TURN 4 日常と回顧
「ありがとうございました。またお越しください」
会計をして一段落した店内を見て俺は椅子に腰を下ろした。
「盛況のようじゃな、ルルーシュ」
「あ、双六さん」
住居スペースの方から双六さんが顔を出した。
「うむうむ、慣れたもんじゃのう。だが双六ではなく…」
「あ、えっとわかったよ、じーちゃん」
そう言われて、言い方をなおす。既に居候して一カ月になるのだが未だにこれだけは慣れない。
「ほれ、休憩じゃ」
そう言ってじーちゃんはお茶と和菓子を持ってきてくれた。
「いただきます」
しばし、お茶を啜り菓子を頬張る。和菓子の甘さと玉露の香りのコンビネーションが絶妙だ。
「しかし、随分と手際がいいのう。以前もこんな仕事をしたことがあるのかね?」
じーちゃんは俺がつけた帳簿をチェックしながら感心したように聞いてきた。
「ええ、二週間のうちに色々とバイトを転々としたことがあって…」
あの時は緑の髪の魔女にさんざん邪魔されたんだったな…
こみ上げてくる懐かしさに思わず目頭が熱くなった。
「ルルーシュ?」
心配そうにじーちゃんが声をかけてきた。
「(いけない。泣いたらここまで世話してくれてるじーちゃんに失礼だ…)なんでもないです。しかし店番をしていて思ったんですが、随分と女性客が多いですね…決闘者は女性も多いんですか?」
カードショップというから若い男が多いだろうと思っていたのだが、予想に反してやってくるのは女子高生や若い女性が半数以上を占めている。
中にはどう見てもキャリアウーマンにしか見えない人もいたから驚いた。
「いや、普通の決闘者は圧倒的に男性が多いぞい。普段ならうちの客も男が多いんじゃが…」
軽く苦笑しながら帳簿を閉じるじーちゃん。そして俺を見ながら呟いた。
「そうじゃ、この機会に新しい企画でも始めてみるかの」
そう言うじーちゃんの顔はどこかいたずらをする子どものように輝いていた。
ゾワッ
その笑みに俺の中で警報が鳴り響く。これはアレだ…ミレイ会長が碌でもない企画を考えた時と同じ笑みだ…
「ルルーシュ、パソコンは使えるのかね?」
「え…ええ。一応使えますが…」
「じゃあ、時間がある時でいいからポスター用の下書きを作っておいてくれんか?こんな感じで」
そう言ってじーちゃんはメモ用紙にざっとしたレイアウトを書いて渡してきた。
「いいですけど…何に使うんですか?」
「ホッホッホッ! 秘密じゃ!!」
そう言ってじーちゃんは部屋の中へ引っ込んで行った。
††††
カランカランッ
「いらっしゃいま…「ただいま~」おかえり遊戯」
「「「お邪魔しま~す」」」
「みんなも来たか」
入ってきたのはお客ではなく遊戯とその友人達。城之内克也、真崎杏子、本田ヒロトだ。
「ルルーシュ! 今回こそは勝たせてもらうぜ!! 決闘《デュエル》だ!!」
早速デッキとデュエルディスクを起動させようとする城之内。
「待て城之内。今みんなにお茶を持ってくるから」
「あ、それなら私も手伝うよルルくん!」
奥の住居スペースに通すと杏子はそう言って手伝いを申し出てきた。
「っ…ああ、すまない頼めるか? 遊戯、お前も手伝ってくれ」
「もちろん!!」「あ、うん!!」
未だに杏子からルルと呼ばれるのは慣れない…
過去の世界、自分を護るためにギアスという名の力に翻弄され、その命を散らせた少女、シャーリーのことを思い出さない訳にはいかないから…
††††
「バトルフェイズ!! ヴィンセント・ウォードでダイレクトアタック!!」
「どわぁぁっ!!?」
青いヴィンセントの
「はい、これでルルくんの四勝目」
「毎回やられるの早くなっていってないか?」
「ウルセー本田! お前は黙ってろ!!」
「まあ、仕方がないのもあると思うぞ? 城之内のデッキは戦士系。俺のグラスゴー相手には問答無用で破壊されるからな」
実際、今回のデュエルで城之内が切り札として召喚した『ギルフォード・ザ・ライトニング』はグラスゴーの効果一発で墓地送りになってしまった。
哀れギルフォード…思わず俺はコーネリアの専任騎士だったギルバート・G・P・ギルフォードを思い出した。
「ただ、その驚異的ギャンブル運
最初の時に『時の魔術師』を使われて、フィールド上の全ナイトメアがエナジー切れになった時は本当に焦った。
大体こういうギャンブル系のカードを作戦に組み込み、ほぼ確実に成功させるとは…
ある意味最強であると言えるかもしれない。
「で? 今日来た本題はなんだ? わざわざ決闘のためだけに来たわけじゃないだろ?」
俺はデュエルディスクを外して、自分の席について紅茶に口をつける。
「あ、うん。今度うちの高校で文化祭があるんだけどさ。それで相談に乗ってほしくて…」
「文化祭?(こんな中途半端な時期にか?)どんなことをするんだ?」
「普通の日本の高校の文化祭だよ? クラス展示やったり各部活でイベントやったり」
やることはアッシュフォード学園と変わらないか…
「ルルくんの学校はどうだったの?」
「俺の学校は会長がお祭り女だったからな。イベントのネタには事欠かなかったよ」
俺は苦笑と共にそう言った。
「どんなことをやったんだ?」
「そうだな…巨大ピザ作りとか失恋コンテストとか。あまり言いたくはないが男女逆転祭なんていうのもあった」
城之内の問いにいくつか具体例を出してみる。
「何それ?」
「そのままの意味だよ。一日男が女装し、女が男装して生活するというイベントだ」
俺にとっては軽くトラウマものだが…
「それいいかもね!」
「「「ええっ!?」」」
それを聞いて乗り気な杏子に遊戯、城之内、本田の男子勢はドン引きだ。
「だから、うちのクラスは喫茶店をやろうかってことになってるじゃない? けど普通じゃつまらないし、女子が執事、男子がメイドの格好で給仕するの!」
「さ、さすがにどうかと思うぞ?」
俺は関係ないので適当に流してもいいのだが、遊戯達からなんとか止めさせてくれというメッセージを受け取ってなんとか止めさせようと言葉を紡いだ。しかし…
「できたぞいルルーシュ!! お。おかえり遊戯」
飛びだしてきたじーちゃんに俺の説得はさえぎられた。
「ただいまじーちゃん! ねぇ、何ができたの?」
「ふっふっふ…これじゃ!!」
じーちゃんが自慢げに突きだしたのはさきほど俺が作ったポスターの下書きの完成品。
「ちょっと待て」
「なんじゃルルーシュ?」
思いっきり疑問顔なじーちゃんに全力で突っ込みたいのをぐっと堪えて俺は冷静に言い放った。
「何なんですか『ルルーシュ先生のデュエル講座』って!?」
「いや~、せっかく女性客が増えたんじゃ。これを利用しない手はあるまい。杏子ちゃん、宣伝よろしく頼むぞい!」
問答無用で杏子にまで宣伝を頼むじーちゃん。これはあれだ。確実に俺を広告塔にするつもりだ。
「任せて! クラスの女子にも人気なんだよ!」
しかも杏子は何かとんでも無いことを口走っていなかったか?
(クラスで話題になっているだと? まさか女性客が多いのはそれが原因か?)
俺は客の中に杏子と同じ童実野高校の制服を着た人間がいたのを思い出した。
「ちょっと待て!」
結局、この後デュエル講座を行うことを承諾させられてしまった。
さらにこのゴタゴタで忘れていたが、杏子が提案した男女逆転喫茶は無事にクラスを通過し、現実してしまったらしい。
しかも笑えないことにこっちの世界でもそっちの方向に目覚めた奴が何人かいたらしい。