Fate/EXTRA D³   作:ケツアゴ

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二回戦
第一話


 本当に大切なものは決して心の中から消えはしない。たとえ記憶を失っても心の奥底で燻り続け、何かの切っ掛けで蘇る。その大切な物は夢であったり、大切な人との約束であったり、はたまた……。

 

 

「……朝か」

 

 未だ誘惑を続ける睡魔を振り払いながら白野は目を覚ました。窓から差し込む朝日が朧げな意識を覚醒させ、新しい始りがやって来た事を告げる。聖杯戦争二回戦という新しい殺し合いの始まりを……。

 

「エリザ、起きて。もう朝だよ……」

 

「ん~、あと五分だけ~」

 

 エリザのベットに近づき予め言われていた通り覗き込まないようにしながら声を開けると掛け布団の中でゴソゴソ動く音と共に眠そうな声が聞こえてくる。仕方ないなと諦めた白野はアリーナに潜る為の準備をしつつ時間を潰し、大体三十分後に漸くエリザが目を覚ます。ピンク色のパジャマ姿のまま上半身を起こし寝ぼけ眼を擦ると口元を隠しながら欠伸をする。パジャマからはみ出た尻尾は未だ眠そうにベットに横たわっていた。

 

「お早う、ハクノ。……あれ? 五分上は寝たはずなのに丁度いい時間? も~、ハクノはおっちょこちょいね。私のマスターがあのピエロとかで精神汚染のランクが高かったら刺殺してたわよ?」

 

「ごめんごめん。今度から気をつけるよ。お早う、エリザ」

 

 クスクス笑いながら背伸びをするエリザ。彼女の言う通りに五分ではなく三十分後に起きたにも関わらず丁度良い時間。予めエリザがなかなか起きない事を予想して早めに起こした白野は笑いながら缶コーヒーを差し出した。

 

 

 

 

 

「言っていくけどあのドラゴンブレスは完全な宝具じゃないから」

 

 それは朝の拷問時(朝食時)の事、口元に食べ滓を付けたエリザが言い出した事だ。どうも彼女が言うには、あの咆哮は家紋から竜と化しているから使えるようになった物であって本来の宝具の一部に過ぎないというのだ。

 

「あの威力で?」

 

 エリザは本当に凄いんだね、と、本当に感心した顔で褒められたエリザは何度も言うが真っ平らな胸を張って得意そうにする。もう一度言おう。次回作出演権を賭けた歌合戦で前張りロリ弁天に貧相と言う割には同じ様な体型だと指摘された胸を張りながら自信たっぷりに言った。

 

「言ってみれば具なしのシチューやスープのないラーメンね。あれ? 汁無し坦々麺とかあるし、あれが全力? そういえば替え玉はあるけど替え汁ってのは聞いた事がないし、でも基本的には声が大本だから……。でも、全力かどうかで言ったら……」

 

(……可愛いなぁ)

 

 色々おかしい事を口走りだしたエリザを見守る白野の眼差しは暖かく、考えるのが面倒臭くなったエリザはその瞳に気付いた。

 

(な、なによあの瞳っ!? そそそ、尊敬を通り越して恋心に変わっちゃったっ!? そうね! きっとそうよ! あれ? それなら一目見た時点で恋に落ちてない事に? いえ、私のような美少女なら何度だって恋に落れるわ!)

 

 そして進行する恋愛脳(スイーツ)。色々とすれ違ってはいるが別段問題なく互いに好感度を上げただけの二人であった。

 

 

 

 

 

 

 生物にとって最大の恐怖は何か? そう問われれば”死”と答える者は多いのではないだろうか? 痛みや飢えなどの苦痛は全て肉体の緊急信号。要するに死を恐れてのものでありあらゆる苦痛は死に起因すると言っても過言ではないだろう。自分の死、大切な誰かの死、兎に角死というものは恐ろしい物であり、それを回避しようとする気持ちは”大切な物”なのである。

 

 

 

「……ぐっ」

 

「どうした旦那!?」

 

 教会前の花壇で一人の老紳士が蹲る。彼の名前はダン・ブラックモア。一キロ者距離を匍匐前進で進み敵司令官を狙撃したなどの伝説を持つ歴戦の軍人であり此度の戦争も片道切符であることを覚悟して参加した。その様な彼が今、言い表しようのない恐怖に襲われていた。

 

 喉は乾き心臓はバクバクと脈打つ。頭の中で誰かが暴れているかの様な頭痛と玉の様な冷や汗、これ全てが何かへの警告だとダンは感じていた……。

 

「……まさかこの年になって新兵の気持ちを味わうとはな。スマンが肩を貸してくれ、アーチャー」

 

「本当に大丈夫ですかい? 年なんだから無茶すんなよ。……まあ、この場所に何かか有るのは確かっすね。俺の本能もこれ以上此処に居てはいけない、じゃないと思い出すぞ、と謎の警告を発してるっすよ」

 

 姿を現した緑衣の青年はダンに肩を貸すと一秒でも早く一ミリでも遠くこの場所から離れようと先を急いだ……。

 

 

 

 

 

 

 

「あう~。折角のデートでしたのに何故か此処から先に行っく気がしませんねぇ、ご主人様。え? デートじゃない? 嫌ですよぉ、良妻と夫が一緒に出歩くのですからって、痛ぁい! 誰が夫だって? も~、ご主人様に決まって、またぶったぁ!」

 

 狐耳のサーヴァントも花壇に向かうのを躊躇い、赤い服を着たマスターと共にその場から立ち去っていった……。

 

 

 

 

「次の対戦相手は……ダン・ブラックモア」

 

「おや、君が私の次の相手か。……その瞳、迷っているな。相手の風貌に臆する所を見ると覚悟も決まりきってないようだ」

 

「あら、貴方には関係ないでしょ? ハクノに突っ掛らないでちょうだい」

 

 対戦表を見に来たハクノはタイミング悪くダンと鉢合わせする。彼の老戦士を思わせる風貌に臆したを見透かされたのか忠告めいた事を言われたその時エリザが姿を現して二人の間に入る。敵サーヴァントが現れてもダンのサーヴァントは姿を現さない。それが正解なのだが、ならば彼は今何をしているのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

(うわ、なんだっ!? あの嬢ちゃん見ると胸がドキドキして落ち着かねぇ!? 廊下ですれ違ったちっこいセイバーの時もそうだったし、……まさかこれが恋!? おいおい、嘘だろ……)

 

 なんか勘違いでエリザに惚れていた……。

 

 




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