Fate/EXTRA D³   作:ケツアゴ

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今日は休みだったがほかの趣味で疲労 この一話限界


第七話

 其の日、当然の様に迷宮でタマタマ鉢合わせした対戦相手を運営の介入が入るよりも早く仕留めた凛は暇つぶしついでに教会の前の噴水まで足を運んでいた。

 

『おっ! アソコにいんのは岸波とかいう小僧じゃねぇか?』

 

「あら、それがどうかしたの?」

 

興味なさそうに振る舞う凜だが、視線は先程からチラチラと噴水前のベンチに座る白野とエリザの方に向けられている。其れがおかしいのか彼女の側にいるサーヴァントは笑いを堪えきれず何度も吹き出していた。

 

『い~や? 別に~?』

 

 サーヴァントの口調が何処か含みがあるだったのが気に障った凛は姿を消しているサーヴァントを睨むもヘラヘラ笑っているのが手に散るように分かって余計に腹が立つだけだ。

 

(取り敢えず様子見よ、様子見。他のマスターなんて全員敵なんだから。まぁ、岸浪君は敵になんてどうやってもなれそうにないけど? アレよ、アレ。雨に打たれている捨て犬を見付けたり、親とはぐれて泣いている迷子を見付けた時の心境よ。余計な感情移入なんて心の贅肉だもの)

 

 まるで自分に言い聞かせるかの様な言い訳を重ねながら茂みに隠れて観察を始める凜。彼女の名誉のために記しておくが、白野への恋愛感情など今の所皆無である。心中での言い訳の通り、覚悟も何も決まっていない記憶喪失の彼を放っておけないから気にしているだけだ。

 

 結局の所、お人好しなのである。恐らく今までの人生において同年代の男子とまともに関わった経験が無く、偶々関わり合いになった白野の事が余計に印象に残ったのかもしれない。

 

 

『ほー。いい顔してんじゃねぇか。何かあったな』

 

「……ええ、そのようね」

 

 気付かれないように少し離れた場所にいるので顔以外はよく見えないが、今の白野は確かに覚悟を決めた顔をしていた。

 

 

 

 

 

 時間は少し巻き戻り、トリガーコードを入手して校舎に帰還した二人は食堂まで来ていた。

 

「あ~も~! 悔しいったら悔しぃ~!」

 

 ライダーに追い詰められたことがよほど悔しかったのだろう。エリザは地団駄を踏みながら叫んでほかのマスターの注目を集めていた。

 

「ハクノ! こうなったらとことん特訓よっ! 今度こそあのオバサンの血液全て搾り取ってやるんだからっ!」

 

「まあ、これでも食べて落ち着いて」

 

 物騒な事を言い出したエリザに白野が差し出したのは血の様に真っ赤なアイスクリーム。エリザが口を付けるとほんのりトマトの味が伝わって来た。

 

「あら、気が効くじゃない。まっ、高貴な私の口に入れるには庶民的過ぎるけど其の気使いに免じて我慢してあげる」

 

 言葉とは裏腹にアイス一つで機嫌を良くしたエリザ。椅子に座って良い機嫌でアイスを舐めだす彼女を見て安心した白野は購買まで向かった。

 

「……高い」

 

 白野はエリザが欲しがっていた猫脚の浴槽の値段を見て残念そうに呟く。まだマスターとして未熟な自分ではエリザに対してまだロクに役立つことをしてあげれそうにない。だからせめて欲しい物だけでも、と思ったのだが、魔術師として弱者の白野は経済的にも弱者でもあった。

 

「仕方ない。今日は食事だけ済まして……」

 

「あら、別に頼む必要はないわよ、ハクノ。ほら、私が態々貴方の為に作ってきてあげたわ」

 

 とりあえず激辛麻婆豆腐定食にしようとした時、白野の肩をドヤ顔のエリザが叩く。その手には髑髏マークが描かれたピンクの包みの弁当箱が下げられていた。忽ち白野の体中を駆け巡る悪寒。美少女サーヴァントから手製弁当を手渡されるというリア充に周囲のマスターから嫉妬の視線が送られる。

 

「……景色の良い所で食べようか。ほら、教会前の花壇のベンチとか」

 

 景色が良ければ少しは気が晴れ、地獄もマシになるだろう。ほんの僅かな希望に縋り付く白野は今まさに蜘蛛の糸に手を伸ばす亡者。絞首台の階段を登る死刑囚の様な気持ちによって足が重くなる中、白野は無理やり笑顔を作ってエリザに向けていた。

 

「……教会は嫌いだけど、まあ良いわ。貴方が泣いて頼んでいる事だし付き合ってあげる!」

 

 エリザは一瞬躊躇するも直ぐに気を取り直して後を追ていった。

 

 

 

 

 

 

「昨日は初めてだから失敗したのっ! 今日から練習として毎日作ってあげるから喜んで食べなさい」

 

 昨日の失敗など些細な事とばかりに差し出された弁当はやはり赤一色。流石に今度は茨は入っていない様だが異臭は相変わらずだ。

 

「頂きますっ!」

 

 本当にエリザの料理が上手くなる日は来るのか、上手い事言って止めさせられないか、等と考えた白野だが期待の眼差しを向けてくるエリザを裏切る事など出来ないとも感じていた。それに、そのくらいしか今の自分にはしてあげられない、その事が白野の覚悟を決めたのだ。

 

 強靭な精神力こそが魔力も記憶もない白野の唯一の武器なのだから。

 

(覚悟を決めたら……迷いなしっ!)

 

 その時の彼の顔は非常に男前で、エリザの胸は今まで以上に高鳴った。両手の指を握り合わせるようにして胸の前まで上げうっとりとした瞳で食べ進める白野の顔を眺める。

 

(ああ、やっぱりアンタは素敵よ、ハクノ。この私があと少しで恋に落ちてしまいそうなくらい)

 

 だが、其処まで感じても……いや、其処まで感じたからこそエリザは自分の真名を白野に教える訳にはいかなかった。彼女が持つ最後の記憶、それは悪と判断されて入れられた石牢の暗闇の中。どれだけ声を出しても誰も聞いてくれず、誰も自分を見てくれない絶望的な孤独。その時の様な思いは二度としたくない。

 

 聖杯も世界もどうでも良い。自分だけが永遠に美しくさえあればそれだけで。エリザは自分にそう言い聞かせ、芽生えた気持ちを決して悟られず、伝えようともしなかった。拒絶されるくらいなら、再び孤独を味わうくらいなら、と……。

 

 

 

 

 なお、彼女は気付いていないのだがサーヴァントとなった時点で老いる事はない。エリザは既に永遠の美は既に手にしているのだ……。

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ」

 

 弁当を半分まで食べ終えた白野は額の汗拭う。相変わらず様々な旨み以外の味が入り混じり今にも錐揉み回転をしながら吹き飛びそうな体を根性で押さえつけていた。

 

「ど、どうかしら?」

 

「昨日より進歩していた。頑張ったね、エリザ」

 

 茨が入っていない分進歩したという言葉に嘘偽りはない。故に口先だけの賞賛の言葉など聴き慣れているエリザの耳には彼の言葉が真実である事が伝わっていた。不安そうな顔が一変してパァっと明るくなり、直ぐにお高く止まった様な顔を取り繕った。

 

「ふふん! そうでしょそうでしょ! 私は何たって才色兼備な貴族令嬢ですもの。頭脳明晰容姿端麗、まさに世界一の美少女よね! ささ、早く残りを食べてなさい」

 

「そうさせて貰うよ。……早くベットで気絶したい(休みたい)からね。そうそう、今度は一緒に作る気はないか? エリザにばかり作って貰うのは気が引けるし」

 

 そうすれば少しはマシになるかも知れない、という言葉を飲み込んだ時、見知った少年が騎士を連れて近寄ってきた。

 

「やあ、お久しぶりですね。お弁当……ですよね? その様な料理があったとは……世界は広いですね、ガウェイン。どうやら僕の知識もまだまだのようです」

 

「いえ、アレは何らかの修行ではないかと。取り敢えず周囲に影響がありそうですのでお下がりを、レオ」

 

 其処に居たのは予選で白野に声を掛けて来た少年レオ。生まれながらの王の風格を持つ彼は堂々とした態度で近付いて来た彼は白野の手の中の弁当を視界に収め、漂ってきた香りを嗅いで僅かながら余裕を崩す。

 

 これが最弱の魔術師が最強の魔術師に(ある意味)初めて一矢報いた瞬間であった

 

 

 

 




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明日は短編書きたいなぁ
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