Fate/EXTRA D³   作:ケツアゴ

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第三回戦 + 第四回戦
第一話


 カーテンの隙間から朝日が差し込み白野は覚醒する。カーテンを開けると部屋中に陽の光が満ち溢れ実に爽やかな朝だった。

 

 この朝日は新しい殺し合い(第三回戦)の始まりを告げるもので、そう思うと白野の気分は少しも爽やかではなかったが。

 

「エリザ、起きて。朝だよ」

 

「……あと五分だけ」

 

 寝起きが悪いエリザは布団に包まって天蓋から出て来ようとしない。白野は十分後の起床に合わせて紅茶の準備をすべくお湯を沸かし、フランパンに卵を投入する。

 

「……今日は炒り卵かな」

 

 どうもエリザと白野の目玉焼きの好みは違うようで両面をしっかり焼く派の白野と半熟派のエリザでは意見が合わなかった。仕方無しに炒り卵とサラダ、トーストとジャムの瓶、そして紅茶を用意した頃に漸く眠気眼のエリザがベットから這い出してくる。

 

「おはよ~」

 

「うん、おはよう。顔洗って着替えてきたら? 朝ご飯の準備は出来てるから待ってるよ……」

 

「……そうする」

 

 いそいそとカーテンに隠れて服を着替え出すエリザ。そのあと顔を洗う水音が聞こえ、機嫌が良さそうなエリザが出てきた。

 

「うふふ~。ハクノ、喜びなさい! ご褒美の二つ目が解禁よ!」

 

「……ご褒美? ……あっ!」

 

「あれ? 今忘れてなかった?」

 

「気のせい気のせい。有難うエリザ、嬉しいよ」

 

「あ、当たり前よ! 歓喜して感謝するのは当然じゃない!!」

 

 勿体ぶった様子でご褒美リストの二回戦の部分に貼られた紙に手を掛けるエリザの腹の音が鳴り響いた。

 

「……ご飯、食べようか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「良いっ!? さっきのは偶々なんだからっ! 貴族の私が空腹でお腹を鳴らすなんて普通はしないんだからっ!」

 

 結局恥ずかしさから発表は有耶無耶になり、そのまま掲示板へと向かう白野達。次に命のやり取りをしなければならない相手のことを考えると気が重くなる白野。心なしか肩まで重くなった気がしてきた。

 

「体が重いな……」

 

「え~!? ありす、重くないもん!」

 

 思わず呟いた時、耳元で幼い少女の声がする。そっと振り返ると白髪の少女が白野の背中に乗っていた。

 

「……え~と」

 

 君は誰?、そう聞こうとしたその時、少女が白野に抱き着いた。

 

わたし(ありす)、ずっと探してたの! 遊ぼ、お兄ちゃん(・・・・・)!」

 

「……はい?」

 

 初対面のハズの少女の口から放たれた言葉に白野は固まってしまう。”ずっと探していた”、その言葉が指し示す事とは一体。

 

 

 

 

「……ハクノ。貴方って……妹が居たのっ!?」

 

「えぇっ!?」

 

 エリザの出した結論は突飛な物だったが記憶のない白野には否定する材料がない。その上誰だか分からない少女の夢がそれを後押ししていた。

 

(お兄ちゃん、それだけなら妹って思うのは突飛すぎる。でも、ずっと探していたって……)

 

 不安になる白野、エリザの方を見ると口元に手を当てて複雑そうな表情になっていた。

 

「そんな、兄妹で殺し合いに参加するなんて。……ハクノが記憶喪失になったのはもしかしてそのショック……?」

 

「ううん? 違うよ、お姉ちゃん」

 

「お義姉ちゃんっ!? ななな、何言ってるのっ!? ばばば、バッカみたいっ! まだ私とハクノはそんな関係じゃ……へ? 違う?」

 

「うん! お兄ちゃんはありす(わたし)と同じなの」

 

「えぇっ!? まさかハクノって実は幼じ……」

 

「エリザ、少し黙っていようか。それで、同じって?」

 

「あのね、ありす(わたし)はね、ずっと一人だったの。でも、もう一人のありす(わたし)と会って、ありす(わたし)と同じお兄ちゃんと会って嬉しかったの! ねぇ、遊んで! まずは鬼ごっこね! アリーナでアリス(わたし)と待ってるから!」

 

 そう言うと白野の背から飛び降りてアリーナに向かっていく少女。だが、その姿は光となって途中で消え去った。

 

「……あの子は一体何者なんだ? とりあえずアリーナに行って……」

 

「……行けば? 黙っとけって言われた私は此処で待ってるから、貴方はあの子と遊んでくれば?」

 

 エリザは明らかに不機嫌でぷいっと顔を背けている、どうも黙っているというのは彼女の琴線に触れたようだ。

 

「……え~と、さっきのはですね。別に悪気があった訳じゃ……」

 

「……じゃあ、もう無視しない? 五月蠅いって言って私の声を聞こうともしないなんて事しない?」

 

 見ればエリザの体は僅かに震えている。自分の声を誰も聞いてくれない、それが彼女のトラウマになっているようだ。白野はそっとエリザに近付くと頬に手を当てた。

 

「大丈夫。エリザの傍にいる限り、ずっと声を聞き続けるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ、廊下の真ん中でラブコメってますよ、ご主人様。此処は私達もぜひっ!」

 

「やらないわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん、遅~い! ありす(わたし)待ちくたびれちゃった」

 

 アリーナに入ると直ぐに聞こえてきたのは先程の少女の声。だが、白野の視界に入ったのは同じ顔をした二人の少女だった。

 

 

「所でありす(あたし)、ちゃんとお兄ちゃんに名前教えてあげた?」

 

「あっ! うっかりしてた! お兄ちゃん、わたし、ありす!」

 

「あたしもアリス。あたし達と遊びましょ。お兄ちゃんと角の生えた怖いお姉ちゃんが鬼ね」

 

 ありすとアリスは向かい合うと互いの手を取ると其の儘駆け出していく。どうしたものかと白野が迷う中、横に居たエリザが飛び出す。白野を置き去りにして

 

 

 

「待っちなさ~い! 今すぐ私がとっ捕まえてあげるわ、子ウサギ共っ!」

 

 その時のエリザは非常に生き生きとしていた。とても楽しそうに笑いながら子供相手に本気で追い掛けるエリザ。

 

 

 

「あっ、早く追わないと拙い」

 

 取り残された白野は身を守ってくれる相手がいないので慌ててエリザの後を追った。

 

 




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お試し番の姐さん短編やってます
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