっちゃったの」

 

 もちろん白野はその様な事など言ってはいないがエリザは陶酔した顔で語り続ける。この英霊が極度の恋愛脳(スイーツ)だと察した白野はどうしようか迷うも楽しそうなエリザの姿を見て態々否定するのを辞める。

 

(……まあ、その内我に返るだろうし、何より楽しそうな彼女の姿を見ていると何故か懐かしい気がして心が温かくなる。もしかしたら失った記憶に関係しているのだろうか?)

 

「そうそう、早く購買に行こうか。ほら、手に入れたアイテムを換金したいし」

 

 

 

 

 

 

 

「それでダーリン、何を買うの?」

 

「ディーバ。流石に他のマスターの目がある前で姿を現すのはちょっと……」

 

「だってダーリンに私の姿を見て貰い続けたいんだもん」

 

 拗ねたように頬を膨らませるエリザの姿に和みながら慎二が作成した換金アイテムを売却する白野。思いの外高値で売れ、今の所持金と合わせればギリギリ足りるといった所だ。聖杯戦争の真っ最中であるからして余りにもお金を惜しみすぎるのも良くないが今から買おうとしているものは無駄使いの部類に入るだろう。

 

「すみません。コレください」

 

 だが白野からすればその様な事知った事ではない。記憶がなくて不利なのは最初から同じなのだ。だったら今更少し不利になろうが構わない。

 

 

 

 こうして白野達のマイルームのエリザ念願の猫脚の浴槽が設置される事となった。

 

 

 

 

「嬉しいわ、ダーリン! でも、まだ結婚してるわけじゃないし流石に一緒に入るのは……」

 

「大丈夫。エリザの喜ぶ顔が見たくて買っただけだから。入浴中は外に出ているよ」

 

「……有難うダー……」

 

 お礼を言おうとして急に固まるエリザ。今頃になって冷静になったのか先程までのうるんだ瞳が混乱した瞳へと変貌し耳まで真っ赤になる。次の瞬間には尻尾の殴打が始まった。

 

「なななな、何言わせてるのよっ!? なんでハクノがダーリン!? ……そりゃ恰好いいとは思ってるけど、そういうのは互いに手紙で都合を確かめた上で舞踏会とかで偶然を装おって会って……じゃないっ!? あわわわわわわっ!?」

 

 すっかり混乱したエリザは頭を押さえながら部屋中をかけ回る。そうする内にベットの足に蹴躓いて見事に転けてパンツが丸見えになっていた。

 

「そろそろセイバーとの約束の時間じゃない?」

 

「はっ! そ、そうね! じゃあ急いで着替えるから出て行きなさいっ!」

 

 時計を見て慌てて白野を追い出すエリザ。追い出し方は何時もより乱暴だが恥ずかしさによるものだろう。そしてドアが乱暴に締められる直前、聞こえるか聞こえないかのような声が掛けられた。

 

 

「……お風呂とか庇ってくれた事とかアリガト。嬉しかったわ」

 

 その言葉だけで全て報われた気になる白野。とりあえず多くのマスターに見られているのでこれから話題に出されるたびに面白そうな(大変な)事になりそうだと期待する(不安になる)のであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 後者の奥にある裏口を潜ると其処には教会が見えてくる、どうも生前の事から教会自体は好きではないらしいセエリザとセイバーだが今はノリノリで教会前でライブの準備をしていた。ステージや小道具などはエリザ曰く”ゴースト達”がテキパキと準備しているので順調に進み、今は開演を待つだけである。

 

「はぁい、岸波くん。貴方のサーヴァントって随分と余裕ね。大勢の前に姿を晒すなんて正体を見破るヒントにされるわよ?」

 

 凛は敵であるはずの白野に忠告をしながら最前列の席に座る。どうも聖杯戦争中は娯楽が少ないので他のマスター達も暇つぶしや興味本位で来ているようだ。中にはこの期に他のマスターを闇討ちしようと思っている者も居るのだろうが昼間の乱闘もあって言峰が出張って来ているので手が出せないでいた。

 

「随分と余裕なことだ。やれやれ、もう優勝した気でいるのかね?」

 

 このように嫌味を言いながら最前列に座るあたり彼も暇なのだろう。そしてついにエリザとセイバーがマイク片手にステージに上がった。

 

「よくぞ来た皆の者! これより貴様らは神々さえも魅了する至高の歌声を聞く事となる。心を静め、とくと耳を傾けよ。この歌声! 麗しの奏者と我がライバルに捧げん! 届けジュピターの彼方へっ!」

 

「はぁい! 私たちのライブに来てくれてアリガト、子豚共。今日ははじっくり楽しんでいってね。なにせあなた達が今から聴けるには命を代価にしても余りある最高の歌声ですもの」

 

 ここまでの大口を叩くのだから余程自信があるのだろうとマスター達は耳を傾け、上級AI達は消せない記憶に少しは良い思い出が出来るかと待ち侘びる。

 

 

 

 

 

 そして、教会前に地獄が降臨した。繰り広げられるのは阿鼻叫喚の宴。

 

 セイバーの歌は観客置き去りの自己満足舞台。例えるならば僕餓鬼大将系。

 

 エリザは歌声だけなら言うだけの事はある。だが、凄まじい音程の悪さと壮絶な歌詞が全てを台無しにしていた。

 

 二人は楽しそうに歌っているので互いの歌を素晴らしいと思っているのだろうが、第三者からすれば堪らない。それはまさに世界崩壊への序曲でしかなく、上級AI達は記憶を消す事が出来ない事に絶望し、ムーンセルは今回の件の記憶だけは受け取りを拒否する。誰しもが此処に来た事どころか聖杯戦争に関わった事を後悔し始めた中、ただ一人何とか無事と言って良い状態のマスターが居た。

 

 

 

「……何というか……個性的な歌だね」

 

 流石にダメージは計り知れないが彼だけは意識を何とか保ている。二人の魔曲が合わされば女神の集合体や平安生まれの超絶老狐さえも完全石化を危惧するほどに耐え切れない程、流石に精神力だけでは説明できない。

 

 

 

(……凄まじかったけど……何故か慣れている気がする。エリザの歌を聴くのは初めてなのに……)

 

 そしてセイバーの歌のダメージは堪えきれなかったのか意識を手放す白野であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん? 拍手はどうした? 声援はどうした? 褒めぬのか? 褒めよ! 褒めてくれないと……余は泣くぞっ! 本気で泣くからなっ!」

 

「あれ? アンコールは? あたしのぉ、アンコールわぁっ!? しないの? して良いのよ? しなさいってばぁっ! して欲しいんだけどぉっ!!」

 

 涙目で叫ぶ二人であったが、その場にいた全員が気絶しているので誰も褒めないしアンコールはされなかった……。

 

 

 

 

 

 そしてついに迎えた最終日。この日、残ったマスターの半数が脱落する……。




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