科学と非科学の歯車   作:グリーンフレア

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 3,000字程度になるかと思っていましたが、なんだか楽しく書いている内に5,000字近くになってしまいました。

 前話より戦闘描写が多いです。
私自身投稿してからしばらくして読み直したり手直しするので、変な所に気がついて修正が入るまで少し日が空くと思います。


8/5
日時の修正


ACT.8 エネミー

---4月16日 未明---

 

 ネギの追跡を振りきった月光らは、その逃走中に拾った新たなサポーターの反応があり、今はその目的の反応が全く検出されないためとにかく来た道の近くに沿って、目立たないように引き返していた。

 

 

 

『えーっと、座標データからこっちの地図と照らし合わせて逃走経路を確認。 で、反応を感知したのはこの倉庫群と商業区の境界近くと。』

 

『ぼやけた感じだったので方角と大体の範囲しか分からない。 ここから南西方向、湖岸から区画の境界線までの広い範囲だと思う。』

 

 

 

 月光はその時の情報を見ておらず、微弱な反応だった為に曖昧なデータと2人の証言を元に場所の絞込をしていると、レーダーとセンサーの索敵範囲内の一部に突如魔力とは違う波長と共にノイズが発生した。

 観測地点は割りと近かったが厄介事には巻き込まれたくない月光は少し迂回して倉庫群へ向かうことにすると、ノイズは月光たちを捕捉しようとしているかのように、地形を無視して真っ直ぐ彼らの方へ向かってきた。

 ノイズ発生源は空でも飛んでいるのかと考えられたが、暗視装置・熱源探知ではその地域上空に何もおらず相手は何者かわからない状況に月光は多少の苛立ちを見せる。

 

 

 

『今度は何でしょうかねぇ…。早いところサポーターと合流したいというのに。』

 

『生体反応はあるけど人間ではないみたい。それと魔力のような物も検出されてる。 どうするの?』

 

『取り敢えずは逃げようか。 それでも追ってくるのであれば倉庫地帯に入る前に迎撃してしまおう。』

 

 

 

 倉庫群に近い場所で交戦すると最悪、魔法教師らを呼び寄せ新サポーターの捜索の邪魔になる所か、月光自身が発見されてしまうと判断し、相手が追跡を諦めないなら倉庫群から離れた適当な場所で撃退すると決断する。

 

 戦わないで済むに越したことはない為、路地を駆け抜け引き離そうと試みたが、相変わらず地形を無視した動きで徐々に距離を詰められていた。

 

 

 

『ええい、何なんだこいつは。 ……仕方ない、ちょっとリスキーだけど大きく跳んでみようか。』

 

『また跳ぶんですかぁ・・・。 あ、月光さん!私はジャンプしている途中に離脱して、上空から相手の正体の確認と周囲の警戒をしますね!』

 

『確かに着地の衝撃とか青葉には負担が大きだろうしそっちの方がいいね。』

 

 

 

 頭上に障害物がない場所へ出ると地図で確認した、百数十m程離れた所にある開けた路地裏の空間へ向けて大跳躍を行なった。

 力を込めて行なった跳躍はあっという間に最高到達点まで上昇すると僅かな滞空時間が出来た。

その間に青葉は接続していたマニピュレータを予定通り切り離すと、緩やかに降下していく月光から離脱する。

 

 それと同時に月光たちを追っていたノイズが消失し、その様子を見ていた3人は戦わなくて済んだと安堵した。

しかし安堵したその直後、目的地へ着地体勢を取った時に異変が起きる。

 

 

 着地地点一帯へ先程と同じ波長のノイズがレーダーに発生し始めた。

異変はそれだけでなく月明かりと近くの街灯の僅かな明かりで照らされる開けた路地に、人間大の霧の渦がポツポツと現れる。

 霧の渦は鈍く赤黒い光を放ちナイトビジョンモードでなくてもその不気味な色を認識出来、ただの跳躍のため着地地点の変更はできず点在する渦の中に降りるのは免れなかった。

 

 月光はこの渦を何処かで見た覚えががあったが、接地までの一瞬は最悪のケースに備えて各武装・システムの戦闘モードへと移行作業に費やされ、着地した直後に現れた相手を見て思い出すことになる。

 

 月光が着地に成功したと同時に霧の渦にも大きな変化が起きた。

立体的だった霧が地面に吸い込まれるように小さくなると未だに渦巻く平面部の中心、どす黒い部分からソレらは這い出してきた。

 

 

 ソレらは「宇宙全体の不倶戴天の敵」と評され、何処からとも無く現れる正体も目的も不明な種族。

 生物・機械問わず何らかの手段で侵食し最終的には仲間として取り込んでしまうというソレらと、長い間戦い続けているある組織はこの種族を"ダーカー"と呼んでいた。

 その種族の中で最も数が多いとされる種である、四脚の蜘蛛のような見た目の"ダガン"が渦の中から続々と現れ月光を包囲していた。。

 

 

 

『何でこいつ(ダガン)らがここにいるんだ!?』

 

『データベースによるとPSO2に出てきた通常種のダガンで間違いなさそう。』

 

『上空から見た限りですとその路地に13体のダガンが出現してます! どう見ても敵意しかないです!』

 

 

 

 青葉の報告が終わるか終わらないかのタイミングで、月光の右後方から1体のダガンが跳び掛かってきたのを皮切りに、取り囲んでいたダガン達が動き始めた。

 跳び掛かってきたダガンに対して回し蹴りで対応すると、丁度良い具合に両前足を振りかざしていたダガンの胴に蹴りが直撃。弱点である腹部の赤いコアまで脚がめり込み肢体がバラバラになりながら建物の壁に激突する。

 

 

『結構硬いな! でも原作ゲーム通りダーカーコアにダメージが入れば殺りやすいのか?』

 

 

 次の攻撃が来る前に先手を取り、足払いの要領で数体まとめて蹴飛すと、周囲にいたダガンも巻き込み7体が壁際に密集していた。

 実物のダーカーの異様さとその数、更にダガンの攻撃力への不安もあり、出し惜しみ無しでグレネードを使い殲滅を目指す。

 

 ヘッドユニット下部のカーゴスペースからM67フラググレネードを1つ、ワイヤーアームで取り出し安全ピンを引き抜くと密集したダガンに向け投擲、同時にバックステップでグレネードの加害範囲とダガンの包囲網から脱出する。

 

 密集したダガンの中に投擲されたグレネードは炸裂すると、コアへダメージを受けたダガンらは鳴き声のようなものを挙げて赤黒い砂のような物に変わり果てた。

 

 

 

『あれ?PSO2と撃破時の様子が違う。雲散霧消って感じじゃないのか。』

 

『月光さん!ダーカーがまた、包囲しようとしています!』

 

『もうグレネードを使ってしまったんだ。こうなったらM2とLMGも使って、!? しまった!』

 

 

 

 小さな砂の山になったダガンと戦闘補佐をしてくれているアイラと青葉から上げられる情報に気を取られた一瞬に左前方の1体が月光目掛けて飛び掛ってきていた。

 

 咄嗟に身を引いたが完全に回避しきれず、ダガンの鋭く硬い前足の爪がヘッドユニット上面へ落下の勢いそのままにぶつかる。

 幸いにも目立ったダメージにはならなかったようだが、落ちてきたダガンはそのままヘッドにしがみつき、引き続き爪で攻撃をしようとしていた。

 

 

『この野郎!邪魔だぁ!』

 

 

 ワイヤーアームを胴体のコアへ突き刺すとそのまま電撃を喰らわせ、激しく痙攣している間に足を掴んで引き剥がす。電撃が致命傷だったのかそのダガンは空中で砂となった

 

 上部の射界が開け、右ハードポイントのM2が自由になるとヘッドに内蔵されているM240と共にセーフティシステムが解除されていることを再確認する。

 

 爪による近接攻撃をしようと残り5体はぞろぞろと路地の幅一杯に広がり近づいて来る為、2種の火器は効率良く攻撃できるようそれぞれ別の目標へ照準を合わせた。

 

 ヘッドユニットのM240は左端のダガンへ。M2は右端のダガンへ。

判断から照準完了まで1秒弱の短時間だったが敵との距離は十分にあり、すぐさま射撃を開始する。

 

 弾を節約しつつの射撃だったが、単横陣の様に展開していた残りのダガン5体は両翼からあっという間に殲滅され、最後の中央の1体はM2のコアへの1発で砂となった。

 レーダー・センサー共にノイズは完全に消滅し周囲に大きな生命反応が無いこと月光が確認すると、今度こそはと安堵の声を出す。

 

 

 

『いやぁ、まさかこんなの(ダガン)がいるとは。』

 

『もしかして、あの神様からのメールにあった"ちょっとばかし不安定な世界"ってこの事を指してる?』

 

『アイラさんたちが私との合流前に貰ったやつですよね? 私も拝見しましたけど"ちょっとばかし"なんて表現だったので些細な事と思ってましたが…。』

 

『神様の基準が分からないからなぁ……。 何が出てきてもおかしくないと考えておくしか備えようがなさそうだね。 恐ろしいったらありゃしない。』

 

 

 

『でもまぁ・・・。』と一言間を置いて赤黒い砂状に成り果てたダガンと脚元に散らばる空薬莢と弾帯リンクを見渡す。

 

 

 

『これは完全に学園側にバレるかもしれないなぁ・・・。』

 

 

 

 銃声と爆発音よってこの場へ魔法先生らが駆けつけるのは時間の問題で、実際ノイズの無くなった機器の観測と青葉の報告から、先の麻帆良大橋に向かったとみられる4人が接近してきていた。

 それとは真逆の方向からも2つの反応が接近してきていた。こちらからも魔力が観測されており魔法関係者と考えられた。

 

 

 

『青葉、走ってこの周辺から離脱するよ。戻ってきて。』

 

『りょーかいです!』

 

 

 

 見つかるのを避けるため、比較的直線的なルートを使って当初の目的地である倉庫群まで駆け足で移動を始め、青葉は移動する月光のいつものランディングゾーン目掛け急ぎ高度を下げて着地し合流する。

 

 魔法先生らが月光とダガンの戦闘が行われた場所に到着し現場検証と付近の捜索を始めた頃には、目的地までのルートを最短経路に変更しそこを最大速度で駆け抜けて商業区を脱することに成功していた。

 

 

 倉庫群へようやく侵入すると、アイラから早めにIRVINGのシステム・ステータスチェックと生体脚のクールダウンを兼ねて休眠をとりたいという事で、臨時の隠れ家として最寄りの電子錠式のシャッターを持つ倉庫群の端っこの倉庫に身を寄せることになった。

 

 倉庫内部はカッターボートが格納された棚が壁の一部を埋め尽くしており、残りのスペースは棚からカッターボートを取り出すためと思われるフォークリフトと2艇の中型ヨットが占めている。

 それらの背側面には黒く縁取りされた「麻帆良学園ボート部」の文字が様々な書体で書かれてあり、ある程度整備されていることから今も使われている施設のようだった。

 

 

 

『一晩留まるのでしたら他の倉庫にしたほうがいいんじゃないでしょうか?』

 

『奥の方は十分隠れられそうな空間になってるみたいだけど、一応他の電子錠式の倉庫も見てみようか。』

 

 

 一先ず周辺の倉庫も物色したが、複数監視カメラがある(警備室は他所)・隠れられそうなスペースがないと言った理由で最初の倉庫以外隠れられそうな場所が無かった。

 同時にアイラが電子錠の作動履歴を見たところ、初めの倉庫は思っていたほど頻繁に使われていないことが判明。

 更にその倉庫の奥まったところは人が立ち入った形跡が少なった事もあり、一晩ここで過ごすことにした。

 

 この日の警戒シフトはアイラが担当となっていて、精神的な疲労感を感じる月光は後のことを頼むとすぐに休眠モードへと移り青葉もその後に続く。

 残されたアイラは周囲警戒を怠らずにその片手間でIRVINGとMAVのメンテナンスを行いながら大忙しの1日を終えた。




 ええ、はい、ぶっ込んでやりましたPSO2要素。
現在の大まかなプロットは魔法世界編に突入する所(単行本21巻)までありますが、アークスたちは現状出る予定はありません。
ダーカーたちはチラホラ原作へ突っ込ませます。

 戦闘描写に一抹の不安がありますが大丈夫だと信じてこんな感じで進みます。
それよりもダガンをどう表現するかに苦労しました。公式的にはアリらしいですが、何だかんだで本文中の形容となりました。


 次回新しいサポーターが出てきます。
そろそろストーリーの進行速度上げていきたいと思います。

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