夢を見た‥‥。
『ぐすっ‥‥‥ぐすっ‥‥‥ママぁ‥‥‥』
誰かが泣いている‥‥。
ううん‥‥‥『誰か』じゃない‥‥‥、泣いているは‥‥‥『私』だ‥‥‥。
ママが居なくなって間もない、幼い私‥‥‥。
あの頃の私は、泣いてばかりだった‥‥。
ママが死んで──『死んで』とはいうものの、実を言うとお葬式はあげていない。何せ、ママの体は見つからなかったのだから。
故に、仏壇には写真が『飾ってあるだけ』だし、お墓も無い。
ママかこの世に遺したものは二つだけ‥‥。
娘である私自身と、ローネスとの戦い場で唯一見つかったラベンダージュエル‥‥。
泣いている間はパパが嫌いだった‥‥。
那由多さんのことを『お母さん』だと認めたくなかった‥‥。
本当は『大好きだった』プリキュアもきらいになった‥‥。
『プリキュア』は私達から大切な人を奪ったんだ、好きでいられるはずもない‥‥。
と。過去の記憶を夢に見ていた私は、ふと気になった。
あれ‥‥?じゃあ、現在の私はどうして在るんだろう‥‥?
ママが死んで、辛く悲しかった苦しみからどうやって立ち直った?
思い出せ‥‥‥何かあったはずだ。
‥‥‥‥誰かが私の心を救ってくれた‥‥?
パパが?‥‥違う、パパじゃない。
那由多母さん?‥‥違う、あの人でもない‥‥。
だったら誰‥‥?
悲しみに沈んだ私の心を、誰が助けてくれたの‥‥?
『どうしてないてるの?』
幼い私の前に『誰か』が現れる。
女の子、私と同い年ぐらい。しかし、顔が思い出せない‥‥。
記憶がハッキリしないせいか、女の子の顔は霞がかかっているように不鮮明、顔だけ曇りガラス越しに見ているような感覚だ。
『ぐすっ‥‥‥ママがいなくなったの‥‥‥』
私が言うと、女の子は『ふ~ん』と呟くだけで、あとは黙ってしまう。
そして、何を思ったのか女の子は、
『ねぇねぇ』
『‥‥‥‥‥?』
自分の頬を両手で押して、
『はっぷっぷ~~!』
変顔を作った。
幼い私は最初、キョトンとしていた。が、女の子の変顔が面白かったのだろう。
『‥‥‥ぷっ‥‥‥ふふふっ‥‥‥!』
笑っていた。
(‥‥そうだ‥‥‥)
あの子だ‥‥。あの子が私を助けてくれたんだ‥‥。
『‥‥えへへ~っ。わらってくれたね♪』
笑顔の女の子。
幼い私は、泣いてばかりだった自分が笑っていたことに気づく。
そんな私を見て、女の子は一言。
『ねぇ、いっしょにあそぼ?』
それから私達は、日が暮れるまで一緒に遊んだ。
鬼ごっこをしたり、かくれんぼをしたり、おままごとをしたり、私達が居たのは公園だったから遊具で遊んだりもした。
そう言えば、あの子にはラベンダージュエルを見せたはずだ。
『わぁ~、きれいないしだね~』
『いし、じゃない‥‥。ラベンダージュエル‥‥、ほうせき‥‥。わたしたちかぞくの‥‥たいせつなたからもの‥‥‥』
そして日も暮れ、最後に写真を撮ってもらい(‥‥誰に?)、別れ際、私は女の子にこう訊ねた。
『どうして私に話しかけてきたの?』と。
女の子は答える。
『ともだちだからだよ』
『とも‥‥‥だち‥‥‥?』
『うん。だってわたしたち、もうともだちでしょ?ともだちのかなしんでるかおなんてみたくないもん』
不思議だった。どうして見ず知らずの私にそんな事が言えるんだろう。
でも‥‥‥『友達』と言ってくれたことは、当時の私は嬉しかったと思う。
『あ、あの‥‥‥‥』
『ん?』
『あの‥‥‥その‥‥‥。あり‥‥‥がとう‥‥‥いっしょにあそんでくれて‥‥‥』
『ほえ?』
『ママが‥‥いってたの‥‥。おともだちをつくるときは、ちゃんとじぶんのなまえをいってあいさつしなさいって‥‥。その‥‥‥わたし、やぼし まゆきっていいます‥‥。あなたのなまえ、おしえてくだ‥‥さい‥‥‥!』
途端、女の子は満面の笑みを浮かべる。
『まゆきちゃんか~♪わたしたち、なんだかなまえがにてるね♪』
名前が‥‥似てる‥‥?
『わたしは───。──── ───だよ、まゆきちゃん♪』
名前‥‥‥。あの子の名前、何だったっけ‥‥?
私の心を救ってくれた恩人なんだ。名前、顔、ちゃんと思い出さなきゃ‥‥!
『わたしは───』
思い出せ、思い出せ‥‥!
『───だよ、まゆきちゃん♪』
私と名前が似てるって言ってた。
『─ゆ─だよ、まゆきちゃん♪』
あと、ちょっとで‥‥‥!
『わたしは───』
(‥‥‥っ!?)
‥‥‥そうだ。あの子の名前は‥‥‥。
○○○
真夜中。
夢から覚め、私は思い出したあの子の名前を呟く。
「『みゆき』‥‥‥」
そうだ‥‥‥、あの子の名前は『みゆき』‥‥‥。
「『ほしぞら みゆき』‥‥‥」
名前を思い出した。顔も‥‥‥‥今ならハッキリと思い出せる。
あの子は間違いなく‥‥‥‥小さい頃の星空さんだ‥‥。
「‥‥あ~‥‥‥‥‥」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥最っっっっ悪っっっっだぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!!
何よ、これ!?私ってば、超絶究極的に最悪な奴じゃん!!!
星空さんがあの子で!?あの子が星空さんで!?
私達、ずっと昔に会ってんじゃん!!!しかも星空さん、私の恩人だし!!!
それなのに私ってば、それをすっかり忘れちゃってて『目障り』だとか『友達にはなりたくない』だとか言っちゃってるしっ!?!
馬鹿なの?!ねぇ、馬鹿なの?!どんだけ馬鹿なんだ、私は!?!
‥‥うぅ~‥‥‥‥穴があったら、埋まって猛省したい‥‥‥。
「‥‥‥はぁ~~‥‥‥‥‥‥」
あ~‥‥学校休みてぇ~‥‥‥。
「どんな顔して会えば良いのよ‥‥‥」
もう、自己嫌悪の泥沼にはまって脱け出せないわよ、コンチクショー‥‥‥。
「‥‥とりあえず‥‥‥」
‥‥‥‥‥お腹すいた。
前話について一つ謝罪を。みゆきちゃんの、母・育代さんに対する呼び方が『ママ』だったか『お母さん』だったか忘れてしまったため、呼び方は『ママ』の方にしました、スンマセン(-_-;)
さて、次回は二人の出会い、みゆき視点。
タイトルは『みゆきとまゆき』です、待っててくださいね♪