お待たせして申し訳ありません。
「…なんなんだ…これは?」
俺は住居スペースから店舗スペースを覗きこんで絶句した。
店内は今日のデュエル講座の参加者でごった返していたからだ。
「大盛況じゃな…計算どおりじゃ!!」
背後からじーちゃんの声が聞こえた。
「まさかこれだけの人が集まるとは…」
そういえば会長から出汁にされた時もこれだけ人が集まっていたか…
「さて今日は頼むぞい。ルルーシュ先生!」
思わず遠い目をしているとそう言われて住居スペースから蹴りだされた。
「うぉ!?」
突然のことで堪え切れるはずも無く大勢の客がいるところに押し出される。
視線が…特に女性客からの視線が俺に集中する。というか女性しかいないんじゃないか?
「コホン…本日はお集まりいただきありがとうございます。いまからデュエル講座を開講します」
俺はそう言って机を並べた店の一角に参加者を誘導する。
「まずは皆さんのデッキを確認したいので各自配ってある用紙にデッキレシピを記入してください」
しばらくは紙とペンを動かす音だけが響いた。
「終わった人から各自で提出してください」
ちらほらと書き終わった人が出始めたのを見てそう告げた。
―――
「…………ふぅ…」
うん。ひとまず確認したいことが一つあるな…
「え~…一つ確認したいんですが…」
ぼぉ~っとこちらを見ていた生徒の皆ははっとしたように小さく首を振った。
「この中でデュエル未経験の方は手を挙げてください」
デッキレシピを見る限り、実戦にそのまま使えそうなデッキは一つも無かった。二十人近い参加者がいるのに…
よくて非実戦向けのファンデッキ、ひどいと完全に寄せ集めてきましたオーラが出ていた。
教室となった店の一角は完全に沈黙に支配されている。
「…あの正直に挙げてください。そうしないと今後の方針に差し支えるんで…」
その言葉に促されるようにポツリポツリと手が上がり始め…
最終的には参加者全員が挙手するという有様だった…
「…~~っ…わかりました。では、まずデュエルの基礎的な流れと、各フェイズの説明。それからデッキ構築の基本から入りましょう」
俺は溜息を押し殺して、事前に立てていた授業計画の大幅な見直しを頭の中で開始した。
††††
-二カ月後-
「先生~! 調整が終わったんで見てもらってもいいですか~?」
「了解。たしか巻さんのコンセプトは悪魔族デッキだったよね?」
そう言って俺は金髪の女子中学生からデッキレシピを受け取る。
「は~い、そうです~」
最初にデッキを見せてもらったときはバランスがめちゃくちゃで、とりあえずかき集めてきましたオーラがバンバン出ていた。
そのくせ家の店でも滅多に取り扱ってないレアカードがふんだんに取り入れられていたのは何故だろうか?
「うん。問題無いと思うよ。主軸モンスターはエンド・オブ・アヌビスかな?」
「ええ。前回のテストデュエルでも重すぎるって感じたから少し重量級のモンスターを減らしてみました」
この二ヶ月間で参加者は大きくデュエリストとして成長した。
「ルルーシュ先生! 調整が終わったんで最終チェックお願いしていいですか?」
「ちょっと待ってくれ…えっと、鳥居さんは天使系デッキだったかな?」
こちらも成長株の一人、先程の巻さんの親友らしい鳥居さん。
使っているのは対になるかのように天使族デッキ。それも光属性だけでなく闇属性の堕天使も含めた重量級デッキだ。
「…うん、理論上は問題なさそうだね。後は実戦で問題点を洗い出していった方が早い」
ちょうど今日はその実戦の機会がある。
「どうじゃルルーシュ? 一段落ついたかの?」
「ええ。みんなデッキの調整はすんだみたいです」
今日の亀のゲーム屋はデュエル講座の生徒以外でもごった返していた。
「うむうむ。それではいよいよ亀のゲーム屋主催のデュエリストレベル認定大会を始めるぞい!!」
じーちゃんがデュエリストレベル認定大会の開幕を告げる。
「「「お~~~っ!!」」」
「おっしゃー!! ぜってー遊戯と同じレベル8になってやるぜ!」
城之内が他の参加者一と緒に雄叫びをあげる。
「それでは今大会のルールを説明したいと思います。基本的には組み合わせは自由。ただし一度対戦した相手とは対戦できません。そしてこの大会では海馬コーポレーションが貸し出したこのデュエルテーブルでデュエルしてもらいます」
デュエルテーブルにカードをセットするとソリッドヴィジョンシステムが発動し、モンスターが実体化した。
対戦成績や戦略が自動的に海馬コーポレーションに送られ、デュエリストレベルが判定される。
このデュエルテーブル、設置から配線まで昨日のうちに全部俺がやらされたんだが…
「さらにここからは亀のゲーム屋だけのサービスとして…今回、男女別に一番優秀だった者はここにいる遊戯やルルーシュとデュエルができるぞい!!」
「「「おおっ!!」」」
「「ぶっ!?」」
じーちゃんの言葉に俺と遊戯は思わず吹き出した。
「先生とデュエル…」
「絶対に…負けない!」
「私が…勝つ!!」
(な、なんだこれは…?)
女性決闘者達から今までにない気迫が感じられる。
「ちょ、ちょっと待て!」
俺は遊戯と同じように店から飛び出した。
「~っ! 相変わらずだな、じーちゃん」
「まったくだよ。ボクらを店の広告塔にするつもりだね!」
「とりあえず大会が終わるまではゆっくり…ん? 遊戯、あの子たちは?」
そんなのもう一人のボクも絶対反対するはずさ!と憤慨する遊戯をなだめていると窓の外から店内を覗きこんでいる数人の決闘者と思しき客が目に付いた。
「あれっ? どうしたんだろ? ねぇ君達! ボク達はこのゲーム屋の者だけど…」
「い…今すぐ…この大会を中止してください!!」
グループの中でも中心的な存在であろう少年が叫んだ。そうしないとこの店が潰されると。
「え~~っ!?」
「どういうことだ? 説明してくれ」
遊戯が思わず驚いた声をあげる。気持ちはわかるが、まずは状況を把握しなければ…
「はい…ボク達…隣町でデュエリストを目指してました…ところが…」
その少年達から伝えられた情報。客からレアカードを奪い、店から上納金を巻き上げる…
「ストア・ブレイカーか…」
「知っているのかルルーシュ?」
思い当って名を呟くとそれに遊戯…いや、ファラオの遊戯か…が反応する。
「ああ、カードショップの組合から要注意人物として挙げられていた奴らの中にそう呼ばれていた奴がいる」
「なら話は早いです。この大会を中止して…」
少年はそう求めてくるが…
「悪いがそうもいかない。この大会はうちの生徒の最初の大会でね。そんな腐った奴らのために中止したくないんだ…」
「でも…それじゃあ」
少年たちは表情を曇らせる。
「忘れたのか? こっちには『生きた伝説』と呼ばれる決闘王がいることを?」
そう言って俺は遊戯を示す。
あいつらにギアスをかけて今後一切デュエルの出来ない体にしてやってもいいのだが、カードショップに寄生するようなクズにはギアスを使う価値も無い。
ここは正攻法で叩き潰すのみだ。
「安心しろ。オレがまとめてケリをつけてやる」
遊戯も同意見なのか即座に請け負ってくれた。
「遊戯…行くぞ」
「ああ」