Fate/EXTRA D³   作:ケツアゴ

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第五話

「名前を忘れる固有結界っ!? ……よく無事だったわね」

 

「うん。手に書いてあったこれのおかげなんだ」

 

 ありす達との戦いが終わった白野は屋上で偶々会った凛に何があったかを報告する、大規模な魔術である固有結界のことを聞かされた彼女は、”魔力の使いすぎで脳が焼ききれるはずなのに”や”厄介そうだから今回で負けてくれないかしら”、などと呟きながら白野の手を見た。

 

「フランシスコ・ザビ……」

 

「間違った! コッチだコッチ」

 

「……相合傘。ふ~ん、貴方のサーヴァント、エリザって名前なんだ」

 

(し、視線が冷たいっ!? サーヴァントの名前をうっかり漏らしちゃたからっ!?)

 

「それにしても仲がいいのねぇ。手の甲に相合傘を書くなんて」

 

 この時泊のは違和感を感じた、。確かに迂闊さを責めるような視線も感じるが、それ以上に別の感情が凛の瞳には宿っている。その感情の名は嫉妬。無自覚一級フラグ建築士の白野は既に凛にフラグを立てかけていた。だが無自覚ゆえに彼が気付くはずもなく、奥手で疎いエリザも恋愛脳なのに気付かない。

 

「にしてもラブラブすぎてマジうぜーって言うんですか? そんなにイチャイチャしときたいならマイルームで乳繰り合ってろて話ですよ。ねー、ご主人様」

 

 この狐耳のキャスターのみがその感情を察知する事が出来た。白野達を睨んだキャスターは凛にベタベタ触ろうとするも手で払われ、”あ~ん! ご主人様のいけずー”、と叫びながら姿を消した。

 

「はぁ、全く私のサーヴァントは……あれ? 何かしら、人が集まってるけど……」

 

 屋上から校庭を見下ろせば何やら人が集まりざわついている。気になった白野はエリザと手を繋ぎ、りんはそれを不機嫌そうに眺めながら向かった。

 

 

 

「うっ……」

 

 それを見た瞬間白野は口を押さえて嘔吐く。周囲を見れば他のマスターの殆ども同じような状態で、一部のマスターのみが不愉快そうにそれを見ている。

 

 

 其処にあったのはありす達を材料にしたオブジェだった。明らかに瀕死の状態なのに死ぬことを許されず苦痛ばかりが続く様に設計されており、作った者の正気が疑われる。

 

 

「うひゃぁ~! みんな俺のアートに注目しているぜぇ!」

 

「流石は此処まで勝ち抜いてきたマスター。それなりの審美眼をお持ちのようですな」

 

 そう。この所業の犯人である二人は明らかに正気ではない。激痛で意識を失うことすら許されずそれでもなお死ぬ事が許されないありす達の口からは僅かに呻き声が溢れ、それが可笑しいのかヘラヘラ笑いながら頭に手を乗せる龍之介。

 

「お前がこれをやったのか?」

 

「聞いてくれる? そう! この最高にCOOOOOOLなアートを作ったのは俺なんだ! いやぁ、あんたがこの子を痛めつけてくれていたおかげで楽に作れたぜ」

 

 その言葉を聞くやいなや殴り掛かろうとする白野、だがエリザに服を掴まれたことで止められ、ちょうど言峰がやって来た。

 

「これは困った事をしてくれたものだ。さて、どうするか……」

 

「おいおい、俺は芸術活動を下までだぜ~? ペナルティなんて受ける必要ねぇだろ? なぁ、旦那」

 

「そうですぞ! 監督役なら公正な審判をお願いしたい」

 

 白野は背筋がゾッとした。目の前の二人はこの惨状を本気でアートのつもりで作り上げた、それが理解できたからだ。言峰は何を考えているのか白野と龍之介を順番に眺めると笑みを浮かべた。

 

「ああなってしまえば戦いどころではないな。三回戦は岸波白野の勝ちとして、二人とも既に勝ち抜きが決まっているから四回戦は君達二人で競い合ってもらおう。ああ、日にちが余っている事だし三回戦の決戦ステージで四回戦を行い給え」

 

「しかし、それなら互いの情報を得る時間が足りぬのでは?」

 

「これは君達二人へのペナルティだ。岸波白野には君達の情報を与える。まぁ、言いつけを守らなかった粗自分を責めてくれ。ククク、では楽しみにしているぞ」

 

「ちぇ~。行こうぜ、旦那」

 

「そうですな。このような不愉快で不公平な者の近くに居たくはありません」

 

 不満そうにその場を去っていく龍之介達。そのまま他のマスターたちも去って行き、言峰も去ろうとした時、その肩を白野が掴んだ。

 

「待ってくれ。ありす達はどうなるんだ?」

 

「……さて、どうしようか。君が棄権するなら彼女たちがあの二人と当たるがムーンセルは彼女立ちを元の状態には戻しはしない。なら、棄権などしないだろう? もう勝ちは決定したようなものだ。トドメを刺したいのなら刺して構わんよ」

 

「っ!」

 

 話は終わったとばかりに去っていく言峰。暫く立ち竦む白野の視線の先でエリザが槍を構えた。

 

「……それでどうするの?」

 

「頼む。二人を楽にしてあげてくれ」

 

 エリザの槍は二人を貫き、やがて二人の体が分解されだした。

 

「泣いているの? お兄ちゃん。……わたし、本当はわかってたの、とっくにわたしは終わってて何処にも行けないって。でも、アリスが居たし、わたしと似ているお兄ちゃんと遊べて楽しかったよ」

 

 最後に笑いながらそう言って目を閉じるありす。アリスはその姿をじっと見ていた。

 

「ありすは只遊びたかっただけなのに、なんでその程度の願いも叶わないの? 次に誰かに喚ばれてもそのあたしは別のあたし。ありすの為のアリスじゃない。……あれ? なんであたしは泣いてるの? 泣いたってあたしは本物なんかになれないのに……」

 

 アリスは大粒の涙を流しながらありすのあとを追うように消えていった。暫く立ち竦む白野。その瞳からも涙が溢れた時、背後にレオが立っていた。

 

「死を悼んでいるのですね。命が失われるのは悲しいことです。このような無慈悲な戦いなら尚更だ。だから僕は此処に来たのです」

 

 

「其処までにしておいてくれるかしら? ハクノにはアンタの言葉なんて必要ないの。って言うか、いずれ戦う敵を懐柔しようて魂胆なの?」

 

 淡々と語っていくレオの言葉は今の傷付いた白野の心に染み入っていく。だがその言葉はエリザが槍を突きつけた事によって閉ざされる。その槍を防ぐように立ち塞がったガウェインと睨み合う。

 

「行きますよ、ガウェイン。彼に僕の言葉は届きそうにない」

 

「……はっ!」

 

 レオの言葉に少し躊躇したガウェインだが直ぐに剣をしまうとレオに続いて校舎に戻っていた。

 

 

 

「……ハクノ、ダンに言われたでしょ。後悔だけはしちゃいけないって。迷って死んだら犠牲にしてきた者の命がすべて無駄よ。人生やり直しは効かないの。……それだけやり直したくても、ね……」

 

 最後に言葉、それは自分自身に言い聞かせるようであった。

 

 

 




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