Fate/EXTRA D³   作:ケツアゴ

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第二話

「・・・・・はぁ?」

 

 白野の言葉を聞いた途端、ディーバの表情が一変する。先程まではコレからの事を楽しみにしている無邪気な少女の瞳だったにも関わらず、今の表情は残忍極まりない怪物の瞳の様だった。其の手にはいつの間にか鈍器のようにも見える魔槍が握られ、矛先は白野に向けられている。

 

 この時、彼は殺気とはどの様な物なのかを体験していた。

 

「最初に教えておいてあげる。男なんて私に傅き褒め称える為だけに存在しているの。そして私の嫌いな物は反逆! 脱走! 口答え! ……さあ、もう一度言ってごらんなさい。血を集める事がどうしたのかしら?」

 

 下手に歯向かえば殺されてしまう。口先だけでも彼女の事を肯定してしまえば良い。白野の頭の中をその様な考えがよぎる。確かにこの場で反論しても何のメリットもないし、ディーバは聞き入れないだろう。

 

「……何度でも言う。美しさの為に血を集めるなんて間違っている」

 

 だが命の危機に瀕してもなお、彼は何処までも倫理を捨てる事が出来なかった。自分の手で今すぐにでも命を奪える相手が恐怖を浮かべながらもまっすぐ見返し反論してくる。今まで見た事のない反応彼女は戸惑いたじろぐ

 

「なによそれ……。どうせ殺し合う関係なんじゃない。だったら血くらい奪って何が悪いって言うのよっ!? 訳が分からないわっ! あ~もう頭が痛いじゃないっ!!」

 

 ディーバは頭を押さえながらヒステリックに叫び、槍を更に近付けて睨みを利かす。それでも白野はしっかりと彼女を見つめていた。

 

「何が悪いのか、本当に分からないのか?」

 

「当たり前でしょっ! 家畜をどうしようが私の勝手じゃないっ! 搾取は貴族としての責務じゃない! 私をチヤホヤしてくれる皆は言ってたわ、美しくなくなったら価値がないって! アンタみたいな事、誰も言わなかったっ! お父様も爺やも執事も、誰も私に何も教えてくれなかったくせにぃぃぃぃぃ!!」

 

 髪を振り乱しながら叫ぶディーバ。歪な貴族社会で育った純粋悪、それが彼女の真実だ。

 

「……だから、私は悪くないっ! だって、そうでしょ? 私は皆が求めた完璧な私であろうとしただけなんだから」

 

 縋り付くように同意を求めるかの様に、目に涙を蓄えながら白野を見詰めるディーバ。その姿は何かに怯えているかの様だった。

 

「……何度でも言う。君は間違っている」

 

 だけど、それでも肯定する訳には行かない。故に放たれた否定の言葉にディーバはたじろぎ、次の瞬間には憎しみの表情を向けてきた。

 

「ッ! ……そう、分かったわ。アンタもアイツ等と同じなんでしょ。私を罪人だって真っ暗な牢屋に入れたアイツらと同じで私の事が嫌いなのねっ!」

 

 ディーバはそう叫ぶなりマイルームから飛びだしていく。すれ違った時に白野の目に映った彼女は涙を流していた……。

 

 

 

 

 

 

「この! 消えなさい!!」

 

 マイルームから飛び出していったディーバが向かったのはアリーナの中。聖杯戦争は七つの海を模したダンジョンであるアリーナに入って戦闘訓練をしたり決戦の場の鍵であるトリガーコードを探したりするのだ。

 

 そして今、ディーバは敵性プログラムであるエネミーをめに入る傍から倒していた。箱をコードで繋げたような姿のエネミーは弱く、力任せのディーバの攻撃でも薙ぎ倒せる程だ。ディーバの魔槍で叩き落とされたエネミーは分解される様に消滅していき、後には聖杯戦争中に使う事が出来るお金が残される。本当なら拾う所なのだろうが高貴な生まれのディーバが道に落ちたお金を拾うはずがなく、そのまま放置されていた。

 

「……こんなんじゃ全然収まらない。これも全てあの子豚のせいよっ! ……ツ!?」

 

 どれだけ敵を倒してもディーバの苛立ちは収まらず、槍を地面に叩きつけた時異変は起こった。先程からずっと感じている頭痛が酷くなり、それどころか体に力が入らない。活動の為に必要な魔力が尽きて来たのだ。

 

「……ヤバ」

 

 気付いた時には槍を杖にしなければマトモに立っていられない程に体に力が入らなくなる。マスターと離れた場所で大暴れした代償だろう。これが単独行動スキルを持つアーチャーだったら持ったのだが、彼女の本当のクラスは元々魔力消費の激しいバーサーカー。蹌踉めきながら入り口を目指すディーバの目前には先程から倒し続けている為にエネミーの姿はなく、安心して進む事が出来た。

 

 ただし、後方から少々強めの蜂型エネミーが気配を殺しながら近付いて来ていたのだが。

 

「……何かしら?」

 

 ディーバが気配に気付いて振り返った時、鋭利な針先がディーバの首筋に迫っていた。咄嗟に槍で防ぐディーバだが、力が大幅に下がった今の状態では防ぎきれずに弾き飛ばされる。手から離れて宙を舞った槍は後方の壁に突き刺さり、ディーバの肩には針が掠った事で赤い筋が入っていた。そして、攻撃を防いだ衝撃で尻餅をついたディーバの首筋目掛け、再びエネミーが無防備な背中に襲い掛かる。

 

「ッ!」

 

 思わず目を閉じるディーバ。だが、痛みを感じる前に此処に居るはずのない者の声が聞こえ、誰かによって横から突き飛ばされた。

 

「ディーバっ!」

 

 ディーバが目を開けると其処には白野の姿が有り、彼の制服の袖は切り裂かれ血が出ている。そしてエネミーは彼の血で針を汚した状態で興奮しているかの様に激しく羽音を鳴らしていた。

 

「……子豚? なんで、アンタが。私の事を嫌っているんじゃ……?」

 

「確かにディーバのやろうとした事を間違っているとは言った。けど、それだけで嫌うような事はしない。だって、ディーバが居なかったらあの人形に殺されてとっくに死んでいたのだから……。ディーバがどんな人生を送ったのかは知らない。でも、間違っている事は間違っていると知って欲しかった。ただ、それだけなんだ……」

 

「子豚……」

 

 白野が痛みに耐えながらディーバの方を向いた時、エネミーがついに動き出して白野の命を奪おうと襲い掛かる。その時、ディーバの声がアリーナに響き渡った。

 

 

 

「魔力を回しなさい、ハクノ(・・・)!」

 

 白野は曖昧な記憶を頼りに微量ながら魔力をディーバに回す。そしてエネミーの針が白野の胸をっ貫く寸前、ディーバの尻尾がその体を叩き潰した。

 

「……あんまり尻尾は使いたくないんだけどね」

 

 相手に背中を見せて勢いよく尻尾を振り下ろすという技の特性上、スカートの中は丸見えになる。実際、白野の視界にも縞パンが入って来たのだが気付いていないディーバであった。もっとも、後で気付いて悶える事になるだろうが。

 

「……ほら、立てる?」

 

「ああ、有難う助かった」

 

 尻餅を付いていた白野はディーバの差し出した手を握って立ち上がると笑みを浮かべる。この時、ディーバの胸が高鳴った。

 

「……きゅん。ってっ!? 私、一体何をっ!?」

 

「ディーバ?」

 

 余りにもチョロ過ぎるので白野に気付かれなかったのは幸いといった所だろうか。慌てて手を離して背中を向けたディーバが手をやった頬は熱くなっていた。

 

「……と、取り敢えず今日はもう戻りましょっ!」

 

 誤魔化す様に足早に歩いていくディーバ。だが、入り口の途中で立ち止まると振り返らずにこう言った。

 

 

「アンタの言った事が本当に正しいなんてまだ納得はできないけど、仕方なからブラッドバスは我慢してあげる。でも、その代用品はちゃんと考えなさいよねっ! ……そ、そうそう。それと今度から他に誰も居ない時は私の事をエリザって呼びなさいっ! ……光栄でしょ?」

 

「……ああ、分かった。有難う、エリザ」

 

「はうっ!」

 

 またしても高鳴るエリザの胸。こうしてエリザが見事にチョロインっぷりを晒しながらも距離が縮まった二人であった……。

 

 

 

 

 

 




自害しろ、ランサー! エリちゃんはマジでチョロイン(挨拶)

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