振り下ろされる刃、体を逸らして躱す。
すぐさま、持ち直し薙ぎ払われるがそれを跳躍することで避け、近くの建物にしがみ付く。
彼女は、手を広げこちらに向けるとガトリング砲の如く光弾が放たれる。
それは瞬く間に建物を蜂の巣にして、土煙を上げながら崩れ落ちていく。
ヌギル=コーラスは土煙に隠れ、精霊のバックにある建物に飛びついていた。
先日戦った十禍と違う、性質が悪いほど敵意を持たされている。
あちらは戦う=遊びだが、こちらは確実に戦いを理解しており、なによりヌギル=コーラスを自身の脅威だと思っている。
ヌギル=コーラスの器は、人間では分からない理解してはいけないもので構成されているが、精霊や邪霊には微かに感じることが出来るようだ。
既に精霊の放った斬撃により、この周囲はヌギル=コーラスが掴まっている建物以外が崩壊している。
「はぁ………」
ニュースなどで見たことがある空間震と今の惨状で違うところと言えば巨大なクレーターがないぐらいで、どうしてうまくいかないかな、とヌギル=コーラスは憂鬱のため息を吐いた。
「っーー」
それは精霊からすれば、不可解以外なんでもない。
こちらの攻撃は華麗に全て躱され、ため息を付かれたのだ、完全に舐められていると思っても不思議なことじゃない。
眉を不機嫌に曲げ、己の玉座に目を向けた瞬間、光が満ちた。
「「--!?」」
少し遅れて迫りくる爆音と激風、精霊もヌギル=コーラスも突然の第三者達に驚愕を隠せない。
しかし、ヌギル=コーラスは周囲に守護の魔法陣を、精霊はその身に纏う領域により傷一つ付かない。
「………またか」
「AST--」
見えたのは、飛行学を無視した翼を広げ、空を飛翔する鎧を身に纏った人達。ーーー精霊を討伐するために特殊な装備をした超人たちだ。
精霊は疲れた様に、ヌギル=コーラスは半眼を造りながら彼女たちを見た。
「ーーーー!」
掛け声らしき叫びが聞こえると同時に先ほど同じようにミサイルが雨のように降り注ぐ。
精霊はヌギル=コーラスから剣先を変えると、無造作に振るい延長線上に伸びた剣閃は、瞬く間に空に光華を咲かせる。
「いつまで、無駄なことをしているんだ。なぜ、学習しない……」
精霊の呟きにヌギル=コーラスは苦笑した。お前が規則外すぎるんだと。
そして同時に参ったと紅夜は頭を動かす。何故なら、このままASTが精霊に攻撃を加えながらこちらだけの話を特別に聞いて、素直に受け止めてくれる可能性が低いからだ。
ダダでさえ、精霊はヌギル=コーラスに対して敵意心がフル稼働しているのだ。
今までヌギル=コーラスは、説教などはしたことはあるものの、相手を説得するとなると奥手になってしまうのだ。
「どうする………」
己に語りかけるようにヌギル=コーラスは呟いた。
どうすれば、彼女の心を開くことが出来る。
どうすれば、彼女と対話することが出来る。
どうすれば、彼女の剣を収めれることが出来る。と
「…………あいつがいないとやっぱり難しいな」
なんだかんだいつもそばにいたバカは、頭が良かった自分より圧倒的に強い癖に交渉術もあった。
武術や魔法の師であり、何より親友であるバカは、そういうことは後回しだと机上の戦いを一切を教えなかった。……それはヌギル=コーラス自身も了解したので、今となっては少しでも教えてもらうんだった!と少し後悔。
「………!」
突如、ヌギル=コーラスを襲った形容できない謎の悪寒。
彼の腰に装備している『
『正史が変わる』『君はどうするんだい』『今なら間に合うよ』
「---、貴重な情報をありがとう。
なんの冗談なのか、彼はヌギル=コーラスを助言をした。
あのバカの差し金か、それともただの気まぐれか、どちらでもいい。
ただヨグ=ソトースの言うことは、絶対に当る。未来予知というレベルではない
「---っ」
微かに目を伏せれば、そこにはASTと戦闘する精霊の姿。
あの目を救いたいという渇望があるが、ここで決断を誤れば全ては狂う。
全てを一瞬で奪われ、勝手に暴走して一人だけ踊った
腰に隠す様にしていた『
熱した鉄を押し付けられたような痛みに頭が叫ぶが、ヌギル=コーラスは気にせず右手で器用に開けた特定のページにはちょうど掌の形をした模様が描かれている。
それに躊躇なく、血を出す左手をそのページに押し付け、吼えるように詠唱を謳う。
『ーーー虚空の門の深淵に住む混沌、我が名を聞け!その時空と次元を超越する力を見せろ!!』
ーーーその瞬間、世界が止まる。
否、止めるという表現はおかしい。ただ
だから、世界がヌギル=コーラスの動きに付いていけないのだ。
「ーーーっ」
激しい魔力の消費から意識が鋸で斬られる様に意識が無くなり、体に掛かっていく不思議な重さ。
白黒の世界の中、目を動かして精霊とASTを見つめる完全に停止している。
出来るなら精霊かAST部隊の人たちを移動させたいところだが、この状態になると物に触ることが出来ても動かすことが出来ない。
今のヌギル=コーラスは、世界が認識できないほどの速さで動いている。つまり、ヌギル=コーラスがどれだけ動いても世界はそれに気づくことが出来なく、今も時間は動いているが、紅夜だけは別の空間を移動していると言ってもいい。
同じ時間と時間なら動かすことが出来るが、これは速さをいう概念を超えた超神速移動なのだ。
「はっー!」
小さく気合を込めるとその場からジャンプして家を家の屋上を蹴りながら、嫌な気配がした方向へ急ぐ。
とある邪神から一時的に力を借りるこの力は制限がとてつもなくデカいが、急用の場合はかなり役立つ。
なにせ、時間より早く動けるのだ、この世界でヌギル=コーラスを認識できる存在はない。……ただデメリットもかなりデカく、戦闘なら連続発動でもすれば有利なんだが、発動時の魔力消費は半端なく、更に発動状態も馬鹿気に魔力が消費するので、連続発動してしまえば直ぐにヌギル=コーラスの器は空っぽになる。
「---士道!?」
数Km移動したところで、嫌な予感の招待を見つけることが出来た。
今日という日で、同級生となり共に学生生活を送ることを約束された少年だ。
「…………邪霊…か」
そしてその士道を手を差し出す完美な女性。
綺麗な宝石が彩られらたドレスだが、それは端から見るとコスプレのように感じる。
最初は精霊かと思ったが、邪霊と精霊を両方見てきたヌギル=コーラスは、本能的にこの女性を邪霊を決めつけた。
「解除………」
時空を超える速さで動くことが出来る邪神の力は、ヌギル=コーラスの言葉と共に消えていき白と黒の世界に色が戻っていく。
そして、士道は気の抜けた様に力なく倒れた。
「士道ー!?」
「以外に、脆いですのね」
倒れる士道の後ろに移動して支える。
顔色は若手悪かったが、命に別状はないことを直ぐに確認した後、ヌギル=コーラスは手をその女性の前に向けた。
「あら、お友達ですのね。私の名前は」「お前、士道になにをした?」
女性の言葉を聞かず、ヌギル=コーラスは口を開いた。
「なにを仰っているのか……私には」
「お前は人間じゃない、邪霊だ。士道に何が目的だ」
「………あら、私のことをご存じで?」
「お前たちのことを知っている程度だ」
顎に手を当ててクスクスと女性は控えめに笑う。
それは、一般人なら呼吸を忘れるほど美しい一枚だったが、ヌギル=コーラスの眼光は一切緩まない。
「私の
「…………士道に特殊な力でもあるのか」
「えぇーー世界を救うこと、殺すことができる素晴らしい力ですわ」
邪霊からは一切目の曇りがない。ヌギル=コーラスは、とりあえず彼女の言ったことが事実であることを理解するが、同時に完全に一般人かと思っていた士道に宿る力の疑問がわき出ってくる。
「お前は、仮にその力を得てなにをするつもりだ?」
「そうですね………」
邪霊は暫く一息つくと、笑みを浮かべて口を開いた。
「ーーーー世界征服、面白そうとは思いませんか?」
無邪気な子供の様に邪霊は言った。
ヌギル=コーラスは背中に悪寒が走る。普通では夢物語と笑える所だが、邪霊という存在を考えた時、決して不可能ではないのだから……。
精霊や邪霊に第一に対話を目標にしているヌギル=コーラスは顔を歪めた。
「どうやってーーー征服する気だ」
氷の様に冷たくなった思考が、冷静にその言葉を紡ぐ。
邪霊はその言葉を待っていましたと言わんばかりに半月の形に口を歪めながら
「戦争」
と、呟いた。
「---【
「【
二つの閃光がぶつかった。
「っーーー」
一瞬の沈黙の後、ヌギル=コーラスの肩から鮮血が噴出した。
あともう少し、防御が間に合わなったら左腕そのものが貫かれ、抱えている士道を落とす所だった。
「あなたも面白いですわ。………けど、少し元気過ぎますわね」
いつの間にか邪霊の右肩から
「少し、大人しくてくれませんこと?」
「ーーー嫌だねっ!!」
目の先に槍先が出現する。反射神経で右に顔を逸らすが、頬を槍が抉るように掠った。
「っ、このぉぉっ!!!」
右目が一瞬で血色に染まる。
だが、ヌギル=コーラスは喉から咆哮しながら、邪霊の腹部を蹴り飛ばす。
既にそれを予測していたのか、後ろに飛んでいた邪霊にヌギル=コーラスの一撃の感触はまるで空気を蹴る様な感触だった。
空気を蹴り、右手に握る断罪の剣を持って邪霊に反撃するが高鳴りの金属音が空間に響く。
「あぁぁ、あぁぁ、貴方はーーー面白いですわ」
ーーーでも、私の敵ではありませんわ。
その言葉が紡がれたと同時にヌギル=コーラスの腹部に槍が突き刺さられた。
「あ」
断末魔ではない。
認識できないほどの速さで放たれた一撃を受け、血をばら撒く。
左手に現出されたもう一本の槍、それは右手に展開された槍と全く同じものだ。
邪霊は、先ほど笑みを更に深くして、勝利を確信した。
「士道様、名も知らぬ殿方、あなた達の力をーーー!?」
完全に急所を貫いた一撃だ。
人間なら確実に死んでいる。
しかし、ヌギル=コーラスは動く、気絶したはずの士道すらも蠢く様に動く。
「こ、これは……!!」
蠢くごとに血が溢れだす。ヌギル=コーラスだけではない、士道も鮮血が噴水の如く上げる。
それは、まるで破裂寸前まで空気を入れた風船に針を幾つも刺して空気を抜かれていくような動きだ。
「…………
返り血を浴び血だらけになった邪霊は、冷徹な目で周囲の気配を探す。
分かるだけで100人以上だ。恐らくあの蹴りの後には既になんらかの力を使ってこの場を離脱しているだろう。
ご丁寧に感じる気配は四方八方に逃げ、感じる質量もまったく同じまるで自分を複製したようだ。
「ふふふ、いいですよ、簡単すぎてはつまらない、今日の所は帰りましょう。ーーーまた、邂逅できる日を心から楽しみにしていますわ」
空を仰ぎながら邪霊は狂気の笑みを浮かべながら、今も天敵に睨まれ命を燃やしながら必死で逃げている可愛い獣たちを想いながら、蜃気楼のように消えた。
◇
「はぁ、はぁーーやっと、帰ってくれたか……?」
右貌と左肩から止まる気配がないほどの出血をしながら、ヌギル=コーラスの足は要約止まった。
あの超危険な雰囲気を醸し出す邪霊の気配が要約、消えたのだ。
ヌギル=コーラスは、薄暗い路地裏の壁に倒れるように凭れこんだ。
「ま、まさか、こんな短時間で、あの三柱の二つを使うなんて………!」
痛みを堪えながら左に抱えた士道を地面に置く。
その呼吸音は安息であり、無事であることを訴えており、ヌギル=コーラスは安心するように息を吐き右手に握っていた『
微かに光っていた魔書の輝きは消え、同時にこの町にデコイとして作り出した
「あんな奴、相手じゃ……100体は造っておかないと誤魔化せないだろうな」
彼が力の行使した邪神ーーージョブ=ニグラスの力で、自分の体質などそっくりそのまま創造し、この町中に放ったのだ。
ヨグ=ソトースほどの消費でないが、それでも莫大な魔力を消費するため既にヌギル=コーラスの魔力の器は空っぽだ。
もう少し、罪遺物を面に出せば使用魔力量はけた違いに上がるだが、そうなると周囲のものは波動により、腐るか崩れる、人間なら精神崩壊を容易に招く。
「こりゃ、対策が必要だな」
ーーー鈍っていた。あのバカから言われた休暇という言葉に、学校に行けたことに自分は完全に浮かれた気分で、この現実を見ていた。
もう既に、精霊の気配は感じない同時にAST部隊も撤退したんだろう。
「ははは、俺……何も出来てねェ……」
まだ何も、熟せてない。
自分の言葉じゃ、届かない。
黒い感情が渦巻いて、溢れる悔しさに口を強く噛む。
「仲間………か」
いつも、自分だけで何とかしてきた。
本当に困ったときは、勝手にバカが代わりに熟してくれた。
自分は人間とは訳が違うから、英雄扱いされたり、畏怖されたりでまともに誰かに相談したことなんか会ったっけ、と思う。
ヌギル=コーラスが手に入れていない仲間という絆ーーー、
霊崎 紅夜が心のどこかに渇望した友達という居場所ーーー、
「…………」
空を仰ぐ、干し物が良く乾きそうないい青空だ。
「………こいつ、頼むぞ」
ヌギル=コーラスは、先ほどからこちら監視してくる
んーー、二奈、強くしすぎたかなぁ………でも二番目だしなぁ……大丈夫か。
次回は要約、ブラックシスター(ネプテューヌは関係ないよ!)が出させるんだけどーーーうまく、書けるかな………。
感想やここれはこうすれば~と思う様な改善点があればどうぞよろしくお願いします!(辛口コメントは作者の心に罅が入るので勘弁してください)