遊戯王 反逆のルルーシュ R   作:朧月琥珀

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これでストアブレイカー編は終了です。
次からいよいよ本編を進めていきたいと思います。
が…引用部分が多すぎるので改訂作業を行いますのでしばらくかかると思います。


TURN 7 召喚 ~二体の白騎士~

(何なんだこいつは?)

 

 見たこともないカード群、聞いたことのない効果…

 まるで一つのオリジナルデッキが構築されているかのような…

 常に敵にとって最悪のアンチデッキを用い、優位な戦いを経験してきた百野は未知のデッキに恐怖の念を抱き始めていた。

 それを象徴するようにルルーシュの両脇に控える黒の騎士団の双璧。

 

(だが、このカードさえあれば…)

 

 悪夢<ナイトメア>という言葉から予想した通り、相手の主力モンスターは闇属性。

 このデッキにある切り札の前では為すすべも無く滅びるしかない。

 

「私は二枚伏せカードを出し、ターン終了だ」

 

††††

 

「俺のターン。ドロー(クレパールは攻撃表示のままか…)」

 

 相手の場には伏せカードが二枚。

 明らかに誘っている…しかし、紅蓮が効果破壊されない今は…攻める!

 

「バトルフェイズに入る。紅蓮でクレパールを攻撃!」

 

 紅蓮が再び間合いを詰め、その右腕を伸ばす。

 蒼月も紅蓮の背後を守るようにそれに続く。

 

「伏せカード発動! 魔法カード『分散プリズム』!」

 

「!?」

 

 紅蓮の右腕に捕らわれたクレパールが半分の大きさに縮小し、その脇にもう一体同じような大きさのクレパールが現れた。

 

「分散プリズムによってクレパールはキサマのモンスターと同数に分裂する!」

 

 クレパール×2 ATK 1100 DEF 900 

 

(何を企んでいる?)

 

 分裂して現れたもう一体のクレパールは、即座に蒼月が左腕の輻射波動腕で捕らえた。

 紅蓮の右腕と蒼月の左腕から紅い輝きが迸り、二体のクレパールは一瞬の膨張の後に爆発四散する。

 

「二体のクレパールを撃破! これで…」

 

 これで相手のフィールドは伏せカード一枚を残してガラ空き。

 先程の攻撃時に発動しなかったことからその伏せカードもブラフである可能性も高い。

 ライフも風前の灯だ…

だが…

 

百野 LP 600

 

「くくっ…クハハハ…」

 

「何がおかしい?」

 

 そのような状態で百野は笑いだした。

 

(絶望のあまりネジが飛んだか? それとも…)

 

「ククク…教えてやるぞ…私の手札にはフィールドのモンスターが二体同時に破壊された時に特殊召喚されるモンスターが潜んでいる…」

 

「なっ!?…(そうか…だからわざわざ…)」

 

 普通「分散プリズム」を使うなら守備表示のモンスターに使用するはず。

 だがあの局面では、守備表示にすると蒼月か紅蓮の効果で破壊され、召喚条件を満たさないから敢えて攻撃表示にままにしていたのだ。

 

(そしてその召喚条件…ならば)

 

 俺は保険のために伏せていたカードを見やる。

 

「確かにキサマのデッキはまさに悪夢のようなデッキだったよ…だが…私の光が闇を掻き消す!!」

 

 思わず目を覆わずにはいられないほどの閃光が百野のフィールドに現れる。

 

「伏せカード発動!!」

 

 俺はディスクを翳して光を凌ぎながら伏せカードを発動した。

 

「光の絶対支配者 テュアラティン召喚!!」

 

 光を纏った白い絶対天使が百野のフィールドに降臨する。

 

「このテュアラティンの前では闇属性モンスターの存在は許されない! よって、キサマのモンスターは全滅…」

 

 そこまで言って俺のフィールドに二体のモンスターがいるのを見て、百野は絶句する。

 先程までと比べると比較的スリムな、より人型に近い白い機械騎士。

 

「何、故…?」

 

 二体の機械騎士は大まかには同じデザインだが、一方は金のカラーリング、もう一方には青いカラーリングに大きな角が生えていた。

 

「伏せカード『悪逆皇帝の即位』! 自分フィールド上の闇属性モンスターを同レベルの光属性モンスターと入れ替える!」

 

 テュアラティン召喚の際に、この効果によって紅蓮をランスロットと、蒼月をクラブと入れ替えたのだ。

 

「バカなっ!? 例えそうだとしても一体はトークンだったはず…」

 

「確かにトークンはフィールドを離れると破壊される…」

 

 そう言って俺は青い方の白兜、クラブをみやる。

 

「だがこいつは例外でね…デッキより『第七世代 ランスロット』、『幻の機体 ランスロット・クラブ』を特殊召喚!」

 

『第七世代 ランスロット』 ATK 2600 DEF 2200 

『幻の機体 ランスロット・クラブ』トークン ATK ? DEF ?

 

ランスロットは刀身が赤く輝くMVSを構え、ランスロット・クラブは腰に提げていたライフルを構える。

 

「最後に一つ教えてやろう。俺のデッキの『ナイトメア』は“Nightmare”(悪夢)ではない…」

 

「な…」

 

「我がナイトメアは“Knight mare”(騎士の馬)騎士の愛馬たるモンスターだ」

 

 当然、闇属性で統一させているわけではない。

 闇属性デッキと予想した百野の読みは完全に見当はずれもいいところである。

 もっとも俺が意図的に闇属性モンスターしか使わず誘導した側面もあるが…

 

「この二体は光属性…キサマの切り札の前でも揺らぎはしない」

 

 二体同時破壊で特殊召喚される…この条件に合致するのはテュアラティンしかいない。

 一通りのカードデータを把握している俺にしてみれば対策を考えるなぞ造作もない。

 

(『ランスロット・クラブ』…このもう一体の白兜のパイロットもお前だったな…ライ)

 

 矛盾した印象。最高の味方であり、最大の敵としても存在した人物。

 だが、それでも俺にはこいつが…ライがかけがえのない友人であったと感じられた。

 

「ランスロット・クラブが存在する限り、ランスロットと名の付くモンスターの攻撃力は300ポイントアップする。そしてクラブの攻撃力、守備力はランスロットと名の付くモンスター-100ポイントとなる!」

 

ランスロット ATK 2900 DEF 2500

ランスロット・クラブ ATK 2800 DEF 2400

 

「さて…俺はまだバトルフェイズの終了を宣言していない…覚悟はいいな?」

 

「くっ…」

 

「ランスロットでテュアラティンを攻撃!」

 

『これで…戦いは終わる!』

 

 ランドスピナーを白煙が上がるほどの回転数で回し、ランスロットはテュアラティンへと接近する。

 

「…フン!伏せカード発動!『聖なるバリア -ミラーフォース-』!」

 

 先程は蒼月で紅蓮が破壊耐性を持っていたために、テュアラティンの召喚を優先するのに発動しなかったのだろう。

 しかし、今どちらのモンスターにも破壊耐性は無い。

 光り輝く聖なるバリアが、テュアラティンを包み…

 

バキィッ!!

 

 込む前に、飛来したアサルトライフルの弾丸が展開しきる前のバリアを打ち消した。

 

「なっ!?」

 

「クラブの効果を発動した。手札を一枚墓地に送ることで、相手の罠カードの発動を無効にし、破壊する!」

 

 クラブはそのファクトスフィアの能力を最大限に展開し、可変型ライフルを狙撃モードに変更、発動したミラーフォースを打ち抜いたのだ。

 

「そ…んな…」

 

『はぁぁぁっ!』

 

 テュアラティンが肩口から真っ二つに斬られて、光の粒子となって散った。

 その粒子は百野の手札へと帰っていく。

 

「これまでだな百野。ライ! クラブでダイレクトアタック!」

 

『わかっている!』

 

 クラブは二本のMVSを抜くと、柄を繋げて一本の長大なランスにした。

 

『これで…終わりだぁっ!!』

 

「ぐぁぁぁっ!!」

 

 MVSの一閃を受けて百野が吹き飛んだ。

 

―――

 

「さぁ、約束通り全てのデッキを渡してもらおう」

 

 地面に仰向けに倒れている百野にそう言い放つ。

 

「…だれが渡すか…」

 

「何…?」

 

「お前ら! やれ!」

 

 百野のその言葉に後ろに控えていた太った男と長身の男が進み出る。

 

「やれやれ…決闘者としても誇りすら失ったか…」

 

 つくづく見下げ果てた奴だ。

 仮にも決闘者を名乗るのならばデュエルの勝敗による契約は履行しなければならないというのに。

 

「ルルーシュ下がれ! ここは俺が…」

 

「いや…ここは俺に任せてもらう。お前は遊戯と一緒にお客様を店内へと誘導してくれ」

 

 城之内が俺を庇うように前に出るが、それを押しとどめる。

 

「だがよ! あいつら相手にお前ひとりじゃ…」

 

「大丈夫だ。策はある。だが巻き添えを出したくない。だから頼む」

 

「…わかった。危なくなったらすぐに呼べよ?」

 

 そう言って城之内は遊戯と共に周りで観戦していた大会参加者を店内へと戻していく。

 

「さて…これで周りを気にする必要もない…」

 

「覚悟はできてんだろうな?」

 

 太った方が拳を握りながら近づいてくる。

 誇りを失ったこいつらは最早決闘者ではない。

 ならば…

 

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。貴様たちは今からデッキを置いて警察へ出頭し、過去の罪を全て認め、以後決して決闘者に関わるな!」

 

 左目に宿る絶対遵守の力を使うまでだ。

 

『イエス!ユア・マジェスティ!』

 

 そう言って百野はコートに仕込んだ百のデッキを地面へ置き、子分の二人を引き連れて去っていく。

 

 おそらくは余罪も多いだろうから実刑は確定。しばらくは塀の中での生活になるだろう。

 

††††

 

~同時刻~

 

アメリカ・KC(海馬コーポレーション)アメリカ支局

 

「新しく入ったデータはこれだけか…」

 

 壁一面をモニターが覆い尽くすその部屋はどこからどう見ても研究室のそれであった。

 その部屋の主は金髪にメガネをかけた十歳ほどの少女。

 天才として名高く、最近アメリカ支局に登用されたレベッカ・ホプキンスである。

 その幼い双眸には似つかわしくない険しさが宿っていた。

 

 そこに自動ドアが開き、一人の長身の男が入って来た。

 

「解析は進んでいるのか? ホプキンス」

 

「あらあら。総帥の海馬瀬人その人が乗り込んでくるほどのことなの?」

 

 そう言ってレベッカは椅子をぐるりと回した。

 

「前置きはいい。で、どうなんだ?」

 

「ダメね。前回解除された分と…ついさっきまた一部のデータが使用されて解除された分だけ。それ以外は完全なブラックボックス…」

 

正直お手上げなのよね~といいながらレベッカはマグカップを手に取り、コーヒーを口に含んだ。

 

「社長の方こそ大丈夫なの? あまり顔色が良くないみたいだけど?」

 

「余計な世話だ」

 

「まぁ、あなた達の技術の結晶たるデュエル・リング・サーバーの事だから気になるのはわかるけど…少しはちゃんと休みなさいよ? 食事もろくに取ってないんじゃない?」

 

 そう言ってレベッカはコーヒーの横においてあったサンドイッチの皿を差し出す。

 

「…フン。貴様に心配されるとはな…」

 

 実際に食事もろくに摂っていなかったのだろう。そう言って瀬人はサンドイッチを手にとった。

 無造作にそれを口に運ぶ。具が何であるかも確かめずに…

 

「それあの子からの差し入れよ。味はど…社長?」

 

「ゲホッガホッ!…な…何だこれは!?」

 

 普段の瀬人なら確実に激昂したであろうが、疲労が蓄積した今の状況では逆に毒気を抜かれたようだ。

 思わず床に突っ伏し、金魚のように口をパクパクさせている。

 

「えっと…普通のサンドイッチじゃないの?」

 

 レベッカも気になって一つを手に取った。そこではたと気づく。

 それから漂う刺激臭に…

 

「まさか…」

 

 嫌な予感を感じ、レベッカはサンドイッチを開く。

 

「これって…ワサビ?」

 

 前に日本に行った時に嗅いだ臭いだと思ったら…

 

「この黄色いのはターメリックかしら…でも甘い臭いも微かにしてるわね…」

 

「おいホプキンス…通信を繋げ…」

 

 瀬人は腹心の磯野に持って来させた水を飲んでどうにか持ち直したようだ。

 そうレベッカに命じる。

 

「了解」

 

 レベッカも即座にそれに応じた。どこになぞ聞くまでもない。このサンドイッチの製作者だ。

 

『どうしたレベッカ? もう終わったのか?』

 

 画面の向こうに映ったのは年のころは十七、八くらいの少女だ。

 

「貴様! どういうつもりだ!?」

 

『何だ坊やもいたのか…それで何の話だ?』

 

 瀬人がいたことに若干めんどくさそうにしながらもそう問い返す。

 

「このふざけた食いものについてだ!」

 

 そう言って瀬人はまだ皿に残っているサンドイッチを指差す。

 

『なんだそんなことか…なに、知り合いの研究者に教えてもらったレシピを試しただけだ。脳のいい刺激になったろう?』

 

 そう言って少女はニヤリと口の端を歪める。

 

「黙れ! あんなものが食えるか!?」

 

『あんなものとは失礼だな。あれでも天才科学者の助手のレシピだぞ? それにピザは飽きたというからわざわざ作ってやったというのに…』

 

「そういう問題ではない!」

 

「まあまあ社長、落ちついて。ねぇ、いったい何を入れたの?」

 

 飄々とかわされる瀬人を見かねたのかレベッカが仲裁に入った。

 

『ん? たしか…ライ麦パンにウコンと和三盆を練り込んで、ワサビペーストを…』

 

「もういい聞きたくない」

 

『あ、おい…』ブツンッ

 

 使われた材料を聞くだけで吐き気を催してきたレベッカはそれだけ言って、通信を切断した。

 

「まったく…あの子ったら…」

 

「…はぁ…あいつのことはもういい。で、今までのデータがどこから送られて来たのかの解析はできたのか?」

 

 気を取り直したように瀬人がレベッカに問う。

 

「ええ、どちらも短期決戦でそう長いことデータ接続がされたわけじゃないけど日本、それも童実野町周辺からよ」

 

「!?…そうか…」

 

 瀬人は思わず驚愕に顔を歪ませる。

 

「ダーリンに調査を依頼してみる?」

 

「ふん…奴に借りを作るのは気に食わん。どのみち今回の大会が終われば一度日本へ戻る。その時に詳しい調査をするまでだ」

 

 そう言って瀬人は踵を返した。

 

「今日は俺も休む。貴様も無理をしない方がいい」

 

「むぅ…珍しく優しいじゃない。なんか変な物でも…あ、さっき食べたか」

 

「余計な世話だ。あいつにも変なモノをつくるなと言い聞かせておけ!」

 

瀬人はそう言って部屋から出ていった。

 




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