勇者は勇者に憧れる   作:もやし部

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初投稿


プロローグ

桜の花びらが散り、山道に鮮やかに模様を付ける。木々の隙間から陽が差し込み、落ちた枝を踏みしめる音と少し前を歩く彼女の鼻歌が聞こえる。

昔と変わらない距離感を変えたくて。文章力のない頭で考えた言葉を頭の中で復唱する。

 

歩き慣れた道なのに喉が乾き、背中に汗が滲む。違う山を歩いているような錯覚さえ感じる。

 

もう一度頭の中で言葉を復唱し、彼女の名前を呼ぶ。

鼻歌が止まると彼女は振り返り何時ものように人懐こい笑顔を浮かべ尋ね返す。

 

訪れる沈黙、鳴り止まない心臓の動悸に急かされているような。

 

大きく息を吸い込み散々確認した言葉をゆっくりと吐き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カーテンの隙間から溢れる朝日に寝返りをうつ。

後もう一眠りしよう。掛け布団を掴み太陽の光を遮るように布団を被る。再び訪れた暗闇にどんどんまどろんでいくと、

 

 

 

 

ーーとたとた

 

 

不意に聞こえる階段を駆け上がる音に落ちかけた意識が急速に覚めていく。慌てて布団から跳び起き、ドアの鍵を締める。

 

ーーコンコン

ノックとともに

友奈「優君起きてる? 入るよ?」

 

聞こえてくる幼馴染の声に

 

優「ちょっちょっと待ってっ!」

 

朝から冷や汗をかきながら自分の出せる最高速で着替えを済ませた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

優「友奈お願いだから起こしに部屋に入ろうとするのだけは止めてよ。」

 

山道をゆっくり歩きながら、少し前を歩く幼馴染に懇願する。

 

友奈「駄目かな?ちょっと前までは部屋に入れてくれたよ?」

 

友奈は不思議そうな顔をして見つめ返す。

優「友奈だって自分の部屋に入られるのは嫌でしょ?」

 

友奈「私は、優君が部屋に入るの別に気にしないよ?」

 

 

さも当然のようにかえす幼馴染に思わず溜息をつく。

彼女、結城友奈は家が2つ隣と近所であったことから昔から何をやるのも一緒だった。具体的に何時からかは覚えていない。何時の間にか幼馴染から好きな女の子と自分の認識が変わっていた。

 

ただ、友奈は自分を唯の幼馴染としかみてないのだろう。

友奈の言動からまず異性として見られていないので、異性として見てもらうにはどうすればいいか四苦八苦する有様で…

 

友奈はそんなこと知る由もなく道すがら気に入った花を摘んでは、押し花にすべく古びた本に挟んで行く。

 

友奈は趣味である押し花集めに決まって僕を誘う。押し花という僕らの歳では珍しい趣味であることや友奈自身が自分のしたい事をあまり口に出さないという性格をしているというのが理由だろう。

 

僕自身、友奈がわがままを言うことを長く付き合っていてほとんど見たことがなく常に彼女は自分より周りを優先して行動している。何より我慢してでなく、本心から自分より他人を優先して行動する友奈に僕は憧れのようなものを持っていた。

 

そんな性格の友奈がする僅かなわがままなようなものを叶えてあげたいと思うしむしろ頼られていることを嬉しく思う。

 

そしてなにより押し花集めという男子に無縁な趣味でも喜んで付き合えるのにはもう一つ理由がある。

 

 

 

 

 

 

 

友奈「じゃじゃーんっ。」

 

友奈が効果音を自分で出しながら重箱を開ける。

 

優「待ってましたー。」

 

重箱の中にはたくさんのおかずとおにぎり。ただそのどれもが形が綺麗にできているものとほんの少し歪なものがあって僕は迷わず少し歪なほうを選んで食べる。

 

「…どうかな?」

少し不安そうに尋ねる友奈に、

「美味しいよ。形も前より綺麗になってる。」

 

「よかったー。次はもっと上手く作るから楽しみにしててね。」

友奈はほっとした様子で嬉しそうに笑う。

僕にとっても友奈の手料理を食べられるし、こうして嬉しそうに笑う友奈の様子を見られるのも凄く嬉しくて、押し花集めに付き合うのは苦にならない。

 

 

 

 

 

友奈が満足するだけの押し花も集まり、とりとめのない話をしながら帰路につく。

 

友奈「イネスっていうショッピングモールでねっ…」

 

 

 

ーーーブーンブーンブーン

 

会話を遮るようにポケットの端末が鳴る。ひやりと嫌な汗が流れ友奈を見る。

 

友奈「携帯鳴ってるよ?」

 

ほっと胸を撫で下ろし端末を見る。

 

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差出人 鷲尾須美

件名 連絡

 

今日は16時に神樹館の前に集合です。

くれぐれも遅刻しないでください。

 

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友奈「優君恐い顔してたけど何かあったの?」

 

心配そうに僕の様子を伺う友奈に

 

優「大丈夫。なんでもないから。」

 

笑ってなかったように誤魔化すと少し腑に落ちない様子ではあったけど引き下がってくれた。

 

 

さっきまでの楽しい気分ははじめからなかったように、心の中は、一抹の不安と僅かな安堵でいっぱいだった。

 

 

 

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