到着したタバサの部屋だが壁一面に本棚があり、かなり本好きなのがうかがえる。
そして、当たり前のようにベッドは一つしかない。それを見て最悪、ジョゴスでも召喚すれば済むかと考えるアレイ。
このジョゴスと言うのはスライムの親玉のような奴で、デモンベイン世界のヒロイン愛用の由緒正しいベッド兼マスコットである。
とは言うものの、まだ、夕方にもなっていないので手持ち無沙汰な感じである。
魔導書が手元にあれば読むのだが、今、エセルには情報収集を命じている為、恐らくもう暫くは戻ってこない。
そう、先の会談でアレイの従者としてお茶を入れていた黒髪の少女、エセル事、エセルドレ-ダはアレイが腰につけていた魔導書の精霊なのだ。
更にいうと、伴侶兼パートナーでもある。
さてどうするかと考えていると、タバサがイスを勧めてきた。
アレイはそのイスに座り、タバザはその対面に座るようにベッドに腰掛ける。
「…何故、名前について聞かなかったの」
と、ポツリと疑問の声を上げるタバサ。
「ふむ……、先程のカードの裏に書いてある文字が読めるか?」
そのアレイの返事を聞き、疑問そうにしながらもタバサは懐から仮契約カードを取り出し、裏を見て書かれた文字を読み上げる。
「マスターテリオン?」
そうアレイではなく、マスターテリオンである。
「そうだ。それが俺の実名に当たる一番古く、長く使っている名前だ。……では、我が従者よ。改めて自己紹介と行こうじゃないか。余の名は、マスターテリオン。貴女の名は……」
アレイは自身の胸に手を当て、名乗りを上げる。
「わたしは……、わたしはシャルロット・エレーヌ・オルレアン。……でも、…今の名前はタバサ」
と、アレイを見据えて名乗るが、後半に行くにしたがって声はか細くなり、俯き加減になる。
そして、その後、タバサがポツポツと自分の過去をアレイに語り出す。
ガリア王国の王族として生まれ、政争に敗れ、父を失い、母も毒に犯され心を失い、自分は人形の様に仇(かたき)の娘に使われていると……。
「で、シャルロット。……貴様はどうしたい」
「……どう?」
と、聞き返しながら俯いていたタバサが顔を上げる。
「先程の解毒してほしいと言ったのは、その母親の事なのだろう。それで他には何か考えているのか?」
「……復讐したい」
暗い光を瞳に映してそう呟くタバサ。
「ほう、復讐か……」
そのタバサを見て呟くアレイの口元はさも面白そうに歪んでいた。
「そう、ジョゼフに復讐する」
「どのようにして?」
そのアレイの言葉を聞いたタバサは、「えっ?」と言う感じの顔でアレイを見る。
「そいつを殺すのか、生かすのか。と聞いているんだ」
「……殺す」
タバサは暗い決意を表明する。
「ふむ……一応聞いておくが、そいつは王か?」
その問いにタバサはコクリと頷いて肯定を示す。
「ならば、殺した場合、また母親が危険にさらされる事には気が付いているのだろうな」
その言葉を聴いて何故と言わんばかりにジト眼になるタバサ。
「…………気付いてなかったのか?」
歪ませていた口元を解き、呆れた顔を作るアレイ。
――どうも復讐に心が囚われ過ぎているようだ。いや、それが普通か……。だが、これでは相手が利口な奴だった場合、足元をすくわれかねない。
それはそれで面白しろそうだが、力を貸してやるといった手前、簡単に終わってもらっても面白くない。
「……お前達、親子は王族なのだろう。ならば、現王が死ねば必ず権力を欲する有象無象が群がってくる。そして、また権力闘争に巻き込まれる訳だ」
ニヤニヤ意地の悪い笑みを浮かべつつ、そうアレイが苦言を呈する。
それを聞き、呆然とした感じになったタバサが弱弱しく口を開く。
「……どうしたらいい?」
「ふむ、現状を聞く限りでは殺さない道を選ぶか、殺すとしても逃走の準備をしてから殺(や)る事を薦める」
「……逃げれる場所なんて、わたしにはない」
「ならば、どうにかして作るのだな」
そのような会話をしていると“こんこん”とノック音が窓の方からしてくる。
此処は五階、普通ならばそのような所の窓から客など来る筈はないのだ。
だが今回はその普通じゃない客のようだ。そこには綺麗な真っ青な鱗に覆われたドラゴンがいた。そう、タバサが召喚した竜『イルククゥ』である。
それが、窓の外で滞空していて鼻先で窓をノックしているのだ。タバサがそれを確認してから窓を開けてやる。
「きゅいきゅい!ズルイのね!ちびすけだけ、大いなる意思様とお話して!ズルイ!ズルイのね!!きゅいきゅい!!!」
窓が開けられた途端、にゅっと首を突っ込んできて可愛らしい声で機関銃の様に喋りだした。
その際にタバサを吹き飛ばしていたがイルククゥは全く気にしていない。
吹き飛ばされたタバサは器用にクルリと後ろ回りの要領で受身を取って無言で起き上がり、スタスタと不法侵入した竜(トカゲ)に近づき杖を振り上げた。
「なっ、何するのね!ちびすけ!!いたい!いたいのね!!やめるのね!!」
悲鳴を上げているイルククゥに全く構わず無言で杖を叩き込むタバサ。
その痛みに耐えかねたイルククゥが窓に頭を突っ込んでいた状態で大暴れしたもんだから、窓があった壁一面が崩れ落ち大穴が開いたのは当然の事だろう。
むしろその程度で済んで良かったと言った方がいいかもしれない。
それを見てタバサは黒い覇気を纏いながら無言、無表情でイルククゥを見詰め、イルククゥは首に窓枠を引っ掛け流石に悪いと思っているのか額から脂汗が流れているのが見て取れる。
そんな二人(一人と一体)を面白そうに観察しているアレイ。
そんなアレイが口を開く。
「大分、風通しが良くなったな。……このままでは風邪を引きそうだが、これをタバサは直せるのか?」
「……直せなくは無いけど時間が掛かる」
「ふむ、そうか。……取り敢えず二人とも折檻だ。部屋の中で暴れるな」
そう、アレイに言われた途端二人の額に衝撃が走る。
その衝撃に驚愕する二人、何せお互いアレイとは距離がある。それなのにアレイは椅子から立った様子も無いのにほぼ同時に二人に衝撃を与えたのだ。
「さて、イルククゥ。お前は小さくなったり出来ないのか?」
「出来るのね!きゅいきゅい!我にまといし風よ。我の姿を変えよ」
そう唱えるとイルククゥの身体を青い風が纏わり付き、渦を巻き、それが晴れるとそこには二十代くらいの青い長い髪の美しい、素っ裸の女性が現れ、部屋の中に入って来た。
「どうなのね、ちびすけ!おどろいた!?」
「…………」
立派な山脈を見せ付けるように威張るイルククゥにそれを無言で見詰めるタバサ。
アレイはそんなイルククゥに近寄ると、行き成り身体を触ったり抱き上げたりしだした。
イルククゥは嫌じゃないのかアレイのなすがままであるが、タバサの方は驚いているのか心地眼を丸くして固まっている。
「此方の魔法を中々に面白いな。手触りや質量まで変わっている。幻覚ではなく、変化と言った方がいいか――」
散々調べてアレイは満足したのかイルククゥから離れ、上から下まで見た後、また口を開く。
「流石に服までは再現できんか……」
そう呟いた後、タバサをチラリと見やり、もう一度イルククゥを見たアレイは「ふむ」と頷き、軽く声を出す。そんな様子のアレイにイルククゥが不満の声を発する。
「大いなる意思様。わたし(竜)に服はいらないのね。それに布を身体に付けるとゴワゴワしそうだから嫌なのね」
「それは俺が困るのでな。ふむ、――――影よ」
アレイがそう唱えるとイルククゥの足元に在った薄い影が漆黒に染まって立ち上がり、足から順にイルククゥに纏わり付いていく。
「きゅいきゅい!!」と驚いた声を上げるイルククゥだが次の瞬間には漆黒のドレスを纏っていた。
「すごい!すごいのね!!こんなの見た事ないのね!あの気位が高そうな影の精霊で服を作ってしまったわ!!」
クルクル無邪気な子供のように嬉しそうにその場で回って喜びを表現するイルククゥ。
「……これは」
「操影術と呼ばれている影の精霊を使役する技だ」
そう、ネギまの操影術である。小太郎やカゲタロウ、高音が使っていた技で、物理攻撃などにかなりの耐性を持つ服である。
基本的にアレイは多種の精霊を使役できるが、その中でも相性がいいのが闇である。故に影を使う操影術はお手の物なのだ。
「……後は壁か」
アレイが呟きながら指を鳴らすと地面に落ち瓦礫と化していた元壁が、時間が巻き戻るように独りでに壁を作っていき、最後には元通りの姿に戻った。
その様子を呆然として見ていた二人がアレイの方を凝視する。
「……どうやったの」
「そうなのね。わたしには精霊を使ったようには見えなかったのね」
「時間を操って、壊れた事を無かった事にしただけだ」
アレイは事も無げに言っているが二人には衝撃的であった。それはまさに神の御業である。
この業、いや、術式はド・マリニーの時計と呼ばれ、時間を単一宇宙単位で操れる術式だ。簡単に言ってしまえば、この世界の時間をアレイは自由に操作できるという事だ。そして、この術式で改変された時は同じド・マリニーの時計の術式でないと戻せないという制約がある。
そんな、離れ業をして見せたアレイは未だ衝撃が抜けない二人を他所にまた椅子に座り直し口を開いた。
「それで、イルククゥは何をしに此処に来たんだ?」
「……はっ!そうだったのね!ちびすけ、おなかすいたのね。ごはんは?ごはんは?」
空は何時の間にか日が傾き、夕暮れに成るか成らないかの微妙な時間であった。少々早いかも知れないが食事をしても可笑しくない時間帯だ。
しかも、竜族は総じて燃費が余りよくない。
「……なら、食事が取れる場所に行くついでに、生活に必要な場所を案内して貰おうか」
そう発しながらタバサを見るアレイ。それを受けコクリと頷き、タバサがトコトコとドアへ向かって歩いて行く。
◆
タバサの後を追い必要最低限の説明を受けつつ生活に必要と思われる場所を案内されたアレイ達は最後に食堂ではなく、その食堂を通り抜けた厨房に来ていた。何でも此処の料理長に頼めば食事を用意してくれるらしい。
それで近くを歩いていたメイドにタバサが声を掛ける。「料理長を呼んできて」と。
そのメイドは何故か慌てたように返事をして奥に小走りに駆けていった。
それから暫しして、四十過ぎ位の恰幅のいい親父が、先程呼びに行っていたメイドを伴って出てきた。
「どうされましたか。貴族様、なにか料理の要望でしょうか」
その親父の問い掛けにフルフルと首を振りアレイ達の方を見て。
「彼の食事をよろしく」
「へえ、分かりました。ですが、アルヴィーズの食堂は原則、学生と教職員の方しか使えませんがどうしやしょうか」
その事を考えていなかったのかタバサが少々考えてからアレイの方を見た。
「ふむ、君たちはどこで食事をしている?」
「へっ?へえ、厨房の一角です」
「ならそこで構わん」
そのアレイの答えは意外だったのか親父とメイドは心底驚いたと言わんばかりに眼を見開きまじまじとアレイを見る。
「うん?何かまずいのか?」
「い、いえ。まずくは無いのですが。よろしいので、貴族様」
「別に構わんよ。厨房の中なら下手な場所よりも清潔だろう。なあ、料理長」
そうだろうと言わんばかりにニヤリと笑うアレイ。
「それはお…私の名誉に掛けて保障しますが…」
「なら別によかろう。…それと俺は貴族ではない、そう畏まった喋り方は必用じゃない」
アレイの言葉が信じられないのかタバサの方に視線をやる親父に、タバサは“アレイがそう言うのなら”と考えコクリと頷く。
それを見た親父が意を決してアレイに口を開く。
「お…おう、それじゃあ、俺はマルトーって言うんだ。よろしくな」
「アレイ・クロウ。アレイでいい」
オズオズと手を差し出す。アレイはそれを躊躇なく握り、紳士の如く上下に振る。所謂(いわゆる)、シェイクハンドである。
「ああ、それともう一人ほど増えるかも知れないが大丈夫か?」
これは勿論、エセルの分である。断じてサイトの為ではない。
「ああ、それぐらいなら問題ねぇよ。それであんたらは今から食うのか?」
そう聞いてくるマルトーにアレハはタバサの方を確認する。そうするとタバサはアレイが確認する頃には自身の席に着いて食事を待っていた。
マルトーに会わせて事情を話し、アレイが食事を取れる様になったら自分はお役ごめんと思ったのだろう。早々にこの場を離れたようだ。
「そうだな、今から頼めるか。それと後で勝手口の方に黒い文様が入った青い竜が来る筈だ。そいつに肉を振舞ってくれないか」
「そいつはあんたの使い魔かなんかで?」
親父がやはりこいつも貴族かと、ギクリと固まる。
「俺のではない。さっきの子のだ。どうも言い忘れていたようだからな」
「ほーう、そうなのか。だが、聞かねぇようなドラゴンだな、黒い文様入りなんて……」
「きゅい!そんなの、あう!―――」そこまで言ってイルククゥが行き成り額を押さえてうずくまる。
『もう少し黙っていろ。そうすれば肉が食える。それと文様は今着ている服が形を変えるだけだ。そのおかげで喋れるように成ったと言えば怪しまれずに喋れるだろう。……何か聞かれたら俺に魔法を掛けられたと言え。その際、間違って大いなる意思や、韻竜と言った言葉を吐くなよ。吐いた場合、折檻をするからな』
念話でイルククゥに念を押すように伝えると、ビックとした後にコクコクと頷いてダッシュで何所かに駆けて行った。恐らく勝手口だろう。
「なあ、さっき頼んだ分はあの女性のじゃないのか?」
不思議そうな顔のマルトー。
「いや、あれはちゃんと別で用意してある。今日は居ないが俺のパートナーの分だ」
ああ、なるほど。と、したり顔で頷くマルトー。
「じゃあ、俺は仕事に戻る。悪いがこのシエスタに面倒を看て貰ってくれ」
マルトーの背中に隠れるように立っていた先程のメイドがマルトーに背を押されるようにしてアレイの前に出て来る。
そのメイドは、此処では珍しいであろう黒髪を白いカチューシャでまとめた素朴な感じのする少女だった。
「はじめまして、シエスタといいます」
きちんとして礼節に則ったお辞儀をする。
「ああ、アレイだ」
軽く微笑みながら返すアレイにシエスタの顔が少し赤くなる。
「あ、あの、こちらです」
と、少々慌てようにアレイを先導して厨房に二人で消えて行った。
◆
まるで逃げる様に席に着いたわたしは出された食事を黙々と口に運びながら今日出会った彼(アレイ)の事を考えていた。
彼の口振りからわたしが召喚した訳でなく、彼自身の力であの場に現れた。それなのにわたしは彼に使い魔になってほしいと頼んでしまった。明らかな格下の言う事だ。従う道理など無い。むしろ、無礼打ちされていても可笑しくは無かった。
それなのに彼に代価を払うとはいえ、わたしの力になってくれると言ってくれた。
恐らく求められる代価は金銭ではないだろう。何となくだがそれは違う気がする。部屋で話していた時の感じからして求められるのは愉悦。
最悪、わたしは彼の玩具になる。だが、それが如何したと言うのだろうか。今のわたしは人形と代わらない。その繰り手が、敵(かたき)の娘から彼に代わるだけだ。
だが、そう考えると何故だか胸が温かくなった。
今まで感じか事のない感覚に戸惑ったタバサはそれを気のせいと思い込み、思案を続ける。
部屋で見せてもらった力、影と時を操った力。それは此処ハルケギニアでは聞いた事も見た事もない物だった。特に時を操って見せたのは、最早、人の力では無いとさえ感じた。
現にあの韻竜も彼の事を大いなる意思様と呼んでいた。これは確か先住の魔法を使う者達が崇めていた神だったはずだ。
そこまで考えてタバサはふと思ってしまった。
“わたしは彼の力を借りる資格があるのだろうか”
今のわたしは何も持っていない。代価を払うとしても、果たしてわたしに彼を喜ばせる様な事が出来るだろうか。
そんな事を考えていると後ろから声をかけられた。
「―――あら、珍しく食が進んでないじゃない?」
何時の間にかタバサの手が止まっていたのを見て親友のキュルケが指摘したのだ。
「で、あの後どうなったの?」
と、聞きながらタバサの隣に腰掛けるキュルケ。
「……彼とは、彼が知っていた方法で主従契約して、竜とコントラクト・サーヴァントした」
「へえ、じゃあ、二人(?)の主って訳ね。凄いじゃない」
そんな事を言っているキュルケにタバサはフルフルと首を振り否定し。
「……彼が主」
「あっ、やっぱり。どう考えても彼を従わせる事なんて出来ないわよね」
うんうん。と頷きながら納得するキュルケ。
「まあ、それでも凄い事だと思うけどね。あたしは」
のっけからあれだけ威圧し、その後、失敗続きのルイズに魔法を指導し成功させ、更にその後、生徒を瞬時に拘束して見せた。タバサはそんな大魔法使いの様な存在の御眼鏡(おめがね)に適(かな)ったである。
親友として鼻高々と言う感じに言うキュルケに珍しくタバサの方から相談を投げかける。
「……どうすれば彼を喜ばせる事が出来る?」と。
この相談にキュルケは目を丸くする。この友人とは約一年の付き合いだが、こんな風に他人に興味を示し、あまつさえ男を悦ばせようなんて考える様な娘(こ)じゃなかった。
“これは恋ね!!”と勘違いしたキュルケは現在の状況を根掘り葉掘り聞きだし、男を悦ばす手練手管をタバサに授けていく。
部屋が一緒なら、出来るだけ彼に寄り添うようにしなさい。とか。
寝る時は一緒のベッドを使うのよ。で、その時は扇情的な下着姿で出来るだけ密着して寝るの。とか。
それはもう、お節介な親戚のおばちゃんが新婚初夜の新婦に注意する点を教えるように男を悦ばせる方法を列挙していくキュルケ。
その際、周りに居た女生徒が真剣は様子でメモをしたり、男子生徒が前屈みになったりしていたが当人たちは一向に気にしていなかった。
◆
厨房の一角にあるテーブルに着くアレイの前に貴族が食べている物と同じメニューがシエスタの手で並べられた。
それを呆れた眼で見るアレイ。何せ成人男性が二、三人で食う様な量が出されたのだ。呆れもする。
「……シエスタ」
「はっ、はい!」
何か粗相をしたのかと少々怯えた声を出すシエスタ。
「これはどう考えても二人分以上あるが、君も一緒に食べるのか?」
「とっ、とんでもない!!それはアレイ様だけの物ですわ」
首をブンブンと横に振りながらシエスタが否定する。
「……そうすると半分は残る事になるが。それはどうなる」
「…たしか、使い魔さんの胃袋に収まるとマルトーさんが言ってましたわ」
どうも残飯は全て雑食な使い魔達の餌になるようだ。
「ふむ……、シエスタはもう食事を済ませたか」
「ふえッ!ま、まだです!」
と、シエスタは可哀相(かわいそう)な位に緊張して早口で答える。
それを聞きアレイが意地の悪そうな笑みを浮かべ口を開く。
「そうか、なら悪いが食事に付き合え。……一人で食べるのは味気ないからな。それに少々聞いてみたい事がある」
アレイが全く悪びれずにそう言うと、アレイの対面の席にどこからかデフォルメされた可愛らしい少女の姿をした妖精がワラワラと現れ、食事が取り分けられシエスタの為の席が作られた。
ちなみにこの少女の姿をした妖精と言うのはネギま世界の小物を動かす小精霊と呼ばれる物の応用である。
そこまでされて断る事が平民であるシエスタに出来るはずも無く、最後の晩餐に着く人間のように青い顔をして席に着いた。
周りにいた下っ端のコック達も気の毒そうにシエスタを見るだけで助けようとはしなかった。
そんな、シエスタや回りの反応を確認してからアレイは口を開く。
「さて、食事をする前にこちらの質問に答えてくれるか。内容は、―――タバサ、キュルケ、ルイズ。この三名の知っている事と、君から見て貴族とはどんな存在か、だ」
そうシエスタに問い掛けたアレイの瞳は総てを見透かすような色をしており、嘘や虚言を一切許さないと物語っていた。
「……ミス・タバサは…寡黙な方でよく本を読んでらっしゃるのを見かけます。後、わたしが直接見た訳では無いのですが、よく学校を抜け出されているようです。ミス・ツェルプストーは、その…男性をよく侍(はべ)らせていらっしゃいます。ミス・ヴァリエールは良くも悪くも貴族の典型のような方で、……その、魔法が苦手でいらっしゃるようです。それでわたしにとって貴族様は……」
青い顔をし、言葉を選びながらそこまで語ったシエスタはプルプル震えだし涙眼でアレイを見るが、アレイは黙して語らず、ただただ、シエスタを変わらぬ瞳で見詰めるだけだった。
そんなアレイに見詰められ続けたシエスタはキュッと眼をつむり、意を決して口を開いた。
「……わたしにとってメイジ(貴族)は恐怖の象徴です!いつ理不尽な命を受けるかもしれない!理不尽な理由で殺されるかもしれない!そんな、理不尽の塊のような存在です!!」
ああ、言ってしまった。こんな事を言ったと貴族の方々に知られたら殺されてしまうかもしれない。とシエスタは考えつつも、アレイの反応が無いのでつぶっていた眼を恐る恐る開けた。
するとそこにはシエスタの方を満足そうに見ているアレイがいた。
「…そうか。では、今後ここで食事をする時に流行の話や噂話を教えてくれないか。勿論、時間が有る時で構わない」
そういってからアレイは食事を開始したが、シエスタは一瞬何を言われたのか分からなかった。
他の貴族(メイジ)のように叱責するでもなく、侮蔑するでもなく彼はメイジ=悪と言っている様なシエスタの意見を肯定したのだ。
しかも彼は紛れも無く魔法使いである。それなのに自身の事を悪く言うような相手に対して、次の食事の時も同席しろと誘われているのだ。しかもちゃんと断れるようにシエスタに配慮して。
シエスタはアレイの考えている事が理解できなかったが、噂で言われているほど怖い人では無さそうだとは理解できた。
その噂と言うのは、生徒を先住の魔法で跪かせ、教師すら一睨みで従わせる悪魔のような奴。というものだった。
が、会って見るとどうだろうか。料理長のマルトーと談笑し握手を交わし、メイド程度のわたしと食事を共にしている。
ここまで来るといくらおバカなわたしでも目の前の青年が普通の貴族(メイジ)ではない事くらい分かる。恐らく先程の質問もただ知りたかっただけなんだろうな。と考えた。
そんな感じに考えていると先程まであれほど緊張していたのが嘘の様にリラックスしだし、キューとお腹が鳴ってしまった。
わたしは顔から火が出るのを感じながら、チラリと彼を見ると意地悪そうにニヤリと笑い『早く食え』と促されました。
その所為で恥ずかしすぎて折角の料理の味が分かりませんでした。
◆
時間は夜、就寝間近。
あの食事の後、お茶を入れてもらいながら雑談をして、シエスタから情報を引き出したアレイはタバサと連れ立って部屋に戻った。
そう、アレイがあんな質問をしたのはシエスタの反応を見る為である。この学校内において彼女たち使用人ほど情報に通じている者はいないだろう。そう考え、アレイは彼女を食事に誘ったのだ。
もっとも、一人での味気ない食事よりも女との食事の方がいいというのも事実なのだが……。
そして、今、アレイは下着姿のタバサと一緒のベッドに入っていた。
一体何故こうなったのか……。
事の起こりはイルククゥが寝床をどうすればいいかと、また窓の首を突っ込み訊ねて来てからだ。
その問いにタバサは素っ気無く「……外」と言い放ちイルルクゥを追い出して「…わたし達も寝る」と何故か顔を心地赤らめながら俺をベッドまで連れて行き、いそいそと服を脱ぎだした。
その行動を寝巻きに着替えるのだろうと思った俺は止める事はせず、自身もローブや装飾品をテーブルに置き簡単に寝る準備を済ます。
それにしてもこの娘は一個しかないベッドに連れて来てどうする積もりなのか?と考えながらテーブルの方を向いていた俺はタバサの方に向き直るとそこには下着姿のタバサが俺を下から見上げるように突っ立っていた。
シュミーズ一枚で凹凸(おうとつ)の無いなだらかな体系だが、そこから伸びる手足は新雪の様に白くほっそりしていた。
一瞬“これは俺を誘っているのか”と考えるが即座に否定する。まだ一日も経っていないがこの少女が自分からそんな事をする様には見えなかった。
そうすると何故彼女がこんな事をしているのかに興味が出たアレイは、このまま流れに身を任せる事にする。
そうするとじっと見上げてきていたタバサがアレイの手を取ってベッドの中に入っていく。
そして、冒頭の状態になったと言う訳だ。
しかもタバサが矢鱈と身体を密着させて足などを絡ましてくるが男を誘っていると言うよりも、年上の家族に甘えているような印象を受ける。
それに何故か観察するようにアレイの顔を覗き込むタバサが口を開く。
「……嬉しくない?」
「…女に甘えられて嬉しくない訳ではないが、何故行き成りこんな事をしたのかは聞いて置きたい」
アレイはそう言いながら腕を枕にしていたタバサの青い髪を撫でる。
「……キュルケがこうすれば貴方が喜ぶって言った」
「…そうか。他には何か言っていたか」
「出来るだけ一緒に居て観察しろって」
「……普通こんな事を男にすれば襲われると理解しているか」
「理解している。でも、わたしに差し出せるものはわたし自身しかないからいい」
その言葉を聞きアレイはなぜこんな事をタバサがしたのか理解した。タバサは自分を代価として差し出すと言っているのだと。
アレイはそれでも構わないのだが正直、今は気が乗らない。
「そうか、お前がそれでいいのなら俺は構わんが、……今日は気分じゃない。…もう寝るぞ」
と、言いつつタバサを優しく抱き寄せ眠りについた。
◆
翌朝、アレイ達は共に眼覚め、一緒に身だしなみを整え。アルヴィーズの食堂まで足を運んだ。
食堂に入った瞬間、一部の生徒が息をのんだが、大半の生徒は好奇の目でアレイを見ている。それを気にせず周りを一瞥するアレイ。
するとそこには床に座り貧相な食事をしているサイトとその横で豪勢な食事をしているルイズが居た。
それを見てタバサに後でと伝え、アレイをニヤニヤと笑みを浮かべサイト達に近づいていく。
「中々の食事を貰っているじゃないか。サイト」
「あっ、アレイ!なあ、聞いてくれよ。酷いと思わないか。これ!」
と、サイトが床に置いてある貧相なスープとパンを指す。
ルイズはアレイにサイトの声で気付き顔を赤らめわたわたしている。
「…そんなものだろう。まだ肉が入っているだけ慈悲を感じるな」
「ええっ!!」と驚いているサイトの横でウンウンと頷いているルイズ。
「恐らく一般家庭と同じ程度のものがそれだろう」
「マジか……」
「まあ、せめてここのコックやメイド並みに仕事が出来るようになればそのスープがシチューに代わるだろう」
それを聞いたサイトがそんな事でいいのかという顔をしているので補足する。
「ちなみに昨日見た限りでは両方とも地球の一流ホテルで働けるレベルだったぞ」
「ああ、神は俺を見捨てたもうた」
そんな呟きをしながら両手を床について落ち込むサイト。それをニヤニヤしながら見ているアレイにルイズが何時の間にか立ち上がり近づいて声をかけた。
「お、おはようございます!アレイ様!」
顔を真っ赤にし、身体をカチコチに緊張させてギクシャクとスカートを摘んでお辞儀をするルイズ。
「おはよう、ルイズ。俺の事はアレイで構わん」
「はっ、はい!」
「ああ、それと―――」
そこで言葉を切ったアレイはルイズの耳元まで口を持っていき。
「―――ある程度、雑用が出来るようになったら使用人用の賄いに代えてやれ」
そうサイトに聞こえないように伝えると「…はい」と蚊の鳴く様な声で顔をトマトのようにしたルイズが答えた。
それに対して「そうか、いい子だ」と頭をポンと撫でアレイは厨房の方へと消えて行った。
蛇足であるが、その後、ルイズにキュルケがタバサを抱えて突撃して行き大騒ぎになり、サイトと餌が吹き飛ばされ、流石に悪いと感じたのか三人から食事がカンパされ原作では考えられないような豪華な食事となった。
◆
食事を取り終えたアレイはタバサに連れら大学の講義室の様な所に連れて来られた。
今から魔法の授業があるらしい。
教室の中に入っていくと先に居た生徒達と使い魔が一斉にこちらを見た後、生徒は凍り付き、使い魔は全部服従のポ-ズをしていた。
使い魔達に『楽にしろ』と念話を送りつつ、タバサの横の空いている席に座るアレイ。
そうするとアレイに近い席に座っていた生徒が一斉に立ち上がりいそいそと離れていった。
それを見た所為か、少し離れた席で男子の取り巻きに囲まれていたキュルケがその取り巻きの制止を振り切りタバサの前の席にやって来た。
「情けないわねぇー。貴方が怖いみたいよ。ミスタ」
「……無様」
「タバサ、そうなじってやるな。未知を恐れる。それが人間の正常な感性だろう」
「ふふっ。あたしは未知だから知りたくなるの。それにしても本を持って来ていないなんて珍しいわね」
「アレイに魔法を講義してもらう」
「あら、いいわね。あたしも火系統の話を聞きたいわ。ミスタ」
じーとアレイの方を見ながらタバサが呟き、キュルケはしなをつくりながら言ってくる。
「それは構わんが、こちらの魔法をある程度は見てみないと指摘のしようがない」
そのアレイの言葉にフルフル首を振るタバサ。
「昨日サイトが言っていた魔法」
どうやらタバサはネギまの世界の魔法をご所望らしい。確かに魔力があれば誰でも使えるとサイト言ってしまったのでこちらの魔法使いであるタバサは問題なく使える事になる。
問題があるとすれば杖だろう。恐らく中位魔法を使った場合下手をすると杖が砕けてしまうだろう。
そんな事を考えていると先程まで静かだった教室がくすくすという感じの笑い声に包まれた。
それが気になりアレイが周りを見回すとルイズとサイトがやって来たようだ。サイトはアレイを見つけたのかこちらに早歩きで近付いて来る。その後ろから「まてー!この犬!!」とルイズの叫び声が聞こえるがサイトは気にしていないようだ。
「よお。隣いいか」
「構わんが、主を置いて行くのはどうかと思うぞ」
「そうよ!あんた自分の立場ってもんを分かってんの!!」
「さすがゼロのルイズ。使い魔にまでバカにされてるわね」
サイトを更に叱りつけようとしているルイズにからかう様にキュルケが茶々を入れる。
「侮辱しないで!それにもうゼロじゃないわ!」
ビシッとサイトを指差して声を上げるルイズ。そのルイズに周りの生徒も何か言いそうになっていたがそれよりも先にアレイの声が響く。
「昨日由来は聞いたが、そのゼロと言うのはなんだ」
「二つ名ですわ。ちなみにあたしは『微熱』よ」
「…雪風」
「……なんかごっこみたいだな」
ぼそりとサイトが呟いたが、きちんとキュルケ達に聞かれていたのか、タバサは気にしていない様だがルイズとキュルケから睨まれサイトが脂汗をかいていた。
それで空気を変える為にサイトは慌てながら話をアレイに振った。
「な、なあ!やっぱアレイにも『サウザントマスター(千の呪文の男)』みたいな二つ名があったりするのか!?」
「なんか、かっこいいわね。二つ名じゃないみたい」
「そうね。で、ミスタはどんな二つ名なんです」
タバサもキラキラした目でアレイを見ている。
どうやらサイトの狙い通りにルイズ達の関心はアレイの二つ名に向かったようだ。
「うん?そうだな…『黒の皇・魔王・金色の魔人・何あの人、理不尽すぎませんか!?』などがあったか」
「……なんか。物騒なのばっかだな」
「当たり前だ。あそこで二つ名を付けられるのは戦争で手柄を上げて、英雄になったような奴か、極悪人くらいだ。後はほとんど自称だな」
「マジかよ……」
「じゃあ、二つ名があるミスタも英雄なのかしら」
期待を込めた目でアレイを見ながら聞くキュルケ。
「両方だな、俺が味方した国からは英雄視されているが、敵国だった方からは悪鬼のように嫌われているし、法外な賞金も掛けられている」
アレイは事も無げに語っているが流石に重かったのかキュルケ達が少し沈んでしまった。
「なんかそうやって聞くと英雄は救われないわね。物語の英雄みたいに全員から祝福されている訳じゃないのね」
「当たり前だ。こと戦争は国同士の悪と悪のぶつかり合いだからな。片方に禍根が残るのは当然のことだ」
「…悪と悪?」
タバサが不思議そうにアレイを見てそう呟いた。
「ふむ、悪という言葉が嫌なら、思惑や欲望と言い換えればいい」
そう語っていたら、ドアが開き教室に中年女性が入って来て教壇に立った。
紫のローブに帽子を被った福与かな女性で、周りを見回し満足そうに微笑んで言った。
「皆さん。春の使い魔召喚の儀式は大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやってこの時期に様々な使い魔たちを見るのが楽しみなのです」
そこまで語ってからシュヴルーズと名乗った女性がアレイ達の方を見てまた口を開いた。
「御初にお目にかかります。貴方が、ミス・タバサが呼び出してしまった。東方の大魔法使いですか?」
「オスマン翁にそう言われたのならそうだ。アレイ・クロウだ。アレイで構わない。こちらの魔法は始めて見るものが多い。授業、楽しみにさせてもらう」
「そうですか。では、期待に応(こた)えられる様に頑張りますわ。ミスタ・アレイ」
この時サイトの事は触れられなかった。シュヴルーズとしては学院長から大魔法使いと言われた存在に期待していると言われ舞い上がっており、サイトどころではないのだ。
普通なら、生徒の誰かがここで茶々を入れるのだが、昨日の事が尾を引いておりルイズの近くにアレイが居る為、大っぴらに発言できず、忌々しげにルイズとアレイを見ていた。
「では、授業を始めます」
そう言ってシュヴルーズは杖を振り、教卓の上にいくつかの石ころを出現させた。
「私の二つ名は『赤土』。赤土のシュヴルーズです。これから一年、皆さんの『土』系統の魔法の講義を担当します。皆さん魔法の四系統はご存知ですね?ミスタ・マルコルヌ」
「は、はい。『火』『風』『土』『水』です。ミス・シュヴルーズ」
その答えに満足して頷く。
「それに今は失われた系統魔法の『虚無』を合わせ、全部で五つの系統があることは皆さんご存知ですね。私はその中でも『土』が重要な――」と、その後、土属性の重要性などや、贔屓(ひいき)している様な内容が続くが、その時には、アレイはもう講義を聞いていなかった。
この五属性と言うことは光や闇、植物や雷は総て『虚無』扱いなのだろうか。それに先程、石を出した時の呪文は恐らくルーンだろう。
ルーン文字は一つ一つに意味を持たせ、呪文を簡略か出来る利点がある反面、自由度が低く、効率が悪い。同じ効果を出せても威力や消費魔力が他の魔法言語に劣ってしまう。
そんな事をアレイが考察していると、シュヴルーズが教卓の上に出した石を『土』系統の基本魔法である『錬金』とやらで、真鍮に変えて見せた。
それ自体には驚くことでもなかったが、その時の講義の途中に出た『スクウェア』やら『トライアングル』と言う言葉がアレイには引っ掛かった。恐らく、魔法使いの階位の事なのだろうがこの世界でどの位のレベルなのかさっぱり分からない。
ただ、見た限りではネギまの強さ表で言うと魔法先生よりは下なのは分かる。
そう考ええていると丁度いいタイミングでサイトが『トライアングル』についてルイズに質問をした。
ルイズ曰く、この世界の魔法は系統魔法を足していく事で強力になって行き、『土』『土』『火』のように三つ足せるのが『トライアングル』、四つ足せるのが『スクウェア』らしい。
「タバサ。『スクウェア』以上の使い手はいるか?」
「…?いない。王族の二人が協力して放つ『ヘキサゴン・スペル』と言うのがあるけど、個人では最高が『スクウェア』」
「なら、その『スクウェア』は十秒でこの学院を消し飛ばしたり出来るか?」
「……恐らく十秒じゃ無理。もっと時間を掛けていいなら出来るかもしれない」
タバサの話を聞く限りでは『フェイト・アーウェルンクス』クラスの使い手はいないようだ。
そんな風にタバサに質問をしているとシュヴルーズがその様子に気付いたのか声を掛けてきた。
「ミスタ。何かご不明な点でも?」
「なに、俺が居た所には『トライアングル』などと言った様な階位(クラス)は無いかったのでな」
「そうなのですか。では、どのようにして力量を測るのですか?」
「公的には国が決めた試験で測るが、高位の魔法使い程、国によらん奴らばかりだからな。階位なぞ、在ってない様な物だ」
「は、はぁ」
階位が無いと言うのがよほど以外だったのか呆けた声をシュヴルーズが出し、周りの生徒もザワザワと騒ぐと同時に何人かは嘲笑を浮かべていた。
「それよりも質問をしても構わないか。ミス」
「えっ、は、はい。私で答えられる事なら」
「では、先程の属性の所で思った事なのだが、光や闇、植物や雷はどこに属するのだ」
それを聞いたシュヴルーズは難しい顔をして、生徒は明らかに嘲笑を浮かべる人間が増えた。
「すみません。雷は風に属するのですが、それ以外は私には分かりかねますわ」
「ふむ、そうか。……助かった。講義を再開させてくれ」
アレイのその答えを聞きホッとするシュヴルーズ。
「では、講義を再開します」
講義を開始したシュヴルーズを他所にタバサがアレイの服をクイクイと引っ張った。
「イルルクゥがさらわれた」
「なに?」
「おつかいで本を買ってくる様に頼んだ。でも、今、知らない男について行っている」
どうやら、例の視覚共有とやらで、イルルクゥの危機が分かったらしい。だから、助けに行くから手伝えと言う事だろうか。と考えたアレイは今現在も使われている操影術で消費している自身の魔力を逆探知して座標を算出し、転移の術式を起動させる。
「タバサ、静かにしていろ」
と、アレイは断りを入れ、タバサを静かに抱き寄せる。
するとその瞬間、教室からアレイとタバサが忽然と消え失せた。