逆廻提督は問題児!!   作:ファルコン・Σ

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今までで一番長い話になった………

その分、作者のもう一人のお気に入り艦娘が登場です!!

(この作品及び隼は提督達のプレイに文句を言うつもりはありません)



浦の傷は夜風に癒える

駿河沖を奪還する為にはより強い艦隊が必要となる。

現在十六夜は艦娘達のレベルを向上させるために未だ深海棲艦が出没する海域に艦隊を出撃させていた。

これを何回も繰り返している。

 

「………………」

 

しかし単調作業。不変を嫌う性格の十六夜は既に飽きが回って若干不機嫌だった。

 

「提督……お気持ちは分かりますが今は嫌でもやって頂かないと……」

 

「分かってんよ五月雨。提督である以上私情を艦娘より優先させる訳にはいかねえからな」

 

良識は分かっている十六夜。流石にそういうことはしなかった。

 

「まあそれでもなんだかな………なんか事件とか起きたりしねえかな」

 

「そんなこと言うと本当に起きますよ……」

 

直後、伝令が入った。

 

「ん。此方逆廻十六夜提督だ」

 

『あ、提督か!? 艦隊の摩耶だ!!』

 

「どうした? なんかトラブルでもあったか?」

 

『トラブルっつーかなんつーか。とにかく今鎮守府に着いたから港まで来てくれ!! 大至急だ!!』

 

「わ、分かった。すぐに行く」

 

通信を切るとかけていた上着を着ながら五月雨に言う。

 

「悪いが少しここを頼むぞ」

 

「了解です!!」

 

執務室から飛び出した十六夜はダッシュ(回りに影響が出ないレベル)で鎮守府の港に向かう。

視力も常人より長ける十六夜はすぐに帰投した艦隊を発見した。

同時に彼方も気付いたらしく、手を大きく振っている。恐らく蒼龍だろう。

 

「提督!! 早く!!」

 

「一体何があった………なっ!?」

 

思わず十六夜が動揺する光景。

雷と電が必死になって水色髪の艦娘の手当てをしていた。

その艦娘の艤装の損傷も激しかったがそれ以上に艦娘自身の傷の方が酷い。

傷だらけで大量の血に染まった身体は今にも事切れそうな程重傷である。

 

「どうしたんだこれ!?」

 

側にいた飛龍に問い掛けると彼女も焦った様子で、

 

「帰投する途中で雷と電が見つけたの!! 放っておくわけにもいかないから連れてきたんだけど………!!」

 

「し、司令官さん!! この子を助けてあげてくださいなのです!!」

 

「このままじゃ死んじゃうよ!! 早く何とかしないと!!」

 

「言われなくても分かってら!! 夕張!! 艤装はお前に任せた!! 摩耶はこいつを連れていくから手伝え!!」

 

「任されました!!」

 

「おう!! 緊急入渠施設だな!?」

 

緊急入渠施設は普通の入渠でも間に合わないような命に関わる重傷や瀕死の艦娘用の施設である。

普通の入渠が温泉なら緊急入渠は病院のような雰囲気である。

 

蒼龍が持ってきた担架に艦娘を寝かせ、運び始める。

 

「テイトクゥ―! 建造終わったから新しい艦娘が来たヨー!!」

 

「悪い金剛!! 今はそれどころじゃねえ!!」

 

「What? ……って『浦風』!? どうしたんデスカ!!」

 

血塗れの艦娘を見た金剛の表情が変わり、慌てて駆け寄る。

 

「なんだ金剛!! こいつを知ってんのか!!」

 

「勿論デス!! この子は駆逐艦陽炎型の十一番艦、『浦風』ネ!! ワタシが最期を共にした艦デス!!」

 

「ああ、どおりで髪型が似てると……」

 

「オイ提督!! それどころじゃねーだろ!!」

 

摩耶に怒鳴られて我に返った十六夜。

 

「っと悪い金剛!! つーことで今は無理だから後に」

 

「あ、あの!!」

 

と、此処で金剛の後ろにいた艦娘が声を出す。

ウサ耳のような艤装が特徴的な艦娘は金剛の前に出ると、

 

「て、手伝います!! 治療経験はありますから!!」

 

「!! 助かる!! 名前は!!」

 

「重巡洋艦『黒兎』です!! 詳しい挨拶は後にして急ぐのですよ!!」

 

「ああ!! ついてこい!!」

 

~~~~~~~~~~~~

 

緊急入渠施設に浦風を搬送し、黒兎達によって早急に手当てが施された。

数時間後には容態も安定し、しばらく休めば目覚めるという。

 

「とのことですね」

 

「報告ご苦労瑞鳳。他には何かあったか?」

 

「確証をもって言えることではないけど……彼女は恐らく、何処かの鎮守府に所属していたんじゃないかな―……と」

 

「あ? 何でそう思うんだ?」

 

「えっと………実は深海棲艦は放浪艦を襲うことは無いの」

 

「あ? それは初耳だ」

 

恐らくだが放浪艦娘は別段何かをするわけでもなく、故に深海棲艦も敵と認識しないのだろうと思われる。

 

「けど浦風ちゃんの傷は明らかに深海棲艦の攻撃によるものだったし……もしかしたらどっかの鎮守府に所属していたのかも……」

 

「………そうか……古鷹~」

 

「ん? どうしましたか提督?」

 

「駆逐艦・浦風の捜索届を出している鎮守府があるか調べてくれるか? 俺は様子を見てくる」

 

「はい。分かりました」

 

古鷹が敬礼するのを見て十六夜は手を振って退室するのだった。

 

~~~~~~~~~~~~

 

「……お、不知火」

 

「どうも提督。丁度良かったです」

 

「?」

 

「浦風が目を冷ましました。提督を呼びに向かおうと思っていたところなので」

 

「おう分かった」

 

不知火はそのまま去っていき、代わりに十六夜が病室に入る。

 

「目覚めたってな」

 

「あ、提督」

 

付き添っていた五月雨が椅子から立ち上がり、十六夜はそこに座る。

 

「俺が駿河鎮守府の提督、逆廻十六夜だ。調子はどうだ?」

 

「まあまあじゃ。助けてくれてありがとね。うちは浦風じゃ」

 

「おう。早速聞きたいが浦風。お前はどうしてあんな重傷だったんだ?」

 

「あー。実は出撃中に深海棲艦の猛攻を受けてな? 艦隊とはぐれてしまうとったんじゃ」

 

「じゃあやっぱり他の鎮守府の艦娘なんですね?」

 

「おし。なら今お前の所属を調べてるから、それが分かったらお前を返してやる。それまでしばらく休んでろ」

 

「助かるわ。ちっとまだ本調子とはいかんけぇの……」

 

見るとまだ痣などで痛々しいことになっている。

相当にダメージを受けたのだろう。

 

「五月雨。しばらく浦風に付いていてやってくれ。誰か近くにいた方が浦風も安心するだろ」

 

「分かりました。浦風ちゃん。何かほしいものとかあったら言ってね」

 

「ありがとね。まあちょっち心配じゃけん」

 

「ああ。五月雨はドジっ娘だから気を付けろよ」

 

「ああ。納得じゃ」

 

「提督!? 浦風ちゃんまで~!!」

 

ヤハハと笑う十六夜。どうやら仲良くできそうだ。

 

~~~~~~~~~~~~

 

その日の夕方、執務室の電話が鳴った。

 

「うす。駿河鎮守府だが」

 

『十六夜君か? 横浜鎮守府の蛟劉や。少し話があるんやけどかまへんか?』

 

「別に構わねえよ」

 

『ああ。それと近くに艦娘は居るか? 内容が内容やからあまり聞かせたくないんやけど』

 

「………だとさ。扶桑、少し出てくれるか?」

 

「はい」

 

現在の秘書艦を務めていた扶桑は静かに退室する。

それを確認した十六夜は蛟劉に話を促す。

 

『君が保護したっていう浦風ちゃんやけど、所属の鎮守府は分からなかったんやな?』

 

「ああ。古鷹は『捜索届を出している鎮守府は無かった』と言ってたし、浦風本人はその辺りははぐらかしちまうし」

 

結局、浦風が何処の鎮守府に所属しているのかは不明なのだ。

 

『君ん所の古鷹ちゃんと瑞鳳ちゃんから聞いて僕も気になって調べてみたんよ。僕はそれなりに他の鎮守府の状況とかも知っとるし』

 

「………てことはもしかして分かったのか? 浦風の鎮守府が」

 

『せや。けど……ちょっと聞くなら覚悟した方がええよ』

 

普段の蛟劉とは明らかに違うこと物言いに十六夜も緊張する。

 

『十六夜君は今海軍が抱えている問題って分かるかな?』

 

「いや………俺軍人じゃねえし」

 

『せやな。じゃあ簡潔に言うけど……それはブラック鎮守府って奴や』

 

「ブラック鎮守府? ブラック企業みたいな奴か?」

 

『そう。まあ言ってしまえば艦娘達の扱いが酷い鎮守府や。補給や入渠が最小限やったり大破していても進軍したり、最悪なのは轟沈させるつもりで無理やり海域を突破したりな』

 

「………最低な提督じゃねえか。確かに艦娘は兵器だが生きてる命だってのに……ってちょっと待て。それを言うってことは……」

 

十六夜が脳裏に浮かんだ事、出来ることなら否定してほしかったが現実は非情だった。

 

『浦風ちゃんが所属していたのはブラック鎮守府や。本人は艦隊からはぐれたと言ってたやろうけど多分、本当は逃げ出したんやろうな』

 

「…………………」

 

ギリッ、と右拳を強く握る。

十六夜の怒りを察した蛟劉は宥める口調で、

 

『気持ちは分かるで。けど他の鎮守府と揉め事を起こしたらあかん。正規軍人でない君は特に。君んとこの艦娘にも責任が来るかもしれへん』

 

「……………なあ蛟劉。浦風のいた鎮守府がこれから捜索届を出す可能性は?」

 

『提督の人間性を見た限りゼロや。それがどないしたんや?』

 

「…………そうか。なら」

 

「て、提督~~!!」

 

と、そこに島風が執務室に飛び込んできた。

 

「うるせーぞ島風。今電話中だ」

 

「それどころじゃないよ!! 提督!! 浦風ちゃんが艤装を持って出ていっちゃった!!」

 

「!!」

 

~~~~~~~~~~~~

 

「………夜の海は暗いけんの」

 

自分の艤装を装着した浦風は静かに海に入ろうとする。

 

「何処に行くんだよ」

 

「ッ!!」

 

と、そこで背後から声をかけられた。

振り替えると十六夜が五月雨と共に立っていた。

 

「………いや? ただうちは自分の鎮守府へ帰るんじゃよ」

 

「夜は危ないよ? 深海棲艦も狂暴になるし……」

 

「それに過酷な環境に自分から戻るのか?」

 

それを聞いた浦風はビクッと反応する。が、ポツポツと話はじめた。

 

「わかっちょるよそげなこと……けど早よう戻らんとまた怒られる」

 

「でも………」

 

「でもじゃない!! …………もう、殴られたくないんじゃ……」

 

十六夜は浦風の肌に痣を見た。

彼はそれを戦いで出来たものだと思ったが、実際には違うのかもしれない。

 

「………世話なったね。ありがとう。そしてさようならじゃ……」

 

浦風が海面を歩き始めるその時、

 

「えっ!?」

 

グイッと浦風が引っ張られて岸に揚げられる。そして―――――

 

ギュッ

 

「なっ!?」

 

十六夜は彼女を抱きしめた。

 

「ちょ、司令官さん……?」

 

「………………」

 

扶桑の時とは違い、何も言わない。

ただ、優しさが伝わるように抱きしめる。

そしてその心は、傷ついた浦風に染みる。

 

「…………ッ!! う」

 

艦娘になって初めて与えられた慈愛と優しさ。

それはぼろぼろの心を癒していく。

 

「う、うぅ、うわああああああん!!!」

 

「……………辛かったな」

 

優しく背中を擦る。

駆逐艦としては大人びている浦風だがまだ幼い面もある。

 

「帰らなくていい。今日から此処がお前の帰る場所になってくれる」

 

「うぐっ、しれ……十六夜さん……うわああああ!!」

 

夜の港で、浦風は傷ついた分だけの涙を十六夜の腕の中で流した。

 

~~~~~~~~~~~~

 

翌日

 

「提督!! 今日はうちが提督の面倒を見るけえね!!」

 

「はっ?」

 

正式に駿河鎮守府に在籍することになった浦風は早々にそんなことを言った。

そして五月雨がそれを黙っている訳はなく、

 

「ま、待って!! 提督の秘書艦は私だよ!!」

 

「ん~? でもドジっ娘の五月雨ちゃんよりかはうちは役に立つじゃろ?」

 

「で、でも私の方が任期は長いし!! 私の方が先輩だし!!」

 

かしましい水色駆逐艦二人に苦笑いしながら壁に寄りかかる十六夜。

 

「……五月雨と浦風には負けたくないの……」

 

「お前もかよ扶桑」

 

「冗談ですよ。半分」

 

「ヤハハ……。ったく人気者は辛いぜ」

 

「ふふ。ですが………浦風ちゃん。楽しそうに笑ってますね」

 

「………だな」

 

こうして、駿河鎮守府に浦風が加わったのだった。

 




うらちゃん可愛い♪ さっちゃんも可愛いけど!!
あ、僕水色の髪の女の子が好きなんだ

一部では三人目のダメ提督製造機と呼ばれる程甘えたくなる浦風ですが今回は逆に甘えて貰いました
………甘えるってなんだっけ 夕雲も出したい

出番は僅かでしたが問題児を代表するキャラ、黒ウサギが登場!!
艦娘の彼女は重巡洋艦で"黒兎"の表記です。ウサ耳は艤装です。

ではまた次回
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