春のまだ肌寒い風を感じながら、朝の陽光を鬱陶しく思いながら、これから毎日通うことになる通学路を歩いているのは、零崎 紅夜だ。
朝食の出来事により少しだけ乱れた服装を歩きながら整えている。本人は意識していないが、鼻歌を歌いながら。
なにせ、少し前まではゲームやアニメでありそうな世界的危機に何度も遭遇しては救ってラスボス的な存在を倒して、精神的にも肉体的にも疲労がピークとなっていたところだ。
紅夜からすれば、世界の危機などはむしろ日常で、今の静かな朝は異常と思うほどだが、それはとても心落ち着く時間であり、これほど嬉しい時間はないと紅夜は思っている。
「~♪~~♪」
リバス公の戯曲『運命の力』のリズムを鼻で歌いながら、紅夜は忌々しい太陽の下で足を進める。
AST部隊に顔が知られているため、彼の髪と瞳は共に闇を思わせる漆黒へと変化させている。
しかし、彼の容姿はこの世のものとは思えないほど整っており、通り過ぎる男女も関わらずその場で振り向き彼を見てしまう。
紅夜は自分の向けられる視線を鬱陶しく思いながら、視線を上げるとそこにはまだ建設されてそれほど時間は経ってないだろうと思わせる綺麗な都立来禅高校が目に入った。
「……楽しみだな」
その時の紅夜は、精霊や邪霊のことなどさっぱり忘れ、新しいおもちゃを得た子供の様に無邪気な笑顔を作った。
◇
「二年ーー四組、か」
感情が入っていない無機質な声音で彼は、廊下に張り出されたクラス表を見ている。
視界を微かに隠すほどに伸びた濃い青の髪、容姿は良くも悪くもないどこにでもいそうな一般人ーーー五河 士道はこれから一年間過ごすことになるクラス名を呟いた。
それなりに時間に余裕を出すように来たが、思ったよりも人は少なく。
新しいクラスにへと変わる期待感が、ほかの生徒の足を速めたのかもしれない。
「ん……?」
彼もここに長くいる理由はないのでクラスに向こうとした時、ふと自分の下に書かれている名前が目に入った。
『零崎 紅夜』ーーー少し変わった名前だと思った。
人の名前とは思えない、紅い夜ーーと想像しても剛毅な志や、親が子供の幸福な未来等を願っているとは思えない言葉だ。
寧ろ、何らかの罪や悪意が混ざっている、そう主張しているような意味を感じさせられる。
「………ただ、DQNネームが好きな親だったかもしれないな」
そういう考えも出来る、とにかくーーーカッコイイなと士道は思ったりしていた。
「そうだよな……やっぱりDQNネームに見えるよな」
「あぁ、親でも中二の奴がいるかと思ったぜ」
横から声がして、反射神経に士道は答えた。
「俺は最初は気にしなかったが……冷静に考えてみれば恥ずかしい名だ」
「……へっ?」
振り向くとそこには、深淵を思わせる光を一切受け付けない漆黒の髪と瞳をして、少し呆れ顔の自分と同じくらいの男性が立っていた。
同性でも思わず見惚れる程の整った容姿、どこか人とは違うと思わせる存在感を放ちながら、彼はこちらに目を向けた。
「俺の名前は零崎 紅夜だ。お前は?」
士道の頬に汗が流れた。
バカにしたーーという訳でもないが、人の名前を笑ってしまったのだ本人の近くで、常識なら怪訝な顔で睨まれそうだ。
だが、目の前の彼は全くそんな様子を見せない。慣れている様に思える。
士道は胸に罪悪感を感じながら口を開く。
「俺は士道ーー五河 士道だ。」
「そうか、これから同じクラスになるようだし、よろしくな」
そう言って紅夜は、親しく手を出してきた。
士道は、差し出された手を少し見て、己の手を重ねた。
「俺の方こそよろしくな。あ、えっとーー」
「紅夜でいいぞ。性で呼ばれるのは何だか背中が痒いからな」
「それじゃ俺は、士道で」
「あぁ、よろしくな士道」
互いの手を離して、士道は正面に向いた紅夜を見る。
見れば見る程、イケメンだ。
顔つきには微かに子供らしさがあるが、目つきは凛としているので全体的に見れば完全に大人だ。
これで制服姿ではない黒いスーツ姿なら、大手企業に勤めていそうなエリートサラリーマンと錯覚してしまうほどだ。
「ところで紅夜は転校生なのか?」
「あぁ、家庭内事情でな」
廊下を歩き、目的のクラスに向かって歩きながら雑談していると、どうやら紅夜は少し前に引っ越してきたらしい。
それはどうだと士道は思う。ぶっちゃけ、こんなに存在感を出す人がいたら既に高一年の時で人気者だと思うからだ。
「……あっ」
突如として凛々しき表情を少しだけ歪めた。
士道は頭に?を浮かべながら紅夜が目の先を見ると、そこにはただ二年四組と書かれた立札があるだけだ。
「紅夜…?」
「……なんでもない、行こう」
その時の紅夜は横顔は、未知なる物を見たような表情だった。
士道からすれば、義務教育を受けているので別に何と思わない、当たり前のことなのに……紅夜は、嬉しそうに微笑んだ。
◇
紅夜は教室に入り、黒板に貼られていた机順を見て指定された机を見た。
自分だけの空間、自分だけの机ーーーそんな感じを思わせると、なんだか嬉しい気持ちが溢れてくる。
来る日も、来る日も、戦ってばかりの毎日、あれもあれで充実していたが、あちらの日常はなにより肉体的疲労が半端ない。
ふと、先ほどあった士道という人物を見ると友人だろうか、誰かとコントをしていた。
紅夜からすれば心から想える友人は、あの
世界を救済する中でも現地の人と触れることは多かったが、あれは英雄として扱われたり、畏怖の感情があり、同じ立場で話している気分にはならなかった。
「……………」
邪霊や精霊などの問題はあるにしろ、しばらくはこの世界に住み。
そして生活できることを紅夜は嬉しく思いながら、これからお世話になる机を撫でるように摩る。
「ーーーなぜ、あなたがここにいる?ヌギル=コーラス」
抑揚のない声音が、紅夜の耳に届いた。
振り向くと、そこには、身に覚えのある顔だった。
「誰でしょうか」
「…………」
無言でとてつもない威圧感が紅夜に向けて攻撃するように放たれている。
紅夜はそれを真面に浴びながら、涼しげな顔をしながら机に座る。その位置は、彼女ーー鳶一折紙の席の前だった。
「髪色と瞳色が変化させても、分かる」
「えっと、すいませんが、俺はあなたを知らないんですか……?」
メンドクサイ、紅夜は内心呟いた。
AST部隊の奴がこのクラスにいるとは、予想もしてなかった。
因みに彼女は世間的に言う美少女の部類に入り、イケメンである紅夜と話しているさまは第三者からすれば、お似合いと思わせるが、事実二人の間には剣と盾が踊っている。
「……無知を演じても私には分かる。何が目的?」
「…………」
衝撃的出会いから、紅夜は何度も空で彼女と出会った。
この頃は、空間震の現地に向かってもそもそも精霊がどこかに行っていることが多く、両方空回り状態が続いた。
互いに会ったその時は、一触即発の雰囲気になるが、基本的に紅夜は彼女らから逃げてるせいで、とりあえず精霊でも邪霊でもないけど、危険で謎の奴として彼女の間では囁かれている。
ただ、
「だから、俺はーーー」
誤魔化そうと紅夜が口を開こうとしたとき、予鈴が耳に入った。
紅夜と折紙の視線同士が雷撃を呼んだが、いつもの様に紅夜から退いた。
教室の扉がガラガラと開き、そこから淵の細いメガネをかけた小柄な女性が現れ、教卓についた。
周囲は微かに「タマちゃんだ」と呟く生徒がいて、紅夜は生徒に好意的なもののようだ。
「はい、皆さんおはようございます。これから一年、皆さんの担任を務めさせていただきます、岡峰 珠恵です」
そう言ってお辞儀したのは、社会科担当の岡峰 珠恵教諭・通称タマちゃんと生徒から愛されているサイズが合ってないメガネを付けて、童顔と小柄な体躯が特徴的な女性だ。
ふと、紅夜は折紙に視線を向けると、彼女はじっと観察するように士道を見ていた。
「………難儀な学園生活になりそうだ」
誰にも消えない程の音量で、澄み渡る青空を見ながら紅夜は呟いた。
◇
それから三時間後、
校長先生から新入生歓迎のお話等、とても
お昼から少し過ぎた時間帯なのか、仲良し気なグループが集まり昼飯場所を相談している。
「おぅ、イケメン君」
「?」
紅夜も食事に誘われたが、ニアとの約束があったので今回は断ることにした。これから帰宅してニアとどんなものを買いに行こうか、と考えていると、声を掛けられ紅夜が声の方向に向くと士道と、士道とコントしていた男性がいた。
「えっと、確か殿町 宏人君……だったか」
自己紹介時に、「絶賛、彼女募集中だZE☆」とか言ってクラスの女性の雰囲気が一気に冷めたのが印象的だった。
「名前を憶えていてくれるとは光栄だぜ。」
「これから一年、楽しく仲だろう?忘れないさ。」
「………お前、ただのイケメンじゃないな。」
ギラリと擬音が聞こえるように殿町は目を光らせた。
紅夜は、
「紳士だな。それも絵に描いたような、リア充臭がする」
「はぁ……」
なにそれ?と紅夜は頭を傾げた。
何分、紅夜は青春というのを理解できていないし、したことがない。故にこの学園生活をワクワクしているのだ。
「お前、時に分けわからん用語をだすのは辞めろ。紅夜が困っているぞ」
「はははっー、士道よ。今のうちにこいつとは仲良くしておいた方がいいぞ、こいつは未来絶対にモテる!。故にいまお近づきしておけば……」
ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーー
「………来たか」
教室の窓ガラスをビリビリと揺らしながら、街中に不快なサイレンが鳴り響いた。
「な、なんだ……?」
紅夜は外を見つめる。
そこには何もない空間だ。
だが、紅夜の並外れた意識は微かに空間が揺れたのを察知している。
同時に少し前に邂逅した十禍ほどの揺れではないので、来るのは精霊だと直ぐに予測を立てた。
思考に埋まっている紅夜を余所に殿町と士道を二言、三言交わしてこの状況を直ぐに理解した。
「紅夜、分かっていると思うけど……」
「空間震だろ?知っているよ」
「なら、とっとと避難しようぜ、ここには最新のシェルターがあるから基本何が起きても大丈夫だ」
殿町はあっちだと指を差す。
教室に残っていた生徒達も比較的落ち着いた表情で、その方法へ歩き出す。
紅夜はともかく、彼らたちはこの地域の出身で、幼いころから耳にタコが出来るほど空間震の危険に付いて言われてきているし、同時に避難訓練も山ほどしてきた。
「対策ばっちりだな」
「この町は……いや、日本は空間震が他の国と比べて多いみたいだからな」
「士道、お前、詳しいな」
「殿町……このくらいの情報は今朝のニュースを見ていたら分かるだろう?」
「朝は二度寝する主義だ!」
殿町の誇らしげな顔に、紅夜と士道は視線を合わせて苦笑いした。
走らない程度に急ぎ、教室から出る。
廊下には、もう既に下級生上級生を含めてシェルターに向かって列を作っていた。
「ほら、ここに並んでいれば………?」
「どうしたんだ?」
士道が列に指を差して、振り向くと言葉が止まった。
殿町も誘われるように、その方向へ、紅夜がいた場所を見る。
「「いない……」」
二人は同じタイミングで呟いた。
うーん平均5000を目的としているんだけど、物語的にあまり進んでない気がする……。
もう少し頑張って長文にしようかな………、これを読んでもらっている人!質問ですけど、何文字くらいが理想ですか!?