……温かい。
心なしかお日様の匂いがする。
なんだかずっとこうしていたい気分なのだけれどそうも言ってられない。
スッと目が覚め、周りを見ると木造の家の中に私はいた。
そして、掛けられた布団で私は眠っていた。
おそらくここに住んでいる人が倒れていた私を助けてくれたのだろう。
「よく眠れたか?」
突然、声を掛けられたことに驚きバッと振り返るとそこには一人の青年がいた。
「悪い悪い。驚かせるつもりじゃなかったんだ」
「貴方がここまで私を?」
「ああ、そうだよ。しっかしお前見つけたのが俺で良かったな」
「? どういうことですか?」
「何だ? お前知らないのか? ここら辺はな村同士が対立していてよく戦が起きるんだよ。もし、敵さんに見つけられていたら捕虜、人質になるか、もしくは殺されてたかもしれないな」
「ーーーマジですか」
……この人が見つけてくれて本当に良かった。
殺されたとしてもおそらくは傷が再生するとは思うけど。
いくら再生すると分かっていても痛いからなるべくなら避けたい。
しかし、何故村同士が争っているのだろうか?
どこに行っても争いはあるんだな。
ふと青年の視線に気付いた。
「どうかしたんですか?」
「あ、いや、瞳が赤いからさ。珍しいなと思ってな」
「そうですか? でも、貴方も瞳が赤いですよ?」
「……俺は生まれつきなのさ」
「そうですか。しかし、何故村同士が争っているんですか?」
「ああ、互いに資源・食料を奪おうと躍起になってるのさ」
昔の弥生時代みたいなものかと一人納得する。
「俺は九重 蒼人。お前は?」
「私は朔夜です」
「そっか。苗字がないんだな? よろしくな、朔夜」
「こちらこそ九重さん」
「蒼人でいいよ。苗字で呼ばれるのなんか嫌なんだ」
「分かりました。よろしくお願いします蒼人さん」
「それじゃこの村を紹介して回るよ。もう立てるか?」
「大丈夫です」
こうして私は蒼人さんと出会った。
いろいろ回り家へと戻る。
驚いたことにここに住んでいるのは人間ではなく全員妖なのらしい。
それを聞いた時は口が塞がらなかったものだ。
そして、僅かな疑問が生まれる。
「蒼人さんはどんな妖なんですか?」
「ああ、そのうち、な」
「? 分かりました」
すこし曇った表情をして蒼人さんが言った。
それはなんだが悲しそうだった。
何かを一人で抱え込んでいる、そんな気がした。
けど、私は口には出さずに返事を返す。
蒼人さんはそのうちと言ったのだからいつかは教えてくれるはずだ。
「よし! 飯にするか。今日は焼き魚だぞ!」
「やった!」
この世界に来て三日目にしてやっと食事に有り付ける。
蒼人さんは魚に手早く串を刺していくと囲炉裏にそれを刺して火で焼いていく。
それを見ているだけでもよだれが出てきそうになる。
私ははやる気持ちを抑えてジッと魚を見つめた。
「よし、そろそろいいだろう。ほら、熱いから気を付けろよ」
「ありがとうございます!」
串を手に取りると香ばしい匂いが鼻腔をくすぐった。
少し息を吹きかけてから口へと運ぶ。
口の中に広がっていくこの旨味。
ただ焼いただけなのに塩が良く聞いているし身は大きく歯ごたえがいい。
前の世界ーー前世では絶対にこんなに美味い魚には出会えなかっただろう。
「美味いか?」
「ひゃい!おいちいです!」
「口の中に食べ物を入れて喋るなよ」
「す、すみません……」
ハハハと二人は笑った。
「本当に朔夜は何も分からないんだな」
食後、私と蒼人さんはこの世界について話していた。
知っているには知っているのだがまだコントロールが上手く出来ないのだ。
このまま使おうとすれば私の体や周りの人を巻き込む可能性があるからだ。
「そうか。それでこれからどうするんだ?」
「まだ、考えてないですね。でも、明日にはここを出ますから安心してください」
「いや、その、そのことなんだがーー」
「?」
首を傾げていると蒼人さんが口を開いた。
「しばらくウチに住まないか?朔夜さえ良ければ何だが……」
その提案に私は少し考える。
私のことを知るという点ではやはりどこかに身を置き調べる必要がある。
それに魔法を習うのに先生が欲しいところだ。
それらのことを考えて私は答えを出した。
「あの、お言葉に甘えさせてもらってもいいですか?」
「勿論だよ。よし、そうと決まったら今日はもう寝るぞ!」
「あ、私も準備手伝いますね」
「頼むよ」
数分で布団を敷き終え、二人は床についた。
すぐに蒼人さんの寝息が聞こえてくる。
きっと疲れているところを無理して村を案内してくれたのだろう。
最初に会えたのが蒼人さんで良かったな。
でも、なんでここまでしてくれるのだろう?
私と蒼人さんは数時間前に会ったばかりなのに、ここまでしてもらうことをした訳でもないのに。
そして、時折私を見て見せるあの悲しそうな顔ーー
気になってしょうがないはずなのに私の意識は眠りについていった。
身近ですね。時間が足りないなぁ……