・・・・・止めをさす・・・
「ぐふ・・・ゲふッ・・・・・!」ベチャリ
目の前で血を吐きながら膝まづく傷だらけのアキトに『あっけない』と伊達男、トバルカイン・アレハンブラは思うのだった。
―――――――――――――――――――――――
幾時前・・・
専用機『朧』を外し、ローマの重装備兵の戦闘体勢のままアキトはトバルカインに飛び込んだ。
しかし! それを読んでいたようにトバルカインはトランプの武装錬金『フォースアルカナイト』でアキトの槍のように突き出された拳を防ぎながら切り刻む。
「ぐぅッ!?」
アキトは少し顔に苦悶の表情を浮かべながらも今度は鋭い蹴りをトバルカインにいれる。
「ッ!?」
蹴りはトバルカインの食わえていたタバコとハットを吹き飛ばすだけだった。
「この!」
「なッ!?」
トバルカインはガシりとアキトの足を掴むとそのまま地面に叩きつける。
ドオォォオォオ――ッン!!
「ぐがァアッ!?」
アキトは叩きつけられた衝撃で口から血を吐く。なおもトバルカインは攻撃の手を緩める事はなく。叩きつけたアキトに釘を打ち付けるように蹴りをいれる。
「がはッ!?」
その蹴りにより『ボキリッ!』と骨が折れる音が木霊する。
「ぐ・・・こ、この・・・!」
アキトは自分の体に打ち付けられたトバルカインの足を掴もうとするが・・・
「無駄だ」バキャン!
「ガフッ!?」
トバルカインは吸血鬼独特のあり得ない動きをするとアキトの頭に回し蹴り決める。蹴られたアキトは前に5m程転げ回り、屋上端のフェンスに叩きつけられた。
普通の人間なら全身の骨が砕かれ、筋肉も内臓もズタズタにされてなっているだろう。しかし!
ダンッ!
「て、テメェ・・・この野郎・・・・・!!」
彼は立った! 肋骨は折れ、肺に刺さっていようと右拳がズタズタに引き裂かれていようとアキトは立った。
「ほぅ・・・あの攻撃でなおも立ち上がるか・・・」
トバルカインはニヒルな顔で笑っている。だが、こんな余裕な顔を浮かべるトバルカインにはある『なんとも言えない疑問』が思考を埋めた。
「(おかしい・・・・・さっきの攻撃は確実に頭を熟れたトマトのようにグチャグチャにしていたハズ・・・それなのにヤツの顔は赤く腫れ上がっているのみ。さすがは『暁のアルカード』と言ったところか? だが、それでも・・・・・『弱すぎる』! これが少佐が危惧していた『脅威』なのか? これが『四年前』の『惨劇の化物』なのか? だとしたらなんて滑稽だ)」
トバルカインは血を吐きながら此方を睨みつけるアキトを怪訝な顔で見ていると
「あ、暁のアルカード!」
「お・・・おん?」
「「ウィルさん(様)?!」」
トバルカインの後ろで拘束されていたウィルがアキトに向かって声を上げる。
「早く、早くISを纏うんだ!」
「・・・・・」
「このままじゃあ君はその男に本当に殺されてしまうぞ!」
ウィルは必死に叫び、ISを装着するように促す。されどアキトは・・・
「イヤ・・・だね・・・・・!」
「「「なッ!?」」」
首を縦に振ろうとはしなかった。口から血が吹き出そうともアキトは不敵にニヤリとトバルカインを睨みつけ、フラフラと立ち上がる。
「ッ!(そんな・・・あの状態で立てるのか?! なんて精神力! これが実際の牙狩りなのか?!!)」
そんなアキトの姿にウィルは驚愕し、マジマジとアキトを見ている。その隣で・・・
「・・・・・?」
「どうしたのギルベルト?」
「いえ・・・なんでもございませんお坊っちゃま。それよりお目を閉じていて下さい」
「?・・・わかったよ」
クラウス少年はギルベルトに言われたように目を手で覆う。
ギルベルトは気づいていたのだ。言い表せない、アキトの内側にある恐ろしい『ナニか』に
「・・・舐められたモノだな」
「おん・・・?」
トバルカインは宙に浮くトランプを飛散させ、まるで魔方陣のようにアキトを囲む。
「体はボロボロだというのに・・・人の助言に耳を傾けないとは・・・・・君はバカ者だな」
「・・・ニョホ、ニョホホホッ♪」
蔑んだ目で見るトバルカインにアキトはまるでバカにしたよう笑い声を上げる。
「・・・何がおかしい?」
「アンタ、実は結構焦ってるんじゃあないのか?」
「何・・・?」
「さっきの『蹴り』。アンタのフルパワーだろ?」
アキトは左手の人指し指をトバルカインに向け、ケタケタと笑う。
「まっっったく、効かなかったね。これならタンスの角に足の小指をぶつける方がもっと痛い」
「・・・」ピクッ
「つまりだ。アンタの吸血鬼としての身体能力は別段大した事はねぇヘボ野郎ってこった! その武装錬金の方がよく効いたぜ? 何が吸血鬼だ。この分だとアンタらの頭の『大隊長』ってヤツも大したことはないなぁ!」
「貴様・・・!」ピキリ
トバルカインはニヤニヤとケタケタと笑うアキトに青筋を立てる。すると腕を大きく上へ広げた。
「そんなにこのフォースアルカナイトに切り刻まれたいようだな? 良いだろう! その体、切り刻んでくれよう!!」ビュッ
トバルカインは上へ上げた腕を大きく降り下ろす。それにより、アキトを囲んでいたトランプが勢いよくアキトに飛んでいく!
「あ、危ない暁のアルカード! 避けるんだァアッ!」
「もう遅い。回避不可能よ! クタバレぇえッ!!」
ザシュユゥウゥゥッ!!!
トランプはアキトの体を所余す事なく切り刻んでいく。まるでキャベツの千切りをするように。しかし・・・!
「・・・カッ♪」
アキトは断末魔や呻き声をあげる事はなく。それどころか逆にニヤリと嫌な笑みを浮かべたのだ。だが、それをトバルカインは知らない。トバルカインにあったのはシンプルな答え『仕止めた!』只それだけだ!
血飛沫がそこらに飛び散り、アキトは崩れ落ちていく。それを見てトバルカインはニヒルに笑う。
「アルカードォオ!!」
ウィルの悲痛な叫びが風の音とともに屋上に響く。
―――――――――――――――――――――――
その1.2分後、シュバルツア・ハーゼが屋上に飛び込んで来た。ラウラは崩れ落ちて膝まづくアキトに近づき、その体を揺すりながら抱き締める。
「アキト、アキト! 返事を・・・返事をしてくれ!」
されどラウラがいくら名を呼んでも返って来るのは無言だけである。その内にアキトから流れる血がシュバルツア・ハーゼに付き赤黒く機体が染まり、ポタポタと顔にラウラの涙が零れる。
「これはこれは・・・実に感動的でロマンチックだ」
「アキト・・・アキトォ・・・」
トバルカインは涙を流し、アキトを抱き締めるラウラを見て新しい煙草を口に食わえると火をつける。
「・・・貴様・・・・・!」
「ん? なんだn――ッ!?」バァチィッ!
言葉に反応したトバルカインの食わえていた煙草が頬肉ごと抉れる。トバルカインは口元をおさえ、ギロリと前を睨む。その先には銃口から煙を立てるレールカノンを構えたラウラがいた。
「ヤバイ! 逃げろ銀髪ちゃ――うげッ!?」ガスッ
後方のウィルがラウラに向かって叫ぼうとするが近くにいた屍喰鬼にライフルで殴られる。
なおもラウラはレールカノンの標準をトバルカインに合わせ、引き金に指をかける。だが!
ザンッ!
「なッ!?」
飛んできたトランプにレールカノンの銃身は胡瓜のように輪切りになる。
「ヤレヤレ・・・困ったフロイラインだ」
「ッ!? き、貴様!!」
ラウラは驚いた。何故なら目の前には先程、頬を抉ったハズのトバルカインが無傷でいたからだ。それにラウラは体が強張り、上手く動けなくなった。
「そんな・・・さっき貴様は!」
「えぇ。貴女の攻撃で頬が『抉れ』ましたよ。だが・・・『それだけだ』。たったの『それだけだ』」
「なにィ・・・?!――「銀髪ちゃん!!」――な、なんだ!?」
怪訝な顔のラウラに後方で屍喰鬼に顔を踏まれるウィルが叫ぶ。
「その男、『トバルカイン・アレハンブラ』は『吸血鬼』だ! ホテルの外に溢れる屍喰鬼とは比べられない程の再生力がある! 早く、ここから――アデデデッ?!」
叫ぶウィルに屍喰鬼の踏む力は強くなっていく。
「コラコラ、ウィル・ウィトウィッキー。君はお喋りだなぁ~? 少し黙っててもらおうか。隣を見たまえ、クラウスくんは大人しく目を手で覆っているぞ?」
「黙りやがれ、この糞屑野郎! オメェなんぞに指図される覚えはねぇんだよ!」
「なら・・・・・生かしておく覚えもないな」
「え"――グシュクッ!――ぐぎゃあぁああぁッ!?」
「ッ!? ウィルさん!!」「ウィル様!」
トバルカインは躊躇いもなく、ウィルの土手っ腹に穴を開ける。間近でその断末魔を聞いたクラウス少年は振り返る。拘束されているギルベルトもジタバタともがく。
ウィルの腹からは血がひっくり返したペットボトルのように流れる。
「貴様ァ・・・・・人質ではなかったのか?」
「私にとって口喧しい輩を『人質』とは呼ばん」
トバルカインは「フン!」と鼻を鳴らして答える。
「あぁ・・・・・く・・・糞ッ・・・タレめぇ・・・・・!」
「ウィルさん! ウィルさん!!」
腹から血を流すウィルは虫の息であった。腹からは出る血を止めようとクラウス少年が必死に傷口を小さな手で押さえる。
「ガフッ・・・・・(く、糞ぅ・・・これは、もう・・・ダメか・・・?)」
朦朧とする意識の中、ウィルは辺りを見回す。その眼に涙を堪えながら手を血に染め、必死に自分の傷口を小さな手で押さえる赤髪の少年『クラウス・V・ラインヘルツ』が写った。
「(あぁ・・・この将来有望なこの子を見ながらクタばっていくのか・・・・・? 口惜しい・・・実に悔しいなぁ・・・目の前には世界をひっくり返すようなスクープがあるってのに・・・・・この子の将来の姿を見たいってのに・・・・・)」
薄れゆく意識の中、ウィルは悔やんだ。歯を喰い縛り、悔し涙を流しながら悔やみに悔やんだ。
悔やんで
悔やんで、悔やんで
悔やんで、悔やんで、悔やんで・・・・・眼を見開いた!
「ッ!?」
今まで味わった事のない、例えるなら背中にドライアイスや液体窒素を入れられたような絶対零度の『恐怖』が彼の身を包んだ!
「(なんだ・・・なんだこの感触は?! これがクタバッテいく意識なのか・・・? イヤ違う! もっと恐ろしい『感触』・・・!)」
見開いたウィルの眼の先には『ヤツ』がニヤリと笑っていた!
「さて・・・フロイライン?」
「・・・」
トバルカインはニヤリと嫌な顔をしてラウラを見る。
「 私としてもこれ以上、犠牲者が増えるのはイヤなのだよ。だから・・・『降伏』してくれないか?」
「なん・・・だと・・・・・!」
「勿論、タダでとは言わない。君に『不老不死』を与えてあげよう。どうだ? 悪い話じゃあないだろう?」
トバルカインの言葉にラウラは顔色一つ変えずに言い放った。
「断る!!」
「・・・・・ほぅ・・・どうしてかね?」
ピクリとこめかみを動かし、トバルカインはラウラの話を聞く。
「さっきから『吸血鬼』だの、『屍喰鬼』だの、『不老不死』だのとゴチャゴチャ訳のわからない事ばかり! だが、これだけはわかる。貴様は私の大切な人を傷つけた・・・・・貴様は忌むべき敵だ! 掛かって来い化物め! 倒してやる!」
「・・・・・クク・・・プククク・・・♪」
ラウラの言葉にトバルカインは笑う。
「何が可笑しい!?」
「なぁァアめぇえるぅなよォオ! この糞餓鬼がぁあ!!」
「!」
トバルカインは憤怒の表情で激昂する。
「下手に出てりゃあイイ気になりやがって! 『倒してやる』だと? 笑わせるな! 今の私はそこで残骸に成り果てた『暁のアルカード』を倒せる実力さえ持っているのだ! それを高々ガラクタ乗りが調子に乗りやがって! 今の私が貴様を手にかけるのは――「『赤子を殺すより楽な作業よ』ってか?」――その通りだ! って何?!!」
トバルカインは自分の台詞を被せてきた声に驚き、その声がした方を見た。そこには・・・
「次にお前は『何故・・・何故、生きているアルカード!!』と言う」
「何故・・・何故、生きているアルカード!!――ッハ!?」
ラウラに抱き締められながら眼を真紅に染め、不敵に笑う男がいた!
「あ、アキトッ!?」
「「暁の?!」」
「アルカード・・・?」
「Yes I am!!!」
←続く
確実に・・・完全なる止めを・・・・・!