ディアボロス・サーガ   作:黄昏翠玉

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郵便物

 

ロクな郵便物がない。これ最近の俺の感想ね。

大天使の襲撃から5日経った。

今までに届いた郵便物は、茶封筒と、本と、ブレスレットと、教科書類。

「亜門、どうしたの、その荷物?」

「なんか、赤竜学園から届いて」

赤竜学園。約100年ほど前に天使が人間を急襲して以来、天使から身を守るために悪魔と契約して、人類の防衛のために働きたいと思っているやつらが行くところらしい。俺はそんなもん知らん。チェバリが俺の傍に止まった。

「チェバリ、この本とブレスレットってなんだよ?」

『本はグリモア、ブレスレットはアモン様の契約石でございます』

この5日間で両親にチェバリのこと話したら公認ペット化された。よかったなチェバリ。

「グリモア?どの悪魔のかしら?」

『アモン様のグリモアでございます』

この5日間でいろいろ調べたぜ。アモンっていうのは、ソロモン王が封印した72柱の魔神のうちの1柱で、別名火炎侯爵アモン。序列は第7位らしい。

「まあ。すごい悪魔と契約するの?」

「母さん…思いっきり俺の名前なんですけど」

「…あら、ほんとだわ」

大丈夫かこの人!我が親ながら不安だ!

 

チェバリの話は俺には理解できそうでできなくて、結局漠然と受け入れた感じだった。

まず、俺は悪魔の転生した姿なのだそうだ。よくわからん。

次に、火炎侯爵というのはすごく強かったのだそうだ。知らんわ。

そして、大天使が出てきたということはもっと被害が広がる可能性の方が高いのだそうだ。俺が知ったことか。

でも、裕也が赤竜に入学すると言い出したものだから俺はどうしようと悩んでいたところでもあった。チェバリの話だと俺は天使と戦えるらしいから、できれば天使派に見つかっても大丈夫なところに身を寄せた方がいいらしい。

天使派というのは、天使が人間を殺して回るのは、その人間が死ぬべき人間だからなのだそうだ。そんなことで兄貴の死を片付けられては困る。というか反吐が出る。

そして俺が火炎侯爵としての力を覚醒させた以上は、天使派に家が見つかるのも時間の問題。悪魔を産んだ女となれば母さんは魔女狩りで火刑台行き。いつから日本はこんな危険な国になったんですか。平和大国日本っていつの時代だ。

「赤竜学園に呼ばれたのね。あら、特待?」

「そうらしいよ。入寮準備しなくちゃ…」

「全寮制だものね」

「…母さん、もしかしたら俺帰ってこなくなるかもしれないから」

「なんで?」

「…だって、もし天使派に見つかったらどうするんだよ。俺母さんが火炙りになるの見たくないよ」

「大丈夫よ。私火属性だもの」

母さん!なんてことを言い出すんだ!これは溺死させられて終わるかもしれない。

「天使派には何言っても無駄なの知ってるだろ…」

「そうだけれど、でもほら、父さん水属性だからきっと何とかなるわ!」

「父さんまで巻き込む気!?」

とにかく俺はさっさと家を出る必要がありそうだな。

天使派に捕まった悪魔派のやつが帰ってきたという話は聞いたことがない。どこかに捕まっているとか、もう殺されているとか、いろんな話があるけれど、とにかく、死体も出てこないらしいからどうしようもないだろ。警察も天使派だし、政治家とかほとんど天使派だしね。政治家は世界的に天使派に染まってる気がする。

「…つかウチ、表面的には天使派なんだから属性なんぞ言って炙られるのやだよ?」

奥から鈴が出てきた。鈴は俺の妹。

「あにい、それグリモアじゃん!そっちは契約石!?」

「ああ」

あにいというのは、兄貴と俺を鈴が呼び分けるための呼び方だ。俺は亜門だからあにい。

「かにいも喜ぶかも」

寛太兄ちゃんでかにい。兄と蟹と言ってるようにしか聞こえない。

「なんで兄貴が喜ぶんだよ」

「だって、悪魔って天使を倒せるんでしょう?だったらかにいの仇取れるじゃん」

「おま、仇って…兄貴みたいな優しいやつがそんなこと望むかよ」

「かにいが望んでなくてもあたしは望んでるよ」

なんかヤバそうな雰囲気だ。チェバリがつぶやいた。

『あまり復讐心に囚われると悪魔に食べられてしまいますよ』

「フクロウちゃんは悪魔なのに人間の心配するの?」

『それは貴様がアモン様の親族だからだ』

チェバリは言いたいことはバリバリ言うのな。俺はチェバリを掴んだ。

『何をなさるのですか』

「俺の頭に乗ってろ」

『おやめください!そんなことしたらチェンベルたちに殺されます!』

ひいい、と悲鳴じみた声を上げるチェバリに構わずに頭に乗っけた。猛禽類の爪って痛いな。そう思いながら教科書類に名前を書き始めた。

鈴がブレスレットに触れようとしたのをチェバリがつついた。

「痛っ。何するのフクロウちゃん」

『気安く契約石に触れてはならない。アモン様も契約石は常に身に着けておいてくださいませ!下手に契約してしまったら人権侵害ものです!』

「えー?そういうもんなの?」

『アモン様は瞬間的な移動は不可能ですから、召喚されるとまあ痛い目を見ます』

「マジか。じゃあつけとくよ」

俺は慌ててブレスレットを付けた。

 

母さんがカレーを作ってテーブルに並べた。俺はチェバリをようやく降ろして席に着いた。仏壇には笑っている10歳のころの兄貴の写真がある。兄貴は天使にやられたから存在そのものが抹消されているわけではないんだ。

「あにい、入寮日前に行くって聞いたけれど」

「ああ。俺入学試験受けてねえしな」

「公立高校に受かってたのにね」

「まあ、特に将来を決めてたわけでもなかったしな。いいんじゃね」

「亜門はちょっと楽観的すぎるわね」

母さんがそう言った。あんた譲りだ、絶対あんたの遺伝だ。

父さんはまだ帰ってきていないけれど、夕飯をさっさと食べ終わって、俺は風呂の支度と茶碗洗いを済ませた。

グリモアを開いてみたけれど、そこには何も書いてなかった。

「チェバリ、グリモアって何も書いてないものなのか?」

『いいえ。おそらくアモン様はすでにこの世界にいるため、召喚方法が抹消された状態なのでしょう』

ページをずっとめくっていくと、天使のことが書かれているページに当たった。

「これは?」

『天使の階級についての知識を契約者に与えるためのものです。アモン様、先に知っておいて損はないでしょう』

そう言われて読み始めた。

天使には9つの階級がある。

一番上から順に、熾天使(セラフィム)、智天使(ケルビム)、座天使(オファニム)、主天使(ドミニオンズ)、力天使(ヴァーチューズ)、能天使(パワーズ)、権天使(プリンティパシウス)、大天使(アークエンジェルス)、天使(エンジェルス)。

ウェイトグレードが1から9の者たちらしい。

「ウェイトグレードってなんだよ?」

『ウェイトグレードは魔力重量のことを指します。重ければ重いほどほかのものに染まりにくく安定した存在になります』

「へえ。てことは、悪魔の階級5段階もウェイトグレードで分けてあるのか?」

『はい。インプは10、デヴィルは100以上10万未満、デーモンは10万以上100万未満、ディアボロスは100万以上です。しかし、ディアボロスにはもう100万台のものは存在しておりません』

「へ?じゃあ何?ディアボロスは居なくなったのか?それとも重くなりすぎた?」

『後者です。例として転生前のアモン様の数値は、8000万とんで900でした』

「は、8000万!?うへ、それルシフェルとかどうなるんだよ」

『1億超えだった気がしますが』

チェバリはいい辞書だな、うん。それにしても、ウェイトグレードか。ん?魔力重量?

「神子って魔力の多いやつだよな?」

『はい。なのでアモン様も必然的に神子体質かと』

マジか。だから燃えなかったのか?

俺はその後もチェバリにいろいろ質問して知識を得ようと躍起になっていた。調べろって話だけれど、何でかそう思えなくて。だって、そんなこと調べたら、どこからそのアクセスがなされているのか特定されちゃうだろ?母さんたちを危険にさらすのは御免だ。

ベッドでゴロゴロしてて気が付いたんだけれど。

「チェバリ。グリモア奪われたらアウトか?」

『えーと。いえ、契約石さえ渡さなければ大丈夫なはずです。本来は契約石かグリモアを継承者に渡すべきなので』

「継承者?」

『ええ。ソロモン王の指輪は現在も存在しています。その指輪に選ばれた者を継承者と呼び、継承者のもとに72柱は再び集うか、継承者のもとに72柱との契約者が集う。しかしもう二度と使役されるなんて御免だと思っている者もいるはずですから、下されるものもいるはずです』

それ聞いたらなんか急にマルファス思い出した。そして今度は眠気に襲われた。

『…アモン様、今日はもうお休みください』

「…そう、する…」

俺は小さくチェバリにお休みと言って眠った。

 

 

―チェバリside―

ようやく眠りにつかれたアモン様は、はたから見ているだけではただの人間と何ら変わりません。私はもうアモン様に永従を誓った身。アモン様に反抗することも考えられません。

窓の外を見ると、烏がいました。

『マルファスですか?』

『おう。マルファスもいるぜ』

『どうしたんですかこんな時間に』

『俺の契約者死んじゃったんだよねぇ。ハルファスの契約者守ってやりたいんだけれどさぁ、俺のこと気色悪いっていうからお前に頼もうと思って』

『あのですねぇ…私はたかがデヴィルクラスの身です。ディアボロであるあなたにそう言われても困ります』

するとハルファスの方が顔を出しました。

『チェバリ…お願い…このままじゃ、ご主人様が建設事故で殺されちゃう』

『…天使派が絡んでいるのですか』

『うん…だから、明日、ここにご主人様連れてくる。アモンに助けてもらいたい』

ああ。それはできないんです。

まだアモン様は魔神になったわけではない。

『…それは、できないと思います。アモン様は、まだ魔神になったわけではないのですから』

『でも、ご主人様と友達になってくれないかなぁ…?お話しするだけでいいの…!』

ハルファスはやたらと気が弱くなっているようですね。もともと建設に関する悪魔ですし…。まあ、城塞とか要塞とか戦争系の方が強いんですけれども。

『…わかりました。アモン様が起きたら伝えておきます』

『ありがと…!』

ハルファスとマルファスが飛び去ってから、考えました。

アモン様はお強い。

でも、天使の剣によって命を落とされた。

あれはなぜだったのか。

ああ、やることが多くて困ります。

 

 

―亜門side―

チェバリのやつまだ寝てねえのか。

ところでさっきの烏たち、マルファスの方は俺が起きてるの気付いてたな。

やることが多いのは俺も同じだ。

さて。グリモアに挟まれてたあの紙切れの住所には、だれが住んでるんだろうなぁ?

 

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