ハイスクールD×D SPIRIT OF GUN×BLADE   作:DECADE

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 自分のコカビエル観ですので、違和感はご容赦を。


第四廻 コカビエル

 夕焼けが差し込むオカ研部室。あれからサーゼクスにも聖剣とコカビエルのことを報告をした結果、グレモリー眷属とこの町を守る、という依頼が出され、現場は俺の判断に委ねられた。

 

「要するに、三勢力全てにこの件は俺の裁量で処理することを認められている。そしてその上で告げる。俺と聖剣使い二人、そしてグレモリー眷属でコカビエルを捕縛。エクスカリバーは奪取、及び破壊する」

 

 聖剣使い二人を連れてきた事に対して憤慨する部長をなだめ、状況の説明をしている最中だが、どいつもこいつも殺気を漲らせてピリピリしまくっている。唯一平和的なアーシアが怯えて俺の傍に寄ってきてるじゃねえか。とりあえず頭を撫でて安心させる。よしよし、俺がちゃんと守ってあげるからね。

 

 そんな中で最も張り詰めた男が、俺に詰め寄ってきた。

 

「……それで? エクスカリバーはどこにあるんだい?」

「少し落ち着け、イケメン王子。一本ぐらいは必ず壊させてやる。ていうかお前ら全員、少し殺気を収めろ。これから共同戦線だってのに、それじゃ先が思いやられるぞ」

「何故悪魔の手を借りる必要がある。お前がいれば、コカビエルなど敵ではないのではないか、兵藤一誠」

 

 ゼノヴィアもまた、不快感を隠そうともせず言い捨てる。これだから頭の固い教会人は面倒だ。

 

「別にコカビエル如きに怯える要素はどこにもないさ。単に戦力は多いほうが良い。それだけのことだ。文句があるんなら逆らえばいいだろう。それは俺に従えという主の命に反することになるけどな」

 

 そこまで言うと、ゼノヴィアはグッと下唇を噛んで睨んでくる。信心深いってのは大変だな。

 

 が、ゼノヴィアは視線を突如アーシアのほうへ移す。

 

「魔女アーシア・アルジェント。追放されてどこへ行ったのかと思っていたが、こんなところで悪魔になっていたとはな。しかも、信仰の匂いがする。悪魔に成り果てた身で、まだ神を信じているのだな」

 

 魔女、という単語に、アーシアの心が乱れる。だが、すぐに落ち着きを取り戻し、正面からゼノヴィアに向き合う。

 

「……捨てきれないだけです。ずっと信じてきたのですから」

「そうか。ならば今すぐ私達に斬られるといい。今なら神の名の下に断罪しよう。罪深くとも、我らの神ならば救いの手を差し伸べてくださるはずだ」

 

 布に包まれた聖剣をアーシアに向けて、歩みだそうとするゼノヴィア。

 

 ダンダンッ!

 

 炸裂音の直後、ゆっくりと視線を下げ、自分の太ももに穴が開いた事を視認したゼノヴィアに近づき、鳩尾を蹴飛ばして床に寝かせて胸の中心を踏みつけ、脳天に銃口を向ける。混乱する周囲と違って、ゼノヴィアはひどく冷静に自分の考えを並べ立てている。

 

 聖女に必要なのは、分け隔てない慈悲と慈愛。神以外の愛を求める者に聖女の資格はない。神が救わなかったのは、彼女(アーシア)の信仰が足りなかったから。なるほど、実に凝り固まった信徒らしい『嗜好』だ。

 

「ちっちぇえな」

「……君のような無頼漢にとってはそうだろうさ。だがな、私にとってはその小さな事こそが全てなんだ」

「ああ、何を信じようがそれはお前の自由だ。全てだろうがなんだろうがどうだっていい。だがな、アーシアは俺の家族だ。その信心の為にアーシアを傷つけるというんなら、お前はもういい。ここで死ね」

 

 引き金を引き絞ろうとしたとき、もう一方の手をアーシアが引っ張る。

 俺に無意味な人殺しをしてほしくない、か。

 

「いいのか? こいつはアーシアの信心を侮辱したんだぞ?」

「私は、イッセーさんや部長さんに救われました。だから、それで十分です」

 

 そう言って、アーシアはゼノヴィアの怪我を癒す。抵抗しようとしたゼノヴィアだが、俺に睨まれているのが分かっているのでおとなしく治療された。傷はあっという間に癒え、アーシアをゼノヴィアから引き離す。

 

「アーシアに感謝するんだな。次にアーシアに手出ししようとしたら、今度こそ殺すぞ」

「分かっているよ。実力差も弁えずに粋がるほど私も馬鹿じゃない」

 

 こんな所であんな行動を起こす時点で既に相当な馬鹿だよ、この脳筋が。しかも今度は木場をにらみつけた。狂犬かこいつ。

 

「『聖剣計画』の生き残りか。はぐれならばさっさと殺しているところだ」

「……僕も、イッセーくんの伝手でなければ、この場で君らを切り捨てたいさ」

「やはり、『聖剣計画』のことで恨みを持っているのね? エクスカリバーと教会に。でもね、木馬君。あの計画のおかげで聖剣使いの研究は飛躍的にのびたわ。だからこそ、私やゼノヴィアみたいに聖剣と呼応できる使い手が誕生したの」

 

 イリナがピントのずれたフォローをする。主、そして教会へ命を捧げることが当然の彼女たちにとっては決して間違いではないんだろうが、生憎信仰を捨て去った、しかも被害者の木場にはただ加害者が自分を正当化しようとしているとしかとれない。

 

「だから、失敗作とされた者たちは処分されてよかったとでも?」

 

 一層憎悪を募らせる木場。そんな木場に、イリナはかける声を失った。だが、今度はゼノヴィアが口を開く。

 

「その件は我々教会関係者の間でも、最大級に嫌悪されているものだ。処分を決定した当時の責任者は、異端の烙印を押されて堕天使側についた。今回の件にも、その男が絡んでいる」

「『皆殺しの大司教』バルパー・ガリレイ。そいつがお前の仲間の敵だ」

 

 ゼノヴィアの言に補足した名前を聞いて、木場の目に新たな決意のようなものが固まる。逸るなよ? その心は仇を目の前にするまで取っておけ。復讐は成就する瞬間こそ、最も熱く冷めているべきだ。

 

「そして、はぐれエクソシストのフリード・セルゼン。お前が数日前に対峙した男だろ? 木場」

「……ああ、確かにその男と戦った。奴が神父を殺害した直後にね」

 

 室内が若干ざわつきかけるが、手を上げて制する。追っ手が一人殺されたってのは聞いたが、まさかコイツがそこに居合わせるとはな。

 

「なるほど。単なるイカレ野郎の暴走ってわけでもないんなら、あのクソ堕天使の宣戦布告ってことだな。つまり、向こうはほぼ戦闘準備を終わらせているわけだ」

 

 あの粘着質のウォーモンガーなら、俺がオカ研に入って部長たちと懇意でやってるのは知っているだろう。馬が合わないのはお互い様だったんだ。腐れ縁もここらで終わらせようや。

 

 壁をすり抜けて、青いヒトダマが戻ってくる。おお、レインが一番とは珍しい。大概こういうのは範囲の広いサンダーか、最速のウィンドなんだけどな。

 

「コカビエルのアジトがわかった」

 

 

 

 

 

 

 レインの案内でたどり着いたのは、町外れの教会。少なくとも俺が小学生の頃から使われていなかったはずなんだが、それにしては外装は不自然なほど綺麗すぎる。だが、内部からは確かに感じる。あのクソ堕天使の腐った性根をな。

 

「コカビエルは俺が相手をするから、みんなはそれ以外を頼む。流石の堕天使様も、たかだか三人で俺達と戦えるとは思っていないだろうからな。何が出てもおかしくはないと思え」

 

 他種族を見下したムカつく奴だが、伊達に何千年も悪魔や天使を相手に戦ってきちゃいない。こと戦いに関しては、冷徹そのものと言える。対抗手段として、何を引っ張ってきても不思議じゃない。

 部長が代表して頷いてみせる。

 

「わかったわ。貴方たちも、それでいいわね?」

「流石にあれだけの実力差を見せ付けられてごねる気はない。私達の目的は、エクスカリバーを取り戻す事だけだ」

「ああ、主よ。我らの信仰を見届けたまえ!」

 

 冷静に返すゼノヴィアと、気持ちが盛り上がって祈るイリナ。対照的なコンビだ。過去に色々あるのはわかるが、よく一緒にいられるな。

 

「それじゃあ……行くぜ!」

 

 ドアを蹴破り、内部の暗がりへ銃を突きつける。その真正面、奥の祭壇の上。破壊された十字架に腰掛け、十枚の黒い翼を見せ付けるように広げているのは、凝った装飾のローブを身に纏った、見た目だけは端整だが、その目は見下しているのがはっきりと察せられるほど冷め切っている若い男。

 

「久しぶりだな、兵藤一誠。前に会ったのは確か二年程前の時か」

 

 懐かしむような台詞にも関わらず、声色からは侮蔑と嫌悪以外を見出せない。

 

「そうだな、俺がヴァーリと戦ったあの時以来だ、コカビエル。お前の顔なんか見たくもなかったんで、グリゴリに寄る用事の時はわざわざアザゼルにお前がいないときを聞いてたんだぜ?」

「そうか、それは気が利いているな。俺もお前の様な薄汚い金の亡者の顔など、思い出すだけで反吐が出る。可能であれば記憶からも消しさりたいと思っていたからな」

 

 素直に思ったことだけ言うところも相変わらずだな。そういう奴は割りと好きなんだが、お前は例外中の例外、ていうか論外だ。

 

「しかも、今では悪魔と懇意にやっているそうじゃないか。金のにおいがする奴に擦り寄る癖も、そこまで行くと名人芸だな。やはり幾ら腕が立とうが、お前如きを重用するアザゼルが理解できん。お前はそうやって、阿婆擦れ悪魔の股から金を引きずり出しているのがお似合いだ」

 

 金の亡者うんぬんは否定しないが、部長は阿婆擦れなんかじゃねえ。れっきとした乙女悪魔だ。

 

「コカビエル様こそ、放火魔よろしく火種を彼方此方にばら撒くのにお忙しいようで。聖書に名を連ねるほどの名高い堕天使様も、遂にコソ泥までやるようになるとは世知辛いことこの上ない。世は事もなし、平和すぎて社会不適合者のコカビエル様は居心地が悪いことこの上ないのでは?」

 

 適当に丁寧を取り繕った俺の皮肉に、コカビエルはふうっと息をつく。行き着くところまで行き着いたこいつは、頑なに一つを譲らない。そしてその譲れない一点が、争いであることが何より問題なんだ。

 

「ああ、まったくだ。誰も彼もが平和平和と嘯いて、仲良く手を取り合いましょうと囁いている。おぞましいことこの上ないな。俺が求めるのは戦争だけだ。天使の血飛沫を浴び、悪魔の臓腑を喰らい、同胞である堕天使の屍を踏み越え、更なる戦果を求める。何故、あの甘美な争いのひと時を忘れられる?」

 

 俺に見せつけるように、奴の心で繰り返される三大勢力の戦争。まさに地獄絵図以外の印象をもてないその中で、コカビエルはとても楽しそうに天使や悪魔を屠っている。その興奮のままに、奴はただ語り続ける。

 

「俺には無理だ。融和ではなく対立を、対話ではなく大戦を、親愛ではなく憎悪を、望んで止まないんだよ。敵の血に酔い肉に餓え骨を求めろ。倒し倒され殺し殺され憎み憎まれ、そうした果てに誰かが立っている。その誰かが堕天使であれば望ましいが、そうでなくても俺は一向に構わん。平穏に埋没するくらいなら、いっそ滅んだほうがマシだ」

「……なるほど。戦争狂の手本のような思想だ。教科書に纏めておきたいくらいだよ。アザゼルが聞いたら、さぞ残念に思うだろうさ」

 

 どうしたって、こいつはもうどうしようもない。自分や堕天使の滅びを躊躇しないどころか、望んでさえいる時点で完全に終わっている。アザゼルの名前にも大した反応を見せず、ふんっと鼻を鳴らす。

 

「知ったことか。三つ巴の戦争が終わってから、俺は退屈で退屈で死にそうだった。アザゼルもシェムハザも次の戦争には消極的過ぎる。おまけに神器(セイクリッド・ギア)なんてつまらんものを集めだして、わけのわからん研究に没頭するばかりだ。ヴァーリの白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)のように、神滅具(ロンギヌス)級の代物ならば興味ももつが、早々見つかるものでもない。……そういえば兵藤一誠。お前、二天龍のもう片割れの赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)を探していたが、あれの持ち主は見つかったのか?」

「いいや。どうも恥ずかしがり屋さんが過ぎるみたいで、な。もしかしたら、まだ生まれていないのかもしれない」

 

 最も現代じゃあ赤龍帝の篭手だけじゃなく、他にも半数以上の神滅具が所在不明らしい。だが、赤龍帝だけはなんとしても探し出さなきゃならない。あの『悪魔共』を滅ぼす為にも。

 コカビエルは十字架を蹴って飛び上がり、穴の開いた天井から外まで飛行する

 

「さあ、そろそろ話は終わりにしようか。――戦争を始めるぞ。魔王の妹、リアス・グレモリーの死と、そこから巡って引き起こされる天使と悪魔と堕天使の、三つ巴の最終戦争(ハルマゲドン)だ」

「最終戦争? 本気でイカれたのか、コカビエル。俺がアザゼルからお前の捕縛を依頼されているのは分かっているだろ? 部長を殺すなんざ、できると思ってるのか」

「できないだろうな、お前がいたんでは。正直、あのヴァーリを倒したお前を俺が倒せるとは思っていないさ」

 

 コカビエルは心底愉快そうに笑う。何をたくらんで……

 

 !!

 

 一瞬でS・O・E(スピリットオブアース)S・O・F(スピリットオファイア)S・O・W(スピリットオブウィンド)O・S(オーバーソウル)し、全員を外へ運ばせる。その次の瞬間、周囲の壁や天井がグニャグニャと変形していき、まともな神経の持ち主ならそれだけで発狂しそうなほど異様な光景が出来上がっていく。

 

「日本語で言うところの毒をもって毒を制す。化け物は化け物同士、仲良く貪りあえ。その間に事は終わらせてやる」

 

 そういい残し、コカビエルは変形し塞がれる天井によって姿を消した。

 

 ……悪魔と手を結んだ、か。一度深いところまで読んだ相手の心は、表層にばかり目が行くのが俺の癖だ。深層心理にまで隠し切るあいつも大概だけどな。

 

 ズゥン!!

 

 空間が割れ、轟音を上げて歩み寄ってくるのは蠍の尾を備えた巨大な蜘蛛。傍から見れば巨岩が動いているようにも見える岩のような身体は、実質ダイヤモンドよりも遥かに高い強度を誇る。

 僅かな外殻の隙間からマグマの体液を撒き散らしながら、俺へ這いよってくる化け物。おいおい、もう蘇ってきたのか。相変わらず回復力としつこさだけはたいしたもんだな、この脳筋グモ。

 

『久しいな、兵藤一誠! 前回からいったいどれだけ経った?』

「たったの一ヶ月だよ。新記録更新おめでとう、ファントム」

 

 毎回繰り返される確認を済ませ、ため息をつく。こいつが来たのか……まあ、グリフォンやシバじゃないだけよかった。

 

『はははは! そうかそうか。毎度毎度律儀に教えてくれて礼を言うぞ』

「だったらせめてカレンダーくらいは確認してから出てきたらどうだ。溶岩蜘蛛」

『生憎、俺の住処には時計もテレビもありはしないさ。そもそも時間の確認など、悠久の時を生きた俺には無縁のことだ』

 

 気安いやりとりだが、それも慣れたもんだ。悪魔の幹部の中でもダントツにしぶとく復活の早いこいつは、俺と一番多くやりあった相手でもある。

 なにより、魂の根まで腐った他の連中と違って、他人を巻き込むことを好とせず、正々堂々と戦いを挑みに来るこいつは気に入っている。それでも、コカビエルやヴァーリに劣らないほど戦いを好むのが面倒だけどな。

 

「それじゃあ、はじめるか」

『ほう? 珍しくやる気ではないか。いつもなら俺に急かされてようやく構えをとるお前が』

「悪いが今日は別件の約束があってね。仲間があぶないんだ。全力でいくぜ」

 

 にもかかわらず頑丈でしぶといこいつを寄越すとは、あのクソ魔帝もつくづく腹の立つ真似をする。

 

『仲間……仲間か。そうかそうか。お前にもようやく友達ができたのか! いや、これは目出度い。敵ながらにいつも寂しそうな奴だと、心配していたのだぞ』

「うるせえ! 余計なお世話だ!!」

 

 サーゼクスといいこいつといい、そこまで俺に友達がいないと思ってやがるのか! そんなに寂しそうか、俺は!?

 気を取り直して、アザゼルへS・O・R(スピリットオブレイン)を、也宗へS・O・T(スピリットオブサンダー)をO・Sさせる。氷のように透き通った青い銃身を持つショットガンを突きつけ、宣言する。

 

「O・S『アザゼル・レイン』、『也宗・閃雷(せんらい)』。悪いが今日は手早く終わらせてもらうぜ、ファントム」

『そうはいかんぞ。魔帝様はもうすぐお前と決着をつけると仰っておられた。これが最後の機会になるやもしれん』

 

 ……そうか。ようやくか。それは待ち遠しい。てめえの三つ目にまとめて銃弾叩き込む日を、どれだけ心待ちにしたことか!!

 

『兵藤一誠よ! 存分に付き合ってもらうぞ!』

「ほざけ!! この脳筋が!」

 

 ファントムの火炎弾と、アザゼル・レインの氷の弾丸。超高温と超低温という対照的なものを圧縮させた二つの塊がぶつかり合い、爆発する。

 

 部長、みんな。頼むから無事でいてくれよ!

 

 

 

 

 

 夜の帳が落ちた外へ僕らがはじき出された直後、教会は見るもおぞましいほどの魔力に包み込まれた。莫大に量が多いのは確かだけど、それ以上に……触れたくない、近づきたくない、見たくもない。本能的にそう思わされてしまうほど、恐ろしい魔力の質。イッセー君はこんなものと渡り合っているのか……。

 

「予想通り、お前たちを外へ逃がしたか。それでこそだ」

 

 上からコカビエルの声が聞こえる。そこを向いてみれば……紫藤イリナがコカビエルの光の槍に腹部を貫かれている! そんな……何時の間に!?

 

 コカビエルは槍を振るって紫藤イリナを下へ落とす。落下する彼女を受け止めたのは、イッセー君が咄嗟に出して、僕らを教会から外へ出したS・O・Wだった。アーシアさんが駆け寄ると、S・O・Wは掌に載せた彼女を地面に下ろし、アーシアさんが治療を始める。

 そしてもう一体、S・O・Fはコカビエルの後ろをとり、手刀を突き出していた。速い! 僕の目でも到底捉えきれない!

 

 コカビエルはその突きを紙一重で回避し、即座に距離をとる。こちらもまた、次元の違う速さだ。これが……僕らの敵。そんな存在が勝てないと言い切るイッセーくんは、一体どれほど強いというんだ。

 

「やれやれ。主に似て手が早いな。だが、戦う舞台はここじゃない。駒王学園、そこでこれを含めたエクスカリバー四本を一つに合一する儀式と共に、この町を壊滅させる術式を発動させる。それが嫌ならおとなしく来ることだ」

 

 そう言って、コカビエルは紫藤イリナから奪ったエクスカリバーを見せ付けるように振り回し、学園の方角を指し示す。来なければ街が崩壊するというわけだ。なんていうことを……。

 

 普通なら、このまま学園へ向かおうとするコカビエルをここで止める術はない。だが、今はイッセー君が僕らに付けてくれた二体の精霊がいる。昨日部室で、イッセー君は自分の持霊は神より強いと豪語していた。そして事実、この二体から感じられる力は、下手をすればサーゼクス様すら超えているかもしれない。イッセー君は、こんなものを五体もまとめて扱っているのか……。

 

 だが、コカビエルは余裕を崩さず、更に言葉を紡いだ。

 

「ふふふ。そういきり立つな、五大精霊よ。流石の俺も一人でお前ら二体を相手にはできん。なので……お前たちには、別の敵を用意してある」

 

 コカビエルが指を鳴らすと、町の上空に大量の魔方陣が現れ、そこから雲霞のごとくあの悪魔たちが現れた。なんて数だ! このままじゃあ……。

 

「ハハハハハハ、戦争前の前夜祭と言った所だ! さあ、さっさと行かねば術式が発動する前に住民が死に絶えるぞ!! と言っても、お前たちだけで足りるかな? 巫力さえ与えられれば自分の意思で自立的に行動できるのは知っているが、果たしてそれだけでどれほどの力が出せる?」

 

 とても愉快そうに、コカビエルはあざ笑う。

 

 だが、町へ降りようとする悪魔たちが突如上空で弾かれ、目に見えない壁があるかのように立ち往生する。そして、僕らは見た。町の中心近くで両手を広げて空へと向ける巨人の姿を。

 

 あれは……S・O・E! 彼の力は、確か大地の力。重力の壁で敵を押し留めているのか! しかも街全域をカバーするだなんて、想像を絶する力だ。更に、壁を突破しようとする悪魔の元へ、一瞬でS・O・Wが飛んでいき、腕を振るって暴風を巻き起こして大量の悪魔を葬っていく。

 

 具現化するほど凝縮された自然の猛威の力を、僕らははっきり見せ付けられていた。

 

「やはりこの程度では二体を足止めするのが限界か。だが、一体であれば十分勝算は出る。では待っているぞ、S・O・F」

 

 黒い翼をはためかせ、コカビエルが消える。急いで追わなければ! 足早に駆け出す僕らの頭上で、背中に治療をするアーシアさんと、瀕死の紫藤イリナを乗せたS・O・Fが飛んでいる。彼の力も、S・O・E、S・O・Wに勝るとも劣らないだろう。

 

 上空では魔方陣から湧き続ける悪魔たちと、二体の精霊の攻防が続いている。あれほどの力を持った、神を超えた精霊に勝ち目を見出せる、コカビエルの手段。もしそれが本当にS・O・Fを倒しうるのならば、残った僕らではとてもコカビエルには太刀打ちできない。

 

 イッセーくん……僕の給料でよければ幾らでも払うから、早く来てくれ。君の力が必要だ!

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