この話の後書きから軽い人物紹介を書きます。
「悪いんだけどさ、買い物の前に、なんだが楯無。ISの操縦教えてほしいとか思ってたり…」
「………っえ…」
おい何だ、そのありえないモノを見るような目は。
「…う、嘘…神無が教えて…ほしい…?」
「お前は俺をなんだと思ってんだよ。…悔しいがISに関しちゃ俺はまだまだド素人だ。…師が必要だ。」
「…二重瞬時加速できるんだし…自分で大丈夫なんじゃないの?」
と、楯無は首を傾げる。その言葉から察するに恐らく楯無も二重瞬時加速ができるし、その難易度も高いと思われる。
「なぁ、その二重瞬時加速って…ムズいの?」
「難易度は割と高めよ。…なんで?」
「なんで?って…簡単に出来たし…そもそもそんなにIS動かしてないから何がどうとかまだ知らねーんだよ。」
「稼働時間は?」
「あの無人機との戦闘含めて1時間。」
ラファールをもらったのはいいものの企業や国の情報をまとめたり、ハッキングしたり各国に向かわせてる諜報部隊から情報を聞いたりして最近忙しかったからな。
「…嘘でしょ?」
「嘘じゃねぇよ。…第一こんな嘘ついて俺にメリット無いだろ?」
「それもそうね…、はぁ。普通はそんな直ぐに使えないのよ、二重瞬時加速って。」
「…マジ?」
「マジよ。…だから弱かったのね。慣れてたら無人機はどうだった?」
「さあな。正直ISの機動の限界を知らないからな。…まあ慣れてたら少なくとも負けることは無かった。」
「…そっか。」
じゃ、慣れないとね、と楯無は微笑む。…なんていうか
「…懐かしいな、この雰囲気。」
「そうね…神無が無茶してきて私達がお説教するのもね…」
思い出したくないことを思い出させないでほしい。…なんで頬を少し切ったぐらいで四人からそれぞれ1時間も説教を喰らわなきゃいけないのか当時は理解してなかった。だが神無を継いでしばらくしてから、その有り難さを知った。
「…俺は強くなくちゃいけない。…お前よりも完璧でなければならない。…だからいつかはお前を超えることになる。」
「あら?簡単には抜かされないわよ?…私だって一応ロシア代表だし、学園最強だもの。」
「ははっ、そりゃ超えがいのある壁だな。」
「むっ…馬鹿にしてるの?」
楯無は不満そうに頬を膨らませる。…彼女には面と向かって言えないが、俺は彼女を必ず超えなければならない。…その過程で恐らく彼女が自信を失うかもしれない。言ってることは滅茶苦茶だ。…それでも…
「してないさ。…負けたくない。ただそれだけだ。」
「…頼りになるわ。」
「そうなるのが神無の役目だ。…さてと。」
ボロボロの身体に鞭を打ち、強引に起こす。世界でたった二人のISの男性操縦者がいる今のIS学園、一体どのタイミングでどこから敵が来るのか分からない。そんな状況で俺がじっとしている訳にはいかない。国、国連、IS委員会、IS学園、それぞれのトップから任された任務―何があっても学園を守れ―を遂行するために。
「まだ動いちゃダーメ。」
「なに、ちょっと歩いて部屋に戻るだけだ。…これぐらいの怪我なら明日の授業も大丈夫だろう…」
もちろん嘘だ。肋骨何本か逝ってるし、全身を強く打ったみたいで激痛が走っている。だが休めない。休んではいけない。
「ダメよ。まだ休んでおきなさい。」
「だから大丈夫だって…」
「レントゲンやらカルテやら見させてもらったわ。…骨、ヒビ入ってるでしょ。打撲だけじゃなくて二重瞬時加速と縮地による筋肉痛もある。…勉強は私が教えてあげるから、今は休みなさい。」
「しかしだな…」
「私のことを思うなら、尚更休んで?…もう神無が無茶して怪我する所見たくないの。」
途端に不安そうな表情を見せる。…やっぱり俺はまだまだ未熟だな。
「…悪いな、また知らない内にお前を不安にさせた。」
「いいのよ、これから気をつけてくれたら。…じゃ、私行くわね。まだ仕事残ってるし。」
「特訓の件、よろしく頼むわ。二人だけでな。」
俺がそう言うと楯無はあたふたして駆け足で医務室を出ていった。…ここで仕事手伝うわ、とか言ったらまた無茶するなって言われそうだし、言わないでおく。
「…幸せだな、俺は。どれだけ無茶をしても待ってていてくれる人達がいる。不安にさせたくないな。…でもその為には強くならなくちゃならない。でも修行しすぎたら説教される。…あぁ難しい。」
四人共それぞれ違う視点から説教をするのだから困る。まあ同時にそれの有り難さを知るんだがな。
昔のことを思い出しながら休んでいるとまたもや誰か来たようで、扉がノックされる。
「…どうぞ。」
俺が返事をすると3人が姿を見せる。
1人は男、1人はちっこいツインテ、1人は…侍といったところか。
「…どうしたんだ?3人揃いにそろって。」
「俺はそこまでダメージが残ってなかったんだけどさ、千冬姉が神無がかなりダメージ受けてるって言ってたから、お見舞いに。」
「お前もお見舞いされる側だろうに。…2人もか?」
こくり、と首を縦に振る2人。ビームを浴びなかった箒はともかく、鈴も一夏も大きな怪我は無いようだ。
「そうか…悪いな、油断してた。敵にも、ISという存在にも…。三人とも大丈夫か?」
「あ、あぁ。俺は大丈夫だけど…って!そうじゃないだろ神無!お前の方がひどい怪我なんだぞ!」
「そうよ!…エネルギー補給したら戻るって言ったのに。…行ったらあんた倒れてるんだもん…ティナ泣いてたわよ?」
ん?…なんで今ティナが出てくるんだ?まあそれは置いとくか。…俺はこいつらにまで余計な心配を掛けさせたんだな…
「本当にすまん。…俺が不甲斐ないばかりに…」
「何言ってんだよ。神無が乗ってたの訓練機だし、あんまり乗ってないんだろ?そんなので不甲斐ないなんて…」
「一夏、『神無』という名前はそれぐらいの縛りで音を上げていい程軽い名前じゃないんだよ。…負けたら、俺が俺じゃなくなる。」
楯無の話によると、俺が斬った無人機はビームを放った後停止したらしい。故に、2体目の無人機との戦いは引き分けだが、その後の戦いには勝ち負けどころか参加さえしなかった。…戦場で気絶して何が最強だ。
「『神無』?名前?」
「こっちの話だ。忘れてくれ。…俺以外の怪我人は?」
「奇跡的に0よ。もっとも、あんたが居なかったらやばかった子もいるけど。」
そう言い、鈴が横目で箒を見る。確かにあの場面での箒のあの行動は間違っていた。山田先生に頼めば応援など通信で飛ばしてもらえるし、何よりシールドが無い場所で生身にも関わらずISの注意を引くような行動をしたのだ。
「それについてだが神無。…すまなかった。そしてありがとう。神無が居なければ私は今頃死んでいただろう。」
「っ!?し、死んでた!?」
一夏が驚く。箒は実際に経験しかけ、鈴も代表候補生でそれなりに修羅場はくぐり抜けている。…一夏だけが、『戦闘』というもの、今回起きたことについて正しい理解が出来ていないようだ。
「あのな一夏。あの無人機が入って来た瞬間、あのアリーナは『試合』の場所でなく『戦場』になったんだ。殺らないと殺られる。そんな世界だ。まだ試合感覚が抜けていないなら忠告しておくぞ。これから恐らく今回と同じようなことが多々起きる。俺やお前のような男性操縦者が居るからな、拉致ったり、データや遺伝子を取ろうとするだろう。それで周りの奴らにも迷惑を掛けることがあるだろう。…お前はもし、もしまた無人機が襲ってきたらどうする?」
俺の場合は『負けない』俺が戦いの世界に身を置いて見つけた俺なりの答え。ここで『守る』なんて使ってはいけない。いや、一夏は使ってはいけない。多分これが織斑先生が言っていた一夏の勘違いだろう。
俺の『守る』は『負けない』ということがあっての『結果』にすぎない。だが一夏の『守る』は行動だ。…もし、もしも一夏にとって守りたい存在が複数あり、そのどちらかを選ばなければならない時がきたら、その時は一夏にとって最悪の結果が残るだろう。
「その時は、守ってみせる。俺に関わる全ての人を。箒や鈴、千冬姉。神無、お前もだ。」
「……そうか。」
一夏は『守る』ということを理解していない。『守る』ということは別に相手を倒すことでも殺すことでもない。『防衛』と『攻撃』は違う。『防衛』は負けなければ勝ちだ。…自分がどれだけボロボロでも、相手が居なくなった時点で自分が立っていれば勝ちだ。もちろんそんなことを何回も繰り返す訳にはいかないから敵を再起不能にすることは多いが…
「なら、そのうち誰かを捨てなければならないってなったらどうする?」
「?そんなの、みんな守るさ。」
不正解だ。この場合は皆守るではなく、元凶を叩き潰すだ。…さっきから考えてることが支離滅裂だが、『守る』ということ自体が曖昧で抽象的、そして柔軟な思考の切り替えが必要な事だと思う。
「…そうか。分かった。じゃ、お前らも一応早めに休めよ。」
「あぁ、じゃあな神無。」
「…ちゃんとティナに謝っときなさいよ?」
「改めて感謝する、神無」
そう言葉を残して3人は出ていく。…さてと。
「…起動。」
首に下げているネックレスにあるスイッチを入れ、起動させる。すると、ディスプレイと空間投影型キーボードが現れる。
「…フランスとドイツ…か、…
フランス政府と女性権利団体、デュノア夫人…か。」
布仏神無
歳・15
身長・178
体重・75
対暗部用暗部組織『更識』に仕える『布仏』の当主。護衛などではなく、外交、取り締まり、政府への威圧等日本と更識を世界で有利な立ち位置に立たせるのが主な仕事。
楯無や政府高官などでなくても仕事を受けることもある。その時はそれ相応の報酬を貰っている。
ちなみに、篠ノ之束の報酬は『世界各国の不正、悪事についての情報と証拠』
優先度
楯無>先代楯無>依頼主
依頼は基本受けるが、楯無の一声で依頼内容を変えることもある。