明日の彼方に   作:紺南

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ワールド・パージ1

一夏に惚れてる面子に、更識簪と言う名前が追加されて数日が経った。

驚くことに二度目となる無人IS襲撃の動揺も治まり、戦いのせいで壊れたISをどうするか頭を悩ませ、なんか異様に回復早いからIS学園で何とかするわと言う結論に至って数日だ。

 

朝、教室に来てみれば早くも席についていた一夏はぐったりしていた。机に突っ伏してぐでっとしている。

周囲に目を向けるといつもの馬鹿五人はまだいない。珍しく一夏の周りが静かだ。珍しいこともあるもんだと、自分の席に座りながら声をかけた。

 

「どうした。朝からそんな死にかけて」

 

「……知ってるだろ……」

 

覇気のない声だった。死にかけの老人みたいな声。

昨日の疲れが残っている。一晩じゃ回復しきらなかったらしい。可哀想な奴だなと例のごとく思う。

 

「体位測定お疲れさま」

 

「……おう」

 

「誰が一番スタイル良かった?」

 

「知るか!」

 

声に覇気が戻った。

一夏に近寄らず、ちょっと距離を取ってひそひそしていたクラスメイト達の声が大きくなる。みんな顔を赤くしてチラチラと一夏を見ていた。

 

「誰がスタイル良かった?」

 

「聞くなよ!? なんで二回も聞くんだよ!?」

 

「誰がスタイル良かった?」

 

「三回目!?」

 

そう言う訳で、昨日一夏は身体測定の任に就いていた。

ISスーツを着る上で重要となる体位を測る役目だった。体位とはつまりスリーサイズのことだ。

一夏はクラスメイト全員の下着姿をメジャーで測定した。ここはIS学園なので、クラスメイトは俺を除いて全員女である。つまりはそう言うことだった。

 

「くっ……。どうして男の俺があんなことを……おかしいだろ、IS学園……」

 

「誰が一番スタイル良かった?」

 

「見てないから分かりません!!」

 

見てないらしい。目を瞑ってたのかもしれない。それはそれでうっかり変なところ触ってそうだ。でも見てないからって知らないとは限らない。

 

「測定したってことは数字は知ってるはずだろ。一番大きかった数字を言ってみろよ」

 

「……」

 

「いくらだ? 90か? 100はいたか?」

 

「知らん!!」

 

100なんて漫画ぐらいでしか知らない。エロ漫画ではよくその数字を聞く。カップにするとどれぐらいの大きさになるんだろうか。……F?

 

「まあ、大任お疲れ。今日は昼飯を奢ってやろう。元気出せよ」

 

「嘉神……ありがとう……」

 

なぜだか感動してる様子の一夏。昼飯奢るだけで大袈裟すぎる。

忘れているようだが、本来なら俺も一夏と一緒に体位を測るはずだった。逃げたから一夏一人でやることになったが。

誰だって逃げるよそんなん。むしろなんで一夏は逃げなかったのだろう。実はやりたかったとか? ……勇気あるねえ。

 

「そう言えば、お前近々倉持技研行くんだって?」

 

「え? ああ、うん」

 

突拍子のない話題の転換に、一夏は戸惑いながら頷いた。

倉持技研とは一夏のISの『白式』を作ったところ。この間の襲撃で『白式』も結構壊れたので、一度開発元に見せに行くらしい。

 

「一人で行くのか?」

 

「そのつもりだけど」

 

「誰か連れて行けよ」

 

「なんで?」

 

は? なんで?

まさか理由を尋ねられるとは思わなかった。言わないと分からないらしい。ならば言ってやろう。

 

「だって連れて行かないとうるさいだろ」

 

「誰が?」

 

「馬鹿五人が」

 

「誰だよ」

 

本気で言ってるんだろうか。

 

「いつもお前の周りにいる奴らだよ。つうか六人になりそうで怖いんだけど。これ以上馬鹿増やすの止めてくれない? 馬鹿製造機かよお前」

 

「だから誰のことだよ」

 

名前を言わないと駄目なのかと遠くを見つめた。

噂をすれば何とやら。馬鹿みたいに丁度いいこのタイミングで、前方の扉から凰さんが顔を覗かせた。

 

「なんか聞こえたわよ。誰が馬鹿ですって?」

 

「あ? 一人だけ2組が何の用だよ。ここは1組だぞ。即刻立ち去れ」

 

「一人だけ仲間はずれみたいに言うのやめなさいよ。いじめよそれ」

 

「生身に龍砲撃つのはいじめじゃないのか?」

 

「それは正当な報復行為ね」

 

「一夏。自分の行いを正当化してるあの馬鹿が五人の内の一人だ」

 

「なるほどな」

 

「何がなるほどよ! 納得すんな!」

 

吠えながらつかつかと歩み寄って来る凰さん。朝っぱらから元気だな。

 

「で、一夏。お前倉持行くなら馬鹿の内から誰か一人連れてけよ。誰でもいいから」

 

「なんで?」

 

「危ないから」

 

またぞろ無人ISが空から降ってきたらどうするのかと一夏を説得する。

それを聞いた凰さんが怒りを収め、真面目な顔で追随して来た。

 

「確かにそうね。あんた自分が世界で二人だけの男だって分かってる? 誰に狙われてるか分かったもんじゃないわよ?」

 

「実際に狙ってる奴が言うと説得力あるなぁ」

 

「あんたは黙ってなさい」

 

「酢豚」

 

「黙ってろって言ったでしょ?」

 

なんで知ってんの? と凄まれたが無視する。そこは俺と一夏の仲だからとしか言えない。

凰さんにメンチを切られ、全力で顔をそむける俺の正面で、一夏が頭を悩ませている。

 

「あー……でもなあ……」

 

「何よ。あたしが一緒だと嫌なの?」

 

「嫌って言う訳じゃないけど、でもみんなIS壊れてるだろ?」

 

うっ、と凰さんが言葉に詰まる。

この間の無人IS襲撃でそれぞれが小さくない損害を受けている。実際、二年生と三年生の専用機持ちは自国に持ち帰って修理した人もいるらしい。会長は知らん。

 

「今壊れてないのって嘉神ぐらいだろ」

 

「俺も壊れたが」

 

「でももう治ったんだろ?」

 

「よく覚えてるな。言わなきゃよかった」

 

普段の難聴鈍感はどこにいったのか。肝心な時に役に立たん。酢豚の約束みたいに変な解釈するか忘れてればよかったのに。

 

「……本当に治ったの?」

 

「いくらでも疑ってくれて構わないが、データは見せられないぞ。守秘義務があるからな」

 

「疑わしいわね」

 

この人にどれだけ疑われても屁でもないので無視する。

 

「で?」

 

「嘉神、俺と一緒に倉持技研に行ってくれるか?」

 

「いやだね」

 

「そう言うと思ったよ」

 

じゃあ一人で行くよ、と一夏が爽やかに笑った。

思惑混じりとはいえ、これだけ脅かされてそうやって笑えるのは、多分心臓が鋼で出来ているからだ。もしくは鈍感だから。むしろその方が納得できる。流石鈍感野郎。

 

「そうか」と相槌を打った俺を、凰さんが不満げに睨みつけている。

 

「別に行ってあげてもいいんじゃないの?」

 

「いやだね」

 

「なんで?」

 

「面倒」

 

「あんたっていっつもそれね」

 

はあと溜息を吐かれ、蔑んだ目で見られる。

うるせえなと心の中で毒づいた。

 

「倉持技研までどんぐらい?」

 

「電車とバスで二時間ぐらいかな」

 

「ISなら30分足らずでつくだろ。何かあったら通信で呼べ」

 

「サンキュー」

 

「礼はいらん。逆に何かあったら呼ぶから」

 

「修理中に呼ばれてもいけねえよ」

 

「必要なら第三形態移行(サードシフト)してでも来い」

 

「無茶言うなあ」

 

一夏のことだから、サードシフトまではしなくても無理は押して来るだろう。それが織斑一夏って男だ。

まあ、この間無人ISに襲撃されたばかりだし、早々トラブルもないと思う。あるとするなら一夏の方だ。一夏の行くところにトラブルが起きる気がしている。て言うか、一夏がいるからトラブル起きてるでしょ? 一夏がいるから俺もISなんて動かしちゃったんでしょ? そうなんでしょ? ねえ? 誰かそうだって言ってよ。この際篠ノ之束でもいいからさ。

 

「でも、もし何か起きても嘉神なら大丈夫だろ?」

 

「大丈夫なわけない」

 

「大丈夫だって。俺も嘉神にはたくさん助けられたし。自信持てよ」

 

「何言ってんだお前?」

 

一夏を助けた覚えなんてない。むしろ助けられた覚えしかない。

俺はいつだって一夏に助けを求めているが、一夏が俺に助けを求めたことなんてない。これからもないと思う。いや、もちろん女関係は除いてだけど。女に関してはクソ野郎だからなこいつ。

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

トラブルだ。

 

朝早くから倉持技研に出発した一夏を見送り、今日は静かな日になるかなと思っていたのも束の間。

突然真っ暗になった教室の中で、一夏に助けを求めるべきか悩む。

 

いくらIS学園でも停電ぐらいは起こり得るだろう。今まで散々ハッキングされて襲撃を受けているのだから、正直安全面では全然信用していない。変な誤作動があったとしても驚かない。

そう思っていたのだが、突然窓が塞がれるなんて思いもしていなかった。

 

しばらく待っても非常電源に切り替わらず、非常灯にも明かりはない。非常時に役に立たない非常灯とか何のために生まれてきたのか問いただしてやりたい。お前全く役に立たないぞと言ってやりたい。

 

一夏呼ぼうかなあと真剣に悩む。しかし、一夏が出発してからの時間を逆算すると、全く修理は終わっていないだろう。そんなの呼んだところで役に立たないし返って危険だ。でも呼んだ方が安心はする。どうすっかなー。

 

「……停電長くない?」

 

「うん……長い、よね?」

 

「なんで……窓に防御シャッターまで下りてるの?」

 

「……わかんないよ」

 

前の授業が合同講義だったこともあり、教室に人は少ない。大半はまだ廊下にいただろう。

しかし、その数少ないクラスメイトでさえパニックに陥りかけている。暗闇を手探りで進んであちこちぶつかり、人間同士でぶつかってもいるようだ。

俺はISを起動して暗視モードで周囲を確認できている。いつもの警鐘もないし、ISが勝手に集めている情報と合わせてもおかしな点は見つからない。

 

周囲の安全と自分の安全を確認したので、クラスメイト達のパニックを治めることにする。

 

「あんまり動くな。危ないから」

 

「あ!? か、嘉神君!?」

 

暗闇に向かって声を放った。

誰だか知らないが、不安を押し殺しきれていない声が返って来る。多分鷹月さん。

 

「ねえ、これどうなってるの!?」

 

「知らん」

 

「大丈夫だよね!?」

 

「知らん」

 

「え、私たち死んじゃうの?」

 

「死なねえよ」

 

基本は何も知らないが、悲観的過ぎる奴がいたのでそれだけは否定しておく。同じ調子で知らんとか言ったらとんでもないパニックになりそう。

 

「俺は専用機持ちだぞ。何かあったら守ってやるから、目が慣れるまで大人しくしてろ」

 

「でも」

 

がたんと机が揺れる音がした。

どこかで誰かが動いている。俺ごときの言葉は信用できないらしい。実際、もしこの場に篠ノ之束が現れたら土下座して命乞いするぐらいしか出来ないから、信用できないのは正しい判断だ。

 

だからと言ってパニックに陥られるのも嫌なので強硬手段に出る。ばんっと掌で机を叩き、龍砲のこととか真剣で斬られかけたことを思い出しながら、強い声音を意識して言う。

 

「動くな」

 

しんっと静まった教室の中で、誰かの息遣いだけが聞こえて来る。

目が慣れるまでの短い間、お互いの存在を示すのはその音だけだった。

 

「……あ、目見えてきた。そこにいるのは……癒子?」

 

「え、あ、静寐……」

 

「私もいるよ~」

 

「本音!?」

 

互いの存在を確認する儀式が行われる。

普段からの仲の良し悪しは関係なく、こんな状況ではそこに人がいると言うだけで安心できる。

 

全然気づかなかったが、のほほんさんもいたらしい。一切声は聞こえなかった。一人だけ静かにしていたようだ。さすがは会長の幼馴染。

 

「目が慣れたなら一か所に集まれぇ」

 

「わ、わかった……どこに集まったらいい?」

 

「そんなのどこでも……じゃあ、教室後ろの隅っこで」

 

窓に防御シャッターが下りているので外の様子は分からない。仮に攻撃を受けるとするなら、外か、あるいは廊下側。

学園のシステムが軒並みダウンしているのなら、誰であろうと侵入は容易だろう。

 

「お互いの位置と机とかに注意しながら少しずつ歩けよー」

 

椅子の上で背中を伸ばし、ついでに足も伸ばす。

暗視モードで全員を見ながら気怠げに言った。

 

全員が一か所に固まったところで、ようやくISを通して通信が入って来る。織斑先生の声だ。

 

『専用機持ちは今から送るマップの場所へ集合しろ。言わなくても分かると思うが、緊急事態だ』

 

通信越しに他の専用機持ち――主に一年生の声が重なった。

二、三年の専用機持ちは数が少ない上に修理のために帰国している人もいる。いつもの面子以外で集合できるのは会長だけかな。

 

「織斑先生。何するか知らないですけど、俺は行かなくてもいいですか?」

 

『その声は嘉神か。……強制ではないが、辞退すると言うことか?』

 

「はい」

 

俺と織斑先生の会話に口を挟んでくる奴はいない。俺は臨海学校の時も作戦には加わらなかったから、そう言う奴だと思われているのだろう。

 

『今どこにいる?』

 

「教室ですが」

 

『ならばそこにいろ。動くなよ』

 

「動きたくても動けませんよ。ドア開かないですし。防御シャッター下りてますし」

 

ISを使えば力づくだろうとなんだろうと手段はあるので言い訳だ。

しかし辞退を認められるのは意外だった。今、この学園で万全な状態でISを動かせるのは俺しかいない。

何のために鍛えてやっていると思っているとか、そう言うことを言われると思ったのだが。

 

「……IS使えるのは俺一人ですけど、大丈夫なんですか?」

 

『……ふっ。必要ない。必要があるようなら無理やりでも呼んでやる。それまで待機していろ』

 

織斑先生からの通信が切れる。

やる気がない奴は邪魔と言うことだろうか。あの鬼軍曹は意外と甘いからな。その甘さに甘えているのは俺の方だが。

 

腕を組んで目を瞑る。

変に心がざわついて、無意識の内に足を揺らしていた。

暗闇の中、ひそひそとクラスメイト達の声がして、のほほんさんが話しかけてきた。

 

「かがみーん」

 

「なに?」

 

「行かなくていいのー?」

 

「行きたくないからね」

 

「そっかー」

 

会話はそれだけ。のほほんさんの方から聞いてこない限り、俺から喋ることはない。

 

ISが勝手に集めている周囲の状況をウインドウとして視界に映し、周辺の安全を確認した。

廊下には多くの生徒が取り残されているが全員無事だ。大変なのはトイレに行くのに苦労するぐらいだろう。教室にいる奴は漏らすしかない。水とか使えるのかな。

この状況がいつまでも続くようなら揃って飢え死にするが、そこまで長くはかからないと信じたい。

 

織斑先生から送られてきたマップを開き、集合場所が地下であることを確認した。この場所からの最短経路も割り出し済みだ。

 

「ねえ、かがみん?」

 

「なに?」

 

「行ってもいいんだよ?」

 

「行きたくない」

 

「ほんとうにー?」

 

「どうせ碌な目に遭わないから」

 

今まで、IS学園に入学してからと言うものずっとそうだった。どうして俺がこんな目に遭うのだろうと、どれだけ世界を恨んだか。今となってはただの八つ当たりだと分かっている。

 

こうしている間も『紫電』が様々な情報を手に入れてくるが、地下の様子までは探れていない。IS学園のシステムがダウンしているせいもあるのだろうが、地下の機密性が妙に高い。どうやら学園の中でも特に独立したエリアのようだ。

 

「悩んでるねー」

 

「悩んでなんかないさ」

 

「うそつきー」

 

「本当さ」

 

つうかこの状況。俺は思いっきり当事者なんだが、こんなにのうのうとしてて良いのだろうか。

そもそも一夏がいない。放っておいても解決してくれるヒーローが不在だ。今から連絡をとれば30分で駆けつけてくれるかもしれないが、向こうが無事な保証がなかった。あっちとこっちで同時に仕掛けられていてもおかしくない。

 

試しにISを通して連絡を取ってみたが返事はなかった。修理中だからと言う可能性も大いにあり得るが、どうだろうか。

 

立ち上がり、扉を調べる。やはり電気が通っていないから壊すしかなさそうだ。防御シャッターも同様だろう。

 

頭の中で状況を整理する。

IS学園のシステムがハッキングを受け全てダウンした。

敵の数や目的は不明。

何よりも優先すべきは学園のシステムを復活させること。

そのために何をすればいいのかはわからない。

今、学園で万全な状態で専用機を動かせるのは俺だけ。

 

うん。誰がどう考えても行かないとダメなやつだ。

決断が遅いのはいつものことで、自分から危険に飛び込みに行くのは初めてなので殊更時間がかかった。

 

反省とかはしない。こんなトラブルは二度とごめんだ。

 

「じゃあ、俺行くから」

 

「おー?」

 

なぜか、のほほんさんの声に喜びが混じった。

「え?」と不安そうな声もあったが、それは無視する。

 

「いってらー。お土産買ってきてねー」

 

「土産はそこの電灯の明かりだな。安上がりでいいだろ」

 

「そうだねー。最高だねー。かっこいいなー、かがみんは」

 

「は? 目腐ってんのか? 一夏の方が万倍格好いいだろ」

 

「そうだねー」

 

同意も得られたので壁を壊しにかかる。

ISを腕部だけ部分展開して扉を殴打する。最初の数回はあえて加減して殴った。扉のすぐ向こうに生体反応がある。扉から離れさせなければいけなかった。

 

生体反応が離れたのを確認して扉を殴り壊す。

ぶっ飛んだ扉が反対側の壁にぶつかって激しい音がした。この音に反応して侵入者が動く可能性があったので、『紫電』が送って来る情報を注視していたがそれらしき反応はない。本当に、この辺りは安全のようだ。

 

廊下に出てみれば、取り残されていた生徒たちと目が合った。全員不安そうな顔で俺を見ている。

なんか声でもかけるべきかなとも思ったが、暗闇に目も慣れてるだろうし別にいいやと放っておくことにした。

そうして地下に向けて歩き始めたところ、背中に思いっきり突進を食らった。

 

「いったぁ!?」

 

「かがみぐぅん!!」

 

泣きべそをかいた知らない女子に襲われた。そして近くにいた奴らが集まって来る。揃いも揃って助けを求めていた。

 

「散れてめえら! 俺は一夏じゃねえぞ!」

 

「なにがどうなってんのぉ!!?」

 

「知るか! 離れろ!」

 

「助けてかがみぐぅん!!」

 

「離れろやぁ!!」

 

女子に襲われるのってどんな気持ちなんだろうと、一夏を見ながら考えたことがある。

実際に襲われてみて、一夏の気持ちが初めて分かった。知りたくなかった。こんな気持ち。

 

「かがみくんかがみくん、かがみぐぅん!!!」

 

「うるせえっ!!」

 

もしかしなくても、地下に行くまでこういうのを相手にしないといけないのだろうか。

そう考えるだけでとてつもない疲労感。

なんか、もう、行かなくていいかな……。そう思ってしまった。

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