逆廻提督は問題児!!   作:ファルコン・Σ

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この作品を始めて一番やりたかった話です。

史実ネタを含みます。ちょっと難しいかも



青い少女の傷・前編

ある日のことである。

夜中まで十六夜は執務室で仕事をしていた。

 

「………あ、やべえ。もうこんな時間か」

 

作業に没頭していたが故にふと時計を見ると既に日付も変わり、深夜2時。

 

「ん……そろそろ寝ないとな………五月雨?」

 

秘書艦の姿が見当たらず、辺りを見渡すと五月雨は部屋のソファーに横になり、可愛らしい寝息をたてていた。

 

「………ま、子供にはこの時間帯はキツいか」

 

もう大体の艦娘は眠りに入っているであろう(夜戦好きの川内などは起きている可能性がある)。

なので十六夜自身が五月雨を寮の部屋まで運ぶしかない。

 

「………涼風もだが軽いなやっぱ」

 

所謂お姫様抱っこで五月雨を運んでいると道中、五月雨が身を捩った。

 

「ん、んん………」

 

「あ。起こしちまったか……」

 

しかし、彼女の瞳は開かれず、動いたのは口だった。

 

「あ……比叡さん……ごめんな…さい……」

 

「あ?」

 

寝言にしてははっきりしている。しかし五月雨は熟睡しており、それ以上は何も言わない。

 

「寝言って案外重要なんだよな………比叡か……」

 

~~~~~~~~~~~~

 

翌日の昼。

 

「何処だ? アイツは確かこの辺りにいる筈なんだが……」

 

とある艦娘を探して鎮守府を歩き回る十六夜の姿があった。

他の艦娘達に目撃情報を聴いて場所に目処を付けたのだが、

 

「ん~~……」

 

「お姉様! 昼食は美味しかったですね」

 

「そうですネ比叡。私も料理が上手くなって提督にランチを………」

 

「お。いたいた」

 

と、目当ての艦娘を見つけた十六夜は彼女に近づいた。

 

「よう」

 

「Wow!! 噂をすれば提督ネ。どうしマシタカ?」

 

いつも通り元気で快活な金剛に笑いかけながら十六夜は用件を話す。

 

「ちょっと真面目な話があってな。比叡、来てくれるか?」

 

「ふえ?」

 

金剛型の二番艦、『比叡』は十六夜の言葉に首を傾げるのだった。

 

~~~~~~~~~~~~

 

執務室。秘書艦も居らず、十六夜と比叡の二人だけ。

そんな状況にソファーに座っている比叡は、

 

「あ、あの提督……? 私にはお姉様という存在が……」

 

「告白とかじゃねえぞ」

 

「え、ち、違う……? は、恥ずかしい………」

 

一人で顔を真っ赤にする比叡。

何処かしら"一生懸命で甘えん坊の後輩"という印象がある彼女を十六夜や金剛は微笑ましく思っている。

 

「とりあえず飲むか? 金剛のやつよりは劣るだろうが」

 

「あ、頂きます」

 

出された紅茶を口にする比叡。

「あ、美味しい……」の呟きに思わず十六夜は小さくガッツポーズ。

 

「それで、話ってなんですか?」

 

「ああ。単刀直入に一つ聞くが………お前、五月雨に何か嫌なことか変なことをされたか?」

 

「え?」

 

「或いはお前の迷惑になりそうな何かを……」

 

「ちょ、ちょっと待ってください提督? そんなことありませんけどなんでいきなりそんなことを?」

 

「ああ、実はな」

 

 

十六夜、昨夜の五月雨の寝言について説明。

 

 

「言い方的にただの夢とは思えないシリアスだったし、その後も何回もお前に謝ってたんだよ。本人は覚えてないって言うからお前に聞いたんだが」

 

それを聞いた比叡は暫く考え込む。

一分ほど静寂が続くがやがて彼女は話し始めた。

 

「提督は私達の"軍艦時代の記憶"がどうなってるか知ってますか?」

 

「いや、知らねえ」

 

それを聴いて比叡は説明を続ける。

 

「前提として私達の魂は第二次世界大戦や太平洋戦争の軍艦に宿っていた魂と同一です。なので軍艦時代に起こった記憶を引き継いでることがあるんですよ」

 

「そうなのか?」

 

「とはいえ、それは艦娘それぞれですけど。自分が活躍した戦いを誇っている艦娘。沈んだ瞬間がトラウマになっている艦娘。ショックな出来事でその記憶が消えてしまっている艦娘……など、様々ですね」

 

此処で一度紅茶を飲んで休んでから説明を再開する。

 

「因みに魂は記憶だけでなく行動や性格にも表れることがあります。夜戦好きの川内。機械に強い夕張。敵に優しい電などは分かりやすい例でしょう」

 

「なるほどな。つまり五月雨のも軍艦時代の記憶……だと?」

 

比叡はコクリと頷いた。

 

「第三次ソロモン海戦の時です。混乱の戦場で五月雨は私に発砲したんです」

 

「は!? 味方にか?」

 

これには思わず十六夜も大声を上げてしまう。

 

「て、提督声が大きいです………」

 

「わ、悪い」

 

「いえ……まあその時はあまりにも撃たれまくったので私もキレちゃって副砲で脅したんですよ」

 

「だろうな………それで無意識にお前に謝罪しているのか」

 

「恐らく………ただ五月雨が罪の意識を抱えているのは私だけではないですよ」

 

「…………まだ何かあるのか」

 

既に嫌な予感を感じている十六夜。

 

「ブーゲンビル島沖夜戦ど白露と衝突して大破させたり……まあこれは五月雨に責任はないんですけど……」

 

「ああ。あいつのことだからな………」

 

気にしているのは明確である。

 

「あと……夕立を介錯しようと放った魚雷が全部外れたり」

 

「………それはまだ笑い話で済むだろ」

 

「ソンソル島の戦いでは煙と泡が出ているのにそれを気にせずにいたら敵潜水艦でそれによって夕張が沈んだり……」

 

「………潜水艦なら仕方ないかもな」

 

「武蔵の護衛任務中に迷子になって利根が探しにいったり」

 

「……………………」

 

「最期は座礁した無人の貨物船が気になって座礁。攻撃を受けて沈みました」

 

「……………アイツのドジは筋金入りか」

 

さすがに頭が痛くなった十六夜だった。

 

「とはいえ五月雨は縦横無尽に海を駆け巡り、戦い続けた頑張りやさんなんですよね………ただ性格上マイナスのことだけが引っ掛かってるんですよ」

 

「なるほどなあ………」

 

思ったより深刻な五月雨の事情。

今は特に支障は無いかもしれないがこうした精神的な問題は後々のことに大きく響く可能性がある。

 

「………一つ聞かせてくれ」

 

「はい」

 

「比叡はその………五月雨がお前に発砲したことを恨んでいたりするのか?」

 

十六夜はそれを危惧していた。

しかし、

 

「そんなことはありませんよ。五月雨は昔も今も仲間ですから」

 

「………そうか。お前がそんな性格で良かった」

 

ホッとしたような十六夜の表情は珍しい。

 

「ならお前に一つ頼みがある」

 

「はい!」

 

「次の出撃は比叡、夕張、夕立、白露、そして五月雨だ。最後の一人は五月雨と相性が良さそうな奴を選んでくれ」

 

「!! それって」

 

「ああ。五月雨のトラウマを払拭する」

 




最近は五月雨関係の話が多い気が………
メインヒロインだもんね。仕方ないね

自分、意外にも比叡が好きです。
作中にも書いた"一生懸命で甘えん坊な後輩"って感じが

次回、五月雨はトラウマを払拭できるのか

お楽しみに
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