「……紅蓮は効果を使用したターン攻撃できない。俺はこのままターンを終了する」
残りの手札はガウェインのみ…。逆転を期するには次のドローに賭けるしかない。
「私のターン、ドロー。バトルフェイズに入ります」
「待て。メインフェイズ終了時に伏せカードを発動する。罠カード『強制パージ』」
機械巨竜の効果で攻撃宣言時は罠カードが発動できない。だが、メインフェイズなら話は別だ。
「効果を無効にし、このターン紅蓮は戦闘では破壊されない」
その代償として破壊を回避するたびに攻撃力が500ずつダウンするが…
「最後の足掻きですか…。バトルフェイズです。機械巨竜、フォートレスで攻撃!」
紅蓮は機械巨竜の突進を右腕で止める。輻射波動を起動させる間もなくフォートレスの放つ砲撃が胸部の装甲を抉る。そのまま押しつぶしにかかる機械巨竜に対し、紅蓮はハーケンを放ち逃れる。続けて砲撃しようとするフォートレスに対して紅蓮は破損した右手をパージしてぶつけることで追撃を防いだ。
紅蓮弐式 攻撃力 2500 → 2000 → 1500
「くっ…」
ルルーシュ LP 1950 → 1450 → 950
「残されたのは攻撃力1500ですか……。『グリーン・ガジェット』は守備表示に変更。ターン終了です」
「俺の…ターン…。ドロー! っ! 手札を一枚墓地に送り『フジ鉱山 ~サクラダイトの採掘~』を発動! デッキから三枚ドローする」
戦略物資のサクラダイト。それは決闘での手札に相当する。
(この手札なら……)
「起死回生のカードは引けましたか?」
カークは余裕の笑みを崩さない。
「俺は伏せカードを二枚伏せて紅蓮を守備表示に変更し、ターンを終了する……」
「クハハ……守りを固めるだけで精一杯ですか。傷ついたエースを残して……」
カークは口の端をつり上げた。
「私のターン! ドロー」
「スタンバイフェイズ時に伏せカード発動! 『ギアス ~絶対停止の結界~』!」
俺の隣にアッシュブラウンの髪をもつ少年、俺の弟-ロロ・ランペルージの姿が現れる。
「ロロ!」
『うん、兄さん!』
ロロの右目にギアスの紋章が浮かび上がり、紅い半球状の結界がカークのフィールドを覆い尽くす。
ルルーシュ LP 950 → 475
「絶対停止の結界の中では次のターン終了時までモンスターの召喚、特殊召喚、効果の発動及び魔法・罠カードの発動、セットをすることができない」
「それが今さら何になると言うのです! 機械巨竜で紅蓮を攻撃!」
機械巨竜の巨体が今度こそ紅蓮の機体を押しつぶそうと迫る。
「伏せカード発動!『双璧の絆』!」
襲いかかる機械巨竜と満身創痍の紅蓮の間に蒼い影が割って入った。その左腕から迸る紅い輝きがフィールドを照らし、機械巨竜を押し戻す。
「俺のデッキのエースはカレンだけではない!」
輻射波動腕はその負荷に耐えきれずに砕けるが、蒼い機体-蒼月は紅蓮を守りきった。
『……ラ…イ…?』
『カレン…遅くなってすまない……』
互いに失った腕を庇いあうように寄り添う二騎。
『ホント…ホントに遅すぎるわよ! いきなりいなくなったりして……私が…私達が……どんなに…』
『ゴメン……』
「ああ…うん。二人ともすまないが惚気るのは後にしてくれないか……」
というか戦いの最中にいちゃつくな。周囲の迷惑も考えてほしいのだが…。
『っ! り、了解しましたゼロ!』『すまないカレン。でも今は戦う時だ』
紅蓮弐式 ATK 1800 DEF 2300
蒼月トークン ATK 1800 DEF 2300
俺のフィールドに黒の騎士団の双璧が並び立つ。
「それでどうするつもりです? 攻撃力は機械巨竜はおろかフォートレスにすら届いていない。自慢の効果も無効化された状態では私の機甲軍団を打ち破ることなどできはしない!」
確かに紅蓮、蒼月共に輻射波動腕は破壊され、攻撃力も低下している。だが……
「フ……騎士団の双璧の前お前ごときが立ち塞がるなど……周りをよく見るがいい」
「なっ…これは…」
周囲を囲むのは青き大海、上空には黒煙を棚引かせて墜落していく艦艇の姿が見える。
そこから落下してくるのは右腕を失っている紅蓮だ。
『弐番垂直発射管解放、蒼月天翔式発艦!』
俺のいる潜水艦のハッチが開き、蒼く輝く飛翔滑走翼を煌めかせて新たな蒼月―蒼月天翔式―が姿を現す。一直線に上昇した蒼月は中空で紅蓮を受け止めた。
『三番垂直発射管解放、紅蓮弐式本体との接続信号を確認』『続けてぇ、徹甲砲撃右腕部!』
蒼月から離れた紅蓮は飛翔滑走翼を装備し、新たな右腕を得て生まれ変わる。外層が剥がれ、飛翔滑走翼から紅い光を瞬かせ、紅蓮可翔式は蒼月の左に並んだ。
紅蓮可翔式 ATK 3300 DEF 2800
蒼月天翔式 ATK 3300 DEF 2800
「くっ…翼を得たという訳ですか…」
カークは先程までの表情を一転させ、焦りの色を浮かべた。
「ですがフォートレスには戦闘破壊された時、相手フィールド上のカードを一枚破壊できる。少々惜しいですがこのままフォートレスには自爆してもらいます」
「それはどうかな?」
「なにっ!?」
確かに絶対停止の結界はフィールド上にしか作用しない。したがって墓地で発動するフォートレスの戦闘破壊時の効果は無効化できない。だが……
『輻射波動左腕部、輻射波動腕右腕部に接続!』『共鳴機構正常稼働、いつでもいけるわ!』
紅蓮と蒼月、その最大の武器である輻射波動。それを放つ双璧の両腕がまるで一つの巨大な手のように繋がった。
『『輻射共鳴波動砲弾甲…行っけえっ!!』』
紅い軌跡に機械巨竜が、フォートレスがガジェット共々呑みこまれる。
「紅蓮可翔式の効果の一つは特殊召喚時に相手モンスターを三体まで破壊する。さらに蒼月も同様の効果を得る」
紅蓮一体でも相手のフィールドを切り崩す事は容易い。その上蒼月もいるのだから相手のフィールドには何も残るまい。
『たとえどれだけ敵がいようと…』
『私達双璧なら!』
紅い輝きに呑まれたモンスターは膨張し、爆発四散した。
「ば…馬鹿な…私の…私の…最強の機甲部隊が…」
爆炎の晴れたカークのフィールドにはモンスターはいない。さらに絶対停止の結界の効果で壁モンスターの召喚も、カードを伏せる事もできない。
「覚悟はいいな? カーク・ディクソン! 俺のターン…」
引いた手札は確認しない。するまでも無い。
「ライ! カレン!」
『『了解』』
紅蓮と蒼月は飛翔滑走翼から紅と蒼の粒子を撒き散らしながらカークへと迫る。
『『双璧を舐めるなぁ!!』』
右と左、紅蓮と蒼月それぞれの腕から輻射波動砲弾がカークを襲う。
『兄さん…』
「よくやったロロ…。俺の勝ちだ、カーク・ディクソン」
俺の隣でロロが微笑み、その姿が消えていく。
パラパラ…カツンッ…
カークはショックでカードを取り落とす。その中にはこのフロアのカードキーも含まれていた。
「さて…カーク。俺の仲間を愚弄した罪…贖ってもらおう…」
呆然として膝をつくカークを睨みつける。
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる…『お前は自らの仕掛けた罠の中で最も苦しむ罠にかかり、脱出せずに救助されるのを待て!』」
左のコンタクトを外した瞳から赤い鳥が飛びだし、カークの目に飛び込む。
「…イエス・ユア・マジェスティ!!」
頷いたカークの瞳は赤く縁取られていた。
立ち上がったカークはわき目も振らずにダストボックス目掛けて歩いていく。
ピッ! ガコンッ!
「………」
スイッチを踏んだ途端、床板が跳ね上がり、カークの身体はダストボックスへ放り込まれた。
「ゴミ箱とはな…」
パタパタと揺れるゴミ箱のふたを見ながら呆れを込めて呟く。カードに紛れて落ちていたカードキーを拾い上げた。