Fate/EXTRA D³   作:ケツアゴ

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第三話

「まったく、何なのよ彼奴っ!!」

 

 余程ジャバウォックに追い詰められたのが悔しかったのだろう、エリザはベットの上でごろごろ転がりながら先程から何度も同じ事を叫んでいる。鬼ごっこでは散々コケにされ、いきなり出てきたジャバウォックには手も足も出ず、プライドはボロボロだ。

 

 

「ハクノ~! お風呂まだ~?」

 

 体の節々が未だ痛むが誇り土と汗に塗れた体を早く綺麗にしたい。何より入浴は彼女の趣味だ。それから待つ事数分後、随分と機嫌が良さそうな様子の白野がカーテンの裏から出てきた。

 

「お待たせ。エリザ」

 

「じゃ、目隠し……は別に良いわ、信用してるし」

 

 そのまま早く離れた場所で後ろを向いていて、とジェスチャーで指図したエリザはカーテンの裏でいそいそと服を脱ぐ。やがて湯気が立つ浴槽にウキウキしながら歩み寄ると真っ白な水面が目に入った。

 

「……牛乳? ねェ、ハクノ。なんで牛乳が入ってるのかしら?」

 

「桜から聞いtaんだ。美容には其れが一番だって。……でも、サーヴァントはそもそも歳を取らないし肌荒れもしないって聞いたけど?」

 

「え? そうなの? ……も、もちろん知ってたわよっ! で、でも、あれよあれ! レディーの嗜み、的な?」

 

 今分かった驚愕の事実。という訳ではなく、少し考えれば聖杯から得た情報を思い出し至れた結論だったが、少々お馬鹿(考えてなかった)エリザは今の今まで気付かなかった。

 

 白野が黙り込む中咳払いをして入るエリザ。温かい牛乳の香りと共に全身が心地よい温かさに包まれ戦闘の疲れが抜けていくようであった。あまりの気持ちよさに鼻歌まで歌いだし顔は蕩けきっている。

 

「これ中々良いわね。ハクノ、お手柄よ!」

 

「うん。エリザが喜んでくれたなら嬉しいよ」

 

恥ずかしくなったのか顔半分を湯船に沈めてブクブク泡立て出すエリザ。今彼の顔見る勇気はなく、浴槽からでる事が出来た頃にはすっかり風呂が冷めていた。

 

 

 

 

 

 

「双子のマスター? そんなのあり得ないわよ?」

 

 次の日の朝、相談を受けた凜は白野の、二人は双子では、と言う予想を直ぐに否定する。何処か呆れたかの様に溜息を吐くがどうやら詳しい説明をしてくれるようだ。

 

「あのね、双子で参戦することはあっても、アリーナ内で手を組んで一人と戦う事は絶対に無理よ。小説で使い古された双子トリックじゃあるまいし、双子を同一人物と誤認なんかしないわ」

 

「そうよね。其れに双子だからってまったく同じ名前なんて妙だと思ったのよ」

 

「……あのね、早くそれを言いなさい。まあ、決まったわね、どっちかがサーヴァントでその巨人は宝具かスキルの類ね。幼い頃に読んだっきりだけど覚えがあるわ。正体不明の怪物ジャバウォックって鏡の国のアリスに登場するのよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鏡の国のアリス……」

 

 凛の言葉を受けて図書室にやって来た白野達。エリザは恋愛小説に夢中になり、白野一人で鏡の国のアリスを探していく。その時足元から視線を感じ、視線を下げると其処にはアリスの姿があった。その手には……、

 

「あっ! その本は!」

 

「お兄ちゃんも読みたいの?」

 

 ありすは手に持っているには今まさに探している本があった。

 

「えっと、貸してくれないかな?」

 

「ごめんね、アリス(わたし)がどうしても読みたいって言ってるの」

 

「じゃあ、ジャバウォックがどうやって倒されたかだけ教えてくれたらプリン奢ってあげる」

 

「ほんと!?」

 

 帰ろうとしたありすだが、プリンと言う言葉に反応して必死に本を捲って目的のページを探し、とあるページを指さした。

 

「ここ! 此処に載ってるの!」

 

「え~と、ジャバウォックを倒すにはヴォーパルの剣を……」

 

 其処まで読んだ所で横合いから伸びてきた手が本を奪う。手が来た方向を見ると其処には冷たい目のアリスが立っていた。

 

「それ以上は駄目よ、ありす。お兄ちゃんもプリンで釣るなんて……」

 

 何を思ったか本を抱き抱えたアリスは息を大きく吸い込み手をメガホンの様にして叫んだ。

 

「へんた~い!! このお兄ちゃん、プリンでありす(あたし)を釣って思い通りにしようとしてるの~!!」

 

 忽ち注がれる変態を見る視線、彼方此方でヒソヒソと囁き声が聞こえてきた。

 

「今の聞いた?」

 

「サーヴァントと随分仲が良いけど、女の子なら誰でも良いのかしら?」

 

「其れでもあんな小さな子は無いわよね。しかもあの子と追いかけっこしてたらしいわよ」

 

 気不味さから図書室を後にする白野。エリザは静かに本を閉じると黙って後を追っていった。

 

 

 

 

「……ふぅ」

 

 噂は瞬く間に校内を駆け巡り、白野は逃げるように屋上へ向かうと黄昏れていたその目には涙が滲み、もし大人ならタバコを吸う様なシーンだ。その時後ろから肩を叩く者がいた。

 

「気にしないで、ハクノ、私は信じてるから」

 

「うん、君なら信じてくれると思ってたよ、エリザ」

 

「……仲が良いですね」

 

 ハクノはエリザの手を取り互いに見つめ合う。その光景をすぐ横で見つめるラニの姿があった。

 

 

「……えっと何時から見てた?」

 

「いえ、貴方が来る前から居ましたが?」

 

「え~と、何かごめんね。あの実はヴォーパルの剣を手に入れたいんだけど、何かいい案無いかな?」

 

「それなら作れますが材料が必要です。マカライトを持ってきて下さい」

 

「マカライト? ハクノ、だったらピッケル持って火山か密林にでも……」

 

「マカライト鉱石ではなくマカライトです。では、準備が出来ましたらまた此処に……」

 

 エリザ渾身の発言をスルーして去っていくラニ。

 

「ギャグだったのに……」

 

 白野は立ち尽くすエリザの肩にそっと手を置いた。

 

「取り敢えずリンエモ……遠坂にでも相談しよう」

 

 

 

 

「……珍しいですね。貴方なら途中で何か言ってくると思ってたのですが」

 

 ラニは廊下を歩きながら虚空に話し開ける。すると何処か達観したような声が聞こえてきた。

 

『何、これも予定調和なら別に良いと思っただけだ。……予め言ってくれていれば良かったのだがね』

 

「どういう意味ですか?」

 

『……その内分かるさ』

 

 

 

 

 

 

 

「マカライト? マグロでも食べればそのうち出てくるんじゃない?」

 

「同じようなボケはもう言ったよ」

 

 とりあえず相談を受けた凛はしばし考え込む。するとキャスターが不満そうな顔で出現した。

 

「貴方、イケ魂だからって少々図々しいのでは? 何かを欲するのならば対価を払って頂きませんと」

 

「そうね。じゃあ、購買に売ってる大きな宝石が欲しいわ、あれとなら交換してあげる」

 

 

 

 

 

 

「た、高い……」

 

 凛に言われた通りに購買に向かった白野だが宝石はかなり高く、某ェイトイチシステムにでも頼らなければ買えない金額だ。困りきって立ち尽くす白野だったが、店員が此処で意外な案を出してきた。

 

「貴方のサーヴァントのお弁当が兎に角凄いって聞いたんだけど……少し興味があるわ。そのお弁当と交換してあげる」

 

 無知とは罪である。この罪への罰は……死。

 

「任っせときなさい! 最高のお弁当を作ってきてあげる!」

 

(うん。凄いのには変わりないから詐欺ではないな)

 

 張り切ってマイルームへと駆け出すエリザ。白野はそっと黙祷を捧げた……。




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