††††
闇の中、幾多のモニターを夜行は眺めていた。
その背後に静かに忍び寄る影がある。
その影は夜行に目をくれることなく、横に置いてある邪神アバターのカードに手を伸ばした。
「私のカードに触るな!」
「ククク…なんだ気づいてたのか」
そちらを見向きもせずに夜行は一喝するが、影の男は笑いながら夜行の椅子に手をかけた。
「君の手癖の悪さは知っている…キース・ハワード」
夜行の背後に現れたのは、かつて決闘者の王国で城之内から参加資格のカードを盗み、デュエルでも
かつて全米チャンピオンだったキース・ハワード…
「フン…状況はどうだい大将」
「デシューツ・ルーが敗北した…」
そう言って夜行は一つのモニターを見つめる。
キースは面白くてたまらないといったように笑い声を挙げ、奴らなら難なく突破するだろうと嘯く。
「フン…キサマが集めた者共だろうに…それに倒したのは武藤遊戯でも、城之内克也でもない。例の機械騎士使いだ」
「…ほう…それは面白いな…」
夜行の言葉を聞いてキースは笑いを収め、モニターに映るルルーシュを睨みつけた。
††††
「やれやれ……。まさかここまで罠だらけとは…」
エントランスで遭遇したカードプロフェッサーは遊戯が当たっている。その間にここのセキュリティーを突破できればと思ったのだが、各ブロックのシステムは独立しているらしく、次のブロックへの扉を開くくらいしかできなかった。
しかもそこから先は何故かトラップだらけと来たものだ……。特に通路を丸ごと感圧センサーを仕込んだ落とし穴にしてあるとは恐れ入った。ここは一般企業のはずだが…。
さきほどセキュリティーを突破する際に手に入れた館内見取り図がなければ普通に進むにも一苦労だったろう。
後続の遊戯達には突破するためのメモを残してきたが、この先も続くようならさすがに面倒だ。
(っと…ここがセンターブロックか…)
この下層に関しては何故か見取り図でもブラックボックスだった。今度は何が仕掛けられているのやら…
「おやおや……まだ前のブロックで決闘が行われているはずですが……お早いお着きですね。機械騎士使いさん」
「カードプロフェッサーか……」
現れたのはケプラー線維の防弾服を纏い、強化プラスチック製のヘルメットを被った軍人風の男。
「私の名はカーク・ディクソンであります。先程からのトラップを看破されたことといい……なかなか侮れませんな、あなたは。他にもトラップは用意してありますが……」
そう言って無造作に決闘盤を構えた。
「あなたがいては全て無駄なようですね……ここで退場して頂きましょう」
「闘るしかないか……」
遊戯達が追いつくまでまだ時間はある。それまでにはケリをつける。
「「決闘!」」
「私のターン、ドロー。手札より『マシンナーズ・ギアフレーム』を召喚します!」
「マシンナーズ…!」
最近発表されたばかりの機械族テーマ。そしてギアフレームの能力は…
「召喚成功時にデッキから『マシンナーズ』と名のついたモンスター一体を手札に加えることができる。私は『マシンナーズ・フォートレス』を手札に加えます」
「ちっ…(やはりそう来るか…)」
フォートレスは最上級モンスターだが、容易な特殊召喚、蘇生効果を持っている。しかもサーチが容易というのだから性質が悪い。
「さらに手札から魔法カード『テラ・フォーミング』を発動します! デッキから『歯車街』を手札に加えます」
「歯車街…? まさか!?」
本来なら古代の機械デッキに搭載される生け贄軽減のためのフィールド魔法だが、もう一つ別の効果を持つ。それが…
「おや、もう見抜いてしまわれましたか。ならば遠慮は不要ですね。そのまま手札から『歯車街』を発動。さらに『古代の機械巨竜』を墓地に送り、『マシンナーズ・フォートレス』を特殊召喚!」
やはり『古代の機械巨竜』。歯車街の効果で呼び出せる、古代の機械巨人と並ぶ古代の機械最上級のモンスターだ。墓地にいようが蘇生できるため、フォートレスのコストにはうってつけだ。
「リバースカードを一枚セットし、ターンエンドです」
フィールドには下級のアタッカーと最上級モンスター…。伏せカードが一枚、さらにはフィールド魔法(破壊すると最上級が飛んでくる…)。
(やっかいな布陣だ…。しかしこの手札なら…)
好都合なことに相手がフィールド魔法を発動してくれた。
「俺のターン。ドロー。手札より魔法カードを発動する」
二体のモンスターがそびえ立つ歯車街から駆動音が響いた。せり上がるフィールド。崩れた足場に堪え切れず、崩落した街に呑みこまれるフォートレスとギアフレーム。
「こ、これは…」
「魔法カード『ブラック・リベリオン』…これでお前のモンスターは全滅だ」
フィールド魔法に依存するが相手のモンスターを一掃する禁止カード級の力を秘めたパワーカード。これでフォートレスの効果を発動させずに除去できた。だが、フォートレスの蘇生能力の高さは油断ならない。次のターンには復活してくるだろう…。機械巨竜もいるため油断はできないがこの好機を逃がすわけにはいかない。
「(ならば…)ここは一気に攻める! 手札から『第五世代 サザーランド』を召喚!」
機械族に対する戦闘破壊耐性を有するサザーランド。相手の伏せカードはわからないが単純な攻撃であれば次のターンは壁になれるはず。
「バトルフェイズ! サザーランドでプレイヤーにダイレクトアタック!」
「伏せカードオープン! 『サイクロン』! 対象は『歯車街』です」
吹き荒れる嵐が歯車でできた街を薙ぎ払う。その瓦礫から姿を現すのは墓地に眠っていた機械巨竜…
「くっ…サザーランドの攻撃は中止、メインフェイズ2において伏せカードを二枚出してターンを終了する」
「私のターン、ドロー。…確かそのモンスターは機械族に対する戦闘破壊耐性を持っていたはず…私の機械巨竜では倒せない」
初見であるはずの俺のカードを知っている事に軽く驚いたが、相手はKCのメインコンピュータを占拠しているのだ。俺の対戦データを流すことくらいは普通にできるだろう。
「ですがダメージは受けてもらいます。手札から『トレード・イン』を発動。機械巨竜をコストに二枚ドロー!」
手札の機械巨竜を墓地に送りながらのドロー加速。さらに引いた二枚を見てカークはにやりと笑った。
「さらに手札から『強欲な壺』発動! 二枚ドロー!」
さらに強欲な壺で二枚、合計三枚。これならばフォートレスを蘇生させるコストは十分だろう。
「『グリーン・ガジェット』を召喚し、効果により『レッド・ガジェット』を手札に加えます」
ガジェット…色の違うガジェットをそれぞれサーチし合う事でハンドアドバンテージの損失を抑えて戦う事ができる。手札コストで蘇生するフォートレスとの相性は抜群だ。
「手札にある『マシンナーズ・カノン』を墓地に送り、墓地からフォートレスを蘇生させます!」
フォートレスが復活し、二体の最上級モンスターが並ぶ。だが、サザーランドには戦闘耐性がある。過信は禁物だがこのターンは凌げるはず。
「バトルフェイズに移行します。機械巨竜で攻撃! その攻撃宣言時に速攻魔法『収縮』を発動! サザーランドの攻撃力を半減させます!」
「なっ!? これでは…」
サザーランド 攻撃力 1900 → 950
カークのモンスターの攻撃力の合計は3000、2500、1400の6900…。収縮を受けたサザーランドの攻撃力は950。
戦闘ダメージで俺のライフはゼロとなる。しかも機械巨竜の攻撃宣言時、俺は魔法罠カードを発動できない…。
サザーランドはなんとか持ち前の機動性を以て直撃を回避するが、超過した攻撃力分のダメージが俺を襲う。
「くぅ…っ(くそっ…ここは温存しておきたかったが…やむを得ん…)」
ルルーシュ LP 4000 → 1950
「続けてフォートレスで攻撃!」
「させん! 伏せカード発動!『ギアス ~取り戻した色、護るべき世界~』!」
サザーランドが再び回避し、その余波が俺に迫る。だが…
『みんなが僕を…忘れますように…』
俺が身につけていたのと同じアッシュフォードの制服を纏った銀髪の男が俺を庇った。
その声に込められたモノ……それは強く、優しい……悲しき願い……。
「ライ……」
俺の呼びかけにも、ライは決して振り返らない。
『未練はある……だから未練はない……』
その言葉を最後に、ライの姿は溶けるように消え去った。
「ありがとう…ライ…。『取り戻した色』の効果により俺はこのターン、戦闘ダメージも効果ダメージも受けない!」
これでこのターンは凌いだ。
「ふむ…ではカードを壱枚伏せてターンを終了します」
「俺のターン、ドロー。サザーランドを生け贄に捧げ、『第七世代 紅蓮弐式』を召喚する!」
この状況で打てる手がほとんどない。しかしそれは相手も同様だ。残されている手札は『レッド・ガジェット』のみ。問題はあの伏せカードだ。だが最低でも機械巨竜には退場してもらおう。そのための紅蓮だ。だが…
「……どうしたカレン…?」
微かにカレンの動きに違和感がある。どこか背後を気にするような…
「……ライ、か…」
プレイヤーである俺は影響を受けていないが…カレンには先程ライが使ったギアスによる影響が出ているのだろう。
「…紅蓮の効果発動! 手札一枚をコストとし、フィールド上のモンスター一体を破壊する。対象は機械巨竜だ」
「それはこちらもさせません。伏せカード発動!『禁じられた聖杯』!」
「っ!!」
禁じられた聖杯、禁じられたシリーズの一つにしてモンスター効果を無効化し、攻撃力を上昇させるカード。
紅蓮の右手から迸ろうとしていた赤黒い閃光が聖杯から溢れ出た聖水を浴びて瞬く間に消え失せる。紅蓮は効果を使用したターンは攻撃できない。この制約がある以上紅蓮はもう動けない…
「危ない所でした…。その紅い機械騎士があなたのデッキのエースという訳ですか」
尤も私の機械巨竜と比べると些か貧相ですが…とカークはニヤリと口の端を歪める。
「言ってくれるな…貴様なんぞに共に戦った仲間たちを否定される謂れはない!」
そう言って俺はカークを睨みつける。見せてやろう…俺のデッキに眠る仲間たちとの絆を…
約一年ぶりの更新です。引用部を減らし、カークのデッキ、決闘構成を再構築していたらいつの間にやら一年過ぎていました。続きもそれほど時間をかけずに投稿できる……かもしれません。
それでは読んでくださってありがとうございました。