ようやく更新できました。拙いながらもどうぞ!
霧「・・あなたたち・・誰?」
「「「・・え・・?」」」
霧島さんの言葉が理解できなかった。みんなも同じことを思っているだろう。だってあの霧島さんが、みんなに特に雄二に対して誰?、なんて言うとは思えない。
雄「は、ははっ、な・・なにいってん・・だ?」
優「そ、そうよ代表・・冗談よね・・?」
霧「?」
とても冗談を言ってるようには見えない。霧島さんはあまり感情を表に出さないから僕にはよくわからないけどいつも一緒にいる優子さんや工藤さん、雄二なら些細な表情の変化で分かるかもしれない。けど雄二たちもこれが冗談ではないとわかってるみたいだ。
工「こ、これは・・どういうこと?」
島「も、もしかして・・これって・・」
姫「記憶喪失・・でしょうか?」
それしか考えられないだろう。考えられる原因はあの魔精霊だろうか、それとも他のことが原因なんだろうか?専門家ではない僕にはよくわからない。だから僕はグレイワースに顔を向けた。だけどグレイワースも分からないとばかりに顔を横に振る。グレイワースにも分からないならあの人しかいないだろう。そんなことを考えていると後ろの扉が開く音がした。全員がそちらを向くとそこにはさっきまで僕が思い浮かべていた人がいた。
?「失礼します」
扉から少し離れたところに立っていたのは、純白の白衣を纏った女性。首の後ろで括った黒い髪、眼鏡の奥に光る知的な紺碧の瞳。彼女の名はルーリエ・リザルディア。通称<奇跡>のルーリエ。治癒の術式を専門とする最高位の治癒師(ヒーラー)だ。
明「ルーリエさん!どうしてここに?」
来てくれたことはすごく感謝してる。でも、誰が連絡したのだろう?グレイワースがしてくれたのかな。
ル「ええ。彼女の治療をお願いと彼から連絡がありましたのでここまで来ました」
明「彼?」
ル「ええ、そこにいる土屋康太くんからです。彼はサポートメンバーの1人なんですよ」
明「え!?」
ルーリエさんの言葉にビックリした僕は思わずムッツリーニに顔を向けた。
康「(グッ)」
明「いやムッツリーニ!グッじゃないよ!今のって本当なの!?」
康「(コクッ)・・2年前から」
僕はムッツリーニの答えにさらにビックリした。アレイシアには現場で精霊と戦う主力部隊とそれを補助するサポート部隊が存在する。主力部隊は現場で精霊と戦う部隊でサポート部隊は戦闘で傷を負った人の治療や現場の事後処理などが主な仕事だ。サポート部隊にももちろん精霊使いしかいないと思うかもしれないけど実際は違う。精霊使いに必要な神威を持つ人は希少だし、どちらかというと精霊使いじゃない一般の人が多い。けど、彼らが居なければアレイシアは成り立たない。僕たち精霊使いが戦えるのは彼らのバックアップがあって始めて活躍できるんだ。
ちなみにルーリエさんはサポート部隊の筆頭である。
明「そ、それは始めれて知った」
レ「あら、知らなかったの明久?」
明「え!?レスティアは知ってたの!?」
レ「一応覚えていたわ」
白「私も知っていましたよ」
セ「我もだ」
みんなの言葉に僕は打ちひしがれた。まさか僕だけが知らなかったなんて。僕が壁に手をついて落ち込んでいた。
優「ところで彼女は誰?」
康「・・医者?」
レ「そうね。ここは彼女に任せましょう。みなさんここにいては治療の邪魔よ。外に出ましょう」
レスティアの言葉に従い、みんなは一度部屋から出た。治療の間、みんなは部屋の外で待っていた。すると雄二に声をかけられた。
雄「明久、さっき言っていたことを詳しく教えてくれないか。その精霊について」
「「「精霊?」」」
みんなが雄二の言葉に反応する。そりゃあれだけのことがあれば聞きたくもなるよね。もしかしたら霧島さんのあれは精霊の影響なのかもしれないのだから。
グ「なんだい坊や。話したのかい?」
明「ザックリとね。あの状況だと説明しなくちゃいけないと思ってね」
僕はみんなに向き今話せることを話した。精霊のことや僕たち精霊使いのこと、レスティアのことを。
「「「・・・」」」
それを聞いたみんなはただただ驚いていた、信じられないって顔して。秀吉と優子さん、ムッツリーニ以外。
雄「つまりこの世界とは違う世界があってそこには精霊が存在する。で、たまにこっちにくる精霊を追い返したり駆除したりするのがお前らってことか?」
明「まぁ、そんな感じ」
姫「レスティアさんはその・・精霊・・なんですよね?」
レ「そうね」
レスティアのセリフを聞いてまた驚いた。
工「それじゃ、セフィちゃんや白姫の精霊も人の姿をしてるの?」
セ「いや、違う」
工藤さんの疑問をセフィが否定して2人は自分の精霊を召喚した。セフィの鷹の姿をした雷精霊のラッセルと白姫の狐の姿を炎精霊のアヤメ。2匹とも結構高位の精霊で大きな力を持っている。2人なら武装した1個小隊を相手にできるだろう。
優「2人の精霊は動物の姿なのね」
白「人の姿にできるのは高位精霊つまり高い力を持った精霊だけですから」
島「それじゃアンタってすごいの?」
レ「それほどでもないわ」
涼しい顔して流してるけど実際すごい。いつも白姫とじゃれ合い(というより決闘?)してるし、力が弱い精霊ならレスティア1人で相手もできる。
雄「・・・明久」
明「なに雄二?」
雄二から声をかけられ僕はそっちを向いた。雄二が口を開くと同時に病室のドアも開いた。みんなが一斉に出てきたルーリエさんを見た。
優「それで代表は、彼女はどうですか?」
ル「大丈夫です。目立った外傷はありません。ただ、魔精霊に憑依されたせいか精霊に影響されやすくなってしまったみたい」
秀「つまり、またこういうことが起こる可能性があるということかの」
ル「そうですね。その対処は施しましたから問題ありません。それと記憶のことですが、おそらく精霊の影響ではなく精神的なショックによるものかと思います」
工「精神的?」
ル「おそらく友人を傷つけてしまったことが原因かと」
その言葉を聞いて雄二が表情を歪めた。きっと雄二を傷つけてしまったことを後悔してるんだろう。日ごろから雄二に対する愛情が深い分余計に。
そしてそんな原因を作ってしまった自分が許せないのだろう。自分がもっとしっかりしていれば霧島さんを傷つけずに済んだかもしれないのにって。
姫「それで、記憶は戻るんでしょうか?」
ル「いまの状況ではなにも言えません。ただ、無理に思いださせようとしないでください。きっと自分の心が壊れないように記憶に鍵をかけたのでしょう。ですので無理にではなく少しずつ慎重に治療していけば大丈夫でしょう」
グ「そうかい、御苦労だった。それでは私たちは戻るとしよう。それと精霊のことは秘密だからね。忘れないように」
それだけを言うとグレイワースはルーリエさんを引き連れて行ってしまった。
明「さっきグレイワースも言ってたけどこのことは秘密ね。これは国家機密だから。もしバラしたら国から罰を受けるから」
島「罰って逮捕とかされるわけ?」
レ「いいえもっとひどいわ。消されるのよ、戸籍からレンタルビデオの会員に至るまで。もともと存在しなかったとされるのよ。だから絶対に秘密よ」
そのセリフを聞いてみんなの顔が青くなる。確かにそうだよね自分がもともと居なかったってことにされちゃうんだから。けどここまで言えばきっと大丈夫だろう。あ、そう言えばさっき雄二が何か言おうとしてたっけ?何だろう。
明「雄二、さっき何か聞こうとしてたよね」
雄「あ、ああそうだ。明久・・・精霊って俺も使えるようにならないか?」
明「・・つまり精霊を使役したいと?」
雄「ああ」
雄二の言葉にみんなが注目した。けど、おそらくは・・。
明「無理だよ。精霊を使役できるのはごく一部の人間だけだし何より神威がないと」
雄「神威?」
明「そう神威は精霊をこの世界に実体化させるために必要な力。精霊を扱うのに必要なものなんだ。けど雄二にはそれがないんだよ」
雄「それは鍛えて着けられるのか?」
セ「無理だな。神威は血筋に影響される。私や月宮のように精霊使いの一族でないとな。稀に明久のような一般人に宿ることもあるがな」
雄「じゃあ・・」
レ「無理よ」
雄二の言葉をレスティアが遮った。
レ「どんなことをしても出来ないわ。それに求めてはいけない。私たちがやっていることは危険なことなのよ。さっきみたいなことだって偶にあるわ」
それを聞いた雄二の目元がピクリと動いた。それでも雄二の表情には諦めというのがなかった。
白「そうです。あなた方が関わっていいことではありません。どうか、わかっていただけませんか」
白姫がなだめるように続けた。それを聞いていたみんなも雄二の制止に回った。
秀「そうじゃ雄二。気持ちはわからんでもない。じゃが無理なものは無理なのじゃ」
優「そうよ。それに代表だってそんなの認めないわよ」
工「だね。それを聞いたら代表だって止めるよ、きっと」
それを聞いて雄二はようやく諦めたようだ。雄二の気持ちはわかるよ。大事な人が傷ついたんだもん。誰だって何とかしたいって思うはずだよ。けど、分かってほしかった。雄二は僕の大事な親友だから、傷ついてほしくない。こんな危険な世界に踏み込んでほしくない。できれば精霊のことも知らずにいてほしかったけど。
そして今日はこのまま帰路に着いた。
みんなと別れてからも頭にあるのは翔子のことだった。始めて翔子と会ったのは小学校の頃。俺が通っていた転校してきたのが最初。あの時からあいつはズレていた。容姿も頭脳も運動もできたあいつは周りから少し浮いていた。昔の俺はそんなの関係なくあいつと接していたが、そのせいかあいつに懐かれた。始まりなんてそんなものだ。
けど、あいつは俺なんかと関わっちまったせいでこんなことになった。俺と関わらなければ、普通に日常を過ごして、普通に友人を作って、普通に人を好きになって。俺のせいであいつは人生を棒に振っちまった。俺が出てこなければあいつは記憶を失うこともなかった。
雄「くっそっ」
あの時から俺は勉強をやめ、ケンカに明け暮れた。いつの間にか悪鬼羅刹とまで言われるようになった。けど、結局俺は何も変わっちゃいない。肝心な時に限っていつも誤りを犯してあいつを傷つけて。俺はもっと力が欲しい。あいつを守るために、きっとあの精霊の力があればきっと。
雄「強く・・なりてぇ」
?「なら、あげましょうか?」
その言葉に反応して俺は顔を向けた。視線の先には1人の女がほほ笑みながら立っていた。グラマラスな長身に腰まで伸ばした翡翠色の髪。おそらく10人中10人が美人と答えるくらい綺麗だった。ムッツリーニなら瞬時にカメラを構えるだろう。だが、今の俺にとってはどうでもよかった。
雄「なんだ、アンタ?」
?「今、あなたが最も欲しがってるものをあげましょう」
雄「欲しがってるもの・・」
?「ええ、あなた素晴らしい力が欲しくない?」
俺は警戒とかそんなことも忘れてただ女の言葉に耳を傾けた。そんな女の言葉がスルリと俺の中に入ってくる。
?「さぁ、手を取りなさい」
俺に差し出された細い手を俺はなんの躊躇いもなく取ってしまった。女の深紅の瞳は禍々しく輝いているように見えた。
?「うふふっ、あげましょう・・精霊の力をね」