科学と非科学の歯車   作:グリーンフレア

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 「調子が良ければ13日前後」と告知したし、多少はね?


ACT.16 地下水路の会合

 地上に戻った月光はリトルチェイサー2人の協力してもらい、TOW発射機と自作したMGL140搭載RWSを積み替えはスムーズに進行し、FCSと照準の同期も問題無く完了する。

 

 しかし会合時に目立った装備は威嚇するようで不味いのではとベナトナシュの指摘に武装にカバーを被せるか、武装そのものを取り外すか、そのままにするかで意見が割れる。結局武装はMGL140とM2は取り外してM240とカーゴスペースの装備はそのままにする方向で落ち着く。

 

 2基のRWSの取り外し作業中に青葉達が帰還し、クロスボウの修理をする前に作業を手伝ったお陰で予定より早く武装解除ができる。その後に持ち帰られたクロスボウは、材料と設備の問題から直ぐに修理できないと分かると、当面のメインアームにしようと考えてたスピカは残念がっていた。

 

 

 この日の夜、警備当直である青葉が拠点周辺上空に所属不明のドローンを発見するも、休眠中の月光らを起こして対処しようとした所で見失ってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---4月20日 夜---

 

 

 昨晩に飛来したドローンは形状から超一味の物と推測し、再びドローンが来ても手出ししない事として警戒しつつも前日に続き自由行動の許可が出る。

 各自、注意しつつ外出するなど思い思いに過ごしていたが、そのまま何事も無く会合予定の30分前である22:30になると全員集合の後、トンネルを通って目的地に向け出発した。

 

 

 

『いよいよですね!』

 

『心なしかここまで辿り着くのに凄く長かった様な気がするなぁ。』

 

『そんな事はないと思う。超とコンタクトを取ると決めてから80時間ぐらいしか経ってないので。』

 

 

 

 なんとなく数日・数週間どころでない時間が掛かっていたような錯覚を覚えた月光。そんな彼はサポーター達をRWSが取り外され広々とした機体上面に乗せ、安定した足取りで水路を進んでいた。

 

やがて会合予定の場所へ十数分前に上陸したが人気はなく、代わりに以前来た時には無かった電子機器の反応が微かに感じ取れた。

 

 

 

『何か設置されてる。多分カメラか何かだと思うけど...』

 

『どうするんだ隊長?破壊するかニャ?』

 

『うーん、取り敢えずは放置しておこう。昨晩のドローンの件とあわせて確認はするけどね。』

 

 

 

 リトルチェイサー達が降りたところで、特定できたカメラを注視するとその側から小さな看板が出てきた。そこには「Eye Have You」とあり、加えて「今からそっちに行くネ!」とまで書かれてた。

 

 

 

『なんとまぁ・・・。カメラが見つかるのも想定内って事の様で。』

 

『あ、カメラのランプが消えましたね。確かまほら武闘会時の監視室ってこの近くじゃありませんでした?』

 

『となると、もうすぐ来るってことニャね。』

 

『ニャ?足音聞こえない?』

 

『言ってるそばから、ってところかな。ちょっと緊張してきたかもしれない・・・。』

 

 

 

 月光達が来た方角とは逆の方から複数の足音が重なり聞こえてくると、やがて分岐路からそれぞれローブやコートを着込んだ4つの人影が現れる。超鈴音、葉加瀬聡美、絡繰茶々丸、龍宮真名であった。龍宮はこの時期にはまだ超一味と契約していないと考えており、この場にいる事が気に掛かったが後で探りを入れてみようと気持ちを切り替えた所で、超が一番に口を開く。

 

 

 

「你好~。君がリーダーで間違いないカナ?」

 

『ほらほら、今回の事を持ち掛けたのは私達なんですから、しっかりと挨拶しないと、ですよ!』

 

『あ、ああ。そうだった。』

 

 

 軽く咳払いする月光。不安そうに見るサポーターの面々。興味深そうに眺める超一味。微妙な間の後に外部音声出力へと切り替える。

 

 

 

「ええ、そうです。自分の事は月光、と呼んでください。それともう一人・・・。」

 

「二足歩行無人兵器IRVINGのサポートAI、アイラ。」

 

「月光とアイラ・・・カ。私は超鈴音、一応こっち側の代表にということになるヨ!よろしくネ!」

 

「本当に交渉相手がロボットだったとはな。なるほど面白い。」

 

「私が麻帆良大橋で感知したのは・・・。」

 

「やっぱりこの二足歩行機さんだったんだねー。」

 

 

 

 茶々丸と葉加瀬の会話に気になる点があったが、超の協力者の紹介があり、月光側も配下のサポーターの紹介をする。それらが一通り終わると超から本題について、月光(とアイラ)と別の場所で話がしたいと言われる。

 勿論、月光からしても願ってもない事であるため同意し、案内するという超の後に付いて行く。留まるサポーター達へ待機を指示してその場を離れると、葉加瀬の質問攻めにあっている彼女達のSOSがスキットシステムを介して聞こえて来る。

 だがアルビレオとアイラが完成させた立体音響機能を実地試験として起動しており、仕様通りきちんと動作しているようで、やがて残されたサポーター達の声は聞こえなくなっていった。取り敢えず救援要請の返答に『神様の2通目のメールにあった注意点に気を付けて答えてあげてね』とチャットを送った。

 

 

 

 

 

 道中、前より気にしていた脅迫めいたメッセージについて詫びたが、「大して気にしていないネ!」と言われ安堵しその後も計画をバラす気は更々無かった事などを話している内に、分岐路や曲がり角をいくつか曲がりしばらく進んだ先で突然、超が立ち止まる。その場所の壁に月光は何か違和感を感じたが、アイラは気付かないでいた。

 

 

 

『何もないのにどうしたの?』

 

『さぁ?でも壁に細工があるっぽい。まあ、聞いてみるよ。』

「どうされたのですか?」

 

「月光サン、アイラさん、ここの壁を見て気づいた事は無いカ?」

 

「これは・・・。うーん、何かあるとしか分からないですね。」

 

「私には何も。」

 

「まぁ、無理はないネ。高位の魔法使いも欺けるよう設計したカモフラージュだからネ。」

 

 

 

 そう言って壁に右手を付き小声で何かを呟くと、手を付けている壁の一面がノイズが掛かって消えてしまい、代わりに現れたのは両開き戸だった。

 

 超の誘導でギリギリ通れる扉を潜ると、そこはさっきまでいた下水道とは全く雰囲気の違う清潔な、病院や研究所のような廊下になっていた。勝手に扉が閉まると壁にある装置に手を置いた超が再び呟くと、先の扉から鍵が閉まるような音がする。

 

 

 

「これでここは完全な密室になたネ。外に声が漏れることは一切ないから安心するといい。」

 

「それは助かります。しかしこんな廊下でいいのですか?」

 

「そこの部屋も使える事は使えるヨ。その体を小さくできたらネ。」

 

 

 連れられて廊下中程の両側にある扉は一方がここに入ってきた時と同じ両開き戸、反対は片引きの自動ドアで月光が通れるものではなかった。ちなみにその部屋の中は暗いがそれなりの空間になっているようで、床には幾何学模様が刻まれており、後に高畑とちびせつなが捕らえられる場所だった。

 

 

「あー・・・、これは無理ですね。間違いない。」

 

「そういう訳だからここで本題に、と言いたいところだガ。」

 

 

 そこで言葉を切ると、ジッと品定めするかのような鋭い目つきで月光を見つめる。

当然、その視線に気付き不審に思いつつも次の言葉を待つ。しかし待っていた言葉は予想外の衝撃を持つものだった。

 

 

「君達は、いや。月光サン、君はどの世界からやったきたのかナ?」

 

「!? それはどういう・・・。」

 

「そのままの意味ネ。あぁ、そんなに警戒しなくても、答え次第でどうこうするつもりは無いヨ!」

 

『月光!どどどどどうしよう!?彼女の方からこんな事聞かれるのは想定外!』

 

『おち、落ち着くんだ。まずは超の真意を確かめ・・・れるのかなぁ?』

 

「ナハハハ、ちょっと混乱させてしまったようだネ。腹を割って話したいから口調や呼び方に気を使わなくてもいいヨ。」

 

「それじゃあお言葉に甘えて。しかしまぁ、この際だから全部話しちゃいますか。」

 

 

 元々この件は話すつもりだったがそれが少し早くなっただけと考え、いわゆる前世は麻帆良学園が無い世界から神様転生をしてきた事、その前世での漫画等のメディアからキャラクターや実在する物も含めた無人兵器をサポーターとして連れている事を告げる。

 その話を超は特に驚くような反応を見せず、静かに聞いていた。

話が一段落し冷静な超の様子を見たアイラに、ある一つの可能性が思い浮かぶ。

 

 

「もしかして、超は転生者?私達の話を聞いても全くリアクションが無いので。」

 

「あー。憑依転生者とかなら即身バレしてもおかしくは無いかも。そこの所どうなので?」

 

「フム、面白い考えだけどハズレ、正解はパラレルワールド出身ネ。君達に分かりやすく言えば"原作"から飛ばされてきたネ!」

 

「ん?ちょっと待って。"原作"とか飛ばされてきたって言うのは・・・?」

 

「簡単に説明するが、少し長くなるヨ。」

 

 

 今、月光の前にいる超は原作通りの未来の火星から歴史を改変するべく来た筈だった。しかし実際にカシオペアを起動して到着したのは、目的の時代ではなく平行世界だった。何の因果か異世界への次元跳躍してしまい、その後も勝手にカシオペアが起動して次元跳躍を繰り返す。

 跳躍後の滞在期間はバラバラで跳躍の前兆に気付いてからは跳躍する先々で身に付けた技術で、この原因を解明しようとしたが叶わなかったらしい。

 

 結果として超の記録では数十回もの跳躍の末、最初の跳躍から丁度1年後にこの世界線に到着しカシオペア初号機が機能停止してしまう。跳躍している内にひょんな事から"魔法先生ネギま!"を、自身が居た世界線を物語として描かれている事を知る。しかし彼女の計画は、

 

「私はあの世界を、この世界の悲惨な未来を変えるためにここへ来た。エゴだと言う者もいるだろう。絶対的な悪だとする者もいるだろう。それでも私は歴史を変える。元の世界の平行世界であるここで計画を決行すると決めたからには、別の在り得たかも知れない世界線や計画の成否とその未来を知る必要は無いネ。」

 

と語り確固たる信念と覚悟で実行されているこの計画には不要な情報だった。

 

 

 跳躍先の世界は実に様々で月光の知っている世界線もあれば、そうでない所もあった。特にMGSシリーズはこの世界線に存在せず、他の世界線で知ったと付け加える。また、平行世界については葉加瀬達には話しておらず、今後もバラすつもりは無いという。自分についての話はここまでと言わんばかりに一息つく。

 

 

「もしかすると私達の活動も、何処かの世界では作品として存在する?」

 

「さぁ?どうだろうね。そもそも毛色の違い過ぎる異様な組み合わせだし・・・。」

 

「無数の平行世界のどこかに一つぐらいあると思うガネ。」

 

 

 

 また超は麻帆良大橋近くでエヴァvsネギの戦闘を観察している時、同じ目的の月光達を発見し麻帆良学園侵入時に既に彼らに気付いていた事を明かす。別世界線の架空兵器の存在に興味を持ち探していたが、結局月光達からコンタクトがありこれ幸いだったという。

 

 そして話題は、互いにデメリットが無い事を前提にようやく交渉へと移る。

 月光の要望はネギパーティーへの合流の手助けと、後世に備えての学園外とのコネクションの確立。本命は前者についてネギの力になる事を伝え、超は他に幾つか質問し月光の考えを確かめると快諾する。その一方で、後者は出来なくは無いが確約は出来ないというだった。

 

 対する超の条件はネギとその仲間たちの実力を計測し、もしもの異常が発生した時は密かにネギパーティーを支援するという一点のみ。その目的は月光のようなイレギュラーが発生している、この世界線でのネギパーティーがどの様な成長を果たすのか、を記録するものだった。

 これを拒否する理由はなく、むしろ原作のストーリーを比較的間近で見届けれる事もあり二つ返事で引き受ける。

 

 

 

『ねぇ、月光。さっき言ってたイレギュラーってもしかして・・・。』

 

『イレギュラー?・・・あぁ!ダーカーか!すっかり忘れてた。』

 

『・・・・・・重要な事だったんじゃ。』

 

「あー、所でイレギュラーについてなんだけど。」『・・・。』

 

「フム、後で話そうと思ていたガ。二人はダーカーを知てるカ?」

 

「まぁ前世にゲームで戦ったことがある程度の知識だけどね。宇宙の敵だとか生物や機械問わず侵食するとか。」

 

「そこまで知てるなら話が早いネ。元いた世界、原作にはいないはずの勢力。幾つか世界線でゲームで触れたり実際に遭遇するなどで奴等を私なりに調べていたネ。そして3年前にこの世界に辿り着き、ここにもダーカーがいることを知てからは入学までの1年間をダーカーや現実・魔法世界の歴史の差異を調べたヨ。」

 

 

 

 詳しい情報は後日提供される事になるが、調査結果を簡単に説明してもらう。それによると1996年初頭に魔法世界で出現が確認されその後、何処からとも無く"ダーカー"の種族名とそれに属する名前も与えれていった。歴史自体はダーカーの存在以外は原作通りと言える。

 

 

 

 その後、必要であれば互いの技術供与と近い内に双方の拠点を案内すると約束し、超一味が使っている秘匿性の高い専用通信網へのアクセス方法も教えてもらう。ふと視界の端に見えた時計を見ると既に日付が変わっていて0:20になろうとしていた。

 

 

 

「今日は月曜日だしあまり夜更かしする訳にもいかないだろうから、今回の会合はこんなところかな?」

 

「気遣いありがとネ。いやはや、とても有意義な時間だたヨ。」

 

 

 そう言いながら満足気な笑みを浮かべ右手を差し出してくる。握手に応じるべくワイヤーアーム伸ばすと、超が直径2~3cmのそれを握る。

 

 

「ム?このアーム、意外とガチリしてるネ。」

 

「ここも主に人工筋肉で出来ているので。」

 

「マニピュレーターもこんな風に動かせるんだよね。」

 

 

 握手を交わし終えたアームの先端からマニピュレーターをいっぱいまで伸ばし、素早く三つ編みにしてみせる。

が、先端同士が引っかってしまい自分でそれ解くことができず、超が小さく笑いながら絡まったマニピュレーターを解いた。

 

 最初に会った会合予定地点に戻る途中、倉庫群に飛来したドローンについて尋ねるとやはり超が飛ばした物で、クロスボウを回収した無人機2機(青葉とスピカ)が飛び去っていった方角へ真っ直ぐ飛ばしてみたが月光達の拠点は見つけれなかったという。また、既に龍宮が超一味にいる理由も訪ねてみると、学園祭での計画発動時には先約を入れておく為に2年前から長期契約を結んでいるそうだった。

 

 

 

 戻ってみるとTRIPODの1機(アルビレオ)をペタペタ触ったり軽く叩いてみたりしている葉加瀬と、その様子を見守りながら他のサポーターと話をしている茶々丸・龍宮の構図ができていた。

 双方の代表者が戻ってきたことでその構図も崩れ、この場に到着した時のような状態に戻り両グループがお互いに向き直る。

 

 

 

「次の会談はまた私の方から連絡するネ。それでもよろしいカ?」

 

「こちらは多分、暇を持て余してるだろうからいつでも大丈夫だよ。」

 

「分かたネ。明日から修学旅行だから早めに連絡するヨ。それでは再見~。」

 

 

 

 超と共にわざわざ場所を変えてまで、彼女と何を話してたか主に青葉に問われ、超の素性やこの世界におけるダーカー等をアイラと説明しながら拠点への帰途につく。




 ようやくここまで漕ぎ着けることが出来ました。
予定では修学旅行と学園祭の間はテンポを早めにしたいと考えています。




そろそろ麻帆良がドンパチ賑やかになる回を用意したい所です。

次回は超の頼みであることをします。

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