前話の投稿から2回ほど挿入投稿でご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。
それでは本編どうぞ。
---4月19日 朝---
『それじゃ今日の予定を伝えるよ。』
昨夜の警備当直であるスピカに起こされた月光が、全員の起床を確認すると色々と書き込まれた部活動スケジュールを示す。
『とは言っても"
昨日のトンネルとその周辺の調査は月光の合流後にも続けられめぼしい物は残されておらず、本来なら会合の指定日時までは地下下水道への出入り口の捜索等に費やすつもりであった。
『だから今日は予定無し、みんな自由行動で!それじゃ解散!!』
『休みか。武器の手入れでもするか。』
『あっベナト君、私も一緒にいいニャ?』
『外行くニャアアアアアアアアアアアアアアアア!』
『青葉、空中散歩してきます!』
「自由行動」の一言でサポーター達が思い思いに休日を過ごそうとする中、特に喜んでいる青葉とスピカは我先にとエレベーターへ乗り込もうと飛んで(転がって)いった。
2人の予想以上の喜び具合に呆気に取られる月光だったが、アイラの呼掛けで注意事項があったことを思い出す。
『分かってるとは思うけど人目に付かないように十分気を付けるように。』
『勿論です!』『分かってるニャ!』
返事をするとエレベーターで行くよりも飛んで行った方が早いという話になり、スピカが青葉にぶら下がるとそのままエレベーターシャフトを上昇していった。
『2人は会話グループを別にしておくね、多分うるさいと思うので。』
『ん、ありがとう。丁度そうしようと思ってたんだよね。』
隔離直後、2人から苦情があったが「うるさいから。」という説明で済ませて通信を切り、殺風景な地下室を見渡す。
『さて、時間もたっぷりあるし何しようかな。』
『わざわざ活動して過ごすより、明日の朝まで休眠モードで待っていてもいいと思うのだけど...』
『確かにそれでもいいけど、やっぱり何かしてたいんだよね。』
『私にはよく分からない。』
『そっかぁ…。』
(夜間警備の当直表だったかな。 あれを作るのと同じ気分だと思うけれどなぁ。)
月光の考えはいまいち伝わらず、アイラは何か考え込んでいるようで会話が途切れてしまう。
ベナトナシュとアルビレオは何か話しているようで気になったが、2人の声が小さく会話を聞き取れずこちらの声も聞こえていないようで諦めた。
(サポーターも人間じゃないけれど人格だとか個性がある訳だし、気になるけど無理に聞きにいくこともないか。)
後で知るのだがこの時2人は「私達の話し声も邪魔になるのでは」と考え、音量調節や距離による声の聞こえ方の設定と自分達の名が呼ばれた時にその相手の声が聞こえるようにすると言う機能を考えて、それらを試行錯誤している最中であった。
そうとは知らない月光は会話が続かなかった気不味さに、ふと目に入ったmod.GODのコンテナを覗く。
コンテナの中にはスピカが弄り回していたMGL140と、数発のグレネード弾が弾薬箱の上に放置され、その隣には弾無しのM2が装着されたIRVING用RWSがあった。
それらを見た月光は以前に計画していた装備換装に役立てれないかと思いRWSを観察し始める。
アイラによると横から見て「の形と例えれるIRVINGのボディパーツと武装を接続する部品はマウントプラットフォームという物と判明。
これを2つ連結させた物を基台とし通常、側面にスモークディスチャージャー・TOWランチャー・自爆装置その他を取り付け、上面にはRWSやECMアレイユニット等を取り付け可能で規格さえ合えば様々な物を装備出来るようだった。
RWS自体はこちらも規格が合う物であれば少しの改造と調整でM2以外の銃火器が使用できる汎用性を備え、架台に1箇所のハードポイントが設けられ、初期装備の今は4連装スモークディスチャージャーが装着されている。
M2が取り付けられているRWSの銃架真下には照準器とレーザー測距儀があり、照準がM2の指向する方向と一致するように付いていた。
M2とRWSがどのように連動しているかも説明を受け改造計画を具体的に練り、それが可能だとわかると直ぐに行動に移す。
作業はクレーンが設置されている地上部で行うため、工具箱、大小様々な鉄材と鉄屑、ダクトテープや針金といった材料をMGL140等が入っているコンテナへ入れていると、ベナトナシュ・アルビレオが「こっちでも使いたいものがある」ということでナイフやその他幾つかを材料を持って行った。
地上に上がると邪魔になりにくそうな場所に向けてエレベーターから引き摺り出そうとした所で、金属が擦れる時に出る嫌な音が響き咄嗟に手を止める。
『エ、エラー…。これは聞いてはいけない駄目な音なので…。』
『機械の身体になってもこの音は駄目かぁ。』
人間にとってこの手の音は本能的に危機感を持つ音、と聞いたことのあった月光は、自分とサポーターに人間の感性がそのままあるらしい事を嬉しく思っていた。その一方でアイラは涙目になりつつ顔面蒼白といった感じでフリーズしていた。
一応底面がどんな状態になっているのか確認のため、天井クレーンでコンテナの縁の内側にあったフタ固定用の窪みを利用して片側を持ち上げる。
案の定、コンテナの塗装は剥がれ少し表面が削られた状態となっていたが、新しい発見もあった。コンテナ底面の角に小さな蓋のような物があり、それは四隅と長辺の丁度真ん中に付いていた。ワイヤーアームで押してみてもびくともしなかったが、何かギミックがあると月光は踏んでいた。
『このコンテナはかなりハイテクなので、端末にアクセスしたら何か分かるかも。』
『普通の人だったらどうやってテンキーだけの端末でギミックを操作するんだろう?』
『電子錠の金庫なら同時押しの組み合わせ等で色んな機能を使えるようにしてたみたい。 あ、ギミックってこれかも。』
アイラに端末へアクセスを任せていると、それらしきものをシステム内で見つけたようで早速実行させる。
しかし、そのギミックは只のコンテナ開放用のコマンドで、上面の蓋は既に開き切っている為モーターが過負荷で異常な音を立てる。慌てて止めたがモーターは取り敢えず損傷せずに済んだ
『あービックリした。もうちょっと慎重に頼むよ…。』
『ごめんなさい。 で、でも今度は間違いないので!』
次にアイラが見つけたコマンドはどうやら正解のようで、移動用キャスターを展開させる一連のコマンドだった。実行させてみると底面の蓋が開き、ガッチリとした双輪のキャスターが計6ヶ所から出てきたので、クレーンからコンテナを降りしてみる。
キャスターを展開したコンテナはその大きさにも関わらず、人一人で簡単に移動される程度までになった。他のコマンドにはキャスターへのブレーキの掛け具合を0~10段階で調節出来るという機能があり、今は全くブレーキが掛けられていない「0」にされていた。
移動が格段になったところでRWSの改造に取り掛かれるよう、コンテナを壁に寄せてキャスターを収納させると材料等を取り出し、生体維持パックを座布団のようにして座り両足を使えるようにした。足回りの広い可動範囲のお陰で出来る芸当である。
全ての準備が整い、早速RWSの改造に取り掛かる。
まずはM2をRWSから取り外すことから始めた。。
M2は第1次世界対戦後にアメリカで制式採用後、世界で広く使用されながら様々な改修を受け、重機関銃の定番として現代でも第一線で運用されている名銃である。
それを遠隔操作、ましてや無人兵器が運用するのでそれなりの改修がなされていた。
しかしそこはさすが名銃。基本構造は大きく変わっていないようで、IRVINGに記憶されている知識を管理するアイラの指示を受けながら無事RWSからM2を分離することに成功する。
次にMGL140の取り付け。
これは南アフリカで開発された装弾数6発の回転式弾倉を備えるダネルMGLの改良型となる。
RWSへの取り付け方法はストックを伸ばし、それをM2が装着されていた所に置く。落ちないよう片足でMGL140を支えながら、ストック両脇の架台との隙間を色々な材料で埋めるとRWSとMGL140の可動部に干渉しないようにワイヤーと針金で固定させる。
再装填は回転式弾倉とスイングアウト機構の特性から特に架台との干渉はなく、試しにRWSにワイヤーアームで通電・操作してみると旋回と俯仰共に正常に動作することも確認できた。RWSとMGL140のトリガーとの連動はM2装着時に使われていた機構をそのまま応用することで解決する。
ここまで順調に改造を進めてきたが、1つ重大な問題が残されていた。
それは精度である。
今になって見つかった"IRVING用RWS整備マニュアル"よると本来は曲射を想定しておらず、当然山なりの弾道となるグレネードランチャーの照準は付けようがなかった。しかしそこはアイラによってMGL140と40mmグレネード弾の諸元を元に新たな照準データを作り出すことで照準の問題はクリアする。
だが根本的な問題として照準と銃口のズレがある可能性が高かった。
多少の知識があるだけの素人が、有り合わせの材料と大体の感覚で改造をした装備なので多少の誤差は出る事は承知の上だったが、ここまで出来上がった物を見るとRWSとMGL140の中心線がパッと見でズレていた。
目で見て分かる程のズレは流石に見逃せなかった月光は修正に取り掛かる。
取り付け部の固定を少し緩ませて物を挟んだりズラす等して上下左右の微調整を繰り返した末、丁度同軸となった所で発砲時に動かないようしっかりと固定し直す。
作業が終わり照準器と銃口が同軸であるのを確かめる。銃口を掴んで動かしてみても動かず取り付け部の固定は緩まず、もう一度中心線を確かめてみるとズレは発生していなかった。
最後に外見の悪さを誤魔化す為、|帆布<<キャンバス>>で取り付け部を覆いダクトテープで固定すると一息つく。
『よし、これで取り敢えずは完成かな。』
『プラットフォームは特に触ることはないので、このままで大丈夫。お疲れ様。』
『早速換装したいと思うんだけど、自分達じゃ無理だよね?』
『無理。 クレーンを使ったとしても着脱にはどうしても補助が必要なので。』
『できればスピカも含めて3人に来てもらった方が良さそうだけど、仕方ないか。』
スピカは諦めて地下にいるベナトナシュ・アルビレオに声を掛けるが反応はなく、視界の隅に縮小されていたスキットの映像はいつの間にか "Sound Only" と表示されていた。
無線機能は外出している青葉とスピカ、そして月光達だけがオンにしているので地下の状況がわからず不安になるが、アイラは
『スキット関係の個人設定で弄っていたようなので、それが原因となり不具合が発生しているのでは。』
と推測し、取り敢えず2人の様子を見る為にエレベーターへ乗り込み地下へと向かう。
この回で会合までの話を終わらせようと思ったのですが、まさか装備関係で丸々1話使うとは思いませんでしたね。大した改修という訳でもないのに・・・。
私事ですが青葉に新規ボイスが実装されてほんとうに嬉しいです。イベント初日は実装されたボイスを聞いて回りましたが、一番テンションが上ったのはやはり青葉でしたね。
改二実装非常に楽しみで仕方ありません。
次回は後半に超一味との会合に入ると思います。