「ギャァアアアアアアアアアアッ!!!」
購買の店員だったNPCの悲鳴を聞いた白野は手を合わせつつ其の場から逃げる様に去っていく、全ては私欲で商品を弁当と交換すると提案して来た彼女に原因がある、そのように言い訳しないと申し訳なさで胸が締め付けられる思いだ。
「あはっ! あんな声出すなんて、私の料理も上達したものね。まさか悲鳴を上げるほど美味しかったんて」
このまま否定しなければ料理の腕は向上せず行く行くは自分が彼女の二の舞になるm、それはわかっていても否定する気にならない白野、それほどまでにエリザの顔は嬉しそうだったのだ。
「では確かに受け取りました。今から制作に取りかかりますので少々お待ちください」
宝石と交換したマカライトを渡されたラニは何故か微妙に白野から距離を開けている。マカライトの受け渡しも間に置いた机に置いて欲しいと言う程だ。履くのが一歩近づくとラニも一歩下がり二人の距離は縮まらない、ラニが無表情なだけに余計に心が傷ついた。
「えっと、何かしたっけ?」
「いえ、ナニかされない様にしているだけです、貴方は無類の女性好きで幼女から少女まで節操無しと聞きます、私に心を入れる人かとは思っていますが、他の物まで入れられては困りますから。……冗談です。これもコミュニケーションの一つだと私のサーヴァントから教わりました」
「全く、失礼なやつね。きっと理由が有るにしろ堂々とセクハラ発言かましたり、マスターから爆発しろとか言われるような奴なんだわ」
エリザの言葉は間違っていない。
「さっ、早く行くわよハクノ」
エリザは白野の手を取ると一旦マイルームに戻る。その間二人は手を繋いだままだった。
「ねぇ、アレって、例の噂の……」
「タラシって噂の奴だろ? でもさ、随分と仲が良さそうだぜ。サーヴァント一人だけなんじゃ」
「本命って事じゃない? ほら、遠坂凛やアトラス寺院のとも仲が良いしさ」
例の噂は既に校舎中のマスターが知っているようでヒソヒソと白野を指さしながら話をしている。なんとかマイルームに戻るまで気不味い空気が続いた。
「エリザ、何かゴメンね? 君まで巻き込んだみたいでさ」
「気にしなくて良いわ、ハクノ。人の噂も七十五日って言うじゃない。七十五日後には噂なんて消えてるわ」
七十五日後には既に聖杯戦争は終わっている。
「……あのさ、エリザ。少し気になってたんだけど、君の目的だった永遠の美貌を既に手に入れてる訳で、君がこれ以上無理して戦う理由って有るのかな? いや、別に死にたいわけじゃないけどさ」
「なら、気にしなくて良いじゃない。それに私の一番の目的は月を席巻するトップアイドルになる事。まぁ、実力でなれるけど、バックアップくらいはして貰わなきゃ。もちろんハクノには暫く地上に戻らずにマネージャーとして働いて貰うから、そのお給料だとでも思って」
自分の目的が分からずエリザの目的は既に達成されている、その事実を思い出した白野は気弱そうにつぶやくもエリザは笑みを浮かべながら夕食の準備をしだす。白野も購買の店員の二の舞になりたくないので慌てて手伝いに掛かった。
「……それも良いかもしれないね。このまま元の目的が分からなかったらさ、ずっとエリザの傍に居てマネージャーをやるってのも……」
「そ、そう!? こここ、光栄に思いなさいよっ!!」
この日、あまりの動揺にエリザの手は大きく狂い、テンパったせいで調味料の量や手順を大きく間違いm¥、出来上がった料理は普通に不味い、それだけだった。
「あっ! そうだわ!」
「どうかした?」
白野が食べ終わった皿を洗っている間、エリザはソファーでゴロゴロしていたが急に立ち上がるとマジックを取り出した。
「あのね、少し恥ずかしんだけど……言っておくけど本気じゃないから! 可愛そうだと思ってるかだからっ!!」
エリザはモジモジしながら白野の手を取りマジックを近づけた。
「……なる程、それでその様な物を。ですが少々恥ずかしいでしょう。私も少しお書します」
ヴォーパルの剣を受け取りに行った際にラニに書かれた物を見られ更に別の物を書かれた。
そしてアリーナにやって来た白野とエリザ。ジャバウォックはアリス達が出した場所にいるまま。その後方にトリガーが入ったアイテムボックスが見えた。
「礼装はマスターにしか使えないわ! 私が絶対守ってあげるから必ず成功させなさいっ!」
エリザは槍を頭上で振り回すと地上スレスレを滑る様に跳ぶ。ジャバウォックは右腕を勢いよく振り下ろ菅エリザは素早く竜の翼を出して迂回するようにジャバウォックの背後に回り込んだ。エリザの体は小柄なので攻撃の際にジャバウォックは前のめりになっており、膝の裏に移動の速度を加えた強烈な槍による打撃が叩き込まれる。
「せーの!!」
追い打ちをかける様に背中に叩き込まれるじ飛び掛りからの一撃。この攻撃によってジャバウォックは手を地に付け、エリザは槍の先端を手の甲に向けて背中から飛び降りた。槍はジャバウォックの手を貫通しその場に縫い付ける。
「今よ!」
ジャバウォックは無事な手でエリザに殴りかかるが咄嗟に槍の影に隠れるようにして防ぎ、地を必死に踏みしめて必死に耐える。だが槍が徐々に揺れ動いて抜けそうになっていた。このまま槍が抜ければエリザはジャバウォックにやられてしまうだろう。白野は必死に駆けヴォーパルの剣を突き出す。その瞬間、ジャバウォックの体にエリザが付け直ぐに塞がった傷が戻り、バラバラに分解されて消えていった。
「よしっ! ……っ!?」
気が抜けたのかその場に尻餅を付きそうになる白野。倒れる直前にエリザが支えた事によって事なきを得た。
「まっ、頑張った方ね。次はもう少し格好よくして頂戴」
そう言いながらウインクしてみせるエリザ。その時背後から声が聞こえてきた。
「わ~! お兄ちゃん凄いね、
「じゃあ、次はアレにしましょう、
ありすとアリスは互いの手を取る。すると途轍もない魔力が放たれだした。
「「此処では、鳥はただの鳥、此処では、人はただの人 名無しの森にご招待」」
その魔術の名は固有結界。己の心象風景を具現化し世界を塗りつぶす大魔術だ。周囲の風景が変わり、ありすとアリスは白野達を見ながらクスクスと笑っている。
「ねぇ、お兄ちゃんはアレを覚えているかしら?」
「じゃあ、聞いてみましょうか」
「「お兄ちゃん、あなたのお名前なぁに?」」
「……名前?」
必死に思い出そうとする×××。だが、どれだけ思い出そうとしても思い出せない。
「此処ではどこの誰かなんて関係ないの」
「それでね、みんなそのまま名前を思い出せずに消えちゃうんだよ」
×××の肉体は徐々に透けていく。その時、彼の目に左手の甲に書かれた謎の単語が入ってきた。
(これに賭けるしかないっ!)
×××は一か八かに賭け、息を吸い込み大声で叫んだ。
「フランシスコ・ザビエル!! ……あれ? なんか違う気が……こっちにしよ。岸波白野!!」
右の手の甲に書かれた相合傘の名前を読んだら名前を思い出した。その瞬間固有結界は消え去り、周囲の空間は元に戻る。ありすは頬を膨らませ、アリスは拳を握り締めていた。
「あ~あ、詰まんないの。お兄ちゃんズルしたズルした~!!」
「……そうね。お仕置きしちゃいましょう。……こんがり上手に焼いてあげるね」
突如白野の足元から火が吹き上がる。だが、火が白野を包むその瞬間、エリザが白野を突き飛ばし代わりに炎に包まれた。
「エリザっ!」
「やったね、
「やったわ、ありす《あたし》!」
炎が轟々と燃え上がる中ハイタッチをする二人。だが炎は突如消え、中から怒り心頭のエリザが全くの無傷で出てきた。
「アナタ達、今……ハクノを殺そうとしたわね? もう許さない、覚悟なさい……」
槍を持ったままゆっくりとありす達に近寄るエリザ。その気迫は今までの比ではなく、ありすなどは怯えてその場へたり込んでしまった。
「ありす! ……くっ! 追い掛けちゃいたくなっちゃうよね、ウサギとか。豚になったほうが幸せって子もいると思うの」
強烈な冷気が、激しい風の刃がエリザを襲う。だが、エリザの皮膚には傷一つ付ける事が出来なかった。
「私の対魔力はA。この程度の魔術なんて効かないわ」
「だったらっ! ありす、アレを……」
焦ったアリスは宝具を発動させようとありすに呼び掛ける。だが其の時点でエリザは攻撃県内にアリスを捉えていた。
「……じゃあね」
アリスの体をエリザの槍が貫く。そのままアリスヲ刺したまま槍の矛先を上に向けたエリザは勢いよく地面に叩きつけた。槍から体が抜けてゴロゴロと転がっていくアリス。エリザは止めを刺そうと飛びかかり、直前で二人は消え去った。
「逃げられちゃったか。でも、別に良いわ。もう勝ちは決定した様な物だもの」
エリザは詰まらなさそうに目を細めると白野の元に歩いて行った。
「だいじょうぶ?
「……うん。少し休めばだいじょうぶ……」
アリスはありすに支えられながら校舎を歩く。その背後からゆっくりと近づく人物達に気付かずに……。
「弱っていますし、今がチャンスですな」
「そうだな.COOOOOLなアートを作ろうぜ、旦那ぁ」
二人に抵抗する余裕は……残っていない。
今日は三作品投稿
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オリジナル始めました