やはり俺が義勇軍の小隊長に選ばれるのはまちがっている。 作:英紗
振り替えって改変しました
した場所としましては
コルン村→市に変更
ユイの性格改変
キャラ立ち強化
コルン市の詳細描写です
またどんどん改変しそうですがまたよろしくです
序章ー流浪のダルクス→晴天の霹靂ー
俺はハチマン。名字はない。歳は17。
なぜないかというと俺がダルクス人という人種だからだ。俺たちのご先祖様がとんでもない邪法にてこの世界を滅ぼそうとして別の人種の圧倒的な力に退治された。だから俺たちはその代償に名字を失った。
そんなことは信じないし、信じるに値しない。まず邪法とはなんだ。この世の中そんな、オカルトめいた手段で世界が滅びるとも思わないしそれを信じた当時の人間にも笑ってしまう。
だが、そんなことをみんな信じてしまっている。ダルクス人を見ただけで毛嫌いするやつもいるし、嬉々として意思を投げるやつもいる。そういうやつらはごく一部だが、多く-といっても割合的には少数派らしい-の人間はこの黒髪をみるとめを背け、あるいはないことないこと嘯き噂する。
そう、ダルクス人に生まれた俺を含めてそのよくわからない古典経典から生まれた差別意識に悩まされている。それでもこの国に生まれてよかったという面もある。三年で王立士官学校を卒業できたし、流浪のみとはいえダルクスがとしっても働かせてくれるのだ。隣の帝国の迫害事情からするとまだ、マシなのだろう。
ガリア公国という国。俺たちが住んでる国だ。東を帝政にて統治する帝国、排して共和国制にて統べる連邦、どちらもに挟まれし小国が俺たちの故郷であり流浪の旅の全てである。隣の帝国は酷いダルクス人狩りをするし、真反対の共和国側は外国人排斥意識が高い、必然的に国境は越えられない。なにより、この両国は長年対立し何度も戦争を繰り返してきた。その兵役に、よそものは真っ先に駆り出されるだろう、祖国でもないのに銃弾の雨あられにさらされて死ぬのは真っ平ごめんだ。だから多少でもダルクス人への差別の薄く祖国であるこの地で流浪ながらも骨を埋める気であった。そんな俺たちの旅も暗雲立ち込め始めていた。
俺たちが流浪の旅を開始してからはや五年がたった征暦1935年3月15日、それまで先の大戦の凄惨さから結ばれていた不可侵条約を帝国が一方的に破棄し、次々と軍を共和国領土に送り込み始めた。共和国側もバカではないらしく、これに応戦。馬鹿馬鹿しいほどの犠牲者をだしたことを二つの大国は忘れたのだろう。ただし、戦争には多くの人的資源と物的資源が必要となる、特に動けなくない兵士を動けるようにする治療薬は戦端を開いた以上必要不可欠となる、その資源が多くとれるガリア公国はさらに小国故に狙われやすかったのだろう。進行軍が迫っていた、公国はこれに国家総動員令を発令させた。この国は国民皆兵制度によって小さい頃から一般教養と平行して軍事訓練もさせられる。つまり、この国の国民は兵士から狙われる危険性もあるため、この進行で国境の町から避難する人たちがあとをたたなかった。
俺はこの事を好機と考えた。俺は働くのが嫌いだ、だが故さえあればその限りではない。つまり、士官を蹴ったとはいえ、士官学校の出の俺たち“ 兄妹 ” なら、戦争で人が足りないそうなので軍にも食いぶちがあるかもしれないと思ったのだ。なにより、この戦乱で活躍できればこの嫌な差別の目も和らぐだろう、そう思って俺は前者の理由を妹に話して首都までの準備品を調達しにガリア公国南部へ、途中生まれ育ったディバル山脈に“ 用事 ”を済ませて越えた。目指すは国境の町、コルンである。ここのビーフパイをもう一度食べて鋭気を養い、アーレム地方を通り過ぎて首都のランドグリーズだ。
途中目の前で鹿が突然倒れて事切れたけど偶然だよね?ハチマンコワガッテナイ
コルン市。かつての大戦で帝国の侵入を許して以来、起伏の激しい荒野以外なにもなかったここに直径20kmにもなる城塞が築かれた南部の関所の城塞都市。すり鉢型である一定進むと10mくらい凹んでいる。こんなのが五回ほどあり、村の人間はそれぞれを一階二階とよんでいる。戦車や歩兵が迂回できず、クローデンの森と山脈に囲まれてむしろ帝国側との交通がいいためか、ガリア人なのに帝国風の建物が多い。そしてなによりも煮込み料理とパイなまである。
大きなサイロを思わせる門の前でコマチが手続きを行い、開いた先500m先に同じ門がみえたのでまた同じような手続きをコマチがする。面倒くさい、なぜこの門存在するんだと思う?避難民を逃がして帝国兵を食いとどめるためなんだぜ?まぁ、むこうの帝国側はこれが五階続くんだからマシとはおもえるけどな!
「相変わらず感情が欠落したみたいな感想ばっかりだねお兄ちゃん。」
手続きはコマチに任せっぱなしだ。俺がしようものなら門番が通してくれない。ほら、いまも役人や衛兵が怪訝な顔でこっちみてるよ!すみませんね!腐った目をしてて!でも顔は整ってるから多少は許してくれてもいいだろ?だめ?世の中理不尽だ。ほんとに止められたことがあってからは全てコマチがやってくれるようになった。うちの妹天使だろ?
そんな事を考えてると、ふいに目の前にふさがってきたコマチと目が合う。やっぱり天使だ。
「うるせ、昔からって知ってるだろ?」
「うんうん、知ってるよ?」
そういってコマチはとなりに並び直す。
「それこそ、あちこちで野宿したり、お風呂はいれなくてやむおえなくはいった冬の川に一緒にはだかで入ったこともある血の繋がった妹のこのコマチにはなぁんだってわかりますから!」
そーですねー、理解のある妹を持てて幸せですねー。
コマチは妹、といっても血が繋がってるわけじゃない。俺が連れ子だからだ、俺は同じく国境の辺りで拾われたそうだ。拾われたときは子供が望めない夫婦だったから我が子のように扱ってくれたがコマチが生まれてからは・・・、いやよそうや。そんな両親から生まれたのにこいつはあいつらに似ずに五年前一緒に村から出てくれた。最後のあいつらへの人間への言葉とは思えない言葉だけは心配だが・・・。ともかく、村を飛び出したときに10歳だったコマチも5年一緒にさ迷ってくれたことに感謝している。あと天使。
一番底の五階街で俺たちはこれからいるものを買った。食料、雑貨、医療品、生理用品なにより・・・甘味!いやーこれがないとだめだよねー、コーヒーも苦いままだし!人生蔑まれ続けてるんだからコーヒーくらい甘くなけりゃ!ほらいうじゃん?「コーヒーは悪魔のように黒く、天使のように白く」ってさ?そういうことだよ!
流浪の身の癖にこの羽振りのよさは徹底的な倹約によって手にいれた。ゆえにコマチには苦労させられたなぁ、一緒に川をお風呂代わりにしたのは両手で数えきれない。あ、別に変なこともしてないよ?妹だし、そこはわきまえてる。ほら、むしろ妹だからこそってあるじゃん?でも、コマチはよく顔真っ赤にしてるけど。あれは恥ずかしいんだろうな、ごめんなぁー。
「お兄ちゃん!どうかな?」
あらかた買い終えたとき、帝国側の三階側にあるブティックに寄った。あちこちから聞こえるヒソヒソ声に心折れて何度も踵を返したがそのたびにコマチの100万ボルトの笑顔で袖を捕まれた。この鬼!悪魔!天使!あ、最後誉めてる。その件のコマチが今試着室からでてきた。膝下までのびたノースリーブの白のワンピース。その影の薄い胸をすっとそらす。顔はすがすがしいまで得意気。
「似合ってる?」
といってくるりと回転。スカートがめくれて見えた白色お尻もさすがコマチ、キュート・・・ん!?
「あ、あああの、コマチさん?」
「どしたのお兄ちゃん、目の腐りかたがいつもより3割増しだけど。」
まじで!?い、いやそんなことはいまはいい!!いまは・・・!
「し、しししし、した・・・!」
「あ、ああー。うん!履いてないよ?」
はあぁぁぁぁぁぁ!?
「だって、下着はコマチ的には贅沢品だもん!野宿生活で手洗いが多いでしょ?その時に洗う手間の割りに面積小さいからね。あ、別に見られても気にしないよ!?まじまじみるのはお兄ちゃんくらいだし」
そんなことを高らかに無邪気にぶちまける我が妹。知らなければよかった。だけどこうもおもった。
流浪の旅で一番苦労をしてるのは他ならぬこいつだろう、兄とはいえ男との女のプライドをかなぐり捨てた旅だ。何も思わないことはないだろう、と。
「でも、さわっていいのはお兄ちゃんだけだけどね。」
な、なにかきこえた。なにかな?ハチマンわかんない。とりあえずこれ以上コマチが女を捨てないように水浴びもなるべく別々にすることにしよう。そうしよう。
「仲のいい兄妹ですね。」
支払いのときに出口近くのレジカウンターでマダムにそういわれた。
「そう見えますー?」
コマチが俺より先に話す。これで俺の会話が潰れたが特段話に乗りたくもなかったので安心する。別に会話が続かなりそうだからとかじゃない。この人が一連の会話を耳にするまで目を見て怪訝な表情してたから切なくなったわけでもない。
「いつかは兄妹の関係から昇格する予定ですけどね。」
さっきから耳が悪くなったのか、コマチによく似た声の幻聴がきこえるなぁ。コマチこんなこと言わないもん、俺の天使だもん。
「さきほどはごめんなさいね。でも、あなたたちみたいな仲のいいダルクス人の兄妹。珍しくなっちゃったからね。」
そういって悲しい顔で出口の外を見つめる。何台目かわからない幌を着けたトラックがラグナイトでできた青く光るラジエーターを唸らせて通りすぎていく。
「もう、三千人がこの町から出ていったわ。」
戦争の機運が高まったのはここ最近の個と、だからか蜘蛛の子を散らすように国境沿いから奥地に逃げ出すひとが跡をたたないとか。
「そういえば、あなたたちはなぜこの町に今頃きたのかしら?既に外門に帝国が押し寄せてきてるのよ?捕まっちゃうと大変よ?」
「実はミートパイを食べに来たんですよ!」
元気な声が響く、するとマダムは「まぁ」と顔を明るくした。女性ってすごいね、すぐに明るくも暗くもなれるし。
「じゃああの店かしら?奇遇ね、実はこれから最後のお手伝いをして帰る子がそこによっていくのよ!」
といったとおもったら。自分達の後ろの誰かに声を・・・って、やめてぇ!
「はい?マダム、まだ仕事終わってないよ?」
「仕事なんてもういいわよ、あなたたもすぐに施設に戻って避難の準備をなさいなっちゃったからね。それと、この人たちもあの店にいくから案内してちょうだい。」
ちょっと!やめてください!
どうせこのあと悲鳴が上がって衛兵呼ばれちゃう!
「ほんと?」
恐る恐る振り替えるとカットソーにチェックのミニスカートの女子がたっていた。ほら見なさい!この人、人のかお見て呆然としてるじゃない!もうすぐ叫ばれるわよ!
「・・・っ!ね、ねぇ?昔、この町で女の子助けなかった?」
なんだ?その質問は?というかその表情なに?
「・・・あー、助けたことはないが迷子の付き添いならしたことあるぞ・・・。」
「そっか!ううん、なんでもないの!マダム、行ってきます!」
あ、ちょっと!うでつかまないで!やめて通報されちゃう!もうブタ箱に何にもされてないのにぶちこまれるのやだ!ハチマンかなしい!こ、コマチ助けて・・・、
「なんで腕捕まれてるの?コマチとも腕組んだことも繋いだことも三ヶ月ほどないのに。」
え?なんでコマチさんそんな怖い顔してるの?もしかしておれ詰んだ!?詰んだの!?
連れ立って帝国側の主要道路を二回に登る。ちらと横目に見たが、やはりどこも空き家になっているようだ。
「そういえば、自己紹介まだだったよね?あたしはユイ!苗字はユイガハマっていうんだ!」
さっきからコマチとすっかり打ち解けてたソイツがいう。というか、さっきはハイライト仕事してなかったのにもう仲良くなってたんですねコマチさん。やっぱり女ってわかんない。
苗字があるってことはガリア人なのだろうか、カットソーのうえから黒いパーカーを羽織り、特徴的だったオレンジのセミショートと右側頭部のお団子を隠している。というか、同い年くらいだよな?子供っぽいし、でもあの赤い目はきれいだな、うんきれい。いかんいかん!こんな見とれていたらお金を要求されたことあったなこと思い出して、意識を逸らす。
「コマチです。ダルクス人だから苗字はないんです!で、こっちが兄のハチマンです!」
今自己紹介してるってことは名前知らないで仲良くなってたの?やっぱり女の世界ってわからない。
「・・・うす。」
「あー、お兄ちゃんはこう見えて照れ屋で恥ずかしがり屋なんで。」
「・・・うっせ、はじめて会う人と話したくないだけだ。会話が続かないからな、更に相手を不機嫌にさせるまである。」
「もー、ごみぃちゃんそれは相手と馬が合わないんじゃなくてコミュニケーションとらないからじゃん。」
ば、ばっかお前!俺みたいにコミュニケーションの達人はいないぞ?その場から立ち去るともれなく罵声と石のプレゼントがよく飛んでくるからな!
「ふふっ。」
可愛い笑い声がしたかと思うと一連のやり取りをみていたその子が笑っていた。というかすっかり忘れてやってた。ハチマンハズカシイ。
「すみませんユイさん、見苦しかったですか?」
「んーん、違うの。羨ましかったの。」
そういって下階の町を眺めるユイガハマ。
「あたしね。この町の孤児院で育ったんだ。だから、家族がいないの。この町の帝国側の最初の門の前で見つかったらしいんだ。あっ、でも孤児院の皆はよくしてくれるし、さっきのマダムにみたいに孤児と知っても優しくしてくれる人がいるから悲しくはないよ?」
でも、とユイガハマはうつむく。
「たまに無性に家族に会いたいとか、血の繋がりっていうの?に憧れることあるんだ。」
戦争があればこの町出ていかなきゃならないし、と続ける。
「この町を出るとね、ランドグリーズに孤児院のみんなといく予定なんだ。でも、行ったら新しい場所で新しい空気になって、みんなバラバラになると思う。」
離れたくないな、といったきり町を眺めるだけになった。
「・・・ユイガハマ。」
って!なにしてんだ俺は!そのあげた両手をどうするおつもりですか!?初対面の女に!?いやいやいやいや!・・・真面目な話、この子にはもっと素敵な相手がいるだろう。こういうのはそういうやつに任せればいい、そつ思って俺は無理矢理腕を下ろした。
「そういえば!ハチマンくん!」
顔をあげたかと思うとユイガハマは頬を膨らませてこっちをにらんでいる。さきほどの影はないけどなんですか?その顔。
「私のこと!なんで苗字なの?名前で呼んでよ!」
「いやそこは、ほら。初対面だし。慣れないし。」
「コマチは初対面だけどユイさんって言ってるよ?」
余計なことを言うんじゃありません!ふえぇ・・・コマチが意地悪な顔で意地悪してくるよぉ・・・。
「そりゃ同姓同士だからだろ?ほら異性同士だとあれがあれなんだよ。」
「名前でよんでくれないの?」
「あうえ!?」
や、やばいやばい!俺のようなプロじゃなきゃ致命傷ですまなかったろ!致命傷なのかよ!そうじゃなくて!何がヤバイってこいつ天然だろ!
「あ、あのユイガハマ?」
「ユイ!」
「あ、あぅ・・・ユイ・・・ガハマ。」
「んー?聞こえないよー?」
助けてコマチ!お兄ちゃん死んじゃう!あ!顔を横に振りやがった!薄情もの!
「・・・。」
「はい、もう一回!」
「ゆ、・・・ユイ。」
は、恥ずかしい!
「うんよろしくね!ハチマン!」
向日葵が咲いた、俺の養分を吸って。げんなりした俺を引っ張って、目的の店へと歩みを再開した。あー恥ずかしい恥ずかしい!
「まぁ、どれだけ進展してもコマチが1号なんですけど・・・。」
ね、ねぇ顔が熱いのに背筋が寒いって風邪だよね?それかたぶん誰かがダルクス人だと蔑んでるんだろうな。そう思うとちょっと冷静になれた。
「サキサキーきたよー!」
リング上になってる町の二階、その北の帝国と王国の間、産業街に天の邪鬼のように黒いレンガ積みの平屋はあった。まるで俺みたい、やだ共感しちゃう!
「サキサキいうな!」
ちゃんとファーストネームをいえ、という青い自警団制服の女がおくのカウンターで吠える。
「まぁまぁ細かいこと気にしない!」
そういって客の癖にカウンターの内側に入り込んで抱きつく。咎めたらこっちにまで巻き込まれる。あの人は犠牲になったのだ。俺の尊い犠牲にな。
「お兄ちゃん!ここ変わってない!」
子供のような声でカウンター席に座るコマチ。こじんまりとしたなかにテーブルがふたつ、カウンターテーブルがひとつ。それだけだ。それだけの分なつかしい。
五年前、ディバル山脈を飛び出して二年この町に住み着いてたとき、必死に働いて貯めた金をはたいて兄妹で食べたのがここのミートパイだった。見た目こそ肉が入ってるのにベリーをたっぷり入れて懐疑的なものだったが、味は見た目に反していた。
カウンターに腰かけるとさきほどの自警団のウェイトレスがお冷やをもってきてくれた。
「・・・どうぞ。」
愛想悪!?そして怖!?更に怖!?
「なんだよ?」
なによりもこの無愛想にこいつの見た目だ。青みがかった流れるような髪に、その赤い目!これがさらに恐怖を醸し出している。・・・はて?この特徴的なのどこかでみたことあるような・・・。
「その・・・。もう少し、愛想良くできたら印象変わるかもな。」
「なっ・・・!?」
あれま、みるみる顔が赤くなってら、若干面白いかもしれない。
「お兄ちゃん・・・、また、ナンパ?」
隣の席でメートパイを頬張ってたコマチさんがお目目真っ暗にしてこっち向いてらっしゃる!というか口にいっぱいベリーがついてて帰り血みたいで怖い!
「ナンパじゃねぇよ!というか口ふけ!」
「ハチマン、あんまりみんな口説いちゃひどいよ?」
「お前もか!」
なんでだよ!なんで初対面に近いユイにまでそんなこと言われるの!?
「あ、あたしは・・・接客でちゃんとできてるし・・・。ほ、ほんものの顔だって、兄弟たちにはできるんだ・・・。」
お盆に口を隠しながら言うこいつ。あ、何となくわかったがボッチ体質が俺と同スペックなのかな?なにそれ共感してかわいく思っちゃった。
「サキ、孤児院に弟と妹いるもんね。」
「知ってるのか?」
「うん!同じ孤児院なの!」
「サキ=カワサキ。ようこそ、蛇の舌へ。といってもそろそろ店じまいだがね。」
無表情に近いなかに悲しい色が増える。
「それって、その服に関係あるの?」
ユイが訪ねる。そういや自警団の服着てたな。というか、いつまでお前はカウンターの中にいるつもりだ。
「ここの自警団の隊長まかされてね。そろそろ帝国が最初の門に近づく頃合いだから指揮を執らなきゃいけないんだ。」
「そのコミュニケーションでねぇ。」
うっさい!とつけくわえられた。
「お兄ちゃんは余計なことをすぐいうねぇ、ポイント低いよ?」
「うっせ、愛想よくしても蔑まれるんだから愛想よくする必要はない。むしろ愛想よくすることによって更に罵声のおかわりが飛んでくるまである。情報源は俺。」
「わ、笑えないよハチマン。」
女子トークに花が咲きたまに寄越されるトスを叩きつけてバウンドさせて返す俺がそろそろほっとかれ始めた。なにそれひどい。仕方ないので店のなかを見回してるとコマチの席の3つ隣、一番はしっこの紺の長髪と目があった。
「・・・。」
「・・・。」
ガタッ、と音がしたと思ったらそいつが椅子の背もたれ側を盾にしやがった。
「おい。」
「話しかけないでちょうだい。その腐った目もこちらに向けないで、できれば呼吸もしないでちょうだい。」
おい!それじゃ俺の生命活動が止まっちゃうだろ。
「あなたが死のうと私の知ったことではないわ。でもそうね、死体の処理が大変だから生きることを許可するわ。」
よくそんな毒をしれっと言えるなこいつ。
「あの、どなたかは存じ上げませんが。少々毒が過ぎるのではないですか?」
これは俺じゃない、さきほどハイライトを戻して三人でおしゃべりに花を咲かしていたコマチの声だ。やっぱり俺の天使だった!だからその背中からわかる憤怒のオーラを消そうな?な?お兄ちゃんも滅却されちゃう!
「あら、さきほどから聞いてたけどあなたこの腐った目の妹さん?
噛みつくのはいいけど、こんなのかばうのは賛成しないわ。」
「たしかにお兄ちゃんは怠け癖が抜けず、人よりも甘味に目がなく、妹を抱き枕にしないと夜も眠れず、女性とおしゃべりも妹を介さないとなかなかできませんが。」
さらに息つぎをせずにいったそいつのすぐあとに静かにそういった。というか、火の粉がこっちにきてるよ!?むしろこっちに火が向いてるよね?ハチマンナイチャウ
「でも!初対面のあなたにそこまで言われるほど醜い人間じゃない!むしろ、あなたの方が人間できてないじゃない!」
「いってくれるじゃない。あなたのお兄さんとやら、擁護できるほど立派には見えないわ。」
そういって長い髪をたくしあげる。その黒いドレスもそうだが自分に自信ある割りに負けず嫌いなのな、初対面で攻撃されたの俺だけど。
「そんなこといっても!あなただってダルクス人じゃない!蔑まれるのは一緒なのに!」
とうとう泣き叫ぶコマチ。そう、こいつの紺の髪は俺たちと同じなのだ。この色は俺たちダルクス人の象徴。蔑まれの象徴だ。そこをつかれたのが意外だったのが、ソイツは目を見開いて黙る。さて、そろそろ俺の出番かな?妹を泣かされたし、真打ちの登場で、
「二人ともやめてよ!」
出番を奪ったのは先ほどまでサキサキに抱きついて怯えていたユイだった。
「私はよくわからないけど!ダルクスの人って同じ人とは仲良くなんでしょ?どう考えてもそんな雰囲気じゃない!」
「その教えはいわないでほしかったわ。」
ほう・・・。
「奇遇だな。ちょうど俺もそう思ってたところだよ。」
「忌々しいわね。」
「まぁ聞け。差別される民族なんて差別される度に色々変わるからな、今のはコマチが喧嘩買ったから止まらなくなっただけ、そうだろ?」
「・・・。そうね、遺憾ながらそうよ。」
まぁ、こいつは本来悪くないやつなんだろう。少し口が達者で負けず嫌いな感じ。そんなやつ。
「ごめんなさいねコマチ・・・さん、わたしも買い言葉に乗ってしまって色々いってしまったわ・・・。」
そう俺のむねでグズグズいってるコマチに話しかける。
「私じゃないです。謝るのは。」
「・・・そうね。ごめんなさい、えっと・・・ハイエナくん?」
「ちがう!!」
ともあれ、コマチはこいつと仲直りできたらしい。
「改めまして、私はユキノよ。」
「はじめまして!コマチです!」
「私はユイ!でこっちが、サキサキ!」
「サキ!・・・ども」
やっぱり、女子の適応力半端ないですね。俺には無理無理。
「で。そっちの腐りかけくんと。」
一文字もあってない!この、ドレスだからずり下がらないように一部分盛ってるくせに!
「なにか失礼なこと考えてるかしら?」
「・・・。」
そ、そんなことないですよ!?
「沈黙は肯定なのよ?腐りきりくん。」
そこでおもった。あぁ、これが、詰みってやつかと。
「サキさん!大変です!」
主に俺がつるし上げられて
馬鹿話に花を咲かせていたとき。
その知らせは届いた。
帝国が5つある関所の門を3つまで突破したのだ。
晴天の霹靂だった。
「なんでだよ!あの門はラグナイト手榴弾でも数日かかるんだぞ!」
サキが悲鳴をあげて隊員にいう。
「まさか!」
「はい!戦車です、敵は数十両にも及ぶ戦車部隊で侵攻してきています。」
「そんな・・・。」
呆然とするのも無理はない。自警団では戦車を相手にする対戦車兵がいないのだ。
「そんなに戦車を・・・どうして投入したのかしら?」
ユキノが首をかしげる。そんなの決まっている。
「クローデンの森を抜けるためだろ。」
考えれば簡単だ。おそらく敵の狙いはガリア中心部、原生林の多いクローデンの森を歩兵だけで抜けるのは無理がある。
「おそらく、敵の指揮官は恐ろしく頭が切れるな。」
「なるほど、ならもう門の死守では意味がないわね。」
「ユキノ、おまえ適正兵科は?」
「軽々しくおまえといわれるほど地位はしたじゃないわ。」
「御託はいい。」
「・・・突撃兵よ。」
不服そうにいう。
「あたしは偵察兵で、サキサキもそうだよ!」
「俺も偵察兵で、コマチが支援兵か。」
「ね、ねぇハチマン?」
おずおずとユイがやってくる。この状況に一番緊張しているのだろう。
「門の死守がだめなら、さっさと人の脱出が優先されるよね?」
「不本意だけどな。」
あぁ、労働したくないのになぜ舞い込んでくるのか。ハチマン働きたくない。
「なら、お願いがあるの。」
真剣な顔をあげるユイ。
「この先に上水道へ続く道があるからそこからガリア側に抜けて、それで・・・。」
「孤児院のみんなを助けたいの!」