【習作・ネタ】 魔法少女まどか☆マギカ異聞 -魔法少女は涙を信じない-   作:yanagi

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魔法少女まどか☆マギカの世界での他の魔法少女の話。
基本的には魔法少女まどか☆マギカ本編及び外伝に出てくるキャラは出てきません。勿論、神名あすみは出て来ません。
世界観をお借りした、ほぼオリジナルです。
それでもよろしければ、どうぞ拙作を読んで下さい。


プロローグ

 夢も希望もありゃしない。

 

 あるのはいつも現実だけ。

 

 だからこれから語る物語にそんなものを期待してもらっては困る。

 

 奇跡や魔法――そのようなファンタジーを望む者は不用である。

 

 

 

 魔法少女まどか☆マギカ異聞 -魔法少女は涙を信じない-

 

 

 

 私こと小鹿かなめが魔法少女という存在を知ったのは、記念すべき十四回目の誕生日の前日のことだった。

 

 まだ寒さの残る三月の下旬。

 

 電灯が照らす仄かな明かりの下を私は歩いていた。

 

「思ってた以上に時間かかっちゃったな……」

 

 学校と自宅のほぼ中間地点にある個人経営の学習塾からの帰途、授業終わりに質問した問題に予想以上の熱心さで講師が説明してくれたことにより結構な時間が経過していた。

 

「いい先生なんだけどな……」

 

 先ほどまで一緒に居た大学三年生の講師を思い浮かべながら呟く。

 

 塾内でも人気のある講師だった。私の目から見ても美人で理想の女子大生然といった様子で、子供の頃から教師に成ることが夢だということを要は知っていた。普段から熱心ではあったけれど、残念なことに四月で辞めてしまうらしいので最近は余計に熱心なのだろう。

 

 ひとつため息をつき、考えを打ち切る。

 

 もうすぐ三月も終わり、四月になる。そうしたら中学の最終学年に進級する。

 

 正直、私は期待よりも不安のほうが大きかった。

 

 翌年に控えた受験のこともあったし、それ以上に漠然とした不安があった。

 

 上手く言葉にするのことができないもどかしさ。

 

 なんていうのかな?

 

 このままでいいのかな、とか。今のままなのかな、とか。そんなとりとめのない思いが浮かんでは消えていく。

 

 時間が解決するのだろうとはなんとなくだけど分かる。

 

 思春期という多感な時期。

 

 誰だってそのぐらいの想いは抱くのだろうことを私だって理解している。だからあまり考えないようにしている。だけど、ふと考えてしまうのだ。自分はどこに行きたいんだろうって?

 

 

 

 気づいた時には遅すぎて、どうしようもなくなっている。

 

 そんな言葉が頭の中で浮かんだ。

 

 ここはどこだろう?

 

世界は見知ったものから奇妙なものに姿を変えていた。

 

 まるで不思議の国に迷いこんだかのような気分。

 

 未知という名の恐怖を覚え。それと同時に、余りに理解しがたいためか奇妙なほどに頭の一部は冷静であり、この世界を観察している自分が居ることに驚く。

 

 まるで幼児がクレヨンで書いたような理解できない造型の影とでも言うのだろうか? そんなものが周囲を飛び交い。リアリティを感じない書き割りのような世界が広がっている。

 

 私は直ぐにでも空虚な笑い声さえあげそうになるほど、混乱しているというのに。間違いようも無く混乱しているのに……。

 

 作り物めいているからだろうか?

 

 ――好奇心を持ってしまう。

 

 なんだろうこれは?

 

 まるで白昼夢でも視ている気分。

 

 その時、声が聞こえてきた。

 

 それは奇妙な声で、まるで子供のように、大人のように、老人のように、機械のように、獣のように、得体の知れないもので……。

 

 四方八方、周囲全てから響き耳朶を打つ。

 

 嗤い声だ。

 

 何故か、そう確信した。

 

 まるでこれから私の身に起きることが楽しくて楽しくて仕方ないような、――そんな嗤い声。

 

 ――気持ち悪い!

 

 背筋がざわめくのを感じ、気がつくと本能的に駆け出していた。

 

 出口はあるのかどうかすらも分からないのに。だけれど、その足を止めることなく、ただ走っていた。

 

 怖い怖い怖い――っ!

 

 もう好奇心とかそんなものどうでも良くて、ただただ怖くて、涙が溢れるのを感じて、でも止まることもできなくて。けれど、終わりは直ぐにやってきて、私は躓いて転んでしまって、そして痛みを感じる暇も無く、頭を抱えて、瞳を閉じて、ただ震えることしか出来なくて……。

 

 どうすればいいの?

 

 どうすれば助かるの?

 

 神様でも仏様でも誰でも良くて、ただ助かりたくて、伸ばした手をつかんで欲しくて……。

 

 だから、生まれて初めて私は真剣に祈った。

 

 

 

 そして、奇跡的にその祈りは届いた。

 

 

 

 どのくらいたったのだろう?

 

 気がつくとあの嗤い声は消えていて、恐る恐る目を開けると、一人の女の子が瞳に映る。

 

 映るのは後姿だけだから顔は分からないけれど、女の子は一種、異様なと形容してもおかしくないような格好だった。

 

 汚れを知らない純白で無垢な服を纏って、なのにその手に持っているのは相反する私の身長ほどもあるような大きな大きな黒い鎌だった。

 

 それでも私は――。

 

 ああ、まるで天使みたいだ……。

 

 そう、思ってしまった。

 

 そしてこれが、魔法少女である円城寺虎子との出会いだった。

 


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