久々に本編にちょっと出てきます。
あと、ギャグキャラがシリアスになろうとして、誰おまな感じです。
てな訳で・・・・・どうぞ・・・
高度3000m。
彼と彼女は真っすぐ進んでいる。音速を超える勢いで真っすぐ、直線に。
ニューヨークの一件から1時間もかけない内に彼らは、付近の軍事基地に停泊してた英国の戦闘機『ユーロファイター』をかっぱらい、日本に向けて飛び立った。
「ハァ・・・・・」
戦闘機の後部コックピットで、しかめっ面をした男が一つため息を吐いていた。足元には、医療用の輸血パックの空袋が散乱している。
「まだか・・・まだかッ・・・まだか・・・!」
焦るような、楽しいような、嬉しいような、怒ったような口調で男は何度も呟く。何度も何度も何度も、壊れたカセットテープのように。
「まだよ・・・これでも飲んで、落ち着いて」
そんな彼に前部座席の彼女から新しい輸血パックが渡された。彼はそれを取ると一気に胃の中に流し込む。
すると突然・・・
「・・・臭いだ」
「え?」
「懐かしい臭いがする・・・」
輸血パックを飲み干した彼は、鼻をヒクヒクとさせて再度呟いた。
彼は大きく息を吸い込む。
「突き刺される男のニオイ。斬り倒される女のニオイ。焼き殺される子供のニオイ。撃ち殺される老人のニオイ・・・・・死のニオイ・・・感じるだろう『シェルス』?」
「・・・・・えぇ、感じるわ『アキト』。思い出したくもない『4年前』と同じニオイが・・・」
先程までの焦燥の表情から一変、薄ら笑みを浮かべたアキトの呟きにシェルスが苦虫を潰した様な表情で答えた。
「カカッ・・・戦のニオイ、殺し合いのニオイ・・・・・もうすぐだ、もうすぐ・・・」
二人の表情は互いに異なっている。
だが、その眼は二人とも『紅く』輝いていた。
―――――――
「クハハハ!」
進撃を止めない人口吸血鬼軍団を率いる大隊長は、司令室で笑っていた。歓喜していた。
目の前のモニターには、殺したり殺されたりする吸血鬼兵の姿が映し出されており、彼はそれを実に楽しそうに見ていた。
戦果を挙げれば拍手をし、損害を出されるともっと拍手をした。
大隊長は心の底から楽しんでいる。
惨劇を、殺戮を、虐殺を、打撃を、剣撃を、銃撃を、爆撃を、ありとあらゆる行いと結果を楽しんでいる。まるで、幼い無垢な童の様にケラケラと。
「クふッ。ゾーリン、進撃せよ・・・!」
『了解』
大隊長は、モニターに映り込んだゾーリンに命令を通達する。ニヤリとほくそ笑んだ口元で、ゆっくりと。
「チェッペリン・ツーリ、エンジン再動。ゾーリン・ブリッツ隊、進撃ッ! 目標、ヴァレンティーノファミリー本部!」
煙草を咥え、大鎌を担いだゾーリンが操縦士達に命令を下すと飛行船のエンジンが火を噴いた。
本隊の飛行船『デクス・ウクス・マキーネ号』から離れたチェッペリン・ツーリは、悠々と火の海と化した街の上を進んで行く。さながら黒煙の海を泳ぐ一匹の白鯨であった。
そんなチェッペリン・ツーリは業火燃ゆる街中を離れ、郊外に居を構えるヴァレンティーノファミリーのアジトへと進んで行く。
街から離れた郊外は、不気味な程に静まり返っていた。
「間もなく目標地点上空です」
「よし・・・総員戦闘準備」
ゾーリンの号令と共に飛行船内の吸血鬼兵達は、各々の準備に取り掛かる。街に突撃していった同胞達と同じように装備を整え、カタパルト装置に足をかけた。
「旗艦からの支援攻撃来ます!」
「デクス・ウクス・マキーネからの露払いか・・・ヴァレンティーノに腹一杯食わせろッ!」
大隊長からのプレゼントか、街を火の海にした戦略的ミサイルがヴァレンティーノファミリー本部に降り注ぐ。その数は30発は優に超えており、当たれば辺りは業火に包まれる事必須であった。
ヒュン! ドォオーン!
ドドォオオ―――ッン!!!
『ッ!!?』
ところが、そのミサイル群が前方彼方から飛んで来た銃弾によって、次々と撃墜される。
「な、何事だ・・・何だ・・・何をされているッ!!?」
指令室で現状を目の当たりにしたゾーリンは、大きく動揺した。あれ程発射された多くのミサイルが次々と破壊されて、空に大輪の火花を咲かせたのだから。
「狙撃されています!」
「狙撃だと?!」
「ヴァレンティーノ本部からの狙撃です!」
「・・・ヤツだ・・・!」
ゾーリンは知っていた、この狙撃手を知っていた。大隊長に渡された資料の中に載っている闇世界随一と呼ばれる暗殺者の名前を。
そうこうしている内にミサイルは撃墜されていき、最後の一発が破壊される。またしても空に轟音けたたましく鳴る華火が咲いた。
「み、ミサイル全機撃墜!!」
「バカ言え・・・34機、同時攻撃だぞ」
「ッチぃイ!!」
旗艦からの攻撃が全弾迎撃され、兵士達はあんぐりと呆然とし、ゾーリンは悔しそうに歯軋りをした。
「サーチライト! ヴァレンティーノファミリー本部を照らせッ!!」
「お止めください、狙い撃ちされてしまいます!」
ゾーリンの命令に士官の一人が待ったをかけた。
サーチライトを向ける事で、狙撃手の位置や正体を確認できる。しかしそれは逆を言えば、自らの精確な位置を知れせてしまう事に繋がるのだ。
「構わんッ! あの『女』には、もう見えている!」
それでもゾーリンは命令を強行した。
チェッペリン・ツーリに備え付けられている全てのライトが、前方1km先のヴァレンティーノ本部を明々と照らしていく。
「あア!」
下士官の一人が何かを発見した。それにつられ、他の全員が目線の先の者に釘付けとなる。サーチライトに照らされ、煙草をふかしながら此方を睨む一人の眼鏡の彼女に。
その彼女の周辺には、重々しい銃器がズラリと並べられている。銃口から白煙をたたせながら。
『全機撃墜やで、姐さん。新装備の出来栄えは上々やんなぁ~・・・流石は、ウチとアキトで設計した『対城塞式ライフル』や』
耳に嵌めていた通信機から関西弁の少女の声が聞こえて来る。そのまま少女は、彼女の使用している銃器についての説明をはじめだした。
『『ハルコンネン
「悪くない。むしろ清々しい気分だ『ノア』」
『そりゃあ良かったで。作ったかいがあるちゅーもんや』
『『ガブリエラ』』
彼女『ガブリエラ』の返答にヴァレンティーノファミリー随一の天才少女『ノア』が、満足そうに云々と答えていると今度は別の人物から通信が入った。
この人物こそ、名高きヴァレンティーノファミリーを率いる頭目『ドン・ヴァレンティーノ』その
『そこから街が見えるであろうか?』
「・・・見えるぞ」
アジトの屋上に立つガブリエラには、確かに見えている。空に浮かぶチェッペリン・ツーリよりも先にある空が赤く染まっている様子がハッキリと見えた。
ドンもノアにハッキングしてもらった街中の監視カメラから火の海と化した街をモニター越に見ていた。
『よく皆で遊びに行っていたデパートも、商店街も灰になってしまったであろー。ワシらのシマが、今では地獄と同義語であろー』
「そうだな・・・」
淡々とガブリエラは、ドンに応対する。そのドンの口調はどことなく冷めきっており、どことなく熱い感じを滲ませている。
『ワシはこの国が好きであろ。そりゃあ、IS発明の地であるから差別主義者も多かったであろー。でも、そんな輩はごく一部で、あとの者達は優しくて良いヤツばかりであった。この国で新たに仲間になった人達も狼を除けば、良いヤツばかりであった。・・・・・そんな彼らは、この闘争に何の関係もない者達であろー』
「そうだな」
『そんな者達が・・・ワシの好きな国の者が、ワシらのシマの者達が、死体になって死体を喰ってる。それがワシには勘弁ならん。いくらワシが、極悪非道の悪党だとしても勘弁ならん・・・!』
その通信はガブリエラだけでなく、アジトに構える他の構成員全員にも届いていた。
冷静から一転、怒りを滲ませた山羊の声が再度響く。
『皆の者・・・仇討ちであろー。やっちまおう、アイツらをやっちまうであろー!』
頭目山羊の言葉を聞いて、他の構成員の代わりにガブリエラが答える。ゆっくりと体を起こしながら、覚悟の眼差しで答える。
「わかってる、わかってるさドン」
ガブリエラは、新しい煙草に火を灯しながらニカッと笑って答えた。
「さぁ来いよ、出来損ない糞ッタレ
今ここにヴァレンティーノファミリーと吸血鬼兵団との火蓋が、切って落とされようとしていた。
←続く
ウチでは、こんなキャラです。