ハイスクールD×D SPIRIT OF GUN×BLADE 作:DECADE
「土産はこんなもんかな」
帰国の準備を整えてホテルを出た俺は、とりあえず適当に観光でもしようと大通りへ歩を進める。
普通なら飛行機の時間がどうとか考えなけりゃならないんだろうが、俺には関係の無い話だ。
しかし、期待してたわけじゃないが思ったよりも情報は得られなかった。
エンツォの野郎……なにが俺の欲しがる情報は面倒なのが多すぎるだ。その為に高い金払ってんだろう、あのアル中親父が。そんなんだから娘があんなじゃじゃ馬に……。
ドン!
「きゃっ!」
考え事をしていたせいだろうか、人にぶつかってしまった。
「悪い。大丈夫か?」
「あ、いえ。こちらこそ」
転んだ相手に手を差し伸べて立たせると、ローブ姿にヴェールを被ったシスターだ。声からして大分若い。こぼれる金髪もサラサラとしていて、覗ける緑の目も可愛らしい。うん、好みだ。
「随分な荷物を持ってるけど、大丈夫か? 何なら送ろうか?」
この小柄な少女には結構な大荷物だろう肩のバッグに目を向けつつ聞いてみると、少女は目を泳がせた。
「い、いえ。その……そこまでしていただかなくても大丈夫です。では……」
足早に去っていく少女の背中を見送った後、少し経ってからその少女を追い始めた。
確かにあの子は俺の理想の美少女(金髪美少女版)だけど、それだけが理由じゃない。
要は単なる直感、それだけだ。でも、それが何より重要だ。特に『奴ら』を探すときにはそれがなによりも当てになる。
ばれないように細心の注意を払いながらシスターを追うに連れて、明らかに女の子が一人で歩くべきじゃないような裏路地の奥まった場所へと入っていく。
やがてシスターが立ち止まったのは、外観から見ても寂れきっているのが分かるボロボロの教会の前。中の気配は……四人。これは堕天使か? でも、シェムハザからはなにも聞いてない。単なるスカウトかも知れないが、それにしては空気がおかしい。
シスターが中へ入った。風を操って中の音に耳を立ててみると……シスターともう一人、女の声が聞こえてくる。
「……では、私は日本へ行けばいいのですか」
「ええ。そこでまた会いましょう。大丈夫、潔癖症の教会の連中と違って、堕天使は心が広いもの。貴方の優しさを踏みにじるような真似はしないわ」
扉を蹴破り、中に入ると同時に銃を異空間から出す。
突如乱入した俺に、中にいた堕天使たちが警戒を抱く。
男一人と女三人。多分、あの黒い長髪がリーダーだろう。あの中じゃあいつが一番強い。
「何者? 迷っただけならさっさと出て行きなさい。シスターを襲いに来たのなら……ただでは済まさないけどね」
「いいや。確かにその子は好みだけど、別に本命はそっちじゃない。目的は他にあるんだが、お前の臭い芝居が我慢ならなくなったんでな」
「なんですって?」
「――ああ、さっきから煩せぇんだよお前。たかが人間が、私の崇高な計画の邪魔をするな? 垂れてろ阿婆擦れが。人様の力を奪って、その力で出世することしか考えてない分際で、何が崇高だ」
「な……」
「計画が漏れたのか、だって? 笑わせんな。下っ端堕天使の狡い思惑なんざ知るか。俺は行き当たりでここまできただけだ。まあ、知った以上はシェムハザ辺りに報告するが。
あいつと知り合いなのか? アザゼルとあわせて俺のお得意先の一つだよ。……本当に煩いなお前。至高の堕天使? アザゼル様にシェムハザ様の力になる? 知るかボケが。お前の妄想には付き合ってられない。そこのシスター」
シスターに声をかけると、彼女はビクッとしてこっちを向いた。
「こいつらはお前の
「あ、あなたは……」
銃を構え、堕天使を見据えて名乗りを上げる。
「兵藤一誠。ケチな何でも屋のシャーマンだ」
「シャー……マン?」
「どうする。俺を信じるのか、あいつらを信じるのか。俺もヒマじゃないんだ。今決めろ」
数秒ほど考え込んで、シスターは俺の背中に隠れるように寄り添った。
「いいのか? 自分で言うのもなんだが、今の俺は相当胡散臭いと思うぞ」
「……あの人たちが、私を求めているわけじゃないのは分かっていました。それでも、私は教会以外の生きかたを知らないんです。貴方は、私にそれを教えてくれますか?」
「さあな、知りたきゃ自分で調べろ。それじゃあ、お前らはどうする? って、聞くまでも無いよな」
四人とも光の槍を出して、殺気をみなぎらせている。相変わらず、そいつもこいつも人間如きがどうだのと喧しい。
……だが、こんな連中はもうどうでもいい。本命はとっくにここへ来ている。
さあ、さっさと出てこい。
ドシュ!
「がっ、ぁ?」
堕天使の男の腹から、血と共に鋏が突き出た。状況を飲み込めない男に更に無数の鋏や鎌が突き刺さる。牛や山羊の頭蓋骨を憑代にしたボロボロのマントのような霊体が姿を現し、堕天使をズタズタに切り刻んでいく。
「ヒッ!」
シスターは俺の背中に隠れ、目を覆う。荒事に慣れてない聖女様じゃ無理もない。
原形を留めないほど無残に殺された仲間を見て、三人の女堕天使が光の槍を投げつける。何体かはそれで消えたが、残った連中によって更に金髪の女堕天使が頭に鎌をつきたてられて殺され、死体すら徹底的に嬲りつくされる。
「さーて。本業開始といきますか。ファイアは俺とあの連中を片付ける。他はお穣ちゃんを守れ」
俺から出てきた五つの光。赤、青、緑、紫、黄の五つの内、赤を除いた四つがシスターの周りに浮かび、彼女を囲む。これで彼女は安心だ。
堕天使は二人の黒髪の女が必死で抵抗しているが、それも時間の問題だろう。あ、一人死んだ。
唯一残ったのは、ボンテージのような服装のリーダー格らしき堕天使。伊達にあの中で一番強いわけじゃないか。
別に殺す必要は無いが、こんな状況でも俺を利用して助かろうとしか考えていないような女を生かしておくつもりは無い。
「
赤い光が銃に入り込むと炎が銃から巻き起こり、新たな形を模りながら収束し、炎が固まりきると真っ赤なガトリングガンが現れた。
「人間の分際で、アザゼル様の名を汚すとは!!」
囲まれている状況にも関わらずそこに怒りを覚える辺り、こいつの忠誠心だけは本物なのかもしれない。だけど、そんなもんは俺の知ったことじゃない。俺は俺の相棒の名を呼んだだけだ。
俺を一番の脅威と認識したのか、連中は堕天使を無視して俺に向かってくるが、遅えんだよ。
「さぁ、堕天使と一緒に死に踊れ『悪魔』共!!」
ドドドドドドドッ!!
轟音と共に撃ち出される超高温の炎が俺の殺意に呼応し、霊体を、骨を、鎌を、鋏を焼きえぐり、激しく悪魔を喰らう。巻き込んだ堕天使の女も、既に影も形も残っていない。
圧倒的な蹂躙の後、煙が晴れると悪魔も堕天使も跡形もなく消し飛んでいた。
O・Sを解除し、震えているシスターに振り向くと、軽く笑って言った。
「とりあえず、メシでも食いに行くか?」
「それじゃあ、堕天使がダメとなるとものの見事に行き先なしか」
「……はい」
食事を済ませた俺達は、とりあえず改めて自己紹介を行った。
回復系の神器、
処刑されないだけマシだったとは流石にいえないな。教会以外での生き方を知らないこの子にとって、そこを追い出されることは人生の否定に等しい。
「まあ、安心しろ。俺は堕天使の上層部に顔が利くし、さっきの連中は所詮先走った下っ端なわけだからどうにでもなる」
研究者気質で神器マニアのアザゼルなら、聖母の微笑みなんてレアな神器は喉から手が出るほど欲しいだろう。下っ端と揉めた件なんか、どうとでもごまかせる。
ただ……コカビエルに下級とはいえ堕天使を始末した事が知れたら、コレ幸いと大事にして仕掛けてきそうだな。アイツとは昔っから折り合いが悪いけど、幹部の中でもずば抜けて血の気が多くて他種族を嫌ってるから、ってだけじゃなくて、なんていうか……根本的な性格が合わないんだよな。いい加減ウザイし、一度〆るか?
「……でも、それでいいのかと、すこし迷ってもいるんです。教会を追放されたことは辛いですけど、きっとそれも、私に対する主の試練なんだと思います。だからこそ、これを一人で乗り越えなければ意味は無いのではないかと……」
「嘘を吐くな」
「えっ?」
まったく。華奢な外見に反して、思ったよりも気丈な娘だ。
「不安で押しつぶされそうな癖に、必死で信仰を貫こうとする心意気は認めてやる。けどな、現実的に教会の保護無しで、堕天使にも頼らないなんて言えば、お前みたいな小娘が生きる道なんてのはまともな手段じゃほとんど無い。世界って奴は、お前が思ってるほど優しいもんじゃないんだよ」
第一、そんな半泣きの顔で何を言ったって、強がりでしかないだろう。
「だから、目の前に差し出された手につかまるくらいは別にかまわないだろう。それにほら、俺達……もう友達だろ?」
「――」
目を丸くして、口をポカンとあける。そんなに驚く程、友達が欲しかったのか?
「いや、日本語じゃ袖振り合うも多少の縁って言うしさ、メシも食ったし、悩みも聞いたし。ダメか?」
「いいえ……いいえ、いいえ! でも、ご迷惑じゃ……」
「友達なんだから気にするな」
嬉しさが全身からにじみ出そうなほどに、喜びを感じるアーシア。
素直で純粋、俺には眩しいくらいだ。友達か……自分からそういうのは久しぶりだよな。
「堕天使のところへ行くかどうか悩んでるんだったら、とりあえず、日本の俺の家に来るか? いつまでいてもいいから、ゆっくり考えるといい。学校にも通ってみろ」
「そんな……いえ、ありがとうございます」
「そうそう。もらえるものはもらっとけ。それじゃあ、帰るか」
そう言って腰を上げた俺たちは、町の郊外にある人気の無い原っぱへ向かった。
「? あの、空港へ行くんじゃないんですか?」
「こっちのほうが安上がりだからな。大丈夫、細かい手続きは向こうについたらやるさ。なにより――こいつのほうが、断然速い」
俺から出た緑の光へ向けて巫力を注ぎ込むと、そいつは周りの空気を取り込みながら大きくなり、緑色の巨人としてその威容を現した。
「O・S『
呆然とするアーシアをつれてウィンドの背に乗っかると、空気の幕が俺達を包み込む。これは風圧などから保護すると同時に、シートベルト代わりにもなる。
バォンッ!!
両手を翼のように広げ、空へと羽ばたくウィンド。アーシアは目を白黒とさせながら、俺に強くしがみついている。
「大丈夫。下手な飛行機よりもよっぽど速いし、安全だし、乗り心地はいいし、何より金がかからない。それに、こいつの背中からの絶景は最高だぜ」
直後、ウィンドが高度をあげつつ、一気に加速する。戦闘機も軽くぶっちぎる程のスピードでも、俺たちに負担はほとんどかからない。筈なんだが、アーシアは俺に必死で抱きついてくる。まあ、女の子だししょうがないか。それに……。
ムニュ。
胸の感触が非常に心地いい! アーシアって着やせするんだ。ああ、素晴らしい……金髪美少女シスター最高!!
なんて考えていると海の上に出た。アーシアの背中を軽くたたいて、周りをみるように促す
と……
「うわぁーーー、キレイ……」
太陽の光にキラキラと光る海に、アーシアも目を輝かせる。生まれたときから教会で育ってきたアーシアにとって、初めての海はどんな財宝よりも美しく感じているみたいだ。
……もう少し、速度を落とすか。
もう少しでかなうはずだった。
アザゼル様、シェムハザ様のお二人に認められ、お傍にお仕えする私の夢。
あの少女……希少な回復系の神器の中でも最高クラスの聖母の微笑みをもった聖女が教会を追放された。その情報を誰よりも早く掴めたことは、運命だと思った。
その神器を私のものとし、堕天使を癒す力を備えれば、必ずやお二人に見出される。そう思って少女に近づいたというのに……
なんなんだ、あの男は。突然横からしゃしゃり出てきて私の望みを奪ったばかりか、私を滅するなど。
人間如きに! 人間ごときめ!! 人間如きが!!!
憎いにくい憎い憎い憎いにくいにくいにくい憎いにくいニクイニクイニクイ!!!
『いい憎悪だ』
!?
『復讐を果たす為に、力が欲しくはないか?』
誰だ、貴様は!!
『そんなことはどうでもいい。答えろ。力を得て復讐を果たすのか、このまま惨めに消えるのか』
欲しいに決まっている! 今度こそ、私の望みを叶える為に……!!
『いいだろう。契約、完了だ』