科学と非科学の歯車   作:グリーンフレア

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転生初日なのに2話分消費するというのは如何なものなんでしょうか。
Act1・Act2を結合再構成も考えないといけませんね。

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1話の編集に伴い一部文章の改変


ACT.2 遠すぎた街

 日が落ち薄雲が少し掛けた月を覆う空の下、人口の明かりもない山林野中は月明かりが弱いこともあり非常に暗い。

 そんな中、奇妙な足音と僅かな振動を響かせながら歩く物体があった。

神様転生で体が無人二足歩行兵器IRVINGとなった、コードネーム:月光である。

そんな彼は暗い獣道の中でもとても上機嫌だった。

 

 

 

『♪~♪~~~』

 

『私の顔が見えるというのは、そんなに嬉しいことなの?』

 

 

 

 グラミー賞をゲーム音楽として初めて受賞し"廃人達の聖歌"の異名を持つオープニングソングを口ずさむ月光に尋ねているのは、元々このIRVINGの制御AIで今は彼のサポーターとして機体の補助に当たっているアイラだ。

月光の生前の記憶の中にあるアニメキャラから再現され、神様によってAIに宿された人格である。

 そんな彼女の少しだけ不思議そうな表情が、視界の隅にあるワイプ画面から見れるようになっていた。

 

 渓流から最寄りのサポーターに向け移動し始めて数分後、アニメで観たようなアイラの反応を脳内補完ではなくしっかりとこの目で見たいと思いからアイラの顔をワイプで表示できないか相談し実現したシステムだった。参考にしたのはあるRPGゲームでの小イベントで使われることの多く、寸劇という意味を持つ"スキット"と言うシステムである。

 ちなみに、この画面の主導権は基本的にアイラにあり機嫌が悪い時など回線を遮断し、CALLが掛かってきても拒否出来るようになってたりする。

 

 

 

『そりゃもう!』

 

 

 この喜びを抑えきれずしゃがみながらの移動でも若干速度が上がり、目的地までの到着時刻と残り距離の計算が徐々に更新され始めていた彼は即答した。

 

 

『アニメであのとてつもなく可愛らしいポンコツぶりや本当は感情豊かなところが、自分にとって都合良くなりがちな脳内補完ではなくこうやってアイラ自身が表す表情として見れるというのはとっても嬉しい!』

 

 

 

 熱弁の後、アイラの方を見てみると恥ずかしさのあまり真っ赤になった顔ではなく"NOT CONNECT"の文字。

 

 

(あれー・・・?これは、なに?機嫌悪くなってしまった?あまりにも恥ずかしるぎて?どうしよう・・・。)

 

 

 どうしたものかと月光は悩んでいたが、突然回線が復帰し若干顔が赤らみ眉と口が力んでなにか堪えるような表情のアイラが映し出された。

 

 

 

『えーとアイラ、その、なんかごめn『エラー。よく聞き取れませんでした。』さっきのって『エラー。よく聞き取れませんでした。』あー...』

 

(これはさっきの件については触れるなと言う事なのか?)

 

『えと、最寄りのサポーターまでは後どのくらいなのかな・・・?』

 

『・・・後257m、このまま真っ直ぐ進んだ所。』

 

 

 

ルートも距離も到達予想時間も月光の視野上のラインやチェックポイントに表示されているがアイラは淡々と質問に答えた。

 

 

 

『じゃあ少し急ごうかな、そのサポーターというのも少し気になるしね。』

 

 

 アイラとのちょっとばかし微妙な雰囲気に居ても立っても居られなくなったため、通常の立ち姿勢の駆け足で移動し今の状況を誤魔化すことにした。

 幸いにも渓流付近よりも木は背の高い針葉樹がこの一体に群生しており、月光が立って移動するのに問題はなかった。

 

 

 

 

 

『ここが目的地か。』

 

 

 250mほどの距離は月光にとってはすぐで、目の前にはガイドラインの終点が点いた小さい山小屋があった。

 小屋は月光の立ち姿勢と同じぐらいの高さで大体3mほど。センサー等で人気がないことを確認し板戸をマニピュレータで開け、しゃがんだ体勢からサブカメラで屋内の様子を窺うと、1畳半ほどの土間と塵やら埃やらカビで傷んだ6畳ほどの畳の空間になっており、その畳の間にはどう見ても戸口からは入らない新品で場違いな金属製コンテナが置いてあった。

 

 

 

『これどうやって回収すればいいんだ?』

 

『小屋を壊したほうがいいと思う。かなりの期間使用された形跡がないので。』

 

『壊っ!? うーん、そうだなぁ。 見た感じあのコンテナは手前側にある端末を操作してどっかが開く方式なんだろうけど、どのみち壊さないといけないかなぁ。』

 

 

 アイラの提案通り山小屋を足蹴りで破壊してコンテナを取り出すことにし、小屋から少しだけ距離を取った。

 まずは右脚の回し蹴りで屋根を蹴飛ばしたがその勢いで壁も一緒に倒れ、元々基礎が貧弱だったのか腐っていたのか残りの壁も相次いで倒れる。

それにより、周りにはコンテナを開放するのに邪魔になりそうな物はなくなった。

 

 

 

『なかなかの威力だねぇ。あまり力を入れたつもりはなかったけどここまでとは。』

 

『軍用トラックぐらいは簡単に蹴り飛せるのでこれくらいは余裕なので。』

 

『魔法使える敵とかに物理攻撃はどれくらい有効なのやら。 まぁ早速コンテナの開けてみますか。』

 

 

 

 ちょっと傷んでいた山小屋を蹴ったとはいえ、これほどの破壊力を持つなら対人戦はもう少し弱めにした方が良いかもしれないなどと、今後あるであろう戦闘について想定しつつマニピュレーターをコンテナの端末に近づける。

 黒一色で何も書かれておらず、全辺が少し出っ張っているほぼ正方形のコンテナに唯一ある端末には、0~9までの数字とBackSpace、Enterの12キーからなるテンキーとその上に入力された数字が表示されるであろう小さな液晶画面が付いていた。

 

 

『メタルギアMkⅡみたいに、どっかに接続すればいいのかな?』

 

 

アイラにどうすればいいか尋ねると、予測があってたらしく頷いて答えてくれた。

 

 

『先端の3本のアームでどんなジャックでも自在にアクセスできる。その後の電子的な部分は私が対応するので。』

 

 

 アドバイス通りにマニピュレーターのアームを本来何に使う物だったかわからない端末右側面のジャックに差し込むと、視界の端で"Now Accessing"の文字とゲージが表示されるがすぐに"System Running....."という表示に切り替わり、これもすぐ消えると"Container Open"という表示に変わる。

 それと同時に小さなモーター音がし始め、コンテナ上面が後方へスライドしながら後面へと位置を変えていく。

 

 するとコンテナの中から、何かが起動したような電子音が聞こえ次に先とは違うモーター音とスズメバチのような羽音聞こえてきた。

月光が小型UAVの類かと予測を立ててると、

 

 

 

「ども、恐縮です、青葉ですぅ!一言お願いします!」

 

 

 

 現れたサポーターは生前にプレイしていたブラウザゲームに登場するキャラを宿す機体だった。

 そのサポーターが宿る無人機は某戦場FPSではMAVという名前で実装された小型無人偵察機で、一時期到底現実的ではない運用ができ当時ウサフラ(ショットガンUSAS-12にFrag弾を装填させた物の蔑称)と並んで忌み嫌われた装備である。

 正式にはRQ-16 T(タランチュラ)-ホークという名称のそれは青葉と名乗りしゃがんでる月光の前で滞空していた。

 

 

 

「重巡洋艦の擬人化を擬機械化とかこれもうわかんねぇな?」

 

「その語録使いやすいからといってあんまり使い過ぎない方がいいと思いますよ? あ、共同戦術ネットワークへのアクセス認証ください!」

 

「アッハイ...」

 

 

 

 少しだけしょげた月光は視界に表示された青葉からの認証要請に対して許可を出す。

アイラが機体説明を月光にした際簡単に説明したが、共同戦術ネットワークは神様が今回月光たち無人機のために構築された情報共有システムで、これに登録されてない機とは外部音声で会話することになる。また、見聞きした各種情報も半自動でこのネットワークにアップロードされる。

 システム自体は月光に搭載されこの地球上にある各種ネットワークを密かに利用することで、大抵の場所でも会話や情報のやりとりを可能としていた。

 

 

 

「登録完了。青葉の共同戦術ネットワークへのアクセスを許可しましたので。」

 

『どもですー! ほうほう、魔法先生ネギま!の世界ですか。』

 

『一通り現状を確認したら今送ったアプリ(スキットシステム)をインストールしてしておいて。自分は青葉の機体スペックみるから。』

 

『キャー!私の体重とかスリーサイズとか見られちゃいますー!』

 

『いやいや、見られるも何もMAVのスペックを見るだけだから…。』

 

 

 

 からかわれつつも青葉の機体の情報をネットワークを経由して閲覧すると、早速気になる部分を見つけた。

 

 

 

『青葉?この機体名"RQ-16 T-HAWK mod.GOD"の"Mod.GOD"っていうのはどういう事?』

 

『それはですね、私をこのT-ホークに宿すためにコンピュータの大幅な増強と、ガソリンエンジンだったのを電気モーターへ改造したのと、月光さんに搭載されている物と同じマニピュレーターと大容量バッテリーの搭載といった改修を神様がしたのでこういうバージョン名になったみたいですよ?』

 

『"mod.GOD"なら月光の機体名にもついてる。私の説明聞いてた?』

 

『そうだっけ…?ま、まぁ何にせよ至れり尽くせり感謝だね。』

 

 

 とは言え、それ以外に大した改造はされていないらしく生前に見たウル覚えのT-ホークのスペックと差はないようだった。某ゲームでのMAVは敵の電子装備品や地雷などを破壊できる装備があったが、実際のT-ホークにはそんな装備はなくここにある物にも装備されていなかった。

 

 

 

『では、私はいつでも万全の体制で出撃できるよう充電させてもらいますね!』

 

 

 そう言うと、青葉は月光のボディユニットに乗りその上面にあるプラグにマニピュレーターを差し込む。

 そんな所にプラグ付いてたのか、などと思いつつコンテナにまだ何かはいっていないか見てみるとフラッシュグレネードが2つ程入っているだけだった。それをカーゴスペースに入れると、2人とこれからの行動について相談してみることにした。

 

 

 

『私は今すぐ麻帆良学園に侵入するほうがいいと思います!けれど麻帆良湖の手前岸は市街地ですし、そこをバレないようにするには結構迂回しなきゃいけ無さそうです。』

 

『それだと今晩中の侵入は無理。全力駆動による負担は生体部品はともかく、その生体部品の性能をカバーしている生体部品維持パックに大きな負担となってしまうと思うので。』

 

『半永久的とは言えまだ活動拠点を持ってない今、補填がきかない機械部品の無闇な消耗はまずいかぁ。』

 

『それと今日のこれ以上の活動は月光の精神的に負担が掛かる。』

 

『自分に負担?うーん、そんなに負担になってる気はしないんだけどなぁ』

 

『実は既に精神的に自身の状態について知覚している部分と知覚できていない部分とで強力なギャップが発生している。そこを私がメンタル面の補助としてそのギャップを強制的に遮断してるので。ちなみにこれは私にもそれなりの負担がかかってる。』

 

『つまりまだ自分は月光になりきれていないってことで起きてる不具合とかが、アイラを含めてソフト面に色んな負担を掛かっているって事?』

 

 

 

 大雑把にまとめたが大体あってたらしくアイラが頷く。加えて時間としては朝まで人間で言う睡眠を取ることになるとの事だった。さっきの話をメモを取りながら聞いていた青葉は何か最後に殴り書きで書き込んだ後、顔を上げ一つの案を出してきた。

 

 

 

『今夜と明日の日中に街の近郊まで移動し明日の夜に麻帆良学園に侵入、というのを考えてましたが月光さんとアイラさんは動けないというのであれば青葉から一つ提案があります!私が先行して侵入ルートを偵察しておくというのはどうでしょう?』

 

『大容量バッテリー積んでるとはいえ連続稼働は24時間分が限度みたいだけど、色々活動することを考えると24時間分の容量で偵察できる?』

 

『そこは心配ご無用!共同戦術ネットワークとの接続を一時的にですが切断すれば3倍の72時間分の活動時間を得られるのです!』

 

『ネットワークを切断するとなると、その後の合流は周波数を合わせて交信する必要があるね。』

 

『周波数なら元から設定されているみたいですよ?』

 

 

 

 青葉から送られてきた無線周波数は"147.71"で自動的に登録され、いつでも交信できる状態になった。

ちなみにアイラが調べてくれたが月光/アイラの周波数は"149.27"で設定されていた。

 

 

 

『それじゃあ青葉、くれぐれも怪我の無いように。あ、あと一般人やら魔法関係者やらに見つからないよう気をつけてね。』

 

『はい!青葉出撃、あ、いえ偵察してきまーす!』

 

 

 

 そう言い残すと青葉のT-ホークの姿はナイトビジョンの視界範囲から出て行きすぐに暗闇に紛れた。

 

 

『さて、自分は早速寝させてもらおうかな。何かあったらすぐに起こして。』

 

『分かった。おやすみ。』

 

 

 

 先のコンテナに背に待機モードとなる体勢になり短いやり取りの後、月光の意識は途絶え機械の体になって初めての眠りに就いた。

月光が休眠モードに入ったことでIRVINGの制御はアイラが受け持ちカメラとセンサーで周囲を見張る。

 時刻は午後10時39分、気温12.9℃、湿度55%、風速4~5m/s、200mほどの範囲内でフクロウが鳴いており、センサーには小型の野生動物の反応もある。

気が付くと視界はいつしかナイトビジョンモードから通常モードに切り替わって頭上に向いており、薄雲の間から覗く星々を見ていた。

 

 

(人間の体になるとこの景色も雰囲気も変わって感じられる?)

 

 

 月光の補助をしてきたことで直に感じ取ってきたヒトの感性に興味が湧いてきたアイラ。

視界を再び周囲の森に移し警戒を続けるも、思考の片隅では先の疑問がずっと残り続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻、月光らが夕方に麻帆良学園を発見することが出来た渓流に、森の中からドラム缶やらテントなどのアウトドア用品を抱えた一つの人影が現れた。渓流に行き当たるまでしきりに足元を注意していたが、目的の場所近くに出たことに気付くと視線をその川の上流に向ける。上流には目的地である3段の滝の側にある大きな一枚岩。その大岩の上にとても大荷物を抱えているとは思えない身のこなしで登りそこに荷物を置くと、手慣れた手つきでテントを組み立てる。

 一通り荷解きが出来たらしく、その人影は先の立ち止まった場所にから川辺の砂利と森の地面に残る足跡を、行ったり来たりしながらまじまじと観察していた。

 

 

「ふむ、ヒトでありながらヒトならざる者がまだこの近くににいるようでござるな。」

 

 

 誰に言うでもなく呟いた言葉は、この場に来た月光がその後青葉と合流するべく向かった方向へ消えていった。

 しばらくその方角を見ていたが、踵を返すとテントのある岩場まで常人とはかけ離れた動きであっという間に移動し、既に用意していた焚き木に火打石で火をつけると炎の明かりが辺りを照らす。

 

 

「少しばかり調べてみる必要があるでござるか。」

 

 

 そう言うと忍装束を身に纏った少女というには些か背が高い彼女は、いつの間にか捕まえていた川魚を簡単に捌き塩を振り焚き火で焼き始めていた。




 1話辺り5,000字超えが目安でしょうかね。
無駄な描写とか説明をついつい入れてしまいがちなので、削れるところは削れて物語の進行速度を上げれそうな気がするのですが、私は現状で一杯一杯だったりします。

T-ホークと呼ぶよりMAVの方がしっくり来ます。あの無人機は何と言いますかMAVという語感がぴったりな感じがするので。

青葉が宿る無人機の候補としてはサイファーとキッドナッパーとMAVの3種だったのですが、サイファーは正直ダサい・キッドナッパーはかっこいいがどう着地させて待機させるのか難しいということでMAVになりました。






余談です。

・ネタ枠
 ネオマホラ、そこは接触不良でバチバチと音を立て明滅するネオン看板の大小、異様な安さを競い合う学食屋台、バトルコミックめいた喧嘩、トトカルチョなどなどなどなどが地獄の釜めいてかき混ぜられたカオスの坩堝。
しかし舞台はこのマッポーな街から遠く遠く遥か遠く離れた街の光や喧騒の届かない夜の山の中。
一つの影が木々を駆け今夜も己の巣に辿り着く。
 暗い闇夜でもわずかに浮かび上がる影から、この者は実際女性的な体を持つリアルニンジャであることを見抜くのはマホーとジツを嗜む読者諸兄にはベイビーサブミッションなことであろう。そしてそのバストは豊満であった。

 くべられた薪に点けられた炎は瞬く間にニトロメタンを過剰配合した焼殺重点ガソリンを注いだ火葬場めいて燃え上がる!
その炎によって鮮明、鮮明、実際鮮明に照らされた古のリアルニンジャ装束に身を包んだ彼女。実際豊満である。

 どこで捕まえたか、なんとその手には今やマルノウチ・スゴイタカイビルに住まう、カチグミすらその生の中で口にすることのないであろうリアルイワナが3本!3本もあるではないか!!
ソレを彼女は瞬きする間に3本の腹を割き内蔵を取り除いた!ゴウランガ!!
 口から尾までバイオバンブーなどではないリアルバンブーな串を通し塩をかけられ、未だに特殊チタン合金の熔鉱炉めいて燃え盛る焚き火に炙られウェルダンイワナとなったソレはあのブッダさえもドゲザし乞うような香りを放出していた。

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