やはり俺が義勇軍の小隊長に選ばれるのはまちがっている。   作:英紗

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ハーメルンへの書き方は
鳥瞰と、あとがきがない状態で書くことにしています

※ガリア『公国』なのに『王国』表記になっていたところを修正しました


一章ーコルン村撤退戦戦ー Re

 

四つめの門が小気味いい開門の音と共に開く、もっとも崩れ落ちたんだがな。

他愛ない、俺たちのときは最初から全力で抵抗したってのによ。戦車を見た瞬間蛇ににらまれた蛙のように奴さんたち戦意を喪失しちまったよ。

 

「イエーガー将軍!」

 

「あぁ!見えていたよ。休みたいところだろうがもう次も頼むよ。今日はクローデンの森の中までいかなきゃならないからな。ここでつまずくわけにはいかん。」

 

「はっ!」

 

さて、他の将軍はどうなさってるかな?あの御老体はすでにファウゼンまでのに足掛かりと情報を得ている頃だろう。

女のほうはどうだ?中部を任されていたが、指揮はそんなには高くないと見たんだが、個人の力量でなんとかなるか?それにあいつはマクシミリアンに一番近い・・・。なんとかなるだろう。

ともかく、ギルランダイオもなんとかなるだろう。

 

「将軍。」

 

「ん?なんだ?」

 

思考の波に沈んでいたようだ。

兵士の声で我に返るなんざ俺らしくもない。

 

「たった今、第五の門を突破できたとの情報が。」

 

「そうか、みんなよくやった。」

 

門が倒れる音がしている。俺たちの、俺の夢の。いや、ガリア人の絶望の音が。さぁ、始めようじゃないか。

 

「機甲部隊!前へ出ろ!

心配するな、俺の部隊は無敵の戦車部隊だ!」

 

このラディ・イェーガーの大博打をな。

 

 

 

 

ー帝国が3つめの門を破った頃ー

 

「助けるのはいいわ。でもどうするのよ?」

 

ユイの言葉に真っ先に反応したのはユキノだった。そりゃそうだ。

唐突にそんなこと言われても部外者じゃ動けない。俺だって動かない。

 

「ついてきて。」

 

ユイがいい放って店の奥にきえたのでに着いていくと裏口出てすぐのマンホールのふたを開けていた。

 

「ここから地下水路にいけるの。この町はディバル山脈からの水を町中に流してるんだ。

私たち孤児院はもうどこに行けるかも知ってる。これを使って西の三階までいくの!」

 

なるほど、これを使えばたしかにもし門が破られてもすぐには敵兵にみつからないだろう。だけど、

 

「気の毒だけれど、いけないわ。」

 

こいつも同じこと思ってたか。

 

「な、なんで?」

 

「私たちには、その人たちを救うことで得られる明確なメリットがないわ。」

 

そう、ないのだ。

 

「ごめんなさい。厳しいことを言ってるのは承知してるわ。」

 

「なら!」

 

「その提案の何処に私たちにメリットがあるかしら。」

 

息を飲んだユイにユキノは追い討ちをかける。俺は口を挟まない。挟むほどユキノに不正解が見つからないから。

 

「私たちは正規兵でも義勇軍でも、まして自警団でもないのよ。自警団はたしかにサキさんがいるけど、それだけで戦力になるとは思えない。」

 

最後に、

 

「助けられるためのリスクに見合わないのよ。」

 

といってユキノは黙った。

 

長い沈黙が訪れる。ユイは沈痛の面持ちでおしだまり、サキもポーカーフェイスが崩れてうつむいている。コマチは複雑な表情をしてるが、ユキノだけは表情を変えていない。

 

ふと、1つ疑問に思った。

ではなぜこいつはこの場に立ち去らないのかを・・・。

 

気づいちまったら、面倒だと思っても行動するしかなかった。

 

「えっと・・・サキ?」

 

「・・・なに?」

 

「その孤児院ってのはどういう立地で何階にある?」

 

「一階の関所近くだよ。なんか貴族から譲り受けたとかで五階建ての洋館、屋上みたいなバルコニーから五階の広場まで見えるよ。」

 

うつむいたユイが代わりに答える。ふむ、あれか・・・。立地条件もおもってたより最高だ。

 

「コマチ。」

 

「大丈夫だよ、必要と思えるものは予め軍用ザックにわけて積めてあるから、いくつか放棄すればいけるよ。」

 

よし。

 

「ユイ、助けてやれるが条件がある。」

 

「ほんと?」

 

「あなた、なにをいってるのかしら?」

 

ユキノが横槍をいれる。

頼むから今は俺の会話の邪魔すんなよ。

 

「まぁ、まて。

俺からの提示はこうだ。」

 

「その孤児院を自警団の拠点として差し出せ。」

 

息をのんだ音がしたが構わず続ける。

 

「こいつがここにいる意味はそれだ。つまりこちらが残りの避難民と自警団を逃がすための戦略的拠点が俺たちには必要で、通りに面してたあの屋敷なら十分。助けてやれるし双方にメリットができる。そういうことだ。」

 

全部の話を聞いた瞬間に黙るユキノ、やっぱりな。

 

「ということだから、その条件を呑めたなら俺たちは助ける。呑めないなら俺たちは即時にこの村を出ていく。どっちにする?」

 

鬼畜な条件提示かもしれないが逼迫しているのだ。これが一番いい。

 

いわれたときはうんうんだのでもだの悩んでたみたいだが、大きくうなずくと俺のほうを向きもう一度大きくうなずいた。成立。

 

ユイに先行してマンホールにもぐってもらうときにユキノは不快感満載に質問してきた。

 

「なぜ助けるの?余裕もないのに。」

 

「たしかにないが、俺は日陰者だからな。おまえのような定石や定型からはひどく反発したいんだよ。」

 

日向向きのことは日向を大手をふって歩くものがすればいい。おれ?あ、歩けるよ。歩いてると女性陣に人呼ばれるほど歩けるもん!いってて悲しくなったのは気のせいだ。そう思っとこう。ときには思い込みも肝心!ハチマンオボエタ!

 

ニヤニヤしていたのだろうか、考え方が不快だったのだろうか、

 

「そう・・・。」

 

とおっしゃったきりそいつはなにも言わなかった。あ!でもコマチの後ろに隠れないで!

 

 

 

 

 

 

マンホールを降りると小さな個室。なるほどな、黒い管と赤いそれよりすこし大きな管が今立っているタイルのしたに延びている。

 

「ここね、帝国側の洞窟まで上下水道延びてるんだ。」

 

それって、中立国的にはどうなの?といったら出口は公国側だからとユイに言われた。なにそれ若干卑怯臭いんですけど。

 

上水道は全ての階層に存在してこのマンホールのような梯子で結ばれていて人がそれぞれタイルでおおわれている。そうユイが続けた。ためしにドアを開けるとマンホールから入ってくる光になるほど曲がった煉瓦の壁とタイル張りの床がみえた。意識を集中させなければ水の震動は感じられない。

 

ほどなくしてコマチとユキノが降りてきた。どうやら覗かれるかもしれないと本気で相談してドレスの下に短ゲートルを履いたらしい。小町が貸したといっていた。うん、目から汗が垂れたがこの気持ちはなんだろう。

 

最後にサキがマンホールの蓋をしめて降りてきた、閉めた途端にやってきた暗闇、全くなにも見えない。それぞれの顔もだ。

 

「見えないからって変なことをしないでくれるかしら?」

 

「いまだつったってるだけでうごいてねぇよ。」

 

その予想通りのネタは面白くもない。

 

「上の自警団のみんなには門の守りにいってもらった。」

 

サキがそういって急いでドアを開けようとする。たぶんうまくいかないんだろうなぁ。

 

「待ちなさい。」

 

ユキノの声がする。やっぱり表情は見えない。

 

「あまり順応してないときに動くのは得策ではないわ。ここは暗順応の完了を待ちましょう。」

 

「暗順応?」

 

ユイが疑問を投げ掛ける。多分首もかしげてるんだろうな。よかった暗くて!明るかったら俺どんな顔しててユキノに罵られるか分かんないし!

 

「噛み砕いて説明すると暗闇の中にいると段々目が少ない光に対応して見えてくることをいうのよ。」

 

ユキノの説明に補足を加えると人間には悍体細胞というのが存在して、暗闇で広がった虹彩を合図に視界が見えるようになっていく。しばらくするとユキノの説明通りにコマチの顔がよく見えるようになった。

 

「暗順応は色には反応しないから白黒に見える代わりに光の多いところよりも鮮明に見えるときいたことがあるわ。」

 

つまりこの男の・・・と呟きそうになったのを途中でゲンナリしたから通路へ出ることにした。くどいぞそのネタ。

 

その時一人で部屋を出たからだろう。その音に気づいたのは、はじめは自分の靴が反射したのだと思った。だが明らかに数が多かったのだ。

 

「お兄ちゃん?」

 

「しー。」

 

まだ部屋の中にいる四人に静かにと待ってろとサインをしてドアを閉めた。

 

さて、なせこんなに自分は率先して労働まがいのことをしてんだろうな・・・、ユイとの約束を俺なりに果たしたいんだろうなと納得することにした。

 

帝国侵攻側まで三百メートルあるいたあたりで発見した。こいつら、白いものばかり着てるから見つけやすいんだよ。一本道のくせに5メートルまで近づいても気づかれないのはやはり壁づたいに触って行軍しているのに関係してるのだろう。とっさに判断して靴を脱ぎ、少し来た道をもどって手頃なドアを音をたてないように開けてこれまた音をたてないように閉めた。さて、なにか手だてはあるかな?ザックをごそごそと漁る。適当に取り出したのはなんてことのない上蓋があくと鳴り出すオルゴール、やっぱ女の必要順位ってわかんね。そしてこれでにやけた俺ももっと気持ち悪くてわかんねぇや。

 

再びドアノブをひねって開け放つ、そして思いっきりゼンマイをまわしたオルゴールを廊下において、ふたを開けると同時に締める。途端に起こる銃声、悲鳴、そして戻っていく足音。

廊下に出てみるとうめき声が聞こえる。確認したらなんにも被害を受けてないオルゴールを拾い上げて来た道を戻る。

 

集団心理において、恐怖というものはかなり重要で集団で恐怖しているとパニックに陥りやすい。加えて、恐怖とパニックは事実じゃないものが事実にみえるのだ。今回逃げ出した兵士は指揮官にこう報告するだろう。「地下水路にて、自警団多数の伏兵あり」と。

別にそれは事実じゃなくていい、問題はその兵士の表情だ、そしてそれを受けた指揮官は二度と水路に兵を差し向けないだろう。連中はこの最序盤に大きな被害を出して功績に泥を塗りたくないはず、なによりもこの町の市街地を占領してからゆっくりあぶり出せばいいと。

 

思い通り、後ろ槍を刺されずに四人と合流して目的地へと梯子を一回上った。

 

「ここを上ると孤児院の裏口の前だよ。」

 

いうだけで何で登らないんだ?

 

「ごみいちゃん、察しようよ。」

 

あ、なるほど。

 

「あ、私が先に昇るという案もあるよ?」

 

「そっか、んじゃ先にいかせてもらうわ。」

 

「あー!そ!」

 

何を怒ってるんだ?

 

昇ったさきのふたを開けると明るさで目が丸く痛くなった。これが明順位ってやつか、はっきりみえたのは囲われてる塀の内、花壇にはそれとは思えない花が植えられていた。見上げるとなるほど、コの字の館が尻を向けていた。

 

ザックをマンホール近くにおいて裏口からホールに向かったのは間違いないと思ったね。だって。

 

「ごめんねー、俺もこんなことしたくなかったけどー。よそものなわけじゃーん?」

 

とむかつくしゃべり方のやつに銃口をむけられて、その奥でふんぞりかえってる、

 

「ショウよくやった!そのまま逃がさないように。」

 

「男!男だよ!ね!戸部くんと絡んでるよ!」

 

「ヒメ、いまは余計なこと言うなし。」

 

金髪の女が不敵に笑っているから。

 

 

 

 

 

 

俺だって親がいないし育てられた親がクソだったから似たようなものだがみなしごだって人は見る。命に関わらなければおしゃれもしたいし、学校だって通いたいやつもいる。だれしも非人道行為を最初からしたいわけでもない。ただし手に入れられない愛の代用品が尽きなければの話。何らかの原因で代用がきかなくなって本来の愛を渇望、または渇望しなきゃ心が道にかなってしまうときは別だ。手段を選んでいられないほどの愛への飢え、おそらくこの洋館の階段のさき、二手に別れてさらに上がるところの真ん中に椅子をおいて足を組んでるこの金髪も、隣のダルクスも。そして俺にそのにび色のハジキを突きつけて半笑いしてるこのロン毛の男も、その手の手段にうって出てその代用品を探しだした。ってところだろう。

 

「面白いことしてくれるな。」

 

牽制してみよう。普段ならあんなきつめの女となんざ普通に話せないだろうが、いまは命かかってるからなぁ。

 

「あ?」

 

一言、だけかよ。

 

「あんた、今の自分の事わかってんの?」

 

「つきつけられてるものがおもちゃじゃないってことは。」

 

能天気な言葉にカチンと来たのか、そいつは喋り出す。

 

「あんた、あーしらの縄張りに土足で入っといて、よくヘラヘラしてるね。こっちのほうが数多いのによくわらってられるし。」

 

「あー、悪かったな。で?縄張りってどこよ?俺は普通にここに入っただけだが。」

 

「とぼけんなし!」

 

怒り心頭、何を言えばいいかまとまらないのか口をパクパクするだけになった。あんな魚みたことあるよ、ヒカリマスだったか?見かねたのか隣にいたダルクス人の女が、

 

「君、地下水路使ったよね?」

 

と代弁してきた。

 

「俺たちにとってあそこは秘密基地的なものなのよー、あそこ無断で通られるとすっげーこまるわけー。」

 

さっきからこいつしゃべり方むかつく。

 

「さぁな、俺は帝国兵から逃げようと五階から上がってきただけだ。地下水路なんざ知らないし、ここで命を狙われる筋合いもない。」

 

「帝国の侵略?」

 

だってさ?みたいな感じです金髪は黒髪をみる。よくみたら、ダルクスのほうは赤縁の眼鏡してるよ。大笑いが始まった。前の男もなに?俺も笑わないといけない流れ?見たいな顔してるよ。どうでもいいけどリボルバーは撃鉄落とさなきゃ討てないって軍事教練でならわなかったか?いわないけど。

 

「嘘つくなし!あーしはしってんだよ。帝国の連中が五つ門でちゃんと食い止められてて一人も入ってきてないってことを!」

 

「その人のいってることは本当だよ!」

 

激昂した声がこだましたとき、

ユイとサキがホールに勢いよく入ってきた。

 

「ユイ!あんたもこいつの味方すんの!?サキも!?」

 

驚きよりも怒りの方が高いのだろう、役者が増えてもキレてる。

 

「違うよ!ユミコのいってることは遅いの!」

 

「うるさいし!結局あんたも裏切るんだね!」

 

「ユミコ!」

 

さすがに驚いたのかダルクスが動くもうるさいと封じられる。ここでこいつの誤算が発生。男が動いたのだ。すかさず腹に蹴りをいれて落としたリボルバーを、今度はきっちり撃鉄を倒して男に突きつけた。

 

「ち、ちょっと!やばい状況ってやつ?」

 

「うごくな。」

 

脅し言葉で男が怯んだ瞬間に女に向かって発砲した。

 

「ハチマン、ダメだよ!」

 

知ってる。脅しに決まってんだろ。

 

「人間が話聞くには適度の恐怖は必要なんだ。」

 

右を弾丸が掠めた恐怖に震えるソイツがみえた。

 

 

「サキさん!五つ門、全て開通されました!」

 

孤児院の制圧直後、自警団の兵士がドアを蹴破ってシャレにならないことをいった。

 

「ふぅ・・・。準備も拠点もないまま、敵はなだれこんでくるのね。」

 

一番最後にマンホールを昇りきったからか、今だ顔を赤くしているユキノが嘆く。

 

「これも、情報弱者のくせに粋がったおかげね。」

 

「なに?あーしのせいだっていうの?」

 

ユキノが今しがた縛ったソイツに一瞥するとさっきまで怯えてたのが嘘のように噛みつく。

 

「ええ、帝国の侵略という情報を無視して重要な通路である地下水路を独占して狼藉を働こうとしたあなたたちにいってるわ。」

 

負けずにかみつくユキノ。ふえぇ・・・初対面とはいえこんなにも仲の悪い女同士の言い合いは胃が痛いよぉ・・・。

 

「つーか悪いな縛ってよ・・・。」

 

「ううん、もとはといえば私たちが知らなかったのが悪いんだし。」

 

同じく捕まったダルクスがいう、あのチャラい男は意外にもおとなしく捕まってまだべーべーいってる。

 

「それに、私もダルクスだもの。慣れてるんだ。」

 

影を落とした気がするがあえて無視した。

 

「それで、サキさん。」

 

「あぁ、こっちに屋上に行ける階段がある。」

 

「ち、ちょっと!どういうことだしサキ!」

 

ユキノが淡々と拠点に変えようと動いてた。それの意味がわからなかったのだろう。再び噛みついてる。

 

「ごめんね、戦争になるから。」

 

「謝る必要はないわ。彼女だって、頭ではもう理解できてる。これは些細なプライドと納得の問題だから。」

 

「でも、ユミコの言い分も理解・・・できるから。」

 

モジモジと謝罪のあとにモゴモゴかばいだしたユイが気にくわなかったのか今度はユイにも噛みつくユキノ。

 

「そういう、右にも左にも味方するの。平時だけにしてもらえないかしら?あなたのその優柔不断さは虫酸が走るわ。」

 

「うぅ・・・ごめん・・・。」

 

さて、この険悪なムード。普段ならここらでフェードアウトしたいが生憎の当事者。動かなきゃならない、めんどくせえなぁ・・・。

ただ、こいつらのこともある。ただの物取りならあいつみたいな優しいコはこの施設でできない、つまりこいつらも無断で地下水路に入られたことにプライドを傷つけられただけで物取りやなんやかんやにそんな執着はないだろう。むしろないまである。なら、交渉の余地はあるんじゃないか?

 

「大丈夫だよ?」

 

不意にここまでおとなしかったコマチが発言した。すごく低い声で・・・。

 

「お兄ちゃんはなにもしなくていい、むしろなにもしないで?」

 

そこで静かに俺を見上げる。見えた顔、目には一切の光が宿っていない。昼間にも関わらず建物の構造で暗いこの洋館のなかでも、だ。そしてこのコマチの表情には見覚えが何度かある。

 

「お兄ちゃんを脅した罪は、払わせないとね。」

 

・・・はぁ。妹に不用意な殺人をさせるわけにはいかないな。そういうのはいらないという意味を込めて肩を叩いた。少しは光戻ったかな?

 

「なぁ、そこの・・・。」

 

「そこのじゃないし。」

 

「悪いな。名前を知らない。」

 

「ユミコ、名字はミウラ。」

 

「ならミウラ、少し取引しないか?」

 

一瞬こちらをみた。フイとすぐに視線をそらしたが、なるほど怖いけど素直なやつ。

 

「俺たちはこの洋館を帝国と喧嘩をする拠点として使いたい。だから、使わせてくれないか?」

 

このとおりだといきなり土下座をしてやった。なに、俺の十八番だから。

 

「なにをしたのかしら?孤児風情に・・・。」

 

驚いたようにユキノが近寄るが知ったこっちゃない。

 

「な?このとおりだ。」

 

おそらくこいつにも振り上げた拳というのがあるのだろう。なら、その拳を下ろせるだけの落とし前をこちらがつけてやればいい。

 

思案したミウラがこちらを見上げて。

 

「勝てるの?」

 

と言ってきた。

 

「いや、勝てない。」

 

「じゃあなんのためだし。」

 

「まだ残ってる避難民のため・・・。じゃいけないか?」

 

「・・・。」

 

沈黙ののち、

 

「ほどいて?」

 

といってきた。自由の身になったミウラはそれでも小さく笑い。

 

「あたしはあんたを信用したわけじゃない。そしてこいつも嫌い。」

 

見向きもしないでユキノを指差し、されど小さく笑って。

 

「で?あたしたちになにをしろっていうの?」

 

「そうね、彼女に同意するのも貴方に作戦を聞くのも不本意だけど。なにかあるのでしょう?帝国の戦車部隊に対抗できるだけのビックマウスが・・・。」

 

「なくはないし、核心はないがな。」

 

傍らの兵士を向いて質問する。

 

「!?あぁ、あるが・・・。」

 

ならしめたな。

 

「なぁ、そこの三人適正

兵科は?」

 

「私が対戦車兵で、二人が突撃兵よ。ただし、対戦車兵としての武器がないからわたしは実質お荷物だけどね。」

 

同じく縄をほどかれたメガネのダルクスが答える。

 

不確定要素は少ないがあとは地図さえあればいけるな。自分でも軽く引くくらいにやけるのを感じた。

 

「全員、作戦がある。」

 

 

 

 

 

 

作戦に当たって、サキに自警団のほかの兵士にも協力してもらうこととなった。

 

まずは先にやって来る歩兵を追い散らす。ここでは完全に倒しきらなくてよいため、逃げる連中はにがした。

 

すると蹂躙という意思とばかりに戦車隊がくる。ここで戦車が入り込める大きさの路地は予めニュートラルにギアを設定して運んだ車を挟み込み、入れなくしてる。連中はこっちへの地理を把握しきれてない。なので完全に建物を砲撃して偵察兵からの報告と地理が変わることを恐れてると踏んだんだ。事実、連中は自警団が完全に見えたときにしか砲撃はしてこなかったし、どちらかというと機銃での攻撃に重点を置いていた。

 

そこで本題だが残りの主要道路にラジエーター式の車を戦車の履帯側面にぶつかるように張り出させておいた。ここからさきのために避難民に無理やり納得してもらったまである。その程度なら意識もしないと連中がぶつけて通過しようとしたときだ。このラジエーター式の車のラジエーターを破壊してもらう。戦車のソレよりはたしかに弱く歩兵の携行武器でも破壊できるのだ。見事誘爆で破壊できた敵戦車。今だ功を成しておらず執着するものがないと逃げだす、またはハッチ上から脅して出ていってもらったのちに操縦席に自警団員に入ってもらい生けてる方の履帯で横向きにしてもらう。機甲訓練をしてなくてもここらはコマチが説明してる。よかった!あいつ機甲科とってて、やっぱり持つべきものは天使な妹だな。側面を晒した戦車は砲塔をと機銃を帝国側に向ける。あとはすきまに土嚢を積めば、即席のバリケードの完成だ。戦車砲や機銃がつきるまで相手戦車や歩兵に飛んでいくからな。保険として無理やり突破する兵士を考えてあえてなんのバリケードもしていない部分を残した。人間無理やりよりも楽な方がいいもんな、ただしどこも袋小路だけど。この迷い込んだ兵士は全員建物の窓などから攻撃して全滅してもらった。そこがそうだと見破られたくないからな。

 

これによって絶対防衛ラインは整い、一階孤児院と門を中心におよそ三百メートルに一切の突破をシャットアウトすることに成功、おなじようなのを二階にもつくった。五つ門の破壊から二時間、一方的な侵攻から膠着状態まで好転させることに成功した。

 

あとは、このまま残りの避難民が逃げ足す時間さえ作れば俺の労働もおわる。楽しみだねぇ、終わったらなにしよ、避難先で日がな一日読書もいいな。

 

「す、すごい!」

 

無線機でサキが完全に敵の侵攻がとまったことを知らせる連絡が来たとき、ユイが飛ぶように喜んだ。そうしてるとあのですね、スカートがひらひらしててとてもドキドキするのでやめてもらえませんかね。

 

「これで帝国に勝てるね!」

 

「いや、勝たなくていい。」

 

「え?」

 

首をかしげるユイ。

 

「なぜなら俺たちは避難民がこの村から出ていく時間だけを稼げたらいい。」

 

「あ、そっか!」

 

おいおい、ソレってもしお前に指揮任せたらそのまま殲滅戦をしようとしたのか、なにそれこわい。

 

「ねぇ、なんで逃げ道をつくったのかしら?」

 

たしかにユキノの場合、殲滅戦にすればいいと思ってるだろうな。短い付き合いだが俺でもわかるとか案外単純なんだな、やめてそんな目で見ないで!

 

「東洋の諺に窮鼠猫を噛むというものがあってな、死兵とやりあわないようにするためだ。」

 

「キュラソー?」

 

「ユイ・・・ピンチのネズミってことだ。逃げ道をなくした場合、兵士はなにをするかわからん。だからあえて逃げ道は残しているんだ。」

 

残した上で全滅させているところはさせているがな。というか、ユイは返答も謎なんだな、こっちも解がなかなか出せないわ。

 

「私が甘いと思うのは間違っているのかしら。」

 

「全部がそうとは言えないが、いまは手持ちのチップが多いほうがやりやすいからな。」

 

「・・・最低ね。」

 

いや、最高の間違いだろ?

そうだよね?そうといって!

 

「・・・いいな。」

 

ユイがふとつぶやく。

 

「戦闘のとき、ユキノさんがいろいろ計算して。サキが動いて、ユミコたちも簡単なことだけど車を動かして、戦車を動かして。みんなすごいなぁ。」

 

「おまえも・・・。」

 

そのとき、一人の偵察兵が叫んだ。

 

「敵の戦車にみなれないのがいる!」と。

 

計算通り。

 

「お兄ちゃん、その笑い方やめて。マジで鳥肌立つから。」

 

本気で自分のからだ抱き締めてふるえている妹、やめて!お兄ちゃん滝のような涙が流れ落ちちゃう!

 

「なぁ、聞いたか?」

 

「う、うん。」

 

「お前の役に立ちそうなことだぞ?」

 

「え?」

 

「あれだろ?偵察兵なんだろ?

・・・一応。」

 

そこまでいって今度はユキノに聞く。

 

「避難完了まであと何分だ?」

 

「・・・ミウラさんたちが地下水路をつかって避難させてる大部分と、怪我人や歩けない人を合わせて1時間半くらいかしら?」

 

「それ、三十分短縮は?」

 

「地上の方を優先させれば・・・なにをするの?」

 

さぁてな。ただ言えることは、

 

「悪いようにはならないだろ。」

 

多分。

 

 

 

 

 

 

 

 

おかしい。五つ門破壊から三十分。先程まで快勝していたのが嘘のようだ。これで三十人の兵士が帰ってこなかった。戦争というのは士気が影響するもんだ。その士気は恐怖や解らないことが一番低下を誘発させる。最初は戦車が戻ってこなかったこと、そして今度は兵士が戻ってこないことだ。なによりも、地下水路を拠点としていた自警団とやらが加わっているかもしれないということも士気に影響している。

 

「イエーガー将軍!」

 

「話せるようになったか?」

 

それは先程戻ってきた一番最前線に行って戦車長である。最初は驚いたもんだ。まさか、軽戦車を与えて勇んで行った奴が手ぶらで戻ってくるのだから。博打ですったってもんじゃないな。

 

「す、すみません。お預かりした戦車を敵に・・・。」

 

「いや、いい。そんなことよりも俺は敵の情報が知りたいんだ。」

 

いつまでも五つ門の外で待ってるだけじゃわからないしな。

 

「は、はい。敵はダルクス人の小僧が指揮しているようでして、戦車を奪ったのち。車両を横向きにしてトータカにしてるようでして。」

 

ほう。俺ぁ感心と怒りの両方がわき出るのを感じた。なんという手練れだろうか。追加で聞いた履帯を破壊という点においても、戦車を動かさずに砲台と機銃だけ使えるようにしてる点においても指揮能力が高いことがわかる。だが、ダルクス人の小僧が気になる。ダルクス人に差別はないが、俺よりも数段若いやつに指揮が負けてるだと!?

 

「俺が後塵を拝すとはな。」

 

だが、俺にも夢があるのだ。だが皇太子の野郎に恐怖を甘えるためにもクローデンにはいるまで“アレ”は使うなと言われている。俺もソレには納得している。だからこいつで・・・、

 

「中央広場まで俺が赴いて指揮を執る!」

 

「しかし!」

 

「ここからじゃ情報が遅い、心配すんな。ちょっと策も用意してあるからよ。」

 

車体よりも履帯のほうが大きい元連邦製のこいつ、速度には難があるが装甲と無線の性能がよい。指揮をとるならこいつのほうだな。

 

「ゼーローゼででる!

目標は中央広場!」

 

なぁ、名も無き小僧よ。この俺の名で戦けよ。

 

ぬるい、そうおもったね。

この中央広場にくるまでなんの抵抗もなかったよ。証拠にあの地雷だ!旧世代のものだとしても対戦車地雷はきちんと見えないところに置いておくものだ。なんだこれ見よがしに置きなすって、あれじゃ操縦士だってわざと踏むのも躊躇うぞ。

 

ぶつくさいってるうちに中央広場の西主要道路前まで来た。位置的には真ん前になるが、先の地雷からしても制圧は問題にならない。操縦士だけを連れてきて危ないかと思ったがそうでもなさそうだ。

 

偵察兵を配し、状況を察したがなるほど。こいつは小賢しいことをする。だが抜けなくもない。奴さんの考えはトーチカとして利用すると同時にラジエーターを後詰めの戦車にやられないことを考慮して横向きにしてる。戦車の冷却ラジエーターは不安定なラグナイト製だから莫大な冷却をしてくれるが破壊されたらそのまま戦場もおじゃんなわけだ。つまり、そこを工作されたら奴さんも痛いというわけだ。

 

「よーし!さくせんがきまったぞー!」

 

大まかには戦車のラジエーターを設置式爆弾で壊すことだ。こちらだって、この町の地図ぐらいはあるし、抜け道は調査済。いまのいままで壊さないでおいた建物を壊すことを許可した。抜け出られないなら新しい道を作ってしまえってな。

 

士気がうなぎ登りになって、アレも鼻高々。兵士が意気揚々と工作に向かってる途中のことだ。

 

五つ門のほうの遠距離偵察のための狙撃兵が、

 

「おめでとうございます!戦車があちこちで爆発しております!」

 

といったのだ。耳を疑った。

つい先程その作戦を伝えてみなを動かしたばかりだからそんな早くに戦車が爆ぜるわけがない。

 

突如目の前の坂の頂から煙が見えた。慌てて戦車から降りてもう一度仕切り越しじゃなくこの肉眼ではっきりと見る。そしてひとつの結論に至った。

 

もし、先に敵がラジエーターじゃない部分を爆破させてラジエーター自体にエネルギーがいかなくなればどうなる?その戦車は簡単には四散せず、残骸がそこに残ってしまう。残骸になった戦車は本格的デブリとなり通行処理に時間も削がれてしまう・・・。抜かった!おそらく殲滅した兵士の無線からこちらの話を聞いてたにしても、先読みが早すぎる。

 

戦慄した頭が体に命令を送ってくれない。みえた幌付きのトラックが横を通りすぎて戦車に小突いた。

 

「将軍!」

 

誰かの声が聞こえた。俺はその直後に誰かに押し倒されたがすぐに何かの衝撃で吹き飛ばされたのだろう。そこの記憶はない。

 

 

目を覚ましたのはテントの中だった。意識がだんだん覚醒してくる。急いでベッドから起き上がって外に飛び出すとそこは五つ門の外だった。

 

「将軍、すみません。操縦士が・・・。」

 

「・・・そうか。」

 

指揮のミスだな・・・。

 

「それと・・・、ゼーローゼですが・・・。」

 

「破壊されたのか?」

 

「いえ?」

 

次の発言を聞いたとき、俺ははじめから連中はこれが狙いだったのだと、その場で大笑いを止められなかった。

 

「敵に奪われました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガラガラと少しガタのきた音を立てて五階と四階の坂を登りきった。いい戦車だ、あんな爆発にも耐えたし。俺と違って根性あるな、俺と違って。自分でいってるのに涙出てきた。

 

「お兄ちゃん、無茶した代償大分来てるみたいだよ。」

 

操縦席のコマチがそういってギアを落とす。キューポラから顔を出すと待っていたユキノが呆れていた。

 

「まったく、貴方はバカなんじゃないかしら?」

 

「かもな。」

 

「ふざけないで、まさか粉塵爆発に乗じて乗っ取るなんて。」

 

無人のトラックを滑らせて戦車にぶつけて時限爆弾が作動。荷台の小麦粉がぶつかった衝撃と爆発で舞い上がってるなかにもう一台トラックが突入こっちにはさらに自動発火装置が組み込まれていて、一気に白い煙と業火のお見舞い。これが少し収まったなかでの奪取。こちらにはまったく戦車がないからこその強行手段だったわけだが。

 

「そんなことはいい。」

 

「そんなことって・・・。」

 

「いまはこれでずらかるのが先だ。」

 

ここでもやはりあぶれもののすきるが発揮されるんだな、俺ってば。

 

「お前ら地下水路で機甲訓練受けてた話してたよな。」

 

「ええ、・・・まさか。」

 

そのまさかだよ。

 

「砲手にサキ。機銃手にユキノで行きたい。」

 

「何を勝手なこといってるの?」

 

「勝手なのはすいません。ですが、先ほどの爆発の影響でこの子40キロもでません。たぶん、坂道では20キロが限界でしょう。」

 

前方の操縦席のハッチからでてきたコマチが行った。そう、今は早さがほしいのだ。

 

「あまり時間はやれない。少なくともこの混乱が収まるまでに三階にまでは行きたい。」

 

この問いにサキは「選択の余地なないんだな。」とキューポラの俺のとなりのハッチに手をかけた。最後まで悩んでいたユキノもそれを見てふぅとため息をつき、

 

「あなたたちの迫り方は嫌いだわ。」

 

といってコマチのいるハッチにむかった。悪いな、こういう迫り方は目撃しなれてるんだよ。

 

「さっきもいった通り、この子元々の性能にあわせてダメージのおかげで坂道じゃ追い付かれるかもしれないからね。」

 

ギアを繋げるコマチが言う。

 

「教習じゃこんな最新鋭は習ってないから・・・、振り回されないでね!」

 

ゆっくりと動き出す。今のうちにと思い砲塔を回す、回転するうちに後ろの道がみえた。まだ来ていない。

 

「最初の坂道だよ!」

 

ごくんとおとがしたとともにゆっくり傾斜する車内。まだ来ない。

十数分たったときだろうか、・・・きた!

 

「コマチ!」

 

「ごめん!今坂の終わり!数秒反撃できないから勘弁して!」

 

車底部をさらすため仰角もとれない。一発の砲弾が通りすぎたときも生きた心地がしなかった。平地にすべての車体が乗った。

 

「サキ!敵の戦車が来たらどこでもいい!当ててしまえ!」

 

装填装置に砲弾を込める。たしかグーで入れるんだったな。というか重い!むちゃくちゃ重いんですけど、あとすごく重い。やっぱなんでこんな俺らしくないことやってんだろう。

 

数秒、奴が顔を出した。こっちが攻撃できなかったときがあるってことはそういうことだ。

 

「・・・指示を。」

 

「あん?」

 

「指示を!あんた車長でしょ!」

 

「ひゃ!ひゃい!攻撃してくだひゃい!」

 

なんだこれ。とおもったときに車体が思いっきり揺れた。スリットからは奴がもうもうと煙をだしてずり落ちていくのがみえた。これで後続も追突されてしばらくは黙ってくれるだろう。次は・・・。

 

「お兄ちゃん!前方からくる!」

 

「ユキノ!」

 

「指図しないでちょうだい!」

 

ぱぱぱぱぱと音がする。この場合は制圧射撃に徹してくれればいい。どうせ戦車に無理繰り戦おうなんてやつはいない。

 

「二階の平地に上がるよ!」

 

もう一度車底部がさらされる。このまわりの戦車だけはラジエーターを爆破させてある。偽装工作のなかに狙い通りのことを混ぜると失敗のほうが頭に残ってくれるからな。

 

ふと、目に飛び込んできたのは走りよってくる帝国兵だった。異常な薄着・・・まさか!と思ったときにやつが倒れ伏した。ハッチが開いたときはほんとに心臓が止まったまである!

 

「大丈夫?ハチマン!?」

 

「ユイ・・・走ってる戦車に飛び乗るなと教習なかったか?いや、ないな。」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガリアへの関所の二つ門の外に出たとき、まるで凱旋したような感じだった。寄せてくる市民や自警団。ついには胴上げにまで発展していた。そりゃそうだ。死者が全体の1割しかでていないのに戦車まで奪って敵指揮官をやりすごしたんだ。大したもんだよ。

 

 

・・・サキが。

 

 

「ねえ、なんでなの?」

 

戦車のなかでその光景をみていたときに代わりに砲手席にすわったユイに言われた。

 

「なかなかの指揮だったんだ。当然だろ?」

 

「みんなに指示をしていたのはハチマンだよ!なのに、こんなのってない!」

 

みんなに素晴らしいといわれるとき、自然とサキの方へよっていったのがご立腹らしい。べつにいいのにな、目立たないから。

 

「わたしもそうおもう。」

 

ハッチが開いて、サキが覗き込む。スリットからは未だにサキの武勇伝に花を咲かせてる人達が笑いながらクローデンへ消えていく。なんでもいいがそれすると長い髪が垂れ下がってより怖いんですけど。

 

「いいんですよ。お兄ちゃんが評価されないのは、いつものことですから。」

 

「ダルクスに生まれたら、こんなものよ。」

 

さすがわかってるな、前列の二人。

 

「俺たちは昔ひどいことをこの世にしたから償いとしてたくさんの人間に手助けすることは当たり前なんだよ。賞賛されるべきものじゃない。」

 

「ひどい・・・。」

 

伏せるユイ。こういうやつがいてくれるだけでもやってよかったと、そうあ幕引きでもいいかもしれない。

 

「それに。ここらの木っ端な市民がお兄ちゃんの器を理解できるとは私は思ってません。それこそ怠惰でエンジンかかるのに時間かかって、シスコンでなに考えてるかたまにわからなくなりますけど。」

 

ないていいかな?いいよね?お兄ちゃん大声あげちゃうぞ?

 

「それでも!こんな功績者を評価する人が、ゼロな訳ないと思ってますから!」

 

「そうだよね・・・うん!」

 

ちょっと!こそばゆいんですけど、逃げていい?ねぇ、にげていいよね?

 

『よう!』

 

そうは問屋が下ろさないんですね。ぐすん。

 

『その戦車にのってるやつ、出てくれないか?いや、なにも破壊するとか予告するつもりはないんだ。』

 

『俺は帝国軍南部ガリア方面司令のラディ・イエーガーというんだが、そのゼーローゼを盗んだやつと話がしたい。』

 

衝撃が走る。汗ばんだ手を数回空中で泳がせたあと、無線のスイッチを入れた。

 

『聞こえていてくれたか、言いたいことはひとつだけなんだ。』

 

『素晴らしいの一言だ。なによりもこのイエーガーからそいつを盗んだあざやかなること。そしてお前なんだろ?このコルンでの采配は、敵ながらこれから戦うのが楽しみだ。』

 

『ガリアにつたえろ!このガリアの初戦でイエーガー将軍に土つけたダルクス人は俺だって!貴様とはまたやりあいたいぜ!』

 

そういって無線が聞こえなくなる。

 

やっぱり、めだったこうどうするんじゃなかったなぁ・・・。

 

最後になった俺たちの戦車が静かにクローデンの原生林に入っていく。白旗を上げた奇妙な小麦粉だらけの帝国戦車が。




ゼーローゼは
ヴァルキュリア戦車によくある
ステアリング方式を設定してます
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