なお今回は、形だけとはいえアニメにのみ登場したカードが出てきます。
十代倒れる。その一報を聞き、友人たちは保健室へ詰めかけていた。
打撲に切り傷、軽度の熱傷に加えて肉体的・精神的疲労による衰弱と、保健の教員である鮎川から伝えられた彼の症状は中々に重く聞こえる。とはいえ命に別状はなく、後遺症も残らない。その知らせを聞き、皆一様に胸をなでおろした。
この奇妙な容態は事故などによるものではなく、十代が心配されていることにも理由がある。
事の発端は昨日。教師の大徳寺を通して十代、準、大地、明日香の4名、それに加えて大徳寺自身が校長室に呼び出されたことが始まりであった。
校長の鮫島が呼び寄せたのは、先程の5人にクロノスと亮の2人を加えた計7名。全員が集まると、彼は学園の設立された地に眠る三幻魔のカードについて話し出す。それは「三幻魔が地上に放たれる時、世界は破滅し無へと帰する」そんな空恐ろしい言い伝えを持つものであった。
そして話は幻魔の封印を解く七精門の鍵、その鍵を奪おうとする集団セブンスターズへと移る。鮫島の用件はこの鍵を守ってくれないかというもの。「七精門の鍵を奪うにはデュエルによって勝たねばならない」それが古より伝わる約束事らしい。より確実に鍵を守るため、鮫島は学園屈指のデュエリストをここに集めたのである。
無論鮫島としても、生徒を危険にさらすような真似をするのは忍びないとは思っていた。しかし彼はそもそもの発端となった理事長の影丸から、少なくとも十代と準の2人には必ず鍵を預けるよう念を押されている。理事長たっての頼みとあっては、如何に校長と言えど無碍に断ることはできない。
そもそも鍵を守る方法がデュエルである以上、強者を選ぶのはごく自然な流れとなる。現状レッドに収まっているとはいえ、十代と準の2人は学園でも指折りの実力者であることに違いはない。まして彼らはここで名の挙がらなかった教師よりも確実に強い。影丸が2人を推すのも当然であり、否定するだけの材料も鮫島にはなかった。
更に鍵の守護者は名目上、学園の代表とも言える。この2人が居るからには1学年にしてイエローの頂点に立つ三沢大地、女王の異名を持ち女子最強との呼び声の高い天上院明日香も選出せざるを得ない。彼らのプライドを考えれば、声もかけずに放置する訳にはいかなかった。元々鮫島は現役生最強を誇る自身の弟子、現サイバー流後継者の亮を当てにしていただけにその思いも強まる。
できることなら拒否して欲しいという鮫島の願いもむなしく、5人の生徒全員がこの件に関与することとなったのである。
以上が昨日のこと。そして実際に行われたセブンスターズとの戦いは鮫島の想像を遥かに超えていた。デュエル中のダメージが現実のものとなる闇のデュエル。相手はそんな異様な勝負を仕掛けてきたのである。保健室で眠る十代の怪我はこの闇のデュエルによって負ったもの。辛くもとはいえ勝利してこの状態では、負ければどうなることか。
異常なほどの危険性が浮き彫りになった今、鮫島とて生徒の安全を確保するために守護者を変更することも1度は考慮した。しかし彼らは既に鍵の守護者として相手に認識されてしまっている。別の者へ鍵を渡したところで安全になるとは限らない。つまり危険に晒す人物を悪戯に増やすだけ、そんな可能性も否めないのである。実力から言ってもこのまま彼らに任せるのが最善と、鮫島がそう考えてしまうのも無理はない。
選んだ7人が誰1人として欠けることのないよう、鮫島はただ祈るのであった。
十代が倒れてから2度目の夜。湖上に謎の城が出現したとして、その場に鍵の守護者たちが集まっていた。そこには翔や隼人、仁の姿もある。
直接の関係がない3人がここへ来たのは、友人たちの様子が気にかかるということが1つ。しかしそれ以上に、十代の戦いにおいて翔と隼人が捕らわれたことが関係していた。
普通なら足枷になる可能性を考慮して離れるところであるが、今回に限りその意味は薄い。何しろ十代は自室に居た状態から、翔と隼人は同じ部屋で眠りについた状態から、不思議な現象によりデュエル場となった火山へ移動させられている。
あくまで十代の力を十全に引き出すための行為であり、鍵に関する取引材料とされた訳ではなかったものの、これでは現場から離れても意味を成さない。ならばいっそこの目で見届けようと、2人に加えて準と同室の仁までも守護者たちに同行したのである。
相応の危険を伴う戦い。そんなデュエルを次に行う者として、先頭に立つはクロノス。僅かに怯えの色を見せながらも、彼は強気の姿勢を崩さずに居た。対するは緑色の長髪をした妙齢の女性。
「あら……お相手は貴方なの?」
「如何にもなノーネ」
「……そう。では始めましょう、闇のデュエルを。今回のお相手は私、セブンスターズの貴婦人ヴァンパイア・カミューラ」
ヴァンパイアの名に皆が息を呑む。どうやらここ数日広まっていた吸血鬼の噂は事実であったらしい。
対照的に、ここに来てクロノスは落ち着き払っていた。
「して、決闘のルールは如何に? なノーネ」
「勝者は次なる道へ。敗者はその魂をこの人形に封印される」
「魂を封印!?」
「マジかよ……」
無地の人形を示し、カミューラは酷薄な条件を平然と告げる。魂を封印されると聞き大地や準が不安の混じった驚きの声を上げるが、それでもクロノスは動じない。
「馬鹿馬鹿しい! そんな御伽話、信じろって言う方が無理なノーネ!」
「御伽話かどうか……すぐにわからせてあげるわ! 用意は良くて!?」
カミューラの問いに、クロノスは当然とばかりに頷いた。ディスクを起動させ、後はその意思を表明するのみ。
「デュエル!」
その宣言を合図とし、闇のデュエルが始まる。中盤まではほぼ互角の展開。アカデミア実技最高責任者であるクロノスと互角の戦いを演じるとなれば、カミューラの実力も相当なものであろう。
デュエルも終盤に差し掛かり、今、形勢はクロノスへと傾いていた。彼の場には《
そんな折、カミューラはあるカードの発動を宣言したのであった。
「それでは、魔法カード《幻魔の扉》を使わせてもらいましょうか」
「《幻魔の扉》……?」
聞き覚えのないカードを前にして、そこかしこで疑問の声が上がる。クロノスを見守る数人はお互いに顔を見合わせるが、誰も心当たりはなかった。
しかしそれも無理からぬこと。これは真っ当なカードではないのである。
「知らないでしょうから、このカードの効果を説明して差し上げますわ。まずは『相手フィールド上に存在するモンスターを全て破壊する』。更に『その後、デュエル中に1度以上使用されたモンスター1体を選び、召喚条件を無視して自分フィールド上に特殊召喚』できるの」
「な、なんですート!? そんな効果ありえないノーネ!」
《幻魔の扉》にクロノスが抗議の声を上げるが、それも当然。1つ目の効果だけでも禁止カードの《サンダーボルト》と同等なのである。そこに更なる強力な効果が付随しているとなれば最早禁止・制限云々の話ではなく、I2社に認可されているカードかも怪しい。
「勿論その代償は高いわよ。このカードの発動条件……それは魂を捧げること。つまり、ゲームに負けたら私の魂は幻魔のものということね」
命懸けのインチキカードとは準の弁。とはいえ、ここまで強力な効果となってはこのカードを使用してゲーム終了とならないことのほうが珍しい。事実上デメリットは存在しないと言える。
しかしカミューラの使い方は、その効果さえも生温い。
「……なんだけど。せっかくの闇のカードなんだから、もっと闇のデュエルらしく使わせて頂きますわ」
瞬きする間に、カミューラの傍らにはもう1人女性が立っていた。その姿はカミューラと全く変わらない。しかしそんな常識外の行為に驚く間もなく、分身体は忽然と姿を消す。そしてそれが再び皆の目に入った時、彼女の手の中にはギャラリーの1人、仁の姿があった。
「この子の魂を生け贄に、《幻魔の扉》発動!」
カミューラの声に応え、その背後にそびえ立つ石造りの門が開かれる。扉の内には脈動する血管を思わせる赤い筋。赤黒い粘膜の縁には鋭利な突起、幻魔の名を冠する何かの歯らしき代物が並んでいる。開け放たれた扉は、正に人を喰らう魔物そのものといった様相を呈していた。
そんな扉がクロノスのフィールドを根こそぎ破壊し尽くし、《古代の機械巨人》をカミューラの場に復活させる。単純にデュエルとしてみてもクロノスには敗色濃厚な状況。とはいえ問題はそこではない。
「このカードを発動した者が敗北した場合、捧げた魂は幻魔のもの……。つまり私が負ければ、この子の魂は2度とこの世界には戻れなくなるわ」
カミューラの狙いは相手の闘志をそぐこと。人質を捕られたクロノスになす術はなく。彼はリバースカードをそのままに敗北した。
「やっと1つ……」
デュエルのダメージにより倒れたクロノスへ近寄り、カミューラはすかさず鍵を奪った。
しかしそれだけでは終わらず、彼女は懐から先程の人形を取り出すと、その肉体ごとクロノスを人形に収めてしまう。そんな怪奇現象を目の当たりにした一同が呆然としているうちに、カミューラは全身を風に包み、その身を消した。鍵だけではなくクロノスという人間をも奪われ、後には彼女の甲高い笑い声だけが残されたのであった。
その翌日。仁と大地は神楽坂の部屋を訪れていた。
彼らはカミューラを研究するため、より確実に勝利を得るために神楽坂の力を借りることにしたのである。と言っても、頼み込んだのは鍵の守護者である大地ではない。力を借りたいのも、カミューラに挑もうとしているのも、先日クロノスの足枷となってしまった仁である。
その理由として仁自身が捕らわれたこと、そもそも彼が闇のデュエルや対戦相手を甘く見ていたことを挙げている。他にも理由はあるが、仁が今それを明かすことはない。もっとも対戦が叶うかは五分五分、そちらのほうが問題であろう。
そんな状況ではあるが、神楽坂は仁の願いを快諾したのである。
「今回はすまない。引き受けてくれてありがとう、神楽坂」
「気にするな。2人には……特に柳川には世話になったからな。俺のほうから頼みたいくらいさ」
神楽坂には危険を孕んでいることも既に通告済み。それでも快く引き受けてくれた彼に、仁は感謝の念を禁じえない。
「それじゃあ、デュエルの内容を聞かせてもらおうか」
まずは大地の説明に基づき、彼らは昨夜のデュエルの流れを追うことにした。
昨日のデュエル。それはカミューラの先攻で始まる。1ターン目は定石通り、彼女はモンスターとカードを1枚ずつセットしてターンを終えた。
対するクロノスはアンティーク・ギアのリリースを軽減するフィールド魔法《
「……それを選んだのか」
説明が途絶えると同時、神楽坂の口から言葉が漏れる。
《ピラミッド・タートル》はアンデット族専用のリクルーターであり、禁止カードの《黒き森のウィッチ》と同じく守備力を参照するという特徴を持つ。その条件は2000以下と緩く、上級モンスターの特殊召喚も可能となっている。
そんなカードから特殊召喚する上級の候補はおよそ5つ。カミューラのデッキにはその中から擬似的な効果破壊耐性を持つ《ヴァンパイア・ロード》、同じく戦闘破壊に対応した《カース・オブ・ヴァンパイア》が確認されている。とはいえ今回特殊召喚された後者はあまり一般的なものではなく、採用されること自体が稀。入っている以上ありえない選択ではないが、疑問が浮かぶのも確かであろう。
「通常の範囲で言えば、カミューラのエースは《ヴァンパイアジェネシス》だろう。……やはり、ここでヴァンロを選ばなかったのは妙だ」
「けど手札にもう1枚ピラタがあったなら、それはまだマシじゃないか? 俺は
「《リ・バウンド》? 確かにそれは変わってるな……」
大地が疑問を呈したものの、仁としてはそれ以上に気になることがあった。その謎に神楽坂も食いつく。
機械工兵は攻撃した後に相手の魔法・罠カード1枚を破壊する効果を持つ。それによってクロノスはカミューラの伏せカードを破壊したものの、この場面はそれだけでは終わらない。《リ・バウンド》は相手に破壊された時、1枚ドローする効果を持っているのである。カードの消費はなく裏目にこそなっていないものの、クロノスにしてみればしてやられた形になる。
しかし重要なのはそこではなく、問題は他にあった。
「俺としては【アンデット族】に必要とは到底思えないが……2人はその辺りどうだ?」
「少なくとも俺は、このカードが採用されているのを見たことはないな」
「確かにな。ジェネシスや《ゾンビ・マスター》の効果を使うには手札コストとしてモンスターが必要だ。バウンスされたところで痛くも痒くもないだろう。態々事故率を上げてまで採用する必要があるとは思えない」
本来《リ・バウンド》は手札に戻す効果、所謂バウンス対策のためのカードである。その効果を無効にした上で、更に相手のカードを1枚墓地に送れる。単体でアドバンテージを得られるカウンター罠という点においては、非常に強力なカードと言えよう。
しかしそれも発動できればの話。如何にアドを得ることができようと、発動できなければ意味はない。破壊とは違い、デュエルモンスターズにはバウンス効果を持つものは少ないのである。
故にこのカードは頻繁に役立つ類のものではなく、そう採用されるものではない。カミューラのデッキがバウンスを弱点としないだけに、その不自然さは一層際立っている。
「……まあ、これをどう捉えるかは神楽坂に任せるよ」
「ああ、任せてくれ」
「それが良いだろうな。そろそろ次へ行こう。バトルはこれで終了。クロノス先生はカードを1枚伏せてエンドだ」
もっとも、仁ではこの謎に対して明確な答えを出すことができない。それは大地も同じである。故に判断を神楽坂に一任し、大地は説明を続けた。
再びカミューラのターンへ。2枚目の《ピラミッド・タートル》を召喚し、彼女は総攻撃を仕掛ける。《カース・オブ・ヴァンパイア》で
一方のクロノスも負けじと反撃。《
通常ならばヴァンパイアを倒しても次のターンに復活するだけになるが、
打つ手のないカミューラは《ピラミッド・タートル》を守備表示に変更し、モンスターをセットするだけでターンを終えた。主導権はクロノスへと移る。
クロノスは1800の攻撃力を持つ下級モンスター《
そして7ターン目、カミューラは《手札断殺》を発動した。互いに2枚の手札交換を行うと、彼女は早速墓地へ送った2枚を活用する。
まずは《馬頭鬼》を除外してその効果を発動。これにより同時に墓地へ送られた《ヴァンパイア・ロード》を蘇生、更にそのヴァンロを除外して攻撃力3000の《ヴァンパイアジェネシス》を手札から特殊召喚する。続けざま手札からもう1枚のジェネシスを捨てることで効果を発動し、《カース・オブ・ヴァンパイア》を蘇生。最後に下級モンスター《ゴブリンゾンビ》を召喚し、カミューラは一気に場を補強した。
自らのエースを召喚したことで、カミューラは意気揚々と
神楽坂が反応を見せたのは《カース・オブ・ヴァンパイア》の効果に起因する。仮に《収縮》を伏せた当初、即ち
それだけではない。復活後は攻撃力が上がるため、後に機械獣で倒すこともできなくなってしまう。そうなってはあまりにも苦しい。クロノスは自らのライフを犠牲にすることで、その事態を回避していたのである。
闇のデュエルにおいても平静を保ち、ダメージを恐れず勝利を目指す様は素晴らしい。クロノスが如何に優れたデュエリストなのかを如実に表していると言えよう。
しかし対するカミューラも負けてはいない。機械獣を倒すことはできなくとも、《カース・オブ・ヴァンパイア》と
《カース・オブ・ヴァンパイア》はただ蘇るのではなく、自身の効果で特殊召喚に成功した場合は攻撃力を上昇させる。蘇生後の2500は機械獣を倒すに十分な値であり、カミューラの次を見据えている様子がうかがえる。最後に彼女は残された1枚の手札を伏せ、ターンの終わりを宣言した。
再びクロノスのターン、まずはスタンバイフェイズに《カース・オブ・ヴァンパイア》が復活した。それを気にかけることなく、彼は《マシン・デベロッパー》を墓地へ送り、乗っているカウンターの数以下のレベルを持つ機械族を蘇生する効果を発動する。機械族モンスターが破壊される度に2つ置かれるジャンクカウンターの数は、この時点で4つ。よって《手札断殺》の際に墓地へ送られたレベル4、ダブルコストモンスターの《
相手のセットカードを破壊し攻撃を通しやすくするとともに、破壊された時にアンティーク・ギアを特殊召喚する《
「《セキュリティー・ボール》とはまた変わったカードを……。もう1枚のセットカードは見えたのか?」
「ソリッドヴィジョンからすると、確か砂塵だった筈だ。……ん?」
《セキュリティー・ボール》は相手モンスターの攻撃宣言時にその表示形式を変更する罠である。加えてセット状態で破壊され墓地へ送られた時、フィールド上のモンスター1体を破壊する効果を持っている。
そして仁が述べた砂塵とは《砂塵の大竜巻》のこと。こちらは相手フィールド上の魔法・罠カード1枚を選択して破壊できる。その後、自分の手札から魔法・罠カード1枚をセットできる点において時に《サイクロン》をも上回るものの、罠カード故の遅さから一般には下位互換とされる。
砂塵とはそんなカード。思い出すままに口に出した仁であるが、自らの返答に疑問が浮かんだ。それは他の2人も同じである。
「砂塵とは……流石に見間違いじゃないか?」
「いや……俺の記憶でも同じだ。おそらく、間違いないだろう」
「となると、かなりのプレイングミスだな。この状況なら、マヤン・マシーンを破壊すれば《カース・オブ・ヴァンパイア》を倒されることさえないが……」
《大嵐》の後。実際に起きたことはクロノスの《
そしてクロノスは
しかし。カミューラが残った伏せカード《砂塵の大竜巻》を発動し、《歯車街》を破壊していれば話は変わる。《歯車街》は破壊後に何らかの処理が行われた場合、効果の発動ができない。被破壊時の効果は「時」の任意効果であるため、タイミングを逃すのである。
加えて《セキュリティー・ボール》による機械獣の破壊も最善とは言えない。クロノスの墓地には《先史遺産マヤン・マシーン》だけでなく、より攻撃力の高い
しかし実際に選択されたのは、ダブルコストモンスターであるマヤン・マシーン。となれば、クロノスが最上級モンスターのアドバンス召喚を狙っていることは自明の理。仮に神楽坂が同じ状況に置かれていれば、間違いなくそれを看破し、マヤン・マシーンを破壊していたであろう。
「《リ・バウンド》に《セキュリティー・ボール》か……。まさか予めクロノス教諭のデッキを調べ上げ、メタを張ったのか?」
「これがメタ? 【
それに《大嵐》やサイクによる破壊を待つなら《呪われた棺》のほうが優秀だ。【古代の機械】相手には《セキュリティー・ボール》1つ目の効果が使えないから余計にな」
「ま、まあ、それはそうだが……そこであのプレイングだ。あくまで俺の予想に過ぎないが、この相手は単なる初心者で、精々が中級に足をかけた程度。もしかすると初級のレベルを脱していないのかもしれない」
確かに大地の言葉は正しい。しかし全ての者が同じ考えに行き着くとは限らない。むしろ膨大な知識を持つ大地と同じ考えを持てる者のほうが少ないであろう。
それはカミューラにも当てはまっていた。メタを張っているような構築をしておきながらのミスも、そのメタに奇妙なカードを採用しているのも、彼女にそれだけの知識と経験がないとなれば納得がいく。
何故カミューラがこれらのカードを採用したのか。こうなるとそれなりの説明がつく。
例えば相手が《サイクロン》で《リ・バウンド》を破壊した場合、互いにカードを1枚消費して自分は1枚のドロー、つまり0:1交換が成立する。また本来の効果を用いた場合は更に相手のカードを墓地へ送れるため、今度は1:2交換になりうる。つまり単にカードアドバンテージだけを考えれば、確実に得をする。彼女はこの事実を優先したと考えられる。
しかし相手が破壊するのを待つというのはあまり現実的ではない。現に《セキュリティー・ボール》を伏せてから、カミューラは2度の攻撃を受けている。これだけでも、アドを取れるからといって必ずしも効果的とは限らないことがわかる。彼女はその辺りが未だ見えてないのであろう。
相手の性質に対する考察も加え、対カミューラ用の戦略を仁は頭に浮かべる。概要を作るには十分過ぎる情報。しかし未だ見逃せない事象が1つ残っていた。それは次のターン、彼女が発動したカードである。
「問題は……《幻魔の扉》か」
「話を聞く限りでは、発動を許したら終わるな。どう対処すれば良いのか……」
「いや、その対策なら既にできている」
「何!? 本当か三沢!」
大地の唐突ながらあっさりした宣言に、仁は目を見開く。
彼の告げた内容は酷く単純なもの。その方法に、そしてそれを示した大地自身に、2人は驚愕を露にするのであった。
今日の最強カード
《
フィールド魔法
「アンティーク・ギア」と名のついたモンスターを召喚する場合に必要なリリースを1体少なくする事ができる。
このカードが破壊され墓地に送られた時、自分の手札・デッキ・墓地から「アンティーク・ギア」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する事ができる。
「今日の最強カードは《
ともあれ効果のほう、1つ目はリリースの軽減。優秀な効果を持つ《古代の機械獣》をリリースなしで召喚できる。……が、逆に言えばそれだけだ。一応《古代の機械巨人》をリリース1体で出せるとはいえ、どうせカードを消費してしまうなら他の手段と大差ない。
2つ目の効果は被破壊時に『アンティーク・ギア』を特殊召喚するもの。多くはこちらが本命だ。とにかく攻撃力3000の《古代の機械巨竜》を出せるのは大きい。ただし他の有用なモンスターは軒並み特殊召喚できず、選択の余地がない。この点は玉に瑕だな……。
注意すべきはタイミングを逃すことだろう。ルール上、自分でフィールド魔法の張替えをしてしまうとタイミングを逃す。手札に被った時はいきなり発動せず、一旦セットすれば良い」
アニメとの違いについて。この作品ではカミューラを初心者としていますが、実際のところはわかりません。ただし彼女には相手のデッキを知っているとは思えない行動や場面があるので、本質に差はないと思います。
また本来の流れにおいて、カミューラはクロノス人形を捨て置いています。この行動はおそらく、彼女の残虐性を表すために作られたのでしょう。
しかし後に、カミューラには魂を集める目的があると判明します。これでは言動が一致しておらず、あまりにも変です。次の展開へ繋げるためにも、彼女には人形を所持したままにしてもらいました。