正直続くかどうか分かりませんが本編同様楽しんで頂けたら幸いです。
<獣、異世界に降り立つ>
私はこの日、運命の出会いをする。
そう、私の人生を大きく変えた大切なあの人との出会い。
◆
此処は異世界、ハルケギニア大陸はトリステイン王国。
今日はトリステイン魔法学院でメイジの相棒たる使い魔の召喚の儀式が執り行われている。
この使い魔、基本的には動物や幻想種と言ったような物から各メイジに適した物が自動的に選ばれる仕組みだ。
それ故に使い魔を見ればメイジの格が判るなど言われたりする理由でもある。
今日、儀式を執り行うのは学院の二年生の少年少女だ。
その中でも毛色の違う人間が二人程いる。
一人は『ゼロのルイズ』こと、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
もう一人は『雪風のタバサ』こと、シャルロット・エレーヌ・オルレアン。
ルイズはいわずと知れた虚無の担い手、原作は彼女ともう一人の物語だがこの物語は少々違う。
これはもう一人。
主にタバサに焦点を当てて描かれる物語である。
◆
魔法、魔術、呪術これらの中で名前とは重要な物として扱われている。
ここハルケギニアにおいてもそれは変わらない。
が、タバサは偽名で儀式を執り行った。
その所為かは判らないが此処で原作では起きない事象が巻き起こる。
◆
やはり、偽名で使い魔を召喚しようとしたのがいけなかったのだろう。
私が呪文を唱えた瞬間、まるでルイズの様に爆発を起こしてしまった。
それとも人形の様に心を閉ざしてしまった私には使い魔など居ないと言う事なのだろうか。
周りにいる生徒のはやし立てる声と教師の励ましの声が意味を持たない音のように聞こえてくる。
まるで世界から見捨てられたような孤独が私の心を苛み、心が軋みを上げる。
俯き下唇を噛んで必死にそれに耐えながら私はもう一度呪文を唱えようとした。
その時、意味を持たない音の中から、
「ふむ、途中で混線したか……。おかしな所に出たようだ」
と、小さく涼やかな声が私の耳に響いてきた。
顔を上げると先ほどの爆発で巻き上がった砂煙の中に巨大なシルエットが見て取れる。
先ほどの声は人の様だったがどう見ても人のシルエットではない。
その時になって周りの反応がおかしいことに気が付いた。
先ほどまでの意味の無い音は困惑の声だったようだ。
どうも使い魔たちが何かに怯えて主人の言う事をきかなくなっているらしい。
そうして土煙がはれ、現れたのは青年とドラゴンだった。
周りは口々に「ドラゴンだ。タバサがドラゴンを召喚しやがった」と、言っているがそんな事はどうでもいい。
私の目には青年しか入っていなかった。
彼を見てから私のパートナー(使い魔)は彼しかいない。いや、彼じゃないと嫌だと私は思ってしまった。
私は高鳴る心臓と心を抑え、出来るだけ見栄えがいいようにゆっくりと彼の元に歩いて行く。
近くで見た彼はすごかった。
服は上質とは分かるが材質が全く分からない、白いシャツにズボン、そして、黒いローブ。
装飾品は大振りの金の指輪と左腰に黒のベルトで固定されている歴史を感じさせる黒い書物。
髪は太陽を反射して煌いている様な金髪、顔は神が作った様な理想的な造形美。
そして、何よりも眼を引くのがその金色(こんじき)の瞳だろう。
その瞳は遠目には光の無い闇のように見えていたが近くで見ると瞳の奥に光を感じる。
彼の瞳から眼が離せない私は汗のにじむ手で杖を胸の前で握り、意を決して口を開いた。
「……わたしの…使い魔になって」
私は今ほど自分が口下手になった事を後悔した事は無い。
出来ることなら物語に登場するヒーローやヒロインの様に格好良く彼を誘いたいがこれが私の精一杯。
彼は私が声を掛け、漸く私に注意を向けた。
彼は私の杖に軽く眼をやった後、私を上から下まで見てニヤリと不敵に笑い、黒い覇気を滲み出した。
「ほう、貴様のような小娘が俺を使い魔にしたいと……」
その覇気に当てられ遠巻きに見ていた数人の生徒が倒れ、後ろに居た竜すらも縮み上がりガタガタ震えていた。
直接当てられている私は気を失いそうになるのを、唇を噛んで防ぎ、半ば腰が砕けているのを杖に縋り付いてなんとか立っていた。
永遠とも感じる時間、必死に耐えた。
おそらく此処で意識を失えば彼は二度と私に見向きをしないだろう。
そうして彼は覇気を抑えてくれた。
現実には十秒に満たない時間だろうが私はそれだけで疲弊しきっていた。
「――ふむ、耐えるか…。――代価を払うなら力を貸してやってもいい」
彼のその言葉を聴いて私は意識を手放した。
意識を失う寸前、最近感じたことの無い安らぎと温もりを感じ、私は心地よく意識を失った。
◆
俺は休日を利用して兼ねてから使ってみようと思っていた、異世界へ行く為の門を起動し潜ってみた。
そうして無事に異世界に着いたようだが、着いて早々に今、腕の中にいる少女に使い魔になってくれと頼まれた。
それは別にいいのだが此処はどんな世界なのだろうか……。
使い魔と呼ばれるモノが居る位だ。魔法は当然あるだろう。
マナ(魔力)、精霊の密度が高く、気候も過ごし易そうだ。
バカンスには丁度いい場所なのは間違いない。
そうバカンスだ。
今回の事は門の起動実験も兼ねていたが、見た事のない場所に行く事も目的の一つだった。
正直、旧世界も魔法世界も見飽きて来たので異世界に行くのも一興かと門を使ってみたのだ。
その行為は正解だった。
来て早々に使い魔になってくれなどと言う、見たことも聞いたこともない体験をしているのだ。
面白くない訳がない。
さて、この後如何するか、と少女を抱え直し考えていたら寂しい頭の男から恐る恐る声を掛けられた。
「――よろしいでしょうか、ミスタ」と。
彼、ジョン・コルベールが言うには、この少女はトリステイン魔法学院に在籍している学生で、自分はそこの教師をして今回の儀式の監督をしている。
そして、俺の処遇を、学院長を交えて話し合いたいが、後一名、儀式がすんでいないので待って頂けないかと言って来た。
「構わんよ。それくらい」
時間は好きなだけある、それに向こうに帰る時に最悪、魔術を行使して過去に戻ればいいだけだ。
そう、彼に答えて遠巻きに見ていた生徒の方に歩いて行く。
そうすると何故か後ろに居たドラゴンまでも俺について来た。
それに気付き後ろを振り返るとドラゴンがビクッと首を竦める。
全長6mくらいの幼生のドラゴンだが恐らく腕の中の少女が本来の儀式で使い魔として呼んだ物だろう。
だからか、何故か捨てられた子犬のような雰囲気が漂っている。
「……ついて来い」
そう言い放ちまた歩き出すと後ろを嬉しそうについて来る気配がする。
生徒は俺が近づくとまるで潮が引くように逃げていった。
それは仕方が無い。遊びとはいえかなり威圧したのだ、この反応が普通だろう。
だが驚く事に此処に普通でない者もいたらしい。
たった一人逃げ出さない者がいたのだ。
俺は興味を引かれその女性の方へ歩いてく。
そうすると彼女がまるで忠臣が自国の王に頭をたれる様に恭しくお辞儀をした。
「御初に御目にかかります。わたくしは貴殿の腕の中に居る少女の友をしております。キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーと申します。宜しければ今後、彼女をどうするお積もりなのか伺っても宜しいでしょうか」
友が心配で逃げなかったようだが、やはり俺が怖いのか目が地面から離れないし額に脂汗が浮かんでいる。
隣に居る赤いトカゲも五体を投げ出して抵抗する気はございませんと言う感じだ。
「俺の事はアレイと呼ぶといい、キュルケ。今後の事はコルベールの提案で学院長を交えて決める事にした。それと普通に喋べれ。口調程度でどうこうする積もりはない」
俺がそういうと少し緊張が取れてきたのか「わかりましたわ」と言って頭を上げた。
俺達がそんなやり取りをしていると後ろから爆発音が響いてきた。
「それにしても此処の召喚術は過激だな。一々爆発するなど使い辛くてしょうがないと思うのだが」
と、俺が後ろを振り返りつつ思った事を口にするとキュルケが困った顔をして口を開いた。
「いえ、あれはルイズが魔法を失敗した音ですわ」
「ふむ、と言う事は俺が出てきた時もこの子は失敗していたと言う事か?」
俺は腕の中で気持ち良さそうに眠っている娘に目を向ける。
「あ、でも、アレイとドラゴンが出て来ているから失敗って訳じゃなさそうよ。ルイズは何を唱えても爆発しかしない成功率ゼロの『ゼロ』のルイズだもの」
どうもこの世界の魔法は失敗すると爆発するようだ。
失敗すれば魔力が霧散するだけのような気もするが、世界が違えば魔法も違うかと自己完結する。
「なるほど、ならこのままではいくら待っても儀式が終わらないと言うことになるが…」
「……そう言えばどうするのかしら、使い魔を呼べなければ退学なのに…」
そうキュルケが口にして心地心配そうにルイズと呼ばれている少女の方を見る。
キュルケと会話している間も絶えず爆発音がしている事から一行に召喚できないで居るようだ。
「ふむ、…そうか」
と、呟き抱えている少女を俺の後ろで伏せていたドラゴンに寄りかからせる。
「様子を見ておけ」そうドラゴンに伝えるとキュイと短く鳴いて了承したのを確認して爆発音の方に歩き出す。
「…どうする積もりなの?」とキュルケがついてきながら背中に声を掛けてくる。
「時間の無駄だ。早々に終わらせる」
背後のキュルケが息を呑んで足を止めた気配がするが俺は構わず突き進んでいく。
途中、コルベールが止めようと此方に一歩踏み出してきたが軽く一瞥したら彫像の様に固まった。
そして今、俺の目の前に躍起になって呪文を唱えているピンク髪の少女が居る。
「…ふむ、それでは一生掛かっても成功しなさそうだな」
と、俺が声を掛けるとバッと音が聞こえそうな勢いでルイズが振り返った。
「邪魔しないでよ!」
「邪魔しようがしまいが、今のままでは成功しないのだから問題なかろう」
そう言ってやるとルイズは真っ赤になった。
「なっ、何であんたみたいな平民にまでバカにされないといけないのよ!!ツェルプストー!あんたの差し金!!」
と、俺の背後を見るどうやらキュルケが追いついて来たようだ。
「違うわよ!それに彼は平み―――」
キュルケが弁明をしている所に俺は無言でルイズの額にデコピンを叩き込む。
「~~~っ!!」
額を押さえて声にならない悲鳴を上げる。
「取り敢えず、黙って俺の話を聞け」
「何すんのよ!あんた!!」
と、回復したルイズが文句を言いながら掴みかかって来た。
それに対してまた無言でデコピンをするが先程のがビシッなら今度のはズドンという効果音がなりそうな一撃だった。
それを受けたルイズは盛大に後ろにひっくり返り額を押さえてあまりの痛みにじたばた悶えていた。
その際、スカートがめくり上がり淑女に有るまじき格好になったが恐らく位置的に俺とキュルケにしか見えていなかっただろうから構うまい。
キュルケはご愁傷様という視線で見ていたが、俺を止める気はないらしい。
そうこうする内にルイズが回復したようだ。
流石に先程のは効いたのか地面に女の子座りをして額を両手で押さえ、無言で涙を湛えた瞳で見上げてくる。
「学習能力はあるようだな。…さて、……よく憶えておけ小娘、魔術とは、魔力を理性で制御し練磨して形にするものだ。貴様の様にただ感情に任せて魔力を垂れ流しにした所で成功する物ではない」
それを聞いたルイズは目を丸くする。
それはそうだろう、今まで失敗しても何が原因か分からず大人は自分にただただ魔法を繰り返し使わせるだけだったが目の前の人物は明確に原因を言っているのだ。
溺れる者は藁をも掴む、と言うがルイズの気位とプライドがどれ程高かろうと、(ルイズ視点で)ぽっと出の不振な平民の言葉であってもすがり付いてしまうのは仕方が無い事だ。
もっとも、このアレイと名乗る人物とある事情で、デモンベイン世界でマスターテリオン役を務め、ネギま世界の魔法をも使いこなせる人物である。
故にルイズがアレイの言葉を信じ希望をみいだしたのは間違えではない。
そして、ルイズがすがる様な眼差しでアレイの言葉を促す。
それに促された訳ではないが涼しい顔をして爆弾を投下するアレイ。
「もっとも、貴様は四大精霊から毛嫌いされているようだから、それらが関係する魔法は使えんだろうがな」
それを聞いたルイズは真っ白になってボロボロ涙をこぼしだした。
信じた人間からお前は魔法を使えないと宣言されたのだ。
しかもその気がなくとも希望を見せた後に突き落としたのだ、その精神的ダメージは大きいだろう。
流石のアレイもこの反応は予想外だったのか軽く目を見開き、座り込んで泣いているルイズの前に片膝をついて優しく抱き寄せ頭を撫でてあやしだした。
「ふむ、キュルケ。何故ルイズは泣き出したのだ」
心底不思議そうな声でキュルケに問うアレイ。
「アレイがルイズに魔法が使えそうな事言った後に使いないって明言したからでしょーが!!!」
誰が聞いても怒り以外の成分が入っていないような声で怒鳴り散らすキュルケ。
「……俺は一言も魔法が使えないとは言っていないが」
「言ったじゃない!四系統魔法が使えないって!!」
「うん?四大精霊が行使出来ないだけで何故魔法が使えないという事になる。魔力があれば他にいくらでもやり様があるだろうに」
「はぁ!それ以外って先住魔法でも使わす気!!」
「ふむ、要領を得ないな…、では、今回の召喚術は魔法ではないのか?これには精霊が関与してない様だが」
「へ、コモン・マジックだと思うけど……」
「ルイズ、そのコモン・マジックと言う物も使えないのか」
そう訊かれたルイズはさめざめと泣きながらコクリと頷いた。
それを見たアレイは何のためらいも無く、
「それは恐らくルイズが悪い」
と、言い切った。
愕然とした顔でアレイを見るルイズ。
「召喚術と同様に制御できていない魔力を術式に流したのだろう」
「…ねえ、……術式って何?」
と、容姿より更に幼く感じるルイズがそう訪ねてくる。キュルケも分からないのか疑問そうにアレイを見ている。
もう、二、三、質問してみたが、どうやらコモンマジックと言うモノは、呪文は適当、後はイメージのみという認識で使えているらしいが、アレイに言わせると先程の召喚術もちゃんと術式が組まれていた。
どうやらこの世界、世界もしくは大陸自体に術式が刻み込まれていて魔力さえあればそれを利用できるように調整されているようだ。
まあ、その辺の事はおいおい調べるとしよう。
アレイとしてはルイズの召喚を手早く済まさせる積もりで口を出したと言うのに、このままでは本末転倒もいい所である。
「……この召喚術式の場合、イメージするモノは『光る鏡』だ。恐らくそれで術式が安定する。魔力の出し方はゆっくり長くといった感じでいいだろう」
アレイがそう伝えると袖で涙を拭いルイズが立ち上がった。
そして、もう一度だけアレイを見上げて目を閉じる。
イメージするのは言われたとおりの光る鏡、楕円型で大きさは2mくらい、それを強く、強くイメージする。
そして、言われたとおり、自分の中にある何かを杖の先からゆっくり出すようにしながら呪文を唱える。
「どこかにいるわたしのシモベよ!神聖で強靭な使い魔よ!我は心より求め訴える!我が導きに答えなさい!!」
万感の思いを乗せてルイズは唱えたが結果は大爆発。
もっと言うなら最初よりも盛大に爆発した。
それを見たルイズはまた泣きそうになって肩を落としうつむいた。
ルイズにとって身内以外でこんなに色々してくれた人は初めてだった。
そして、そんな人から失望した視線を受けるが怖かった。
そんな恐怖に震えるルイズに思いもよらなかった言葉が掛けられる。
「取り敢えず、成功か……。どうも、力加減が分かっていない様だな」
えっ、と彼の方を見ると心地アホの子を見るような眼でわたしを見ていた。
そして、爆心地に向かって歩きだす。
わたし達は顔を見合わせ慌てて彼を追いかける。
◆
どうやら、ルイズは成功したようだ。
俺の足元で黒髪、パーカー姿の少年がノートPCを抱えて気絶している。
「キュルケ、ルイズ。人間が召喚されるのはいつもの事なのか」
俺の横で少年を観察していた二人が首を力いっぱい横に振る。
という事は、限りなくゼロに近いが、俺が門を開いた所為という可能性も出てくる。
一応、この少年から話を聞けるように手を打って置くとしよう。
「コルベール、どうやらこの少年、俺と同じ様な場所から来たようだ。悪いが学院長との話し合いに同席させたい」
近くで俺達の話を伺っていたコルベールにそう伝える。
「それは貴殿と同じように『コントラクト・サーヴァント』を後回しにするという事でしょうか」
心地否定的な雰囲気をかもし出すコルベール。
「何か不味いのか」
「いえ、呼び出した使い魔を変えることは伝統で禁じられているので、もしこの少年が使い魔にならなかった場合ミス・ヴァリエールが退学と言う事に…」
コルベールとしては、不出来の生徒の努力が漸く実ったのだ、見ず知らずの少年には悪いが使い魔になって貰いたいと言うのが本音だろう。
コルベールが悪く見えるかもしれないが、見知らぬ誰かよりも心を砕いた人の幸福を願うのは人間として普通の事でる。
それを聞いたルイズは俺を不安そうに見る。
「恐らくルイズが退学になる事はないだろう」
それを聞いてルイズがホッと息を吐く。
そう彼は使い魔をすることになるだろう。
先程の召喚術には相手先の座標を知る機能はなかった。
要するに一方通行なのだ。
そして、見るからに現代の日本人だと判る彼は此処で生活するには召喚主のルイズを頼るしかない。
そんな事を考えていたら彼が起きたようだ。
「……あんた、誰?」
と、すこし期待の篭った声でルイズが問いかけている。
アレイと言う前例がある所為だろうが残念な事に彼に魔法の素養は一欠けらもない。
「誰って…。平賀(ひらが)才人(さいと)だけど」
「えっと…平民?」
心地残念そうな声を出すルイズ。
そんな時、今まで静かにしていた遠巻きの生徒が一斉に「平民を呼び出した」とルイズを馬鹿にし、笑いだした。
その時、ルイズは無意識だろうがアレイのローブの袖を握り締めて耐えていた。
恐らくアレイの言葉を実践している心算なのだろう。
「ルイズ、感情を押し殺すのと制御するのは違うぞ」
そのアレイの言葉に驚いたようにアレイを見上げるルイズ。
「魔力と精神は密接に関係している。感情もまた然り。今、ルイズに必要なのは感情を殺す事でなく、感情をまとめ上げ方向性を持たす事。要するに感情を爆発させようとも冷静な思考を常に保つということだ」
そうまるで独り言を言うようにアレイが言い切り指を鳴らす。
そうすると先程までバカにするような笑い声が悲鳴に変わった。
キュルケとルイズ、才人までがそちらを向く。
そこには笑っていたであろう生徒が両手、両膝を地面についてもがいていた。
恐らくあの状態から動けないのだろうと考えた三人はこの状況を作ったと思われる人物を見る。
「少々話しの邪魔だ。黙っていると言うのならその枷を解いてやろう」
それを聞いて生徒が何か言う前にコルベールが割って入った。
もし、生徒がアレイに反発しようものならその後どうなるか分かったものではないからだ。
「私が責任をもって静かにさせます。ですからどうかその魔法をお解きください」
と、コルベールが深々と頭を下げる。
「ふむ、まあ良かろう。……先程、悲鳴の中に混じっていた。先住魔法とはなんだ」
「エルフなどの亜人種が使う魔法を私達はそう呼んでおります」
「なるほど、未知の魔法をすべて先住とくくっている訳か…」
そんな事では進歩は望めんなとアレイは思いつつ呪縛を解く。
その後、コルベールが何かの魔法を使ったのか生徒達の周りに空気の層が出来、音を遮っていた。
「さて、平賀才人。恐らく拉致されたとか、宗教がどうのと考えているのだろうが。……細かい事は別の場所で話そう。ついて来たまえ」
そういうとアレイはきびすを返して歩き出した。
才人は慌てて立ち上がりアレイの後を追おうとすると行き成りアレイが振り返った。
「……ルイズもついて来い。さて、コルベール案内を頼もうか」
そういってからアレイはまた歩き出した。
ちなみにその他の生徒はコルベールが解散させ、蜘蛛の子を散らすように逃げ帰った。
◆
アレイがドラゴンの元にたどり着きまだ寝ているタバサと呼ばれた少女を抱き上げる。
その時の振動の所為かタバサが目を覚ました。
「気がついたか」
焦点の合っていなかったタバサの瞳がアレイを捉えた。
途端にタバサの顔は真っ赤になりビクッと一瞬跳ねた後、固まってしまった。
「…………大丈夫か?」
と、アレイが聞くと「…(コクリ)…」と少々顔を赤くして返事が返ってきた。
恐らく無口か、口下手なのだろうと勝手に自己完結するアレイ。
目が覚めたのなら降ろそうかとも考えたが、そこまで重い訳でもないし別に構うまいと思いそのままにしておく。
それよりも今は大興奮している才人だ。
先程から「ドラゴン!本物!!」とか「すげー!!」を連呼して竜に纏わり付いている。
その所為か先程から竜が鬱陶しそうにして、俺の方にこれ殺(や)っちゃっていいですか?と剣呑な瞳で語ってくる。
「……才人。…死にたくなかったらその竜から離れた方かいいぞ」
と、呆れを乗せた声で語るアレイに才人は「…へ」と振り返る。
「今、貴様がしている事は野生の虎に食ってくださいと近付いて行っている様なものだぞ」
そのアレイの言葉が理解できなかったのか才人は数瞬固まった後、真っ青になって足をもつれさせながら後ろに下がった。
その姿が滑稽だったのかルイズとコルベールは笑っていたが、アレイはそれを一顧だにせず竜の顔の前に近付いた。
「さて、悪いがそこの二人を運んでくれるか」
と、アレイは声を掛ける。もっともアレイとしても返事は期待してはいない。
ただ、何となく言っただけであるが、思いがけず返事が返ってきた。
「きゅいきゅい!まかせるのね!大いなる意思様のお願いなら断れないのね!!」
「……韻竜」とアレイの腕の中のタバサは目を丸くして呟き、コルベールとルイズも同じ言葉を発して騒いでいる。
「なんだそれは?」とアレイはタバサにたずねてみる。
すると、少し考える素振りをした後、タバサが口を開いた。
「……韻竜は高い知能を持ち、高度な先住魔法を使う竜の種族。……わたし達の間では絶滅したと考えられてる」
「きゅいきゅい。そのちびすけの言うとおりなのね!お馬鹿な火竜とは一味も二味も違うのね。それにしても人間はおバカなのね、ちょっと隠れた位で絶滅したとか思うなんて、おバカ過ぎるのね。わたしは風韻竜のイルククゥというのね。大いなる意思様」
とつとつと喋るタバサに対してイルククゥは良く喋るようだ。
「ふむ、大いなる意思とは俺のことか?」
「きゅい!そうなのね!わたしには分かるのね!」
と、胸を張ったように言い切るイルククゥ。
恐らく旧神の因子の事を言っているのだろうと当たりを付けるアレイ。
もっともアレイにとっては、だからどうしたという感じではあるが。
いや、余り矢鱈と広められるのも問題か……。
幸いタバサ以外はイルククゥの発言よりも韻竜の方に目が言っているようなので、取り敢えず、この竜を黙らせ、タバサは後で釘を刺すかと考えるアレイ。
「……俺の事はアレイでいい。では、イルククゥ、悪いが運んでもらうぞ」
そう言い、恐らく空の飛べないルイズとサイトに乗れと促すと、アレイはコルベールの先導で遠くに見えていた城砦の様な場所に飛んでいった。
その際、もたもたとするルイズとサイトにイルククゥが毒を吐いていた。
◆
ここは学院長室。そこにはその部屋には不釣合いな程、繊細で芸術的な細工をされたテーブルを囲った5人の男女。
言うまでも無くアレイ、タバサ、ルイズ、サイト、学院長のオスマンである。
コルベールは今回の儀式の監督と言う事で概要をオスマンに伝え後、オスマンの後ろに控えている。
ちなみにアレイの前にだけお茶がエセルの手により置かれている。
「さて、学院長。今回の事、貴方は如何する積もりかね」
と、アレイはエセルの入れたお茶を口にしつつ学院長に問いかける。
「如何とは?どういうことですかな。あ~、ミスタ…」
「アレイと名乗っている。……最初から見ていたのだから分かるだろう。無断で人を二人も呼び出したのだ。学院の長として今後どの様にする気なのかと訊いているのだよ」
その言葉にオスマンの眉がピクリと動く。
そうオスマンは儀式を始めから遠見の魔法で一部始終覗いていたのだ。
そして、アレイは言外にこう言っているのだ。
『テメェの所の生徒が迷惑掛けてんだ。長の貴様はどう責任取る積もりだ。あぁん』と。
もとっもアレイとしては遊びでこの世界に来ているのに自分の楽しむ為以外の瑣末に係わらない為にこう言ったのだ。
ただ、オスマンは、そうは取らなかった。
今も影からテーブルとイス、そして、何処からか従者まで呼び出して見せたのだが、オスマンの長い人生で見たことも聞いた事もない魔法である。
しかもアレイがいつ魔法を使ったのか分からなかったのだ。
これは間違いなく自身よりも高位のメイジ、それも発する覇気からして王族と勘違いしたオスマン。
顔を何とか取り繕ってはいるが内心では冷や汗ダラダラである。
要するにオスマンの考えていた通りなら王族拉致だ。
オスマンとしては、すわっ、これは戦争か!!と考えアレイの出方を待っていたのだ。
そこにアレイのあの言葉である。
正直、進退(しんたい)窮(きわ)まった状況なのだ。なんせ、召喚してしまっては送り返すことは出来ない。
これは正直に話すしかないと考え意を決して口を開く。
「真に申し上げにくいのですかの、貴殿を元いた場所にお送りするのは―――」
「不可能なのだろう」とアレイはオスマンが言おうとした事の結論を先に言う。
「なにせ、あの召喚は一方通行だ。貴様らがどうやろうと元いた場所には戻せまい」
さも気にしていないと言わんばかりにアレイは言うが、それを聞いたタバサとサイトは愕然としている。
「―――なっ、なあ、ホントに戻れねぇのかよ。ってか、これって俺の夢とかじゃねぇのか!」
さっきまで好奇心旺盛にキョロキョロしていたサイトがボーゼンとした感じの顔で半ばパニクって聞いてくる。
「夢かどうかはさて置き。俺個人なら問題無く戻る事が可能だ」
その言葉を聞いて、だったら先程の不可能と言う言葉はなんなんだと、全員が「…へっ」と言う顔になる。
「俺は『貴様らには』と言ったんだ。もっとも、その少年は元いた場所が分からんからどうしようもないがね」
ニヤニヤしながら語るアレイ。
それを聞いてオスマンはホッと息を吐くが、タバサは少々複雑そうである。
反対にサイトは絶望のどん底と言う感じにズーンと落ち込んでいるが、気にもしないアレイ。
まあ、男に優しくする趣味は無い。
「さて、今、語ったことを踏まえて貴様はどう行動する。オスマン?」
まるでオスマンを試すように不敵な笑みを浮かべるアレイ。
それに対し返事を考えるオスマン。
正直、オスマンとしてはアレイにお帰りいただくのが一番なのだが、それはあり得ないと考える。
何故なら、先程の話が本当ならアレイはここにいる必要がないのだ。
しかも、生徒の使い魔にされようとしているのだ。普通ならそれこそ直ぐにでも元いた所に帰っていてもおかしくない。
それでもここにいる。という事はそれ相応の理由があるのだろうと考えたオスマン。
ならばこのアレイと言う人物がどう行動する積もりなのか確かめて置かねばならない。多くの生徒を預かる学院長として……。
「ミスタ・アレイ。ここに残る理由をこの老いぼれにお教えくださらんか」
「ふむ、端的に言えばバカンスだ」
と、堂々と言ったアレイ。
それを聞いたオスマンは余りの予想外の回答にポッカーンとする。
「ああ、後、そこのタバサに力を貸してやると言った事もあるか…」
思い出したように付け加えるアレイ。それを聞いて心地、嬉しそうにするタバサ。そして、それを羨ましそうに見るルイズ。
「……あ~、ミスタ・アレイは遊びに此処にいらしたと…」
「正確には俺が元いた場所以外の何所かだがね。恐らくあの場、あの時にタバサが召喚の儀式をしていなかれば、あの場に現れてはいなかっただろうがな」
その答えを聞きアレイと言う人物が良く分からなくなったオスマンであるが取り敢えず危険はないと判断した。
こちらから手を出さない限り危険はないだろうと言うと程度であるが……。
「さて、サイト。可能性はゼロに近いが一応は訊いて置いてやろう。お前は何所から来た?」
未だ、ズーンと落ち込んでいるサイトがノロノロと顔を上げ、口を開く。
「…………日本の東京」
「ふむ、関東圏の人間か……。ならば麻帆良を知っているか?」
と、アレイが答えるとサイトは変な顔をする。
「…知ってはいるけど…マンガだろ」
「ほう、マンガか…。ちなみに主人公とヒロインは誰だ?」
「へっ、…ネギ・スプリングフィールドと神楽坂アスナなのかな、あれは…、いや、生徒全員って見方も…」
などといって考えているサイトの目の前にアレイがアスナとの仮契約カードを持っていく。
そのカードは原作と違い漆黒のドレスを身に纏ったアスナが破魔の剣を構えている図柄だった。
「…は、はは、に、偽者だろ……」と言いながらサイトが色々見たり、折り曲げたり、あまつさえ破ろうとするがビクともしない。
まあ、どういう材質か知らないが魔法の直撃にも耐えるのだ、少々の事では何ともならない。
「気が済んだか」とアレイが言うとカードにまるで意思があるようにアレイの手にひとりでに飛んでいく。
少々呆けた顔をしていたが行き成りキラキラした目をしてサイトが興奮した感じに訊いて来る。
「なあ、それが本物だとするとアレイはマンガの世界の住人って事か?」
「いや、恐らく似ている世界と言うだけだ。……世界と言うのはそれこそ無限に存在する。その中には創作物に似た世界も存在するのだよ」
逆にその作者が何かしらの電波を受けて既存の世界に近い作品を書く。と言う説もあるがその辺を話し出したら限がないので割愛する。
この話をしている際、オスマン達はチンプンカンプンという感じに?マークが飛び交っていた。
「なあ!なあ!もしかして俺も魔法を使えないかな!たしか、あの世界の魔法は努力しだいで誰でも使えるんじゃなかったっけ!!」
と、行き成りサイトが言いだす。
それを聞きギョッとするオスマンとコルベール。
それもその筈、もしそんな事が出来れば貴族の優位性がなくなる所か、平民の反乱、内戦、国の崩壊と推移して行くのが容易に想像できる。
逆に興味津々と言った様子なのがタバサとルイズである。
理由は言わずもがな、ルイズは誰でも使えると言う言葉に、タバサは知的好奇心と母親の解毒の為である。
「出来なくはないが……、エヴァ並の術の効率化を図ってもお前の場合『魔法の射手』十数発で魔力が尽きるぞ」
哀れな生き物を見るような目でサイトを見ながら言うアレイ。
それを聞いた途端、カチーンと凍るサイト。
その様子を見てタバサが、「…アレイ。…どういう事?」と、小首をかしげながら訊いて来る。
それに対してアレイは、年齢一桁の子供が同時に二十発ぐらいを何回も打つような魔法をサイトの場合、伝説の大魔法使いと同等の技能をもってしても十数発が限度の魔力量しか持っていないのだ。と説明した。
その説明を受けた全員はサイトにご愁傷様と、なんとも生暖かい優しい視線を向けていた。
「あの、わたしならどれくらい使えますか」
ルイズが今度は訊ねてくるが、一応、魔法の射手も精霊魔法に属する。要するに、
「残念ながら向こうの魔法の大半はルイズには使えんよ。もし、使えるとしたら身体強化や、才能いかんでは治癒魔法と言った事ろだろうか」
と、アレイが言ったら、『治癒魔法!!』と、すごい勢いでルイズとタバサが食い付いた。
「不時の病に効くのか」や「毒に対してどうか」などと、左右からまくし立てるように言ってくる。
取り敢えず、アレイは二人を黙らすことにした。要するに恒例のデコピンである。
「さて、先ずルイズだが病気を見てみないと何とも言えん。次にタバサだがその毒を受けた人物が生きて際いれば、俺ならどんな物だろうと無効化できる」
そう答えると痛がっていた二人が行き成り、タバサ片膝付いて祈りだし、ルイズは今度わたしの家に来てくださいと誘い出した。
ルイズに時間がある時に、と言ってなだめ、タバサはイスに座らせ何とか落ち着けた。
そして、漸く使い魔をどうするかと言う話になった。その際、オスマンから使い魔の概要が説明される。
使い魔とは、終生メイジに付き従う者であり、主人の目となり耳となり、時には主人の命を受け働き、また、護衛などもする者であるとの事。
要するに専属の万能従者のような者らしい。
それで、案の定、サイトが文句を言い出した。なんで拉致られた挙句そんな奴隷じみた事をせんとならんのだと。
それを聞いたルイズもかなり自分勝手な文句を言い出し収拾がつかなくなる。
オスマンもコルベールも、どうしたものかと言う感じである。
ここで時間を取られるのもバカらしいと二人を見かねてアレイが動いた。
「それで…、自分の世界に戻れない上、使い魔をしないサイトはどうやって生活する気なのだ」
「へ…し、仕事でもして?」と、疑問形で返してくるサイト。
「ほう、なら勿論、手に職をつけているのだろうな。で、何が出来る?」
さも当然という感じに訊くアレイ。その際、ちょっと期待の視線を送るルイズ。
「え……。そんなのないけど…」と、答えるサイトにアレイ以外の全員がため息を漏らす。
「えっ、えっ」と周りを見回すサイトにアレイが凄まじく冷めた眼をして語る。
「恐らくここは中世と同じような文化レベルだ。お前に分かり易く危険度を言えば、バカな日本人が紛争真っ只中の国で何の知識もなく夜にフラフラ出歩くようなものだ。間違いなくここを出て三日以内に夜盗か野獣に殺されるだろう」
それを聞いてか、それともアレイの眼を見た所為か、サイトがガタガタ震えだした。
そして、更にアレイの言葉が続く。
「しかも運よく仕事にありつけたとしても、手に職を持っていないお前は最悪、奴隷のように働かされるだろうよ。なにせお前はこの世界の常識を知らないんだ。幾らでも騙し様がある。それに比べたらルイズの使い魔生活は天国だと俺は思うがね。もし何か不当な扱いを受けたと思えばそこの先生二人に泣き付くか、高くつくかも知れんが俺に言うという手もある。……さて、サイト君はどちらを選ぶんだ」
まるで悪魔のような囁きである。
何せ言っている事は概ね合っているがホントにそうなるとは限らない。
その上、ルイズの所はさも天国だと言っている様な気がするが、あくまで最低の奴隷生活に比べたらである。
一言もルイズの所が天国などとは言っていないのだ。
結局、サイトは自分から使い魔をします!と宣言した。それを見てアレイは「へっ、ちょろい契約だったぜ」と悪魔の様な微笑を浮かべていたらしい。
さて、宣言通りにサイトとルイズが問題なく契約した。まあ、少々キスの所でルイズが嫌そうではあったが……。
それで、サイトにガンダールヴとルーンが左手に刻まれた。その際、痛がっていたが無視である。
何故に北欧神話のドワーフの名前なのだ。と言う突っ込み所もあったが、それよりも今は機能の方である。
恐らくは使い魔を強化するような術式のようだ。詳細は使っている所を見れば分かるだろうと放置する。
次はタバサの番なのだが正直この契約をした所で俺とタバサ双方共に旨みがない。
何せ、俺を強化した所で無限に一を足すようなものだ。全くもって意味がない。
視覚と聴覚の共有も術式に入ってはいるようだが、正直そんなものに頼るぐらいなら素直に魔法か魔術を使う。
と、いう事でタバサにネギま世界の仮契約にしないかと提案する。勿論、使い魔契約と仮契約のメリット、デメリットはきちんと伝える。
簡単に言ってしまうと、仮契約すると従者に主から魔力供給と魔道具が与えられるという事なのだが……。
それを聞いたタバサ本人は乗り気だったが、オスマン達は不服そうであった。
それはそうだろう主従逆転、しかも実質使い魔ではないのだ。
これはまずいとオスマン達がアレイ達を説得しようとするが、逆に簡単に言い負かされてしまう。
何故なら、タバサにはあと一体、使い魔候補というか、本当の使い魔が外で待っているからだ。
そもそも、アレイは使い魔として呼ばれた訳でなく偶々あの場に現れただけである。
なので、あのドラゴンを使い魔にして、アレイを側近の様にすればいいと話を持っていったのだ。
そして、今、エセルによって書かれた魔法陣(通常の三倍の大きさ)の中にいるアレイとタバサ。
なお、魔法陣が大きいのは異世界まで契約精霊を呼び出すためである。ちなみに契約の際の魔力消費も通常の五、六倍は掛かる予定だ。
魔法陣が光り輝く中、アレイとタバサは見つめ合い、アレイがタバサの頬に手を添えゆっくり口付けを交わす。
そうすると、アレイ達の間にカードが現れる。
そこには透き通る様なクリスタルで出来た様な身の丈以上の杖を持ったタバサが写っていた。その際の名前表記がシャルロット・エレーヌ・オルレアンになっていたがアレイは何も言わなかった。なにせ、主の所の表記もマスターテリオンなのでお相子なのである。
コピ-カードを渡した際、タバサが眼を見開いてアレイを見るがアレイは気にせず使い方をレクチャーする。
「取り敢えず『来たれ(アデアット)』と唱えてみろ」
アレイが言うとコクリと頷き、「…来たれ(アデアット)」と呟くように唱えるタバサ。
すると手に持っていたカードが輝き、次の瞬間にはいつも持っている杖と共にクリスタルで出来たような薄蒼の2m位の棍の様な杖を持っていた。
それに驚いて眼を見張るタバサ。他の面子も興味津々とばかりに見ているが、それに構わずアレイはタバサの出した杖を観察する。
どうやら、この杖はクルスタルではなく氷で出来ているようだ。
タバサに頼み杖を持ってみると非常に重い、具体的にはt単位の重さだろう。
杖をタバサに返し重さを訊いてみる「…羽のように軽い」と返答してきた。
アーティファクトの能力の一つだろうが、恐らくまだ他にも機能が隠れていそうだ。
後は要検証といった所だろうか……。
「杖をしまう時は『去れ(アベアット)』だ」
今度は「去れ(アベアット)」とタバサが唱えるとカードに戻った。
「おぉ~~~」と周りが感嘆の声を上げる。
その後、話し合いが終わり、ドラゴンとタバサが使い魔契約を交わし、韻竜である事を知った学院長がその事を隠すように釘を刺し今日は解散となった。
ちなみに、今、部屋がないらしく暫くはそれぞれの主の部屋に泊まるようにと言われた。