科学と非科学の歯車   作:グリーンフレア

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やはり長かったので分割しました


ACT.11 取り扱い注意な箱

 ---4月17日 夕方---

 

 昼前から始めた今後の活動に使えそうな物の捜索回収作業に、一定の目処が付いた頃にはすでに日は傾いてきていた。

 この日で活動拠点周辺の倉庫群一帯の約半分を物色でき、成果はまずまずで昨日コンテナから入手した工具とはまた別種の工具類、各種ボルト類、幾つかの文房具、様々な材質のロープと大小様々な布、多数の少し傷んだダンボール、車輪が一つ擦り減り不安定な台車、古ぼけたトレンチコートといった代物を回収し、今はそれら収穫物を拠点の地上階に並べて用途別に仕分けている最中だった。

 

 今回の活動で調べた建物の一部には何かの作業所や小さな工場もあり、多種多様な工作機械が放置されここ数年は使われた形跡はないものの電気を流せば使えそうな様子で、また後日改めて調べる運びとなる。

 

 他にも6つの金庫を見つけその内の2つは現金が入っていそうな物もあったが、その2つを含めた5つの金庫がダイヤル式のため解錠は一時保留。残る1つはテンキー式の電子錠で回路が生きていたので開けることが出来たが中に入っていたのは帳簿や期限切れの契約証と、要は紙クズばかりで目ぼしい物は無かった。

 

 

 

 一方、青葉はアイラの誘導と指示で昼頃には問題無く目標地域へと侵入していた。ターゲット(部活動スケジュール)のある建物は把握しているだけで8ヶ所。保存されているPCの具体的な位置も判明していたが、各施設を部員や顧問であろう人達の出入り相次ぎその出入りの合間を縫ってデータを回収していたため、日が暮れ始めた現在になっても後2ヶ所のデータ回収がまだ終わっていなかった。

 

 

 一通りの仕分けが終わりそれぞれダンボールに入れ、後は青葉の帰還を待ってデブリーフィングだけだった。

 因みにアイラと青葉はただの回収作業では無くなった(スニーキングミッション開始)時から共同戦術ネットワークの会話グループを分けて雑談ばかりしている月光達と混線しないようにしていた。

 

 

 

『さて、超に接触するのに役立ちそうな物は回収したけど、まだ色々残されてたから今後の作戦次第ではまた漁りに行くかもしれないね。』

 

『もうあんな所には行きたくないニャア・・・。』

 

『ほんとニャよ。さっきの倉庫で隊長がもうちょっと丁寧にやってくれたらこんなに汚れなかったニャ。』

 

 

 

 アルビレオが言うのは、この日最後の倉庫にて月光が積まれたダンボールに被る塵や埃が積もったシートを除ける際の事。

 リトルチェイサー達TRIPODではこのシートを塵などがなるべく舞わないように退けるのは難しく、月光がアイラの姿勢制御サポートがない中で片脚を使い手伝っていたがバランスを崩し一歩分跳ねてしまい、その拍子に大量の塵と埃が舞い上がりその場にいた全員が被害に遭ってしまった、というのが今回の顛末である。

 

『それは本当に悪かったって。』と2回目になる謝罪をしながら今回の収穫物の一つであるハタキをワイヤーアームで掴むと、アルビレオのTRIPODのアーム付け根部分に溜まった塵を払う。

 

 スピカも死角になっている同様の場所を払ってもらうべくアルビレオの後ろに並び自分の番を待っていた。

ベナトナシュは隊長に迷惑を掛けるわけにはいかないと言って、別のハタキと未開封の安物タオルギフトで器用に機体全体を拭いていった。

 

月光の手が届きにくい機体上面のボディユニットとヘッドユニットの接合部分に溜まった塵などを、先に掃除が済んだリトルチェイサー達に頼み掃除してもらっていると、アイラから「青葉は7つ目のデータを入手し現在は最後のターゲットへ移動中」という報告が入る。

 

 それからしばらくして、M2重機関銃のメンテナンスとTOWランチャーの扱いを相談していた時に再びアイラから報告があった。

 

 

『全ターゲットを入手したので青葉には帰還するように指示を出した。後15分ぐらいでこっちに着くと思う。』

 

『了解。それじゃ、2人のグループをこちらに統合するね。』

 

 

 別々にしておいた会話グループを結合しようとした時アイラが待ったをかけた。

理由を聞くと、

『無事に帰還するまでがスニーキングミッションなので。』

という事だったので結合は青葉が戻ってきてからにするとした。

 

 

 

 ちなみにTOWランチャーについてはトップアタック能力も付与されているが使い所が非常に難しく、加えて何かしらのダメージで誘爆する可能性も0では無いため下ろしてしまった方がいいのでは、という事になった。

 

 しかしTOWを全て下ろすとなると、それはそれで別の問題が出てきた。

それは機体のウェイトバランス(重量配分)、重心点の位置である。

機体中心に対して武装等による多少の重心のズレは修正できるが、極端なものになると機体の一部に負荷がかかり続けたり大跳躍の際にはバランスを崩しやすくする等、大きな問題があるためなるべく重心は機体の中心から若干下辺りに近いようにするのがベストだった。

 

 スピカの提案でTOWの代わりに昨日コンテナから回収したIRVING用M2重機関銃を取り付け、元々装備していた方のM2から弾薬の半分を移してバランスを取ろうという方向で話が進んでいたが、月光が「非殺傷弾が使えるMGL140を装備したい」との意見で話が長引き始めていた。

 

 

 

 

 そうこうしている内にシャッターを少し開けて青葉が拠点に帰投したので装備換装の件はまた今度となり、会話グループの結合後まずは持ち帰られた各種部活動スケジュールを精査する事にした。

 

 部活ごとにスケジュールの描き方に差があるものの、7月22日から学園全体で夏休みに入るのは間違いなかった。各部のスケジュールから行事等の原作に関係する情報をまとめた所、中等部3年生24クラス中14クラスから29人が8つの部活にそれぞれ所属していていたがその中に3-Aの生徒はいなかった。

 

 修学旅行については1学年あたりの人数が多い様で4月14日~18日(前半)4月22日~26日(後半)と分けられていたが、15日にネギとエヴァンジェリンの決闘があり原作ではその後に修学旅行編だったので3-Aが京都に行くのは4月22日からとほぼ特定することができた。

 

 あと5日とあまり時間が無くベナトナシュが修学旅行に介入するかも含めて、これからどうするのかを月光に尋ねると短い呻き声を上げ数十秒程の沈黙の後、まずは修学旅行編をどうするか伝える。

 

 

『修学旅行については結論から言うとスルーしようと思う。理由は色々とあるけど主なのは、長い目で見てもあまりメリットがない事・危険である事・移動手段の事かな。とにかく今は学園祭に向けての下準備に力を入れた方がいいかも。』

 

 

 サポーター全員はスキットの画面を介して月光に注目し指示を待っていた。

その視線にプレッシャーを感じながらも3-Aが京都に行ってしまう5日後まで出来る作戦を組み立てる。

 

 幸い接触するための手段は複数出ていたのでそれを元に、作戦の成功目標は"修学旅行前に超一味と協力体制を構築する"として、超一味に多くのレスポンスタイムを与え彼女達の予定を作りやすくする為にも今夜か明日の明け方までに"荷物"を一味の誰かに届ける。

 そしてメッセージと合わせて入力する返信方法で返信してもらい、修学旅行出発前に面会する機会を作って交渉をしたい、というのが月光の考えるでそれをサポーター達へ伝え、次に即興で考えた役割を各自に振り当てる。

 

 

『まずターゲットの超・葉加瀬・茶々丸ら超一味へ接触する算段を伝えるね。

彼女たちと面会するためのメッセージだけど・・・・・・、自分とアイラと青葉で午前中のミーティングの内容を元にメッセージを作る。内容のチェックが終わり次第パスワードの設定とその暗号化をして完成。

これに掛かる時間が早ければ早いほど作戦の選択肢が増えるから頑張ろう!』

 

『わかった。』『了解です!』

 

『それからリトルチェイサー達には超一味を無理のない範囲でマークしてほしい。

えーーと、そうだね・・・。

ベナトナシュは3人の内誰かいる可能性の高い屋台"超包子"の偵察、スピカは3人に関係の深いロボット工学研究会がある麻帆良大学工学部の研究開発棟を監視、アルビレオは麻帆良女子中等部校舎周辺の偵察に行くように。

密に連絡を取り合って超一味の誰かを必ず見つけ、事情許さば尾行で。

嫌な予感な雰囲気を感じたら退避、とにかく自身の安全を第一に。』

 

『了解だニャ。』『らじゃーニャ!』『りょーかいニャ!』

 

『銃の使用は厳禁だからもしもの時はこれを使って逃げるように。』

 

 

 そう言うとカーゴスペースからフラッシュバンを取り出し、今の作戦の準備を中断して月光の所まで来た順に1つずつ配る。

 リトルチェイサー達はフラッシュバンを受け取るとそれぞれの空いているカーゴスペースへと仕舞い、作業の続きに戻っていった。

 

 

『自分達の方で"荷物"ができ次第、超一味にアプローチするけど誰が何処にいるかはその時でないとわからないから臨機応変に行くけど、"荷物"を渡すターゲットが決まってもリトルチェイサー達は指示あるまで持ち場を維持。

理想的なシチュエーションとしてはターゲットは超本人で周囲に人がいない事だけど状況に合わせて作戦を修正しようと思う。

それからメッセージを書き込んだ記憶装置は緩衝材をたっぷり詰めた箱に入れて、青葉がそれをターゲットの近くに投下して回収されればそれでミッションコンプリート。

回収されなかった時のプランBは研究所か寮のポストにでも入れてしまおうか。』

 

 

 『作戦の概要はこんなところかな。』と月光が一息ついたところで、質問がないか聞くとアイラの手が上がる。

 

 

『メッセージを作り終わって青葉がそれを運んで行ったら私達は後は何をするの?』

 

『あぁ言い忘れてたね。自分達はCP(コマンドポスト)としてここで待機して皆に指示を出して行こうと思う。』

 

『共同戦術ネットワークに視聴覚共有システムっていう機能が何かの役に立てれない?』

 

『視聴覚共有・・・・・・へ~、指定した相手に共有申請を出し承諾された後、監視カメラの管理室みたいな感じにスキットの映像をそれぞれの視野に切り変わるんだね。』

 

『システムを起動したホスト側の視聴覚は基本的にクライアント側には共有されなかったり、他にも切り替え出来る要素がみたい。』

 

『ふむ・・・、動作確認も兼ねて早速このシステムを使ってみるか。 っと、その前に他に質問は?

・・・・・・無いみたいだね。それじゃこれから皆に申請を出すよ。』

 

 

 試しに起動したシステムが全員問題無く機能した事を確認し、これは無線連絡の練習の為にもターゲットを選択できるまでは使わないことにした。

あれこれ作業を終えて時間を見ると19時になろうとしていた。

 

 

『もうこんな時間か。作戦名とか考えてなかったなぁ。』

 

『別に要らないんじゃないかニャ?私達に通じればいいOKニャんだし。』

 

『甘い!甘いですよアルビレオさん!こういうのは雰囲気が重要で、その次に他の計画や作戦と判別出来るようにするのも大切なんです!』

 

『ちょっと順番が違う気がするけど青葉の言う通りニャ!』

 

『何でもいいが、19時開始ならもう時間はないニャ。』

 

『もう"オペレーション・メッセージ"で。決める時間が勿体無いので。』

 

『定時まで10秒も無いのでこれは議論の余地無しですね!』

 

『ぐぬぬ。・・・ちょっと悔しいけど現時刻ヒトキュウマルマルをもって"オペレーション・メッセージ"を発動。とにかく各自行動開始!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 今回これの執筆時には結構な回数で「ときめきポポロン♪」の動画を作業用BGMとして聞いてましたが、時々映像の方も見ないと何かの成分が足りなくなってしまってる気がします。
私のディスプレイがノングレア処理されたものでよかったです。
何が嬉しくてにやけまくってる自分の顔見なくちゃならんのでしょう。

 所で今作の執筆中あまり平行して秋刀魚漁があまり進んでいませんでしたが明日、明後日で20匹集めてみせるつもりです。秋グラは皆最高でしたね永久保存ですよ。艦これ運営陣には、もっと色んな艦娘達に限定グラを実装していってもらいたいものですね。

 それはさておき、今回はあまり読みなおしていないので後々幾つか修正が入ると思いますが、何卒よろしくお願いします。
しかしスピカとアルビレオを加えた会話描写でこの2人どう差を付けるかは中々大変です。


 次回、作戦突入です。

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