明日の彼方に   作:紺南

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13話

何はともあれ着替えないといけない。

周囲からの視線で自分の格好の異様さを再認識した俺は自室に向かった。

 

歩を進めるにしたがって周囲から人の気配が消えていく。

学園祭とはいえさすがに学園全体が開放されているわけではない。特に寮付近はきっちり部外者立ち入り禁止になっていた。

そう書かれた立て札に加え、これ見よがしの防犯カメラやセンサーがあちこちに設置してある。俺が通ってもなんの反応もなかったのがいささか不安だが、部外者に対してはきっちり仕事してくれるだろう。そうに違いない。そう思いたい。

 

人っ子一人いない廊下を歩きながらそういう不安を抱く。それを忘れるためにも、時折どこからともなく聞こえる喧騒に耳を傾けてみる。

何百と言う人の声が混ざりに混ざった喧騒は内容を理解できるはずもないが、何となく非日常的な雰囲気が感じられる。

例えるなら、小学校で運動会が開催された日にたまたま近くを通りがかった時の気分だ。

小学生だった自分を思い出し、その頃の光景が脳裏に浮かぶ。みんな夢中で楽しんでいるんだろうなと理由はないけど少し嬉しくなる。

 

そういう気持ち。

過去のことを思い出している内に不安はなくなっていた。丁度部屋についたので中に入る。

Tシャツとジーンズのラフな格好に着替え、変装用の伊達眼鏡をかけてみた。

こういう小道具一つで受ける印象はまるっきり変わるらしい。テレビの受け売りだが、鏡で自分の顔を見れば他人のような気がしたので間違ってはいないはずだ。

 

そう考え、よしと自分を納得させてから部屋を出る。

何だか知らないが、このまま部屋に籠っていると危険らしい。微妙に警鐘が鳴っている。

やはり学園のセキュリティは信用できない。先ほどのセンサー類は普通に突破されてしまうらしい。多分入場している父兄に変なのが混ざっているのだろう。

 

本当なら安全な場所に逃げ込んで膝を抱えていたいものだが、IS学園自体が安全でないのなら大衆に混ざるしかない。

人目に触れるのは正直怖い。けどきっと大丈夫。なぜなら今の俺は嘉神ではない。佐藤だ。佐藤義之だ。誰が何を言おうとも佐藤義之だ。よし、それで行こう。

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

いくら変装しているとはいえ、まさか一年生のフロアに戻っては普通にばれそうなので二年生のエリアに来ていた。

丁度小腹が減っていたので手近なカフェに入る。

 

「いらっしゃーい! 一名様?」

 

「はい」

 

「お客様一名ごあんなーい!」

 

やたらと元気のいい上級生に案内されて席に座る。

窓際で景色のいい場所だった。室内にはチラホラ人がいるだけで繁盛しているとはお世辞にも言えない。

もしかしたら一夏が客を奪っているのかも知れない。そう思うとなんだか申し訳なくなる。

 

「はい、こちらメニューですっ」

 

「どうも」

 

「決まったら声かけてくださいね」

 

笑顔で、元気がよくて、ハキハキしてる。

とても気分がいい。点数をつけるなら百点満点の接客だ。

 

気分よくメニューを開き、書かれている金額に驚く。

さすがはIS学園。世界中から入学希望者が殺到するだけあって物価もグローバルだ。つうか高くね? コーヒー1杯1000円近いんだけど?

 

そんなことを考えてメニューを眺めていたら、呼びもしないのに店員がやってくる。さっきの店員とは別の人だ。

 

「決まった?」

 

「……あー……コーヒーとマカロンを」

 

「ホットとアイスどっちがいい?」

 

「アイスで」

 

「おっけー。ちょっと待っててね」

 

今度の人はやたらとフレンドリーだった。

呼んでないのに来るとか暇なのか。まあ見るからに暇そうだしな。

 

最後にざっと金額を見てからメニューを閉じる。

何度見ても値段に変化はなく、おしなべて高い。ここまで高くしていいならうちのクラスももっと高値で設定すればよかった。

そうすれば一夏目当ての客も少しは減ったかもしれない。IS学園の生徒はみんな金持ってそうだから焼け石に水かもしれないけど。

 

それから5分もしないうちにコーヒーが運ばれてきた。

持ってきたのは最初に接客してくれた人だ。コーヒーを置くついでにメニューを持っていったが、妙に距離が近くてちょっとドキッとした。

 

コーヒーを一口啜っていてる途中でフレンドリーな人がマカロンを持ってきた。

「ジャムつけて食べてね」と教えてくれ、去り際にウインクを置いていく。

なんだか知らないが好意的だ。ここまで好感触を得る理由は一つしか思い浮かばない。ひょっとして俺が嘉神だとばれているのか。だとしたら厄介だ。この瞬間にも凰さんが龍砲を打ち込んできかねない。

警鐘はなっていないが、だからと言って油断はできない。この第六感には何度も命を救ってもらっているが、全てをこれに依存するほど長い付き合いではない。まだたかだか数か月だ。

 

四つのマカロンを大急ぎで掻っ込み、コーヒーで無理やり飲み込む。

そのまま会計を済ませてその場を後にした。

上級生たちが目を点にしていたが人にどう見られるかなど気にしている余裕はない。自分の命の方が万倍大事だ。

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

周囲を警戒しながら歩いていたらいつの間にか校門付近にいた。無意識のうちに人のいない方へと歩いていたらしい。

人ごみに紛れていた方が危険は少ないだろうに、まったく体に染みついた習性は怖い。中学生の頃にこんな習性はなかったはずだから、IS学園がどれほど俺に影響を及ぼしたのか察して余りある。

 

踵を返そうとした俺の横をスーツのおっさんが通り過ぎていく。通り過ぎる際にチラリと俺の方を見たが、すぐに興味を失って視線を戻していた。明らかに役人っぽいおっさんが反応しなかったのだから、一応変装は機能しているとみていいだろう。

鼻のところに眼鏡の金具が当たって痛いのだが、効果があるなら我慢しよう。

 

痛くない眼鏡のかけ方を模索していると、校門の方から話し声が聞こえた。

その声がここら辺では絶滅危惧種レベルで珍しい若い男の声だったから思わず振り向いた。

 

「だ、だから、怪しいもんじゃありませんって! 信じてくださいよ!」

 

「学園のデータベースに五反田と言う名前はありません。この招待券はどなたからもらったのですか?」

 

「い、一夏です! 織斑一夏! 知ってるでしょう!?」

 

「もちろん知っていますが……彼が? ふむ……」

 

そこには眼鏡をかけた気真面目そうな女子生徒と見た目チャラそうな長髪の男子がいた。

女子の方はネクタイが赤いので三年生らしい。奇遇なことに男子の方も髪が赤い。そういう意味ではお似合いだ。

 

女子生徒の疑うような視線を受け、男子は見るからに取り乱した。傍で見て怪しいぐらいの動揺っぷりだった。

しかし、同性の俺から見れば単に美人に見つめられて狼狽えているようにも思える。年頃の男子にはよくある言動だ。

多分、あいつは彼女欲しーとか言いながら色々やってみて、それが原因で彼女出来ないタイプ。

 

さて、彼が本当に不審者か否か。個人的には違うと思うのだが、件の一夏に聞けばすぐわかることだ。

ISの通信機能を開いて一夏に連絡を取る。忙しいだろうにすぐに応答があった。悲鳴共に。

 

『嘉神ぃ!!? 助けてくれ!!』

 

「あのさあ、ちょっと聞きたいんだけど」

 

『助けてくれ!!』

 

「いや、めんどくせえわ。でさ、今校門のところで五反田っていう赤い長髪の不審者が居るんだけど、心当たりある?」

 

『え、弾が? ……あ、そう言えば招待状渡したけど――――』

 

確認が取れたので通信を切る。

漏れ聞こえた音から察するに、今一夏の周りにはたくさんの女の子がいるらしい。一体何をしたらそんな状況になるんだろう。魔性の男ってわかんね。

 

とにもかくにも一夏は今身動きが取れない状況にいる。

そんな環境に一夏を放り込んだのは俺だ。罪悪感が多少ある。だからその友達を助けることで少しでも償いとしたい。償った分だけ新しい罪を重ねることが出来るのだ。未来への投資と言って差し支えない。

 

「ちょっといいですか?」

 

「はい? ……あなた?」

 

「どうも」

 

近づいて来た俺に気づいて、女の子が怪訝気な顔をする。見覚えがあると言う顔だ。そりゃあるだろうよ。

 

「名前は?」

 

「え?」

 

「名前教えて」

 

「ご、五反田弾だけど……」

 

「おっけー。俺は織斑一夏の知り合いだ。迎えに来た」

 

事態が飲み込めずに呆ける五反田を差し置いて、女子の方が真偽を確かめて来る。

 

「それ本当?」

 

「はい。一夏は今揉みくちゃにされているので、代わりに来ました」

 

「揉みくちゃ?」

 

そこ気になるのか。

もしかして、この人も一夏に気があるのかもしれない。ない奴の方が少ないだろう。

 

「気になるんでしたら行って確かめてください。一組です」

 

「……メイド喫茶よね? どうして揉みくちゃ?」

 

「違います。織斑一夏のご奉仕喫茶です。多分手取り足取りご奉仕してるんじゃないですか? 知りませんけど」

 

そんな話をしていると、傍らで聞いていた五反田の目に怒りが宿る。嫉妬しているらしい。実態を知らない男にとっては聞くだけで垂涎ものだろう。

 

IS学園に入学する以前の俺だったら同じ反応をしたに違いない。「毎日やりまくりなんだろう、男の敵が!」とか意味もなく吠えていたかもしれない。しかし同じ環境に放り込まれれば考えも変わる。逆に「一夏よもっと頑張れ」と応援したくなる。お前が頑張れば頑張るだけ俺の負担は減るのだ。だからもっと頑張って。むしろいっそのことやってくれ、一夏よ。

 

「あの野郎許せねえ!」

 

「まあ落ちつけ。そんな羨むことじゃない」

 

「これのどこが落ち着いてられるってんだ!」

 

興奮して若干言葉遣いが怪しい。そこはかとない江戸っ子臭がする。

 

「気持ちは分かるが、おしくらまんじゅうで潰されかけてるだけだ。下手すれば死ぬぞ」

 

「女の子に押し潰されるなら死んだっていい! むしろ死にたい!」

 

怒りに燃える五反田は理性を知らない。

やっぱりこいつ童貞だ。しかもかなりこじらせてる。普通そう言うことは思っても言わないもんだ。見ろよ。目の前の女子引いてるぜ。それが目に映らないぐらい自分に正直なのか。まあ、悪い奴ではないのだろう。一夏の友達だしな。

 

「こいつ一夏と一緒に死にたいらしいんで今から連れて行くんですが、通していいですか?」

 

「ええ、結構です。足止めしてごめんなさい。……あなたも早く戻ってあげなさい。織斑君がかわいそうだわ」

 

「あいつはいつもかわいそうですよ」

 

名も知らぬ女子生徒に別れを告げる。去り際、その人の顔に引っ掛かりを覚えて首を傾げた。気のせいかもしれないが、どこかで見た気がする。

 

悩む俺の横で、五反田は落ち着かない素振りを見せている。

どうしたと声をかけようとしたその瞬間、意を決したように踵を返し、件の女子生徒に駆け寄った。

 

「あ、あの!」

 

「……? なんですか、何か忘れものでも――――」

 

「電話番号教えてくれませんか!?」

 

え、あいつあんだけ格好悪いところ見せといて連絡先聞けるの? ……さすが一夏の友達だな。

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「お前まじ死ねよ」

 

「そう僻むなって。うまくいったら友達紹介してもらうからさ」

 

「ほんと死ねよ」

 

「へっへっへ」

 

何故だか分からないが、あの三年生は五反田の申し出を受けてしまった。まさか教えないだろうと高を括っていた分、その衝撃はすさまじかった。

 

それは五反田本人にも言えたことで、連絡先をゲットして有頂天になった五反田は、超絶高いテンションで俺に抱き着いて嬉し泣きをし、かと思えば鼻の下を伸ばして照れ隠しで肩を叩いた。多少落ち着いてからは今のように自慢してくる。

 

結果、出会ったばかりの相手に対し、俺の口からは暴言が飛び出していた。

暴言を言い、あっさり流され、更なる暴言を言う。それを繰り返しながら少し歩いて、あちらこちらから人の気配を感じ始めた頃、ようやく五反田が正気に戻った。

 

「そう言えばお前誰だ?」

 

今更過ぎる質問に「お前は馬鹿か?」と暴言を重ねる。

 

「俺は佐藤だ。佐藤義之」

 

「そっか。よろしくな佐藤。俺は五反田弾。弾って呼んでくれ」

 

一応俺も有名人のはずだが、案外ばれないものだ。

やはりテレビやネットを通してみるのと実物を見るのとでは受ける印象が違うのだろう。眼鏡のおかげかもしれない。次は鼻が痛くならない眼鏡を買おう。

 

「それで一夏のところに案内するけど、多分今行っても会えないと思う」

 

「ん? 一夏の知り合いなのか?」

 

「迎えに来たって言わなかったか? 言ったぞ俺は」

 

「……言ってたっけ?」

 

「その調子で連絡先も忘れたらどうだ。何なら協力してやるから」

 

「これだけは絶対忘れない。死んでもだ」

 

こいつの場合、仮に死んだとしても幽霊になって連絡取りそうだから怖い。人生初の恋人ゲットチャンスに全身全霊命かけてる。

 

「そっか一夏の知り合いなのか。じゃあ佐藤も誰かに招待券もらってきたのか?」

 

「そうだよ」

 

適当に話を合わせておく。

別に正体を隠す必要もないが、目の前でナンパを成功させやがった意趣返しだ。我ながら小さい男だと思うが止められない。何故なら俺は佐藤義之だから。

 

「佐藤も誰か声かければいいじゃん。協力するぜ。今日の俺は最高についてるからな。あやかれるかもよ?」

 

「本当に殺すぞ五反田弾」

 

そんなこと出来れば誰も苦労しないんだよ。

ある日いきなりIS動かして、政府の偉い人にハニートラップに気を付けろって注意されて、挙句の果てには何回か死にかけて見ろよ。

恋愛できる余裕がどこにあるんだ言ってみろよ殺すぞ。

 

「へっへっへ」

 

かなり本気で殺すぞと言ったのだが、五反田は冗談だと思ったらしい。俺の殺意などお構いなしで鼻を伸ばしている。

人を呪わば穴二つと言う。だが俺はすでに呪われているようなもの。怖いものなど何もない。ぜってえ不幸を見舞ってやる。

 

呪詛を飛ばす俺に気づかず、五反田は物珍しそうに周囲を見回した。

見回しても見回しきれない敷地の広さに感嘆し、先進的な造形を誇る校舎などを見て開いた口が塞がらない。敷地内には近未来を思わせる建物がいくつもある。日本とは思えない造形美だ。

 

「すっげえな。これがIS学園かよ」

 

まあ、IS学園なんて普通の人間には男女問わず縁遠いものだ。中身がどうなっているかなんてほとんどの人間は知りもしないだろう。俺もそうだったし、知った後は知りたくなかったって後悔する。何事もそんなもんだ。

 

「そうだよ。見ての通り無駄に広くて無駄に先進的で無駄に女しかいないぞ」

 

「理想郷じゃねえか! ……たしか全寮制だったよな、ここ」

 

よく知ってるな。

詳しさの方向性に欲望が滲んでてちょっと引く。

 

「寮の方は普通だ。いたって一般的。別に自動ドアで生体認証とかそういうのはない」

 

「へえ」

 

「たまにきわどい格好の女子がうろついてるぐらいだな」

 

「理想郷じゃねえか! ……ん? なんで佐藤はそんなこと知ってるんだ?」

 

嘉神だからだ。

いや、違う。俺は佐藤だ。佐藤義之。佐藤義之はISを動かしてない。世界で二人だけのIS操縦者じゃない。IS学園のことなんて知らない。篠ノ之束に殺害予告受けてない。

 

「一夏が言ってた」

 

「あの野郎……なんつう羨ましい……! 見放題か!」

 

羨ましいことだらけだな。

別に見放題でもないけど。どっちかと言うと見放題なのはISスーツの方だ。

知ってるか? ISスーツは素肌に着るんだぜ? ぴっちぴちよ。

 

「一夏のところ行くかぁ」

 

「ああ。……お、あの子可愛いな」

 

「ぶっ飛ばされてえのかお前は」

 

あの三年生にチクって可能性を終わらせるぞ。

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「……なんだこれ」

 

「一夏ファンクラブの皆さまだ」

 

教室からズラリと果てなく並ぶ人の列を見て五反田は唖然とした。

並んでいるのは学園の生徒が大半で、たまに他校の制服を着た女子と、稀に渋いおっさんがいる。多分あのおっさんすら一夏目当てなのだろう。すげえな。

 

中の様子を伺おうとした五反田が、列の子に「横入りしないでよ!」と注意されスゴスゴ戻って来た。

 

「すげえ殺気立ってる……」

 

「命がけなんだよ」

 

五反田は知らないかもしれないが、何事も一夏が関わると過激になる。

人は凶暴になり、ISが飛び交い、命の危険がある。どこの馬鹿が生身に向かって真剣振り回したり龍砲ぶちかましたりするんだ? なあ、篠ノ之さんに凰さんよお?

 

「こりゃ会えんわ」

 

「かわいそうな一夏……きっと大変な目に遭ってる」

 

「ほんとに」

 

二人で憐憫の籠った目をする。かわいそ。

 

「佐藤はなんか用事あんの? ないんだったら二人で見て回ろうぜ」

 

「いやなんもない」

 

そう言いつつ何か大切な用事があった気がする。

パティシエの格好で生クリームを塗るような、とても大事な用事が。

 

「どこ見ても可愛い子しかいねえ。もう二~三人連絡先を聞いて帰るぜ俺は」

 

「不審者がいるって通報されるのがオチだぞ」

 

「やってみなきゃわかんねえだろ」

 

「通報先はさっきの女子生徒のところだけどな」

 

「……大人しくしときます」

 

「ご自由に」

 

五反田が持っていたパンフレットを見てどこに行くか相談する。

五反田は爆弾解体に興味を惹かれたらしい。実際に解体してみて、上手くできたらご褒美があるとのこと。

あれは正しい手順を踏まなければすぐ爆発するので初心者には難しいが、ここぐらいでしか経験出来ないので興味があるならぜひとも体験していってほしい。

 

「昼近いけどどうする?」

 

「うーん……ラーメンとかどうよ?」

 

「そんなのあったか?」

 

「えーっと」

 

拉麺の文字を探してパンフレットを覗く。

残念ながらその二文字はなかったが、代わりに飲茶の文字を発見した。

 

「二組って確か鈴がいるとこだよな……」

 

「凰さん? ああ二組だね」

 

「佐藤も鈴知ってんのか」

 

「有名だからな」

 

もっぱら生身に龍砲をぶち込むクレイジーガールとして有名だ。

他にも真剣で斬りかかったり、ビームやマシンガン撃ったりとクレイジーな人には事欠かない。魔境。

 

「昼ここにしね? 鈴にも会いたいし」

 

「別にいいけど、凰さんはそこにはいないぞ」

 

「え、でも二組だろ?」

 

「確かに凰さんは二組所属だが、今は一組にいる」

 

「……なんで?」

 

「さあ。一夏が一組だからじゃねえの?」

 

二人でもう一度一組を見る。並んでいる列を目で追い、階段下に消えていくところで目を離した。

 

「どっか適当なところで食うか」

 

「どこでもいいよ」

 

五反田の強い要望で取りあえず爆弾解体に向かうことにした。

 

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