科学と非科学の歯車   作:グリーンフレア

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だんだん更新期間が開くようになってきてますかね

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長かったので2分割にしました。


ACT.6 あの橋の向こうへ

---麻帆良学園侵入計画実行日 4月15日 午前8時---

 

 前夜から周囲の警戒を担っていた青葉によって目を覚ました月光は、同時に目覚めたアイラから昨晩組まれたシフト表とマニュアルが送られきてそれに目を通す。

シフト表は週に1度の間隔で、月光本人が数時間の夜間警戒に組み込まれたものだった。

 

 マニュアルと言うのはアイラが作成し青葉にも送られた物と同じで、よく注意しておく計器や項目を可愛らしい矢印やイラストで強調してあった。 

 

それらに癒やされながらマニュアルを読み終わる頃を見計らい、青葉が今日の予定について尋ねてきた。

 

 

『ところで今晩の予定はみっちり立ててはいますけど、日中はどうするんですか?』

 

『そうだねぇ・・・。特にこれといってやることも無いけど、どうしよっか?』

 

『質問を質問で返さないでくださいよ。偵察する場所も気になる場所も昨日一昨日で全て巡って、システム面のアップデートも済ましたし、今すぐにやることはないのじゃないでしょうか。』

 

『半日どうやって時間潰そうかな。』

 

『ネットが今一番この状況で長時間を過ごすには適してると思うけれど、どう?』

 

『うーん。2003年ってニ○○コ動画はおろかY○uTubeですら影も形もない時代で、精々前世の世界との違いを調べて回るぐらいかな。 それでも十分時間を潰せそうだけどね。』

 

『ゲームとかはどうなんですか?』

 

『ネトゲとかやりたいのは山々なんだけどね。 ゲームも自分が知ってる限りのタイトルはあんまり検索に引っかからないし、何よりもうこの時期のゲームのグラフィックじゃもう我慢出来ない体になってしまっているからやる気が起きないんだよ。』

 

 

 今は人間の体じゃなかったりしますけどね、などと青葉にツッコまれたが、今はインターネットでの情報収集に集中することにした。

 この時代、インターネットの普及が進んではいるものの接続方法は有線によるものが主流で、特に日本国内は公衆無線LAN等といったものの整備は遅れていたため無線によるネット接続が難しかったが、それを踏まえた改修がされたIRVINGには現在搭載されている機器を応用してインターネットへの接続を可能としていた。 幸いこの周辺は無線LAN等が整備されておりスムーズに調べ事ができた。

 

 ウィンドウの縁が半透明化されてないブラウザを懐かしく感じつつ巨大オンライン百科事典から昨今の出来事で前世との違いを探り、アイラの方で記憶している膨大なデータと照らし合わせたところそこまで大きな違いがないことがわかった。

 

 特に先月から勃発した2001年のアメリカ同時多発テロに端を発するイラク戦争において、先日イラク首都バグダッドが有志連合軍により陥落したが連日この戦争について報道がされているらしく、ネットニュースの1面も某巨大掲示板もイラク情勢についての話題が非常に多く、添付されている画像や動画は前世でも見た覚えがある物がいくつかあった。

 

 

『そういえばこの時期だったね。アメリカ軍とかがイラクを制圧したのは。まぁその後の事は大体知ってるし今は関係無いからスルーかな。』

 

『イラク戦争はこれからが本当の地獄ですね。 あ、麻帆良学園に関するスレが幾つかありますが・・・、どこもかしこも過疎ってますね。』

 

 

 原作漫画には描写が非常に少ない外から見た麻帆良学園などの情報を集めようと思ったが、公式ホームページを初めとするサイトから仕入れる事ができた役に立ちそうな情報は学園内の地図程度だった。

 もう一つの情報収集手段として某巨大掲示板を使って調べたが青葉の言うように大した情報量ではなかった。

 

 

『うーん、思ったほどの収穫はなかったかぁ。』

 

『大人しく残り10時間ぐらい待機してますか?』

 

『私は不備が無いよう青葉の機体を含めてしっかりとメンテナンスをするので。』

 

『何か手伝える事があるなら手伝おうか?』

 

『大丈夫。 月光と青葉は休んでて。』

 

『じゃあ私はまたまたお言葉に甘えて休まさせていただきますね!』

 

 

 そう言うと青葉はさっさと休眠モードへと移行した。

一方月光はまだ休むには勿体無い気がして休眠モードへの移行を悩んでいた。

 

 

『月光は休まないの?』

 

『なんだか今夜の作戦に向けて何かしておきたい気分なんだよね。 そこでこのIRVINGへの理解を深める為にも、迷惑じゃなきゃメンテナンスに付き会おうと思ってるんだけどいいかな?』

 

『…ん、分かった。』

 

 

 IRVINGとMAVのシステムメンテナスを見つつ、気になった機能等をアイラに尋ねて解説してもらうこの時間は2人にはとても有意義に感じられ、そうしているうちにあっという間に時間は経過していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---午後7時---

 

 日は既に地平線に沈み街灯や建物の窓にも明かりが灯り、学園を含む麻帆良市街地域の停電まで1時間というアナウンスが流れる。街道を行き交う人々の多くは帰宅者のようで、そのアナウンスに慌てる様子もなく麻帆良駅とバス・タクシー乗り場へと足を運んでいた。

 駅舎内と乗り場には今回の定期メンテナンスによる停電を告知するチラシが、目立つよう何枚も貼り付けられており市民に対し周知徹底がなされている様子がここでも見受けられた。

 

 その街の上空に設定された偵察ポイントより青葉のMAVが滞空し、人の流れを確認していた。数分ほどその場にとどまっていたが、次のポイントである市街地南側の湖畔公園の上空へと移ると廃墟で待機している月光らに報告をし始めた。

 

 

 

『見ての通り、もう公園には人気が無くなってますね。 公園までのルートもクリア、問題ありません!』

 

『ふむ…。 よし、予定より早いけど行くとしようか! オペレーション"クロスオーバー・ザ・ブリッジ"、スタート!』

 

『了解です!では私は少しだけ先行しますね!』

 

 

 

 この廃屋に来てから大体3日程、その間は待機モードだったため生体脚は緊張しており、ワイヤーアームでシャッターを開けたもののしゃがみ歩行で屋外に出るのに少々手間取る。

 這い出ると言った方が適切な動きで車庫から出てくると人工筋肉をほぐすため背伸びし始める。ここで以前にも同じシチュエーションがあったことを思い出すが、既に手遅れで足元にはコンクエストマーカーがばら撒かれていた。

 少なめであったがやはりアイラは前回同様スキットから音声・映像共に切断するも、今回は青葉がいたのがアイラにとって運の尽きだった。

 

 青葉はこの現場を見ていないため彼女からすれば、いきなり顔を赤くしたアイラがスキットから映像を切断するという行動に興味を持たざるを得なかった。

 

 

 

『あれ?アイラさん、急にどうしたんですか? あ、もしかして月光さんにセクハラ的なことでもされたんですか!?』

 

『どうしてそうなるんですかねぇ…。 まぁ、大した事?じゃないから自分の進路の警戒よろしく頼むよ。』

(アイラはさすがにまだ復活してないか。でも早い内に戻ってきてもらわないと。)

 

『え~すごく気になりますね~。 あ、なにやら公園の茂みの中に人間の反応が2つありますね。 移動経路から離れた所ですけど注意してください!』

 

『了解。 あー、ところでアイラ。この作戦名についてどう思う?』

 

『……作戦の内容そのままだと思う。』

 

『まぁ、そうなんだけどね。 しかし、この作戦名はダブルミーニングになっていて"橋を渡る"という事ともう一つ、ネット小説的等からすると"ここから本格的に本筋に自分達が関与してく"という意味合いを表しているんだよね。 どう?なかなか良いと思わない?」

 

『何だか安直でしょうか?もう少し捻りがほしいです!』

 

『捻りも何も、ダブルミーニングなんだからこんな感じでいいじゃない。』

 

『そうですかー? こうもう少し何かをパロるとか…。 アイラさんから何か無いですかね!『エラー、よく聞き取れませんでした。』』

 

 

 

 急に青葉から話題を振られたものの、我関せずという態度で即答した。

対する青葉はあまりに早く、それも望んだ返答ではなかったとういう事で少しだけしょんぼりしてしまっていた。

 

 

『まま、そう気分を落とさないで。オペレーションネームなんてあって無いようなもんだし。 って話の発端である自分が言っても締まらないか。』

 

 

 とは言うも即答というのが結構響いていたようで、一方のアイラは「できれば答えたくない」という気持ちが先走った結果即答となったことにとても気にして、索敵どころの話じゃないぐらいオロオロしていた。

 

 

 

 

 そんなこんなで移動すること数分後、湖畔公園を囲む2~3mほどのフェンスに行き当たったが、月光は難無く跳躍で越え公園へ入り込んだ・

 

 

 

『・・・青葉の言っていた二人組をこちらでも捕捉したけど、茂みが多く向こうからは直視できないと思う。』

 

『オーケーオーケー。 このまま気付かれないようにこの公園を抜けてしまおう。』

 

『もしバレそうになっても駆動音で誤魔化せるからIRVINGの特性が羨ましいです!』

 

 

 

 いつの間にか完全復活をしていた青葉が、牛の鳴き声ような駆動音を指して『私はブロワーみたいな羽音ですから』と付け加えた。

 機械部品と生体部品が混合しているレッグユニットから発せられるこの音は急激な運動をした時に出ることが多い。

 ちなみにセミの鳴き声は外部音声機器で意図的に出すことができるが、アイラは『敵を油断させるためでは?』と使用目的を予想していたが結局は分からずじまいだった。

 

 

 

『猫や犬ならまだしも牛の鳴き声で騙される人なんているのか・・・? まぁとにかく停電約30分前の夜の公園で、人目に付きづらい茂みの中で何をしてるのかは知らないが、コチラに気が付かなければなんだっていいか。』

 

『でも気になるんじゃないんです? こんなシチュエーションですから色々想像が捗りますね! 何がとは言いませんが!』

 

『はいはい、青葉さんは当初の予定通り次のウェイポイントまで移動しましょうねー。』

 

『釣れないですね~。 あ、アイラさんは気にしなくてもいいですよ! ただの下らない世間話みたいなものですから!』

 

『そう?』

 

『そうそう。本当にしょうもない話だからね。 てか、下らないっていう自覚あるじゃないか。』

 

 

 

 そんな気の抜けた会話を続けている内に3人は麻帆良大橋の袂、吊り橋のメインケーブルと橋桁が接続するアンカーブロックと呼ばれる構造物に設置された中型リフトの前までやって来ていた。

 停電開始の5分前に到着したため、予定を繰り上げ電力が供給されている今のうちにリフトを使用することにした。

 青葉の偵察とアイラの心音センサー等によるスキャンで周囲と橋桁裏の作業用通路を隈無くチェックし、人がいないことを確認してからリフトを起動させ通路へと進んで行く。

 

 どこか機械的な女声の市の広域放送は伝達・注意事項を繰り返していたが、停電開始1分前になるとカウントダウンが始まる。

 合流しいつもの場所に青葉を載せた月光はなるべく音を立てないように通路を進み、カウントダウンの残り秒数と今の時間を見比べていた。

 

 タイマーの表示が0になり小さく短い電子音が鳴るのと同時に時計が20:00.00を表示してから僅かに遅れて、広域放送の「0」という声が反響して聞こえてくる。

 直後、補剛桁の間から見えていた学園の明かりが一斉に消えて、通路の手すりに沿って巻き付けられ弱々しく赤く光っていたライトチューブもその明かりを消した。

 

 

 

『よし、オペレーション"クロスオーバー・ザ・ブリッジ"、ステージ2へ移行。これより結界の境目と考えられる麻帆良大橋中央部を突破する!』

 

『よーそろー!』

 

『・・・。』

 

 

 

 いよいよ麻帆良学園への侵入を目前にテンションが上がってきた月光と、そのノリに便乗した青葉と、どうしていいのか困っているアイラとそれぞれの反応を示しながら一行は作業用通路を進む。

 

 次々と主塔の通用口を通り抜け、最後の主塔を抜けると麻帆良学園側のアンカーブロックと昇降用リフトの乗り場が見えてくる。

 

 当然というべきかリフトは地上に降りており停電中なので、月光の電力を操作盤を経由して供給しウィンチを稼働させてリフトを上げることにした。

 橋上にはどういう訳か誰もおらずリフトの滑車の音を気にする必要がなくあっという間に月光達の所まで上がってきたリフトに乗り込む。

 幸いリフト自体にも操作盤が付いており下降中でも通電させ続けれることが出来た。

 

 

『とりあえずは無事に麻帆良学園への侵入成功だね。 周囲には人影なし。それじゃ魔法バトルの見物にうってつけの場所を探そうか。』

 

『事前にピックアップできた場所は橋の南北両方合わせて5ヶ所。』

 

『ほとんどが建物の屋上ですね。 1箇所は高台の公園みたいですけどどうします?』

 

『予測される決闘時刻までは大分あるはずだから全部見て回ろう。 2人共周囲の警戒頼んだよ』

 

『了解。』『了解です!』

 

 

 

 




 またしても内容詰め込みすぎましたかね。
今回の戦闘描写はまぁお試しみたいな物でしょうか。
今後こんなかんじでやっていくことになるでしょう。


 次回はネギVSエヴァンジェリンですがメインはそちらではないですね。

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