人外になった者   作:rainバレルーk

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流れる水は腐らず、血流の同等。

アキト「血は水よりも濃く、血は間違えない」

では、どうぞ・・・・・



紅の真からの赤の軍勢

 

 

 

ゾッゾッゾッゾッゾッゾッゾッ―――!

 

「あ・・・ああぁッ!」

 

「う、うわあああ!!?」

 

溢れて来るは鮮血の川。流れて行くのは赤色の波。飲み込まれるは化物の兵。

『紅い眼』を幾つも浮かべた河は地面を這いずり、大波を打ち立てて戦場を緋に染め上げていく。

 

 

「おぉ・・・!」

 

「す・・・スゲェ・・・ッ!」

 

身の危険を察知し、後ろへと退避した防人達は感嘆の声を漏らす。

上陸から数時間程度で街を劫火にくべた化物の群れが水に溺れる蟻の様に紅い河に飲み込まれ、人間の悲痛な断末魔から一転、戦場と化した街に化物の絶叫が響く。

 

 

「お・・・おい・・・」

 

「な、なんだよ、どうした?」

 

「あ、アレ・・・!」

 

「え・・・あ、アレは・・・!?」

 

一人の防人が指差した方向を見て、その場にいた全員が息を飲み込んで身を凍らせた。

 

ベチャリ・・・グチャリ・・・

 

「A・・・AAa・・・!」

 

「Aaaaaa!」

 

『『『VAaaaaaッ!!』』』

 

指差した濁流ヘドロから現れたのはおぞましく、痛ましい姿形をした亡者の軍勢であった。

彼等は口から目から血を吹き出し、両手を上げながら這いずって流れていく。

 

 

『『『あ・・・あぁ・・・!!』』』

 

『呆然自失』、正にそんな言葉が相応しい。吸血鬼兵達も防人達も眼前の在り得ない状況に、この世のモノとは思えない恐ろしい場景に言葉を失う。

 

 

「あれが吸血鬼アーカード・・・アキトそのものであろー・・・」

 

ビルから眼下に広がって流れる血ヘドロの川を目の当たりにしながらドンは言葉を紡いでいく。

 

 

「血とは魂の通貨命の貨幣・・・命の取引の媒介物にすぎぬ。血を『吸う』という事は、命の全存在を我が物とする事であろー。アヤツから血を与えられた者ならわかるであろー? シェルス・ヴィクトリア・・・」

 

「・・・ええ」

 

ドンの言葉にシェルスは、そっと静かに答えた。

 

 

 

ズブ・・・ズブブ・・・

 

「あ、アレはッ!」

 

藤堂は驚嘆した。血のヘドロから形を現した二つの『旗』を見て、声を上げられずにはいられなかった。

ヘドロから形を現した最初の旗は布の代わりに『鍋』を掲げた軍旗であった。次に現れた旗は、甲冑を身に纏った騎兵が掲げた何処かの国旗だ。

一見、風変わりとも見れる旗と古臭い旗だ。しかし、それが何を意味しているのかを藤堂は知っている。

 

 

戦鍋旗(カザン)・・・『イェニ=チェリ軍団』! そして、『ワラキア公国軍』!!」

 

一つ目の旗は『イェニ=チェリ』。それは歴史に名を刻んだオスマン帝国が領土を拡大する過程で創設された最強軍団の名前である。そして、二つ目は現在のルーマニアに居を構えていた国の軍である。

だが、これだとどうしてもイェニ=チェリ軍団の方が知名度的に勝ってしまう。しかし、ワラキア公国軍の戦旗が出て来たという事には大きな意味がある。

 

 

「アーカード、お前は一体どれだけの命を持っている!? 一体どれ程の人間の命を吸った!? お前は一体何者なのだ!!? これでは・・・これではお前は、まるで―――」

 

何故ならば、ワラキアには故国を侵略から守るために戦った英雄がいたからだ。

その英雄の名は―――――

 

 

「―――真祖(ドラキュラ)』!!!

 

ヒヒ―――ッン!

 

藤堂の叫びは血のヘドロから次々に現れた騎馬の慟哭に掻き消えた。

 

流れる血の河から現れ出でた亡者の群れや軍団は周りにいた敵を粗方飲み込むと血が湧き出る中心の河の底へ集結していく。

 

 

「・・・・・」

ゾォオッン

 

河の底から現れたのは、漆黒の甲冑を纏った騎士。

背中に身に着けたボロボロのマントを堂々と靡かせるこの男こそ、この百鬼夜行の軍勢を束ねる者『アーカード』である。

 

バッッッン!

 

彼が両腕を振り上げ、そのまま振り下ろすとその背に幾千幾万の騎兵が姿を表す。手には剣が、槍が、斧が、弓が、棍棒が構えられている。

それらの騎馬が一斉に声を上げ、騎兵達は怨嗟の声を響かせながら敵へと向かい駆けて行った。

 

 

『『『WAAaaaaaaaッ!!』』』

 

騎兵に先導され、亡者共も勢い良く怨嗟の雄叫びを轟かせながら()()()()()。凝り固まりながら進んで行く様は、さながらジェルで構成された津波であった。

 

 

「方陣だ! 方陣を組めぇえッ!!」

 

吸血鬼兵達はすぐさま陣形を再編し、事に当たろうとする。

 

 

「なんだ! 何が・・・何が起きている!!?」

 

騎兵突撃の射線上から逃れられた防人達は目の前の状況に未だ思考が追い付いておらず、疑問を叫んだ。

そんな彼らの疑問に答える様に飛行戦艦屋上でニタニタと笑う男が叫んだ。

 

 

『死』だ! 死が起きている!!」

 

実に楽しそうに鬼気として大隊長は狂喜を表情に出す。

 

 

「お、おお・・・・・! 良いなコレ・・・欲しいッ! 素晴らしいッ!!」

 

地上を進撃する河に大隊長の隣にいたドクトルまでもが魅了され、あんぐりと呆けた口から徐々に不気味な恍惚の笑みを浮かべている。

 

 

ザッザッザッザッザッザッザッ!

 

赤色に彩られた騎兵大隊は陣形を乱さずに前へ前へと直進していく。

 

 

「撃て・・・撃ちまくれぇえ!」

 

ズダダダダダダダダダダダダッ!

 

彼等は撃ちまくる。手元の残弾数などお構いなしに撃ちまくる。虎の子だろうが何だろうが、出し惜しみ等せずに撃ちまくる。

ロケット弾で、手榴弾で、ライフルで、ピストルで撃って撃って撃って撃って撃ちまくる。

 

 

『『『WaaAAaaaAッ!!』』』

 

それでも濁流は止められはしない。

発射された弾丸は亡者を貫きはするが、止められはしない。

爆発した榴弾で騎兵を馬諸共吹き飛ばすが、止められはしない。

 

 

「う、うわぁあああああ!!」

 

「ギャァアアアアアッ!」

 

朱の河は容赦なく彼等を飲み込む。緋の亡者は欲望のままに彼等に襲い掛かる。赤の騎兵は躊躇いもなく彼等を斬り刻む。

撃てども撃てども、殺せども殺せども、河は塞き止められない。それどころか、彼等を飲み込んでいけば、飲み込んでいく程に速度は増し、範囲も広くなっていく。

そんな時だ―――

 

ザンッ

 

―――河の進行射線上に白装束の部隊が現れたのは。

 

 

「・・・」

 

部隊の隊長を任された傷顔の将校『ランスロット』は、ジッと自分達に迫り込んで来る河を眺めている。

 

 

だ、今しかない・・・!」

 

彼はギリリと歯噛みし、眉間に皺を集める。

 

 

「アーカードが拘束制御を全開放した今、只今がその時だ!」

 

こんな状況を「待ってました」とばかりに言葉を紡いで叫ぶ。

 

 

「あの河は、ヤツの持つ全ての命を全て開放して全てを攻撃に叩き込む術式だ。(からだ)から全ての兵士を出撃させた総掛かりだ。城の中に残っているのは領主・・・ただ一人ッ!

 

ランスロットの言う通り、この『零号解放』は体に納められた全ての命を外へと放出する術式。

つまり―――――

 

 

「―――ヤツは一人だ、ただ一人!! 今やただ一人の吸血鬼、ただ一個の『命』だッ!!」

 

全ての力を出し尽くしている今こそが、常軌を逸脱した怪物を倒す千載一遇のチャンスなのだ。

 

 

「全ては万事この時の為! 我ら同胞とこの地の民が犠牲となったのも全てはこの時の為ッ! さあ、死合おうぜアーカード! 『四年前』の続きだッ!!」

 

彼の言葉尻に狩人部隊は背負っていた盾を構え、剣を構える。

 

 

「往くぞ諸君! 御然らばだ諸君ッ! 何れまた、あの世で会おうッ!!」

 

『『『JA―――ッ!!!』』』

 

┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"・・・

 

白き騎士達は駆けて行く。到底生きては帰れそうにない死地へと向かって、足並みを揃えて駆けて行った。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





彼等は走る。彼らが宿敵に、因縁の敵に向かって駆けて行く。
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