人外になった者   作:rainバレルーk

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最後の方に胸糞悪い展開がありますので、ご了承ください。

今回もシリアスでお送り致します。

それでは、どうぞ・・・・・



Capra contro Mostro:3

 

 

 

「俺はドンに魅かれたんだろうな」

 

「・・・あろ?」

 

陽もだいぶ傾いたスイスはグラウビュンデン州にある別荘のコテージで、ロックグラスを持った黒髪の青年『暁 アキト』がヴァレンティーノ家が当主『ドン・ヴァレンティーノ』にそう語り掛けた。

ロッキングチェアーに座ったドンは、青年の言葉に疑問符を浮かべながらも彼の言葉を聞いていく。

 

 

「ここには色んなヤツらが集まる。金の為、主義の為、故郷の為、家族の為、食い物の為・・・とまあ、色々だ。でもよぉ~、そんな違う考えをそれぞれ持ったヤツらをアンタは惹き付けちまう。なんでだろうな?」

 

「それはワシが類い稀なるカリスマを持っているからであろー」

 

「カリスマ・・・ねぇ?」

 

「なんであろー、その物言いは?」

 

ケラケラと困った様に笑う彼にドンは不思議そうに眉をひそめた。

 

 

「ドン・・・ただのカリスマだけでここまでの人が集まって来るだろうか? 俺は違うと思う」

 

「ほう・・・ならば、何故ワシがここまでの組織を築き上げたであろうか?」

 

彼の答えが気になったのか、少し楽しそうにロッキングチェアーを傾けてワイングラスを持つ。

 

 

「『器』だろうね」

 

彼はコテージの手すりにもたれかかるとグラスに入った液体を呷り、言葉を紡いだ。

 

 

「器・・・であるか?」

 

「そう。ドン・ヴァレンティーノって人物は、清濁含めたモノ全て受け止める器だ。それが例え、自らに害するものであってもな」

 

アキトはニヤリと口を歪める。その口からは鋭いナイフの様な歯が見えた。

 

 

「俺は異形だ。人ならざる者、『人外』だ。そんな俺でさえドンは受け止め、導いてくれた」

 

「されど、初めて会ったお主には手を焼かされたであろー」

 

「カカ♪ そりゃあ悪かったよ」

 

呆れるドンの反応に彼は苦笑いを浮かべる。

 

 

「でもドンは、こんな俺にも帰れる場所を作ってくれた。だからこそドン・ヴァレンティーノっていう人物に魅かれたんじゃあないかな? ま、他にも色々と魅かれる理由はあるんだけどね」

 

「嬉しい事を言ってくれるであろー。して、その他の理由とはなんであろー」

 

「そりゃあまた今度って事で・・・ね?」

 

「ムムム、気になるであろー!」

 

「カカカカカ♪」

 

ドンとアキトは笑いあった。

休日を楽しむ親子の一時の様に彼らは笑いあう。

 

 

 

 

 

「アキト・・・ワシはまだ、そのほかの理由を聞いていないであろー・・・・・」

 

そんな思い出を浮かべながら、ドンは壊された窓を通して夜空に浮かぶ赤い月を眺めているのであった。

 

 

 

―――――――

 

 

 

「急げ! バリケードになりそうな物を持って、最終ラインまで後退だ!!」

 

「了解ッ!」

 

「B班にも連絡。グズグズするな!」

 

ゾーリンの幻覚攻撃によって防御陣形を崩された事で、屋敷内は大混乱の一途を辿っていた。

 

 

「うワぁァアアッ!!」

 

「助けてくれ・・・助けてくれ、助けてくれ助けてくれぇえ!」

 

「突っ込んで来るぞッ!」

 

吸血鬼兵共の突入で最初の餌食となったのは、玄関先を防衛していたB班であった。

彼らはこれでもかというくらいに雷管を叩く。カラシニコフやブラックライフル、トンプソン等の自動小銃から何百、何千もの銀製弾丸が発射される。

 

 

「撃て、撃て、撃てぇッ!」

 

「弾が、弾が当たらない!!」

 

「畜生ッ、畜生! チキショぉおーッ!!」

 

だが、銃撃は糠に釘を打つように暖簾に腕を押すように空を撃つばかりである。

彼等から繰り出される銃撃を容易く避けた吸血鬼兵達は、持ち前の得物と怪力で構成員を討ち取っていく。

構成員の体を引きちぎり、叩き折り、突き刺す。そうして、10分と経たない内に見るも無残な屍の山と血の池が玄関先に出来上がった。

気を良くした吸血鬼兵共は更に奥へ奥へと駒を進めていく。進行を阻む者は何であろうと喰らい付くし、殺し尽くす。

 

 

『此方B班、敵方の攻撃苛烈にて合流は不可能。繰り返す、合流は不可能ッ!』

 

ドンの持っている通信機に連絡が入る。ノイズ音と銃撃音と一緒にか細い通信連絡が入った。

 

 

「馬鹿を言うな、這ってでもくるであろー! こっちは屋敷内で一番頑丈なノアの研究室で立てこもり準備中であろ。ここなら暫くはしのげる」

 

ドン達、守備(ディフェンス)がいたのは屋敷内に設備されていた科学研究室であった。

ここには、バリケードになりそうな備品の他にもノアの生物化学で造り出された人造生物『カイゴハザード』もいる。ロレンツォやノアは、そんな彼らに指示を出しながら、自分達も決戦に備えて準備をしていた。

 

 

「そこでは簡単にクタばってしまうであろー、諦めるな!! どうにかして来るであろーッ!」

 

『・・・・・いいや無理です、首領・・・!』

 

「ッ!」

 

通信機からは聞こえて来た返答は、否定形の言葉であった。

ドンはそんな言葉は聞きたくはなかった。しかし、聞こえてくる。

 

 

『自分を含めて、負傷者だらけです』

『コイツはもうダメだ・・・早く処理してやれ、屍喰鬼になっちまう』

『水を・・・水をくれぇ・・・』

 

通信機を通して、彼らの痛みの怨嗟が聞こえてくる。ドンは彼らの声を聞いて、ただ下唇を噛むしかなかった。

 

 

『首領、ここでやれるだけ粘ってみます。バリケードは閉めてください! ご武運を、さようなら!』

 

「うつけぇッ・・・!」

 

ドンは吐き捨てる様に罵詈を叫ぶと砕けんばかりに歯軋りをする。

 

 

「・・・畜生・・・!」

 

だが、ここで部下の覚悟を無駄にする訳にはいかんとドンも腹をくくった。

 

 

「そうであるか・・・楽しかったぞ、馬鹿者」

 

『こちらこそです、首領。拾ってくださって、今までありがとうございました。では・・・お先に。オーバー!』

 

ブツリと通信は切れ、それっきり彼等からの通信はかかってこなくなった。

 

 

「・・・バリケードを閉めるであろー」

 

「ドン・・・Bの連中はどうなったんや?」

 

「・・・・・ダメであろー」

 

「そうか・・・」

 

悔しい声を漏らすドンにノアは、同調したように口を開いた。

周りも悲しそうな悔しい雰囲気を漂わせていく。

 

 

「もうダメだ! 俺達はもうおしまいだ!!」

 

そんな時だ。泣き叫ぶ童のような怒号が響いたのは。

 

 

「うるせぇ、馬鹿野郎ッ!」

 

「もう化物の相手なんか嫌だ! もう限界だッ! アーカードの若やカミーラのお嬢だって、俺達を見捨てやがった!」

 

遂に恐怖に耐えられなくなった構成員の一人が喚きだしたのだ。周りの構成員も同じ思いなのか、下を俯き始める。

 

 

「あの阿呆ッ・・・!」

 

「よせ、ノア・・・」

 

ノアは喚く構成員の態度が気に入らず、説教を垂れようとする。が、それを何故かドンは止める。何故とノアがドンを睨むとドンは、目線をノアからある人物に移す。そこには麻袋の右腕、ロレンツォが真剣なオーラを漂わせていた。

 

 

「何言ってるんですか貴方は? どこにも出れないし、どこにも行かせはしませんよ?」

 

丁寧な物言いであったが、その口調はどことなく冷淡のである。

 

 

「ッ! 俺は帰る、もう嫌だッ!」

 

「フッ・・・どこに帰るんですか? 貴方の家はここでしょう? 墓標はこの屋敷、墓守は我らが首領『ドン・ヴァレンティーノ』ですよ。碑文にはこうです。『スゴくカッコいいマフィアが悪い吸血鬼をやっつけて、スゴくカッコよく散りました』です」

 

「う・・・うぅ・・・!」

 

ドドドドドドドドドドド・・・

 

ロレンツォは圧を出しながら喚いた構成員に一歩ずつ近づいていく。その圧に他の構成員達ものまれていった。

 

 

「ですが・・・貴方のせいで変わってしまいます。貴方がメソメソしているから『ヘタレの根性無し。子供のように泣いて、家族を貶しながら虫けらのようにくたばる』・・・・・冗談じゃあない!!」

 

「ヒぃいッ!?」

 

ロレンツォは構成員の胸倉を掴んで高く持ち上げる。

袋を被っていて表情はわからないが、明らかにロレンツォが怒っているのは明白であった。

 

 

「貴方には無理矢理でもカッコよく散ってもらいます! 好き好んで我々について来たのですからもうにげれません。ましてや同じ家族を侮辱するような事など言語道断! 貴方も我々と同じように好き好んで、戦って散れぇッ!」

 

彼にしては珍しいキツイ言葉を羅列させると掴んだ構成員を床に打ち付ける。打ち付けられた構成員は目元に涙を出しながら「糞、糞ッ!」と再度喚いた。

 

 

「それにまだ死ぬと決まってもいませんし、アーカードは・・・アキトは必ず来ます・・・!」

 

『『『・・・・・』』』

 

場は静寂に包まれる。

自分達は好き好んでこの道に入った、この山羊についていくと決めた。その覚悟をロレンツォの言葉で、改めて再認識した。

 

 

「ロレンツォ・・・」

 

「ッ・・・すみません首領。つい、熱くなってしまいました・・・」

 

ロレンツォはドンに自分の非礼を詫びるようにお辞儀をかえする。ドンは「構わん」とロレンツォの非礼を許すと床に打ち付けられた構成員を起こした。

 

 

「皆、さっきロレンツォが言ったようにまだ死ぬと決まった訳ではなかろー。ワシらはディフェンスだ、オフェンスが今に点をひっくり返すであろー!」

 

『『『・・・はい・・・』』』

 

「そうと分かったなら、ちゃっちゃとバリを組むんや!」

 

『『『はい!』』』

 

あわや恐怖に飲み込まれそうになりながらも生き残った守備部隊はバリケードの強化に邁進していった。

 

 

 

―――――――

 

 

 

ドォオオ―――ッッン

 

一方その頃、攻撃(オフェンス)を任されたガブリエラ率いる部隊は二手に分かれて吸血鬼に応戦していた。

一つは後退しながらも仕掛けた爆薬で通路を破壊し、吸血鬼兵の行く手を阻む部隊。もう一つは遊撃手といった部隊だ。

阻む部隊は玄関先のB班と合流し、吸血鬼兵の進行速度が爆発で止まると休む間もなく銀製弾丸を喰らわせた。

 

 

「畜生、当たれッ!」

 

「来い化物! 来やがれ化物共ォおッ!!」

 

ズダダダダダダダッ

 

「GRYYYYYッ!!」ズシュウゥッ!

「ぐギャァアア!」

 

だが、溶岩にじょうろで水をかけても熱は冷めない様に吸血鬼兵は銃撃を難なく避けていき、普通の生物では在り得ない鋭い牙で喉元を噛みちぎっていく。

 

 

「逃げるな、戦え!」

 

「もう・・・ダメだ・・・」

 

「しっかりしろぉ!!」

 

ズダダダダダダダダダッッ

 

「「「グワァアぁああッ!」」」

 

牙の他にも手元に残った自動小銃を乱射し、着実に進行方向に留まる構成員の命を奪っていく。

そんな吸血鬼兵達が作った血の滴るカーペットを悠然と歩く人物が一人。

 

 

「燃やせ、燃やせ!」

 

その人物は大鎌を担ぎ、右半身には余すところなく文字刺青が彫られている。

 

 

「皆殺しだ、皆殺しだ!」

 

この人物こそ屋敷で行われる惨劇の発起人、ゾーリン・ブリッツ中尉であった。

 

 

「これがヴァレンティーノの力だって? これが欧州が恐れる裏組織だって? 笑わせてくれるねぇ!」

 

彼女の後ろには武装された二人組の吸血鬼兵が連なる。

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

 

それを通路の物陰から見る者が一人。

彼はゾーリンが一人になるのを待つ。そうしているとゾーリンが吸血鬼兵に命令し、隙が出来た。

 

 

「今だ! ウおぉぉッ!!」

 

ダダダダダダダダダッ

 

これを好機とばかりに彼は飛び出して、徹甲琉銀弾を込めたカラシニコフをぶっ放す。

 

 

「無駄だ」

 

「ッ!!?」

 

しかし、ゾーリンの命令に従い離れていた筈の吸血鬼兵が盾となって攻撃を防いだ。ゾーリンは攻撃を防いでくれた崩れ落ちる部下の体から手を伸ばす。

 

 

「雑魚が・・・鬱陶しいんだよぉお!」

 

「ヒぃッ!?」

 

ゾーリンの伸ばした手が通路の壁に触った瞬間、虚像を作り出したように刺青の文字が壁全体を覆った。全体が文字に覆われた時、彼の目の前には在り得ない光景が広がった。

 

 

「え・・・こ、ここは・・・!?」

 

硝煙香る屋敷から一変、彼の周りは和やかな雰囲気漂う風景が広がった。

 

 

「そ、そんな・・・馬鹿な! ここは・・・俺の住んでいた・・・家ェ・・・!?」

 

それは彼が昔、住んでいた家であった。視覚の他の感覚までもが、我が家を懐かしんでいる。

 

 

「お父さん」

 

不意にまたもや懐かしい声に呼ばれ、振り返る。

 

 

「ッ!!? わ、うわぁ・・・ッ!」

 

「お父さん、お帰りなさい」

 

するとそこには、幼い少女が立っていた。

 

 

「ミシェルなのか・・・・・そんな・・・そんな馬鹿な!」

 

その少女は彼の娘であった。だが、何故か彼はうろたえる。幻術と知り得ながらも激しくうろたえた。

 

 

「お前は・・・ISの暴走事故に巻き込まれて、死んでしまったじゃあないか!!」

 

そう。彼の娘は、もうこの世にはいない。

 

 

「どうしたの、お父さん? 怖い顔して?」

 

だが、目の前には確かに存在するのだ。我が愛しい自分の子供が。

 

 

「幻覚・・・幻覚だぁ・・・」

 

力の抜けた彼の手からカラシニコフが落ちる。そして、目の前に立つ少女の頭を撫で頬を触る。そこには確かに人間を触っている触感があった。

 

 

「これは幻なんだ。なのに・・・・・畜生、畜生ッ! これも幻覚だって言うのかぁあ?!!」

 

とうとう彼は少女を抱きしめた。目からは雫が落ち、頬を伝っていく。

 

 

「ミシェルッ、お前も幻なのかぁあ!!?」

 

「ウッソでぇえ―――すッッ!」

 

「ッ!」

 

彼の目の前に広がった幻覚は掻き消え、その代わりに大鎌の刃が彼に迫る。

 

斬ッッッ

 

彼は断末魔も上げられぬままに真っ二つの肉塊へと変貌してしまった。

 

 

「全部ウソ! 全くの嘘ッ! 阿保は死ななきゃ治らねぇ~!」

 

ゾーリンはゲラゲラと笑った。それは愉快に楽しそうにゲラゲラ、ゲラゲラと笑う。

もう性根まで人間ではなかった。もう完璧な化物であった。

いや・・・この場合は『外道』といった方が正しいのだろう。そこまで、ゾーリンは堕ちているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





BGMは・・・この場合ない方がいいのか?
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